episode 6 仲間と力
エピソード6完成です。
えーと前回までに載せていた辞典的な説明を今回から
一番下に表示しました。これでテンポよく読んでくれれば嬉しいです。 今回は今までの中で一番長く載せました(ちょっとだけ長く)ではどうぞ!
あ、 ランキングの方もよろしくお願いします!!
突然のレヴィナードから持ちかけられた武術大会。
それにアッシュも出場する事となってしまった。
― 心も体も、 俺は強くなりたい! ―
あれから一週間が経とうとしていた。
レヴィナードからはまだ何の連絡も来ていない。
アッシュはエレメンツとしての厳しい修業に励んでいた。
ディルウィンクエイス内には
イマジンルームと言う部屋がある、
これはエレメンツの戦士たちの
トレーニングルームだが
それとは違う部分がある。
この部屋は森林、 平野、 砂漠など様々な地形を
本物とそっくりに作り上げる事ができる部屋なのだ。
今日はそのイマジンルームで訓練する事となった。
アッシュは肩慣らしに準備運動を始めていた。
1週間前とは顔つきが明らかに変わっている
少したくましくなっていた。
「147…148…149…150…っと」
いつもの様に腕立てを終えるアッシュ。
「えっと次は…」
「いいかげん覚えろよ…。
イメージトレーニングだろうが」
羊の様なクセ毛と黒いサングラスが特徴のこの男
何かとアッシュに突っかかって来る。
どうやらマスターのお気に入りと言うのが
気に入らないらしい。
「ったく…。
なんでてめぇみたいなんがマスターに
気に入られんだよ」
「ジェノ…もういいじゃん…。
アッシュはここへ来てから
まだ一週間なんだよ?
覚えられなくても当然だよ〜」
その中に割って入って来たのはリルティだった。
彼女は成績トップで合格し
ディルウィンクエイスの街では
候補生候補としてあまりにも有名だった。
しかし、 背中にタトゥー、 耳にピアスを開け
眉毛はぎりぎりまでに細く誰もが想像する秀才顔とは
程遠い容姿をしている為周りに誤解される事が多々ある。
「てめぇは関係ねんだよ リル」
ストレッチしながら毒舌を吐くジェノ。
「お前なぁ! なんでそんなに突っかかって来るんだよ!」
「気に入らねんだよ! てめぇも、 てめぇもな!
特にてめぇは試験受けてないのに
なんでここにいんだよ!!!」
そう、 今まで試験を受けずに
候補生になった者は皆無だった。
マーディンがアッシュにした事は
特例も特例でその事を納得できない
ジェノが言うのも当然だった。
「2人ともやめろ!
仲間同士が揉め合ってどうするんだ!」
クラスAのクレイドだった。
この前ディックと共にレヴィナード偵察の任務に
参加していたエレメンツである。
ジェノの憧れの存在でもある
「クレイドさん、 俺は実力もこいつより上なのに何で
こんな奴なんかと一緒に修業しないと
いけないんすか!?」
「ジェノ…これも全部マスターがお決めになった事だ!
それにお前だって候補生じゃないのか?」
「それは…」
「…さぁ、 気を取り直して始めるぞ」
「俺はこんな努力もしないで候補生気取ってる奴なんかと
一緒にできません…」
【努力しない】
この一言がアッシュの脳裏で何度も駆け巡る
「お前…今なんて言った…」
「聞こえなかったのかぁ?
なら言ってやるよこのインチキ野郎が!!
てめぇはここに必要ねぇんだよ!!」
「ふ、 2人ともやめなよ!!」
「いいかお前達よく聞け!
エレメンツは1人1人の力も大切だが
チームとしての力も戦場では必要になってくる。
もしこれが戦場だったらお前達は1人として
生きてはいないだろう…。
この意味がわかるな?」
『……………………』
「今日はイメ―ジトレーニングと言っていたが
やめて 【シールド】について教える。
毎日同じ事してストレスが溜まってるのかも知れん」
クレイドが念じると何もなかった空間が
突然広い草原へと変わった。
「アッシュ、 シールドって見た事あるか?」
「シールド…あ、 はい。
前にディックやティナが使ってたやつですよね?」
「ではシールドとは何だ?」
「え、 えっと…シールドとは…」
「…じゃあ、 ジェノ」
「…あらゆる攻撃から身を守れる手段です
…そんな事知ってて当然っすよ」
「そうだ、 魔力の量によってうまくいけば
剣や斧、 銃や大砲までも防ぐ事ができる」
「た、 大砲までも!?」
「ではリルティ」
「はい」
「敵がスペルを使用して来た場合
シールドで防げるか?」
「え〜っと、
それも魔力の量によっては防げない場合もあります」
「その通り、 シールドは魔力で形成されている為
スペルなども防ぐ事は可能だ。
だがシールドに注ぐ魔力が少なかったら
防ぎきる事も困難になる。
それに魔力はスペルの使用など
シールド以外でも頻繁に消耗する。
何が言いたいかわかるか? アッシュ」
「え、 は、 はい…」
「ふん…、 やめた方がいんじゃねーの」
「…大切なのは魔力の配分だ。
シールドばっかりに魔力を使っていては攻撃の時
魔力がなくなってしまいスペルが撃てなくなる。
かと言ってシールドを弱めると
致命的なダメージをくらう攻撃に対処できない。
要はその状況その状況で変えて
いかねばならんのだ」
『はい』
「と言う事で今からお前たち3人は
シールドの強化訓練をやってもらう」
「強化訓練…?」
「ここに2つの旗がある、 赤と白だ。
どちらか1つの旗をあげるのであげた方の者は
どんな手段を使ってもかまわない相手を攻撃するんだ。
あげなかった旗の者はシールドでひたすら防ぐ
もちろん避けてもいいが反撃したりスペルを使ったりはしないことわかったか?」
『はい!』
「じゃあまずはリルティとジェノだ。
前に出るんだ。」
「クレイドさん!!
こいつとやらしてください!!」
「ジェノわかってるか?
殺し合いじゃないんだぞ?」
「…わかってますよ」
「……ならアッシュとジェノ前に」
お互いに闘志がむき出しになってる状態で
睨み合っている。
そしてそれぞれが位置についた。
「赤がジェノ、 そして白がアッシュだ。
1分経ったらもう1つの旗をあげる。
降ろした旗の奴は攻撃は一切できないぞ。
何度も言うが殺し合いじゃない!
これは修行、 訓練と言う事を忘れるな?」
「…………」
「…………」
クレイドの言葉をさらりと風と共に受け流す2人。
相手の顔をぐっと睨みつけ、 拳に力を入れる。
ただどちらも頭にあるのは
【殴りたい】ただそれだけである。
「では………
……始めぇ!!」
白い旗があがった。
これはアッシュが攻撃する番だ。
猛スピードでジェノに向かっていくアッシュ
そしてそれを待ち構えるジェノは
シールドを張り巡らせ攻撃に備える。
「うぉりゃぁっ!!」
アッシュは魔力を右の拳に集めジェノの顔面にパンチを入れた。
よろけた隙にそのまま左の拳で殴ろうとしたが読まれていたのか腕で止められる。
だが足払いを繰り出しジェノを浮かせると
その浮いていたジェノの足を掴み上へ放り投げた。
「開け! 我が魔力の…扉!!」
「む、 スペルか……」
「たった一週間でスペル使いこなすなんて
す、 すごいじゃん…」
「スパアァァァクボォォルトォォオ!!」
宙へ投げ出されたジェノに向けて放たれた青い電撃。
それは一直線にジェノへと向かっていく。
「(す、 スパークボルト!?
攻撃スペルの中でも特に習得が困難な
電撃属性のスペルを…もう…!?)」
「ちっ、 油断した……。
……なっ!?」
気づいた時には既にジェノの目の前に迫っていた。
彼の瞳に映る青い光がバチバチと言う音と共に
体を縛りつける。
「あがあががが…ぐぅ…ぎぎぎ……
こ、 ここん…な…も…ものぉぉぉ!!!!」
くらっている途中でシールドを全開にして
纏わりついていた電撃を弾き飛ばした。
「(な、 なんて奴だ…アッシュのスパークボルトは
完全に決まっていた…それを無理やり
弾き飛ばしたのか…!?)」
「はぁ…はぁ…はぁはぁ」
あげていた旗を降ろしジェノの赤い旗をあげるクレイド。
「はぁ……はぁはぁ
よ、 よし俺様の番か、 たっぷりと痛めつけてやるぜ!
はあぁぁ……!!!!」
ジェノは魔力を右の手に集め出した。
「(右手に物凄い量の魔力が集まってる…
……スペルじゃないみたいだ…なんだ…あれは…)」
集められた魔力は丸い光となり
その光は何かの形に整えられていく。
「(ジェノ…まさかあれを…)
「俺様の…フォースエッジを
くらいやがれぇぇ!!」
その光は手斧となりジェノの手に握られていた
アッシュが斧だと認識した時には既に自身の頭上に。
「死ねぇ!!」
空から勢いよく振り降ろすジェノだが
それをアッシュは紙一重で避けた。
彼の攻撃はさらに続く。
縦横に斧を振り回しながら突進して来るジェノに
アッシュは避けるしか無かった。
魔力も残り少ないまま必至でかわす。
「どうしたぁー!?
避けるだけしかできねぇのかー!!」
「(い、 一撃でも当たってしまえば終わりだ…)」
するといきなりジェノは途中で攻撃を止めた。バック宙を数回繰り出すとアッシュとの距離をとる。
「てめぇはなぁ…ほんとに嫌な奴だよな…
俺様が死に物狂いで頑張って頑張って頑張って…
勝ち取ったものを……!!」
話しながらもジェノはフォースエッジに魔力を送る。
魔力は斧に光を与えさらに輝きを増す。
「この俺様の努力を嘲笑うかの様にひょっこり現れて
一緒に修業する仲間だぁ?
てめぇといつどこで仲間んなったんだ?
俺様はな、
てめぇみてぇなインチキ野郎が…
だいっきらいなんだよぉぉ!!!」
手斧は2つになりさらに輝きを強める。
ジェノは勢いよく飛び上がると
光の手斧を振りかぶって投げた。
「オォォォォラアッックスッ!!!」
投げた2つの手斧が回転しながらアッシュに向かっていく
回転に勢いがかかり小さな竜巻を作った。
「ぐ…!?
………ぐうぅわぁぁぁ!!!!!」
刃がアッシュの足、 腕や背中など全身を切り刻んでいく。
赤い滴が地面に小さな水たまりを作る。
アッシュはそのまま段々と力が抜けて行き倒れ込んだ。
「…そこまで!!」
「ざ、 ざまぁ…み…や…がれ…」
空中にいたジェノも全ての力を使い果たし、
地面へとゆっくり落下していく。
「ジェノ〜!! アッシュ〜!!!」
リルティは2人の状態を確かめる。
「(ジェノはただの疲労だけど
アッシュはかなりのダメージを受けてる…
まだ魔力が残ってるのに何で
シールド使わなかったんだろうアッシュ…」
「リルティ、 アッシュを医務室へ。
ジェノは私が運ぶ」
草原を元の空間に戻し医務室へ運ぶよう告げるクレイド。
「は、 はい!」
リルティはクレイドと2人を医務室へと運んだ。
2時間後…。
「失礼します」
「…どうぞ」
「アッシュとジェノは医務室で治療を終え
今、 眠っております」
「では今日は、 アッシュの稽古はお休みですね」
「ええ、 その方がいいでしょう」
「クレイド」
「はい」
「ジェノがフォースエッジを使用したとか…」
「はい。 それにアッシュもスパークボルトを
…さすがマスターですね。
あんな難しいスペルをいきなり習得させるとは」
「スパークボルトですか?」
「…はい。
マスターが習得させたのではないのですか?」
「いえ…まだ格闘術を教えているだけですから…
そうですか…ではアッシュが自分で
体得したのでしょうね」
「自分でって…
あいつはまだ候補生ですよ!?
そ、 そうか! エディルオーブの影響かなんかで…」
「いえそれはありえません…。
私が取り除いたんですから」
「で、 では…」
「そうです。
正真正銘誰の力も借りずに自分だけの力で
得たのでしょう。 アッシュにしても
ジェノにしてもかなり苦労したと思います」
クレイドはマーディンの言葉を信じられなかった。
アッシュ、 ジェノが使っていたのはエレメンツのクラスBで初めて習得可能な術。
その術をまだ正式なエレメンツではない
候補生の2人が習得してしまっている
この事実と2人が戦ったあの光景は
しばらく彼の頭の中で再生し続けていく事となる。
夜を迎えた。
怪我が治った2人はすでに自分の部屋で休んでいた。
ベッドで今日の出来事を思い出すアッシュ。
「(あいつ…、 口だけじゃなかった。
それにあんな技初めて見たな…
ディックやティナと少しの間一緒にいたけど
あんな技使ってるの見たこと無かったし。 ジェノか…。
あんな気持ちになったのは久しぶりだったな…)」
そして眠りに入ろうとした時、
呼び鈴が部屋に鳴り響く。
慌てて寝室からリビングルームへ行きモニターを確認する。
「リ、 リルティ!?」
「アッシュちょっといい?」
訳もわからないまま中へ通した。
リビングの電気をつけソファーに座る。
リルティの顔を何気なく見てみたら
少し浮かない表情をしていた。
「アッシュ、 ジェノの事なんだけど…」
「ジェノがどうした?」
「うん、 あいつの言った事気にしなくていいから
でもわかってあげて欲しいんだ…」
「わかってる。 俺はもう気にしてないし!」
「あいつはまだ小さい時に魔物に家を襲われて
家族を無くした孤児なんだぁ。
ディルウィンクエイスの近くの森に倒れてるジェノを
マスターが拾ったんだって。
そっから今までエレメンツになる事だけを考えて
必死で勉強してやっと候補生に選ばれたんだ」
「(魔物…。 俺と…同じだ…)」
「アッシュが試験受けないで通ったなんて特例だからね。
でもそれはマスターに認められたんだよね? あいつ自分よりも強い奴が
出てきたもんだから焦ってやんの!
バカまるだしーみたいな!」
「なんだやけにジェノの事詳しいなリルティ。
付き合ってるのか?」
「ば、 ばぁか、 そんなんじゃないよ」
恥ずかしそうにアッシュに返すも
その口元には少し笑みが浮かんでいた。
そしてそのまま玄関へ向かうリルティ。
「アッシュ、 聞いていい?」
「ん…?」
「ジェノの技くらう時あったじゃん、
なんでシールド使わなかったの?
まだシールド張れる魔力はあったはずじゃん?」
「…わからない」
「わ、 わからないって…」
「ただ、 感じたんだ…」
アッシュは少し笑みを零した。
「アッシュもあいつとおんなじだね」
「同じって?」
「ジェノもあんたとあんな事あったのになんでか笑ってんの
さっきあいつんとこ行って来たんだけど
なんか【おもしろい】って」
アッシュはそれを聞いて俯くとまた笑みを見せる。
「あぁ、 俺もだ…」
「俺も?」
「俺もあいつと戦ってると楽しい…」
「い、 いみわかんないんだけど…
あ! もうこんな時間!!
じゃあ明日も早いからもう帰るね。」
「あぁ」
リルティが帰っていく。
リルティの背中を見つめるアッシュ。
しかし彼の瞳の中には彼女ではなく
ジェノと言う存在そして今日起こった
2人の闘いの光景が映っていた。
―俺はもっと強くなってみせる―
窓の外の夜空に目を向ける。
空は幾千の星で埋め尽くされていた。
輝く星に抱かれてアッシュは自分の胸に強く固く誓った。
そして次の日。
アッシュが目を覚ますと何やら外が騒がしい。
重たい目をこすりながら着替えを済ませ
宿舎の外へと足を運んだ。
するとリルティとクレイドが話しているのが見えた。
「…で被害状況は?」
「はい。 宿舎には負傷者は出ていません」
「お前もすぐにマスタールームへ急ぐんだ。 わかったな?」
クレイドは急いでどこかへ走って行った。
それを見ていたアッシュはとりあえず
リルティに近づいてみる。
「何かあったのか?」
「アッシュ!
もう昼だよ…って言ってる場合じゃなかった
下で魔物が出現したの!!」
「ま、 魔物!?」
「そうだよ!!
ここらへんも魔物がいたんだけどクラスCと Bの人が片づけてくれてる
あたし達もマスタールームに行って下に向かうよ!!」
「あぁ、 わかった」
「もう、 ジェノはどこいっちゃったの〜
こんな時に……!!」
2人はマスタールームに向かった。
「失礼します」
リルティが扉を開けるとマスターの姿が見当たらない。
「あれ? いない…。
クレイドさんに言われて来たのに」
「誰も…いないな」
しばらくすると足音がこっちに向かって近づいてきた。
「いたいた!!」
「ティ、 ティナ!」
「ティナさん!!」
「あんた達手を貸して!! 下が魔物でいっぱいなの!!」
「マーディン様は!?」
「マスターも下で魔物と戦って下さってる!
そんな事はいいからついて来て」
「わかった!」
ティナの案内の元下に向かうアッシュとリルティ。
3人の足音が響く。
「なぁ、 どこに向かってるんだ?」
「どこって、 あんたねぇ…」
「あたしがさっき言ったじゃん!」
「下に街あるでしょ!? ディルウィンクエイスの街
思い出した!? そこに向かうの!!」
「こっちもディルウィンクエイスだろ!?
なんかややこしいなぁ…」
「慣れよ慣れ!! 慣れるしかないわ!」
「どっち言われてるかたまにわからなくなるから
みんな 【下】とか【上】みたいに呼んでるよ!」
「ふーん…」
向かった先に見えるのは空だった。
「おい、 ちょっと待てよ!
まさかここから飛ぶのか!?」
「飛び降りたかったらどうぞー」
「そっかー、 アッシュは下りたこと無かったね…」
「そういえば、 この前もマーディン様の光の渦でワープしたみたいだし…」
3人は魔方陣が描かれている床の前で止まった。
ティナは呪文のようなものを唱えると
魔方陣が輝きだしその床が透けていった。
光は3人を包みこむと光の玉となり下降していった。
そして下に辿り着いた3人。
魔物とエレメンツ達がまさに戦っている最中であった。
「ここから分かれるわよ! いい?
まずはマスターを見つけて!
スキャンする事を忘れないで!! わかった!?」
「はい!」
アッシュは軽く頷いた。
するとティナは魔物の中を猛スピードで駆けて行った。
「すごい数だな……」
「オークとブラックバットだから
2人でも十分に倒せるはず…」
「グルルルル…」
3体のオークがこっちに気づき襲ってきた。
「アッシュ!! 後ろ!!!」
振り向くと大きな拳がアッシュの目を奪った。
シールドを張り攻撃を防ぐ。
ダメージは無かったものの吹っ飛ばされてしまう。
「アッシュ!! こんのぉ〜!」
リルティはアッシュを攻撃したオークの懐に
向かってドロップキックを繰り出した。
リルティの足が大きな腹の中にめり込む。
「グゥゥ…」
しかしリルティの細い腕を捕まえ民家の壁に
向かって投げつけた。
「きゃぁぁ!!」
崩れたレンガが砂になりリルティの頭に落ちる。
オークがそこにゆっくり近づいて行く。
下に転がっている花瓶や机を気にせず踏み壊す。
瞳の中はリルティしか映っていないらしい。
残りの2体のオークはアッシュを探している。
2体のオークは何かを嗅ぎ始めた。
どうやらアッシュの臭いを探しているようだ。
「グルルルル」
「グルルルルル…ガゥガウ!!!」
家屋の屋根で敵の様子を探っていたアッシュ。
「よし先制攻撃だ!
開け! 我が魔力の扉!!」
その瞬間、 アッシュを探していたオークの1人が
アッシュの詠唱に気づいてしまった。
「ディックのスペル…使わしてもらうぜ!!」
詠唱はとっくに完了しているがまだ魔力を
注ぎ込んでいるアッシュ。
「グルルルワァー!!!」
地面から一気にアッシュがいる屋根まで
飛び上がったオーク。
「遅い!!
くらえ! バスターフレアァァ!!!」
巨大な火炎球がオーク2体を包みこむ。
燃えさかる炎の中に巨大な影がもがいているのが見える
魔力を余分に注いだ分、 炎はしばらく燃え続けている。
これに手応えを感じるアッシュ。
「!? そうだリルティ!!」
オークの右手がリルティの首を締め付けていた。
どうやらシールドでそれ以上締め付けれなくしている。
その光景を見たアッシュが駆け寄って行く。
「やばい力が…も、 う…あたし……」
その瞬間、 リルティの首を掴んでいた手の握力が弱まった。
そして、 スッと言う音と共にオークの腕が
地面に落ちる。
「何とかまにあったな…」
【 シールド 】
あらゆる攻撃からダメージを軽減させる技法。
魔力でいくらでも強化できるが、 むやみに強化し続けると魔力が無くなり返って危険な状態
に陥る事もある。
【 フォースエッジ 】
エレメンツは基本武器は持たないが魔力で精製する事ができる。
フォースエッジは魔力で形成されている為、 刃こぼれやサビる事などとは無縁である。
剣が最もポピュラーで槍や斧、 鞭や銃まで多種多彩。
イメージと魔力で武器の種類、 強度、 技の威力が決まる為
経験と知識や想像力が大きなカギとなる。