表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ETERNAL SAGA  作者: 紫音
61/73

episode 58 守りたいもの(後編)

 「何!?」



地上から激しい輝きがティナ達を襲った。

それはこの場所、 大陸、 いや世界全土に及んだ。

見る所全てが真っ白な世界。

恐らく世界中の人々がこの現象を

体験している事だろう。

奇跡と呼ぶのか、 はたまた奇怪と呼ぶのか

それは人々がそれぞれに思う事なのだが


どちらにしろこの現象を作り出しているのは

たった一人の人物。


アッシュ・バーナムである。

彼の身に一体何が起こったのであろうか。



 「な、 なんだ!! この光は」


 「きっとアッシュよ!!

 何かする気なんだわ!!」


 「ここにいたら巻き添いを食らうかもしれねぇ!

 ここから離れるぞ!!」


 「逃げるってどっちに逃げれば

 いいんですかぁ!!」



ティナはリルティの声だけを頼りに

彼女の手を掴みグイッと自分の所へ引き寄せた。



 「あわわわ!!」


 「こっちよ!!」



リルティの手を引いてティナはその場から離れた。

そしてディックも彼女達とは別方向に飛んで行く。



 「(アッシュの奴…何する気だ?)」



そしてしばらくすると光が穏やかになっていく。

あまりの強い光を見た為に瞳はまだ正常に機能しない。

クイックフェザーで浮いてるディック達だが

バランスが上手く取れないらしく徐々に皆

地面へと下降していく。



 「(…う、 どうなった…?)


 おい!! アッシュ!!!」



地面に降りたディックは辺りに声を散らした。


少し離れた距離にいたティナとリルティが

彼の声をキャッチする。



 「あれ…ディックさんの声ですよね?」


 「そうね………あんた周り見える?」


 「見えません……

 目を開けてるのかもわかんないです…」


 「(とりあえずしばらく回復を待つしかないわね…。


 にしても一体何なの……」










数分後…。





街に被害がなかった事からどうやら成功したらしい。

視界を取り戻したディック達は合流を果たす。

そしてディルウィンクエイスがアッシュと共に

何処かへ消え去った事に気づくとすぐに辺りを探る。

スキャンはアッシュの反応は無いと答えを出すが

これがアッシュの死を断言しているとは限らない。

それは3人の表情からも伺える。

しかし彼が消えたその意味がわからない。

3人はそれぞれ推測を立ててみた。

アッシュはディルウィンクエイスを破壊したのではなく

一緒に何処かにワープした。

いくつも考えた結果これ以外には考えられなかった。


 「しっかしあいつ…

 どこ行っちまったんだぁ?」


 「どうしますか…?」


 「…探すにしても効率よく探しましょう。



 ……そうだわ、 彼女なら何か知ってるかも知れない」


 「…彼女?」


 「レリスさんの事ですよ、 ディックさん」


 「そうか、 同じヴァルファリエンなら何か

 知ってるかも知れねぇか!」


 「彼女は………よかったテリスにいるわ」


 「よし! 行ってみようぜ!」



3人はクイックフェザーで再び空へと飛んで行った。










 「………うう…。 ……く…」



それは地面に倒れたアッシュの声だった。

目を開けると力を入れて立ち上がる。



 「…………どうなったんだ…?」



周りを見渡すと少し歩いた距離に

ボロボロな残骸が横たわってあった。

しかしそれは間違いないなくディルウィンクエイスだ。


そうか。 確か自分は…。


アッシュは少しずつ思い出しながら

その残骸の前へ歩き出した。

後ろを振り返ると街が見える。

それはディルウィンクエイスの街。

アッシュが守り抜いた街だった。



 「……よかった。 何とか回避出来たんだな」



街の安全を確認した後、 ディック達を探すアッシュ。

しかし彼等の反応は無かった。



 「そっか、 街に行ったのかもな」



そのまま歩いてアッシュはディルウィンクエイスの

街に向かったのであった。










−テリス−



一方、 テリスに到着したディック達は

レリスに話を聞いている所だった。



 「………アッシュが…きえた…?」


 「何か心当たりあるかしら」


 「じゃあ、 あの光はアッシュが………。


 ごめんなさい…あたしにはわからない」


 「そう…」


 「あたしにはもう…

 スキャンする力も無いの…」


 「…どうします? この辺りにもいないって事は

 ずっと遠くに飛ばされちゃった可能性が

 あるんじゃないですか?」


 「…だな」



話を終えるとディック達はその場を立ち去ろうとする。

その後ろ姿を見ながらレリスは3人を引き止めた。



 「待って!


 アッシュが消えた場所というのは何処?」


 「ここからちょっと行った所だけど…」


 「そこに連れて行ってくれない?


 もしかしたら何かわかるかも知れない…」










−ディルウィンクエイスの街−



 「…………」



街に着いたアッシュはディック達を探していた。

スキャンに反応が無かったのでこの街にいない事が

アッシュは直ぐに把握出来た。

だが何故か納得のいかない表情を

浮かべながら街をさまよっているアッシュ。

気がつくといつの間にか街の端まで歩いて来ていたのだった。

その途中、 すれ違う人に違和感を覚える。


何かが変だ…。


それが何なのかが今のアッシュにはわからないが

明らかに“何か”がおかしかった。

アッシュは再び街の中心に向かって歩き出す。

先程はディック達に集中していたが今度は街の人々に

目を配りながら歩いて行く。


街はディルウィンクエイスの話題で溢れていた。

アッシュはその話を聞きながら街路を歩く。


『墜落する瞬間に光と共に消えた』と

誰もが皆、 口にしている。

興奮気味に奇跡だと叫ぶ人間もいたが

その人間自体がどうこうではない。


しかし脳が違和感を訴える。

日常で当たり前の様になってるからなのか

人間の…いや、 街全体の雰囲気が異様だった。

アッシュは少し警戒しながら街の入口へと戻る。



 「何だ…? 何が変なんだ?


 絶対何かがおかしいのに…」



そう考えてる内に前方から光る何かが近づいて来た。

そして地面に着地する音がいくつか散らばる。

ディック達である。



 「ディック!!」



 「この辺りで消えたんだ」


 「………」



ディックの言葉を聞きながらレリスは辺りを見回す。



 「何処行ってたんだよ皆。

 て言うか何でレリスが?」



とアッシュが話しかけたのだが…。



 「………どう? 何か感じる?」


 「……………ううん…」


 「お……おい…どうしたんだよ?」



アッシュはレリスに近寄り話しかける。

しかし返事が返って来ない。



 「こりゃあマジでやべぇな…」


 「何の手掛かりも無いですもんね…」


 「一つだけ手掛かりはあるわ。


 アッシュはあの光を使った後

 ディルウィンクエイスと一緒に消えた…」


 「もしかしたらアッシュ…


 自分の命と引き換えに…」


 「命と引き換えに何かを発動したんだとしたら

 スキャンすると必ず魔力は0として反応するのよ」


 「あぁ。

 だがアッシュの魔力はまるで消えた様な感じだ。


 存在が元々無かったかの様にな」


 「じゃあ…アッシュは生きてるんですね!!」


 「少なくとも私はそのつもりで探してるわよ」


 「おい! みんな俺が見えないのかよ!!


 おいっ!!」



アッシュは皆の前に行って言葉を飛ばすものの

無視されているかの様に誰も全く相手にしなかった。

アッシュは少し腹を立てながらディックの肩を掴み

彼に怒鳴ろうとしたのだが…



 「おいディック………え!?」



掴もうと肩に触ろうとしたのだが不思議な事に

擦り抜けてしまった。



 「な!!? 何だコレ…」



アッシュの背後からリルティが推論を

語りながら近寄って来た。

そしてリルティはアッシュの身体を擦り抜けると

少し離れた辺りに立ち止まり心遠眼とスキャンを

用い遠距離スキャンを発動させて広範囲を探る。

その彼女が今自分の身体を擦り抜けたのだ。

自分の身体を何度も触って確かめる。



 「す、 すり…抜け…た…」



街で感じた疑問はこれで解決した。

そう、 アッシュが違和感がしてならなかったもの


それは“視線”だったのだ。


街人には自分に対しての視線が全く感じられなかったのだ。

アッシュの姿は見えていない。

そして何故か触れる事が出来なくなってしまった。

あの時自分が使ったあの光…あれが原因なのだろうか。



 「(ダメだ…思い出せない。

 あの力はなんだったんだ…)」



アッシュが考えてる間もすぐそばでは

その自分を探す案が話し合われていた。

会話を聞いてる内にまたも疑問が浮かぶ。

自分の声は聞こえないのにディック達の声は

こちらに聞こえるのだ。

疑問を考えてる内に一つまた一つと考えるだけ出て来る

次々と湧き出てくる疑問の種。

かつて様々な経験をしてアッシュであったが

新たに未知な経験をしてしまった。

と、 独り言の様に零していると



 「もう……元には戻れない…」



突然、 アッシュの背後から言葉が投げ掛けられた。

そこには驚くべき人物が立っていたのだった。







 「…………?」


 「……レリス? どうした?」


 「……ううん……何でもない」


 「……そっか?


 とりあえずだ、 リルティの言った通り

 遠くに飛ばされた可能性がある。

 もしかしたらあっちに行った可能性もある」


 「あっち?」


 「もしかして【エディル】の事? ディック」


 「エディルってレリスさんの世界ですよね?」


 「うん」


 「どっちにしても何かがわかるまでこのまま待機だ。


 わかったか?」


 「了解」


 「はい」


 「………」



レリスはディック達から少し離れた所でぽつんと

座って空を見上げていた。



 「(……気のせいだよね。

 だってもう魔力が使えないんだから…。




 でも…何でだろう…。


 アッシュが近くにいる感じがする)」










 「何でお前が…!?」


 「何をそんなに驚いてる?」


 「お前はジェノに…」



アッシュの前に現れたのはなんとリーベルトだった。

戦う意を示してない所からどうやら戦闘を

しかけに現れたわけではないらしい。

彼もまたアッシュと同じくディック達には

見えていない。

だがジェノに倒されたはずのリーベルトが

何故今アッシュの目の前にいるのだろうか。



 「まさか俺は…死んだのか…?」


 「……どちらでもない。


 ここは生と死の狭間の空間」


 「……生と死の…狭間?」


 「陛下の…ディウスの最終目的…。

 それが存在の進化」


 「存在の…?」


 「ディウスはエターナルサーガを使い

 この霊的世界から無限のパワーを得ようとしているのだ」


 「側近のお前がそんなベラベラ喋ってもいいのか?」


 「もう側近ではない。

 それに知った所でここからは永久に出る事は出来ん」


 「なるほど…。 そういう事か」


 「俺は死ぬ直前ディウスから授かった力を解き放ち

 全力で自らの魂にシールドを張った。

 あのエルフモドキの超魔力と俺の超魔力がぶつかり合った。

 その結果でこうなったかは知らんが

 俺の肉体は昇化され精神体となったのだ」


 「…昇化」


 「恐らく貴様もあの超魔力を放出した結果

 昇化したのだろうな」


 「元に戻れないのか?」


 「戻れん…何故戻りたい?

 存在が進化したんだ。 何故素直に喜ばん?

 俺達は神の領域にいるんだぞ?」


 「そんなもの俺はいらない。


 俺は元に戻りたいだけだ」


 「今の俺達は誰よりも…あのディウスの力

 までも遥かに上回ってるんだぞ?

 これがどう言う事かわからんのか?」


 「………」


 「今の俺達にはディウスなど足元にも及ばん。


 もっと……いや…今はやめておこう…」


 「? 何だよ…」


 「俺達は今やるべき事をやらなくてはならん」


 「お前…何を企んでいる?」


 「アッシュバーナム…


 今までの常識を捨てて俺に意識を向けろ。


 俺の魂の流れを感じ取れ」


 「………………!!!!!?




 そんな……」


 「やっと気づいたか。


 ふっ、 まぁもっとも俺もこうなってみて

 初めて気づいたんだがな」


 「……じゃあお前は…」


 「……そう……」









 俺も、 貴様と同じ





 アッシュバーナムのレプリカだ…








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気に入っていただけた方、よろしければ投票して下さい!!(月1回) [気に入った!!!]
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ