表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ETERNAL SAGA  作者: 紫音
72/73

episode 69 告白

-ガルドエディル-



突如、 海中より何かが勢いよく飛び出して来た。

海の生物、 魔物、 いや違う…それは人だった。

黒いローブを纏った男はそのまま浮遊しつつ、 辺りを見渡している。



 「…なるほど。 ここが“アイツ”のいる世界って訳か…。


 こっちではまだ“崩壊”は始まってねぇみたいだな。




 ん、 このアーディルの感じ………何処からだ…?」



海の底よりさらに深い底、 そうギルヴェリアスが隠されてあったあの深海からの反応だった。

アーディルの微かな反応を男のスキャンが拾う。

“微かな”と言うのは遠すぎると言う意味ではなく、 エネルギーが尽きかけようとしていると言う事。

そのアーディルが誰の物であるのか男は知っていた。



 「よし。 取り込むか…。 でも早くしねーとな」



男は急に魔力をフル放出しながら、 その深海へと潜って行ったのだった。















-高次元領域・エターナルサーガ-



 「!?


 うわわわ~!」



ヴィジョンからいきなり姿を現したアッシュとディック。

イスに座りヴィジョンを見ていたフュリンが驚き後ろに仰け反ったのだが

そのまた後ろに立っていたメルヴァーがスッと横にずれるとイスごとフュリンが倒れてしまった。



 「いたたた…」


 「わ、 悪い…」


 「んもぅ…! びっくりするやんかーアッシュ!」



頭を撫でながら起き上がり自分と同じぐらいの丈のイスを、 両手を使って立てる。



 「よいしょ…っと」


 「おめぇ、 もしかしてフュリン?」


 「そやで。 初めましてやな~兄ちゃん」


 「あ~そうか。 ディックはちゃんとフュリンに会うのはこれが初めてなんだな」


 「じゃあ、 例のソウルストリームは兄ちゃんやったんか」



アッシュは頷いて答えた後、 メルヴァーに紹介しようとディックの顔を見る。

しかし先に尋ねられてしまった。



 「あいつは?」


 「あ、 メルヴァー。 エターナルサーガの管理者だよ」


 「…管理者?」



フュリンは飛び上がり、 浮遊しながらその会話に入る。



 「メルヴァーは神様の手伝いをず~っとやって来た凄い人なんやでぇ~。 なっ?」



そう言ってメルヴァーの腕を両手で引っ張りながらディックの元へ連れて来る。

フュリンはまるで自分の事の様に自慢げに語り、 それに何の言葉も返す事なく

メルヴァーは深くディックに向けて頭を下げた。



 「…それでディック、 あいつは本当に?」


 「あぁ。 封印した」


 「封印? 封印て?」



自分の命を懸けて放った“ミスティックケイジ”

それは対象の肉体を分解し、 精神体をその中に閉じ込めると言ったものだった。



 「…俺の力じゃあいつを封じ込める事しか出来なかったんだ…」


 「ティナとリルティは無事なのか?」


 「…わかんねぇ。 脱出したと思うけどな…」


 「失礼ながら…アース様」



今まで黙っていたメルヴァーが急に口を開いた。



 「ガルドエディルに流れる海の遥か底にアーディルの反応を捉えました」


 「海の底って…もしかしてあのギルヴェリアスがあった所か?


 でもそんな所に何でアーディルが…?」


 「ディウスのアーディルとちゃうん!?」


 「そんな!? 


 い、 いや…いくら何でも早すぎる…」


 「そやけど……他に誰がいるん!?」


 「………」



3人の会話が止まったのを確認するとメルヴァーがフュリンの問いに答える。



 「ディウスと言う者では御座いません。 彼の者は先程ディック様の仰られた通り


 異次元に封印されております」


 「じゃあ一体誰なんだ?」


 「そこまでは…」


 「メルヴァーならわかるやろ! ほら、 もう1回ちゃんと調べてみ!」


 「私はあくまでもアース様の記憶や感情などから読み取り、

 アース様に有益となる情報をお伝えしているに過ぎません」


 「ん、 そやから何?」


 「はい。

 ですから記憶の強い部分を読み取っているので断片でしかお伝え出来ないのです。

 従って現在のアース様を読み取る限りでは、 アーディルの持ち主が誰なのかまでは

 解りかねると言う事で御座います。 フュリン様」


 「そうなんか…」


 「行って…確かめるしかない…か」



アッシュの言葉に2人は頷く。

だがまたしてもメルヴァーがそれを引き止めた。

ゆっくりと丁寧に焦る事無く、 言葉を並べていく。



 「申し訳ありませんが………………」


 「……どうした? メルヴァー」


 「んもぅ~! いちいち止まらんでいいから早よ言って!」


 「はい。



 ディック様、 貴方様はプラートガルドに戻る事は出来ません」


 「…え?」


 「だってお前…昇化して俺達と同じになったんじゃないのか?」


 「昇化とは神になると言う事では御座いません。 アース様。


 ディック様は高次元に存在出来るようになったのであり、 レベルが異なる次元を行き来する事は出来ません。


 貴方様が次元の壁を飛び越えられるのは、 ミクトアーディルを持つ神であるからなのです」


 「ちょっと待てよ……じゃあディックは何の為に昇化したんだよ。

 俺の力になってくれるって言ったじゃないか」


 「それは…」



アッシュとメルヴァーの会話を聞いているフュリンが不機嫌な表情でアッシュの顔へ近づいた。

そして2人の繋がっていた会話と言う糸を分断する。



 「もぅ~! 今はそんな事より先に確認しに行く事の方が大事やろぉ!


 兄ちゃんには悪いけどここで待ってもらって早よ何者なんか確かめな!」



フュリンの言った言葉に はっ と我に返って気づく。

話はまた戻って来ても出来るのだ。 彼女の言った通り確認する事を優先させなければ…。

セティスに触れさせて彼女とのシンクロを始める。

フュリンが瞳を閉じて念じると光となり触れた手の先からアッシュの腕輪に吸い込まれて行く。

そしてアッシュはワープドアを使ってガルドエディルへと消えて行ったのだった。





















ギルヴェリアスより東にある無人島。

小さい島の砂浜にリルティが1人、 誰かと会話していた。 相手はジェノだった。

彼は目の前にいるがこの島には存在していない。

リルティが見ているのは通信オーブを通して遥か西に浮くエルザードにいるジェノ。

その為、 彼の身体が時折砂嵐の様に乱れる。



--なるほどな……大体はわかった。


 んで、 何をすればいい? 救援か?--


 「うん…救援は別にいいよ…。 2人共疲れてるけど負傷はしてないから…」


--そうか…。 でもディウス相手によく無事だったな--


 「うん…」



ジェノにしてもリルティにしてもお互い何処かぎこちなく、 話がすぐに終わってしまう。

終わったと言う事で通信を切ればいいのだが2人共がお互いの言葉を待っていた。

しかし特に声をかける素振りもなく、 ただ沈黙が続いている。



 「…………」


--……………--


 「じゃあ…。 切るね…」


--……あぁ--



通信を切るには通信オーブの回線を切る、 つまりは送っている魔力を絶つと言う事。

魔力を扱う事が出来る人間ならば歩く事と同じ様に簡単な行為。

リルティがその回線を切ろうとしているが、 自分から魔力を引き抜こうとはしない。

自分から言い出したものの、 寸前で手が止まっていると言った様な状況だった。

何か言いたいのに何も言葉が出てこない複雑な表情で俯いているリルティに向かってジェノが声をかける。



--んだよ、 何か言いたい事あんなら言えよ--


 「え…? 別に…何もないけど…」


--俺様がわからねぇとでも思ってんのか? バカが。

 てめぇはすぐ顔に出るからわかんだよ--


 「…じゃ、 じゃあ…言うけど…」


--ほらみろ。 やっぱあんじゃねぇか。 ……で? なんだよ-- 


 「うん……………」



リルティは自分の髪の毛を指で摘みながら映像のジェノから目を背けつつ、 言いにくそうに口を開いた。



 「ジ、 ジェノはさ…。






 






 あたしの………」


--何? 聞こえねぇーよ--

























 「あたしの事…嫌い?」



自分が言ったこの言葉の後にジェノが答えてくれると期待していた。

ほんの少しでいい、 ほんの1ミリでいいから彼に好きでいてもらいたいと願っていた。

どんなに少しでも“嫌い”ではないからだ。 しかし無言だった。

そしてジェノは自分の気持ちを、 その答えをわかっているがリルティには告げなかった。




ジェノは少年時代、 義理であったが温かい家族と共に幸せな日々を送っていた。

しかしある日、 ジェノの住んでいる村に魔物達が現れる。

家に侵入してくる魔物、 そして次々と殺されていく村人達。

彼は親が殺される姿をその目で見ている。

ジェノが魔物に見つからなかったのはその時期から魔力がコントロール出来ていたからだ。

つまり魔力を消して隠れていた為、 村の中でたった1人だけ生き残れたのだ。  


無我夢中で村から逃げ、 その先の森で倒れていたところをディルウィンクエイスのマスター、

マーディンによってジェノは助けられたのだ。


大切な家族を奪われたジェノはその対象をマーディンへと変えた。

そしてそのマーディンまでも彼の元からいなくなってしまった。

大切な人を守る事が出来ない自分を呪い、 打ちひしがれ、 怒りと悲しみの中で誓う。


“心を許すから深い傷を負うんだ。 だったら心を許す相手を作らなければいいだけ”


そう自分に言い聞かせてきたのだった。


愛とは幸せと苦しみが表裏一体となっているもの。

どんなに幸せな日々が続いてもやがて別れが来る。 そして自分から離れていく。


ジェノは怖いのだ。


そうなってしまった時に悲しみで震えている自分の姿を見る事が…。

弱い自分の心を隠す為のカムフラージュが今のジェノを作り上げたのだ。

今回も彼女には本当の気持ちを告げなかった。



--…………--


 「………そうだよね…。


 あの時に1回はっきり言われちゃったのに、 あたしったらまた同じ事して……。


 やっぱ……ばかだね…」


--(リル…)--


 「あたしさ、 ディックさんとティナさんの関係って凄い羨ましかったんだ…。

 お互い言葉に出さなくても通じ合えてるって言うか…。


 ディックさんの件…初めはティナさんの事、 物凄く頭にきてた…

 大切な人なのに…もう会えないのに何でなんだって…」


--…………--


 「でもね…今はちょっと分かる気がするんだ。

 ディックさんの望んでいる事を受け止めてあげたティナさんの気持ち…。

 自分の気持ちを押し殺したティナさんは本当にあの人の事が好きなんだなって…ね。


 あたしは……さ、 自分の事しか考えてなかった…。

 大切な人と一緒にいる事が1番大事だと思ったから。


 でも…それが必ずいい方向に行くとは限らないんだよね…。

 大切だから…、 本当に好きだからこそ相手から離れるって言う事も…あるんだね…」



リルティが語った言葉はまさにジェノの行動と一致していた。

まるで自分の気持ちを見透かされたかの様にリルティの言葉が心の中にねじ込んで来る。

ジェノは人生で初めて本当の自分を知られた気がしたのだった。



--初めてだ--


 「…うん? 初めて?」


--あぁ、 初めてだよ。 俺様の心に入って来た奴はな--


 「……ジェノ?」


--いいか、 1度しか言わねぇからな--


 「…う、 うん」



ジェノは深呼吸を済ませるとリルティに一言告げる。



--………エルザードに来いよ--


 「うん…え!?」


--じゃあ…またな…通信終わり--


 「え、 あ……ちょ……っと」



映像が途絶えた。 通信オーブの回線がジェノによって切断されたのだ。

リルティは砂浜に1人、 きょとんした顔で立つ。


“エルザードに来い”


それは不器用なジェノが伝えた彼女への想いであった。

リルティを今まで突き放してきたジェノの心が何故今、 変わったのだろう。

誰も知らない自分の心を彼女がこじ開けたからであるのか…。

しかしリルティはジェノの心の内をまだ知らない。

確実な事は“また会える”と言う事だけ。

ただそれだけの事に心の底から嬉しく思うリルティであった。



 「(ジェノ…)」



























-深海-


一方、 深海へとやってきた黒のローブを纏った男はアーディルの反応を元にさらに深く潜って行く。

ディックとディウスの闘いでギルヴェリアスは破壊され、 この深海にちらほらと残骸を残していた。

通常の人間ならばまず潰れてしまうであろう圧力の中、 難無く泳ぎ回っている。

それも生身と言うから恐ろしい。 一体どうやってその圧力を無効にしているのであろう。

男はギルヴェリアスの残骸の1つに近づいた。



 「(この下か?)」



手を残骸に向けて魔力を操って残骸を動かし、 何処かへ放り投げた。

その残骸に隠れてあったもの、 それは…。


















 「見つけたぜ。 兄貴…」




今回はジェノとリルティがメインのエピソードです。

少し短いですが、 キリがいいので。


“魔力”について


この物語の魔力というのはスタミナなどと同じで

徐々に回復していく設定となってます。

RPGで言うMPとは違うので

例えばオーバードライブやギガドライヴなんかは

魔力を半分~全て消費してしまう技なわけですが

消費しても時間が経てばまた魔力は回復し、 使えるので

全て消費するギガドライヴなんかも2回使えたりするのです。


ただ、体力が低下してきた場合、魔力回復速度は低下します。

episode41のディックが魔物の群れとの戦闘シーンで

オーバードライヴを解除しもう一度発動しているシーンがあるのですが

体力がフルに近い状態なので魔力がすぐに回復し、また使ったと言う事です。


で、“魔力が尽きた”と言う言葉が何度か登場しているんですが

これは0以下になってしまったと思っていただければ。


無理してスペル(技やフォースエッジ、 シールドなど)を使って0以下になると

いくら体力に余裕があっても魔力の回復速度は落ちます。


“魔力のフルパワー”について

これも何度も登場する言葉ですが魔力をフルパワーで使うと言うのを

簡単に言うと魔力と言うのはスタミナと同じと言う設定なので


酸素を取り入れながら走っているマラソン状態を通常とすると

フルパワーを発揮しているのは全速力で息を止めて走ってると言う状態です。

酸素は魔力と思って下さい。



という何かめちゃめちゃ複雑な設定ですが…

とりあえずそんな感じで読んでいただければまた面白いのではないかと思いここに書いた次第で御座います。


もう物語終盤ですがね…(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気に入っていただけた方、よろしければ投票して下さい!!(月1回) [気に入った!!!]
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ