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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
60/73

episode 57 守りたいもの(前編)

ディルウィンクエイス。


もはやここにはかつての美しい景色は無く

浮かんでいるだけの島と化したこの地を

もう誰もそう呼ぶ事もなくなるだろう。

ディルウィンクエイスは歴史から消える運命を

辿りつつあるのだ。

そしてこのハウスのエレメンツ半数以上が

皆死んで行った。


アッシュ、 ディック、 ティナにリルティ

再びこの地に訪れたディルウィンクエイスの

エレメンツ達は僅か4人だけであった。

もちろんそれでも生き残ったエレメンツ達もいた

しかしグランベルクの絶大なる力

その皇帝ディウスの存在に恐怖した者達は

アッシュ達の呼びかけを拒否するのだった。


無理もない。


きっとそれが正常な人間の反応なのだろう。



 「やっぱり……誰も来ませんね…」


 「こうなる事はわかってたんだリルティ。

 そう落ち込むなよ」


 「…ディックさん」


 「私達だけでやりましょう」


 「だな! さっさとあのチビをぶっ倒して

 本当の平和を手に入れようぜ!!」


 「………」



とディックがティナとリルティに話をしている時

アッシュは一人空いた地面から地上を眺めていた。

所々に空いたこの穴もグランベルクとの戦いによって

出来たもの。

そして、 その1割でも自分の手によって

破壊されたヵ所がいくつかある。

そんな事を思いながらアッシュはある異変に気づいて

しまう事になった。



 「……なぁ、 何か……やばくないか?」


 「やばいって何が? アッシュ」


 「…街がさぁ、 何か近くなってる気が…」


 「………!?」



ティナはその言葉の意味がわかった。

ディルウィンクエイスは地上に向けて段々

高度が下がっていた。

それは墜落を意味する。



 「ディルウィンクエイスの浮遊力が

 消えかかってるわ!

 このままだと下の街にぶつかる!!」


 「そりゃやべぇじゃねーかぁ!!

 ぶつかるってレベルの話じゃねーだろ!


 街そのものが潰れちまう!!」


 「な、 何か方法はないんですかぁ!!」


 「今ならまだここをぶっ飛ばせば下に

 影響はないはずだ! 多分…」


 「問題は大きいって事ね…スペルを使っても

 時間がかかりすぎるわ」


 「そうだ! アッシュ!!

 おめぇスーパースペル使えたよな!

 あれで何とかならねぇか!?」


 「スーパースペルは対象に生命反応がないと

 ロック出来ないんだよ」


 「じゃあダメだね…」


 「誰かが的になってくれれば…」



そう言いながらアッシュはディックを見た。



 「ば、 ばかやろ!!

 こんな時に冗談言ってる場合か!!」


 「そうよ! それしか無いわ!!

 ディックお願い!!」


 「お、 おい何言ってんだよ!!

 スーパースペルだぞ!?

 ただのスペルじゃねぇんだぞ!!!」


 「馬鹿ね、 わかってるわよ!


 私が何の考えも無しで言うと思った!?


 いいから早く準備して!!」


 「……まじかよ。


 あぁーもーこうなったらやってやるよぉ!!」



ディックはギガドライヴを身に纏い

シールドに全ての魔力を集中させた。



 「アッシュー!! 早くぶちかましてこぉぉい!!」


 「あ、 あのさティナ…。 さっきのは冗談で…その…」


 「もう迷ってる時間なんてないの!

 早く行って!」


 「わ、 わかった」


 「アッシュ!


 中途半端はダメよ」


 「あぁ……スーパースペルは手加減できないから」



アッシュはアーディライズを発動し翼を広げて

ディルウィンクエイスから離れていく。



 「リルティ! 私達も離れるわよ!!」



クイックフェザーを唱えティナが空へと飛んで行く。

リルティもその後を追いかける。



 「だ、 大丈夫なんですか!?」


 「大丈夫かどうかは私達にかかってる!」


 「え?」


 「いい? 今から言う通りに魔力を練って」



ティナは何かをリルティに手ほどきしている。

巨大な島はそんな時も下の街に近づいて行く。

この中心にディックがシールド全開で一人

立っていた。



 「ティナさぁん…自信ないです…。

 だって…」


 「言い訳は後! いいから準備して!!」



アッシュがスーパースペルの詠唱に入った。



 「アドーラ・バ・シール・ラム・ア・デルス

ドラアドーレア・ラァム・アデールシス…」



4枚の翼をピタっと広げ異次元から魔力を集める

薄紫の眩しい光がその両手に束ねられ

そこから波の様に衝撃波が乱れ散る。



 「第六天界の守護者レミアルよ

 我が魂の導きに答え給え…」



そしてアッシュはディックに向けてその超高密度の

エネルギーを解き放った。



 「アデルヴァァストラム!!」



両手に集まった光がフラッシュを起こすと

次の瞬間、 無数の光の矢となって発射された。

スーパースペルはその絶大な威力がある為に

予め対象の周りにシールドが自動的に

形成されるのだがそれではディルウィンクエイスを

破壊する事は出来なくなる。

アッシュが今放ったスーパースペルには

その機能を意図的に解除したものであった。

しかしそれではいくらディックがギガドライヴし

シールドを高めていると言っても防ぎきれない。

そこでティナ達の出番と言うわけなのだが。



 「イル・ダーハ・ナジャーハ

 マカ・ハ・スーヤ・イルダー


 我が身を守る鎧と成れ太陽の守神もりがみ


 いでよ ジェーダ」



宙に魔方陣を形成してティナが放ったのは

マテリアルフォースだった。

次元の穴から炎の塊がぬるっと出て来たかと

思えば一気に炎が飛び散り中から鉄の巨人が

姿を現した。

そしてティナが手を掲げると巨人はディックの

前に行きスーパースペルを何とかシールドで

防いでいる彼に壁を作った。

そして巨人は自らの姿を盾に変える。



 「リルティ、 今よ!!」


 「は、 はい!!





 イル・ダーハ・ナジャーハ

 マカ・ハ・スーヤ・イルダー」



なんとリルティもティナと同じ詠唱を唱えた。

マテリアルフォースはその住人と契約を

果たさなければ呼び出す事は出来ない。

契約はおろかマテリアルフォース自体使った事が

ないリルティに果たして可能なのであろうか。

しかしティナには考えがあった。



 「(私の魔力の波形を真似て発動すれば…


 いけるはず…)」


 「我が身を守る鎧と成れ太陽の守神


 いでよ ジェーダ」



リルティはティナの作る魔方陣に向けて

魔力を放った。

するともう1対、 同じ巨人が現れた。

それと同時にリルティの身体に異変が生じた。


 「あ……あ…ぐぐ…ティ…ナさ…ん」


 「リルティ!!」



リルティの魔力が物凄い速度で奪われて行く。

このままだと暴走してしまうと判断したティナは

召喚している最中だと言うのに自分の魔力を

リルティに流し始めたのだった。

少しずつリルティの魔力消費が緩やかになっていく。



 「しっかり…しなさい!!

 早くディックの…所まで」


 「そんな事したらティナさんが!?」


 「いいから早くして!! 暴走させたいの!?」


 「は、 はいぃぃ!!」



リルティは巨人を操り盾に変形させて

ディックの後ろへと着けた。

彼にかかるダメージが一気に軽減されていく。


 「……あいつら」



アッシュのスペルがディルウィンクエイスを

容赦なく破壊していく。

それにしてもとてつもない威力だ。

命中した物体は粉々と言うより完全に

消滅しているのだから、 かするだけでも

致命傷は避けられないだろう。

2人が召喚した巨人ジェーダに守られているとは言え

やはりスーパースペルの威力は絶大だ。

ダメージは軽減されたはずのディックのシールドが

もたなくなってきている。

シールドを突き抜けて魔力の線が身体に接触する

それだけで焼かれる様に激しく痛む。



 「うぐ……が…あっ…くそ…やべぇ…ぜ…」



一方、 空で巨人を操るティナ達も

既に限界が来ていた。

リルティの魔力は尽き果ててしまい

今2つの巨人を支えているのはティナだった。

そのティナも魔力が無くなろうとしている。



 「だ…駄目…もう限界…みたい…。


 ジェーダが……暴走してしまう」



そしてティナの魔力は尽き果ててしまった。

盾となりディックを守っていた巨人達が

ゆっくりと動き出した。

それはもうティナ達の支配下には無い事を表している。



 「…ティナさん!!」


 「…はぁ…はぁ……はぁはぁ」



盾の状態から元に戻った巨人は目の前のディックに

身体を向けた。



 「な、 何だよおい。

 何でこっち見んだよ…」



巨人の目が鈍く光るとまたゆっくりと両腕を上げた。



 「え……ちょ…ままま待て待て!!


 


 おぉぉぉい! おめぇら何やってんだよぉぉ!!」



巨人は勢いよくディックに向けて振り下ろす。

逃げる事も出来ないこんな状態で

巨大な鉄の塊が上から降って来るのだ。

万事休すと言った表情できつく目を閉じたディック。





だが…。








 「あ……れ…?」



ディックに当たる寸前で巨人の動きが止まった。

それを空からも確認したティナとリルティ。



 「ティナさん…何で?」


 「暴走していた巨人がいきなり止まるなんて…」


 「あ…あれ…? ティナさん…魔力…が」


 「ティナァァ!! リルティィィ!!」



向こうの空にいたアッシュがこちらに向かって

叫んでいる。

彼はスペルを放ちながら声を飛ばしていた。



 「2人に魔力を送ったから!!


 早くあれを何とかしてくれぇ!!」


 「アッシュー!!」


 「聞いたでしょ? やるわよ!!」


ティナとリルティは再び魔力を巨人に繋いだ。



 「リルティはあれを戻して

 後は私が何とかやって見せるから」


 「…でもディックさんが…」


 「ディックにバリアオーブと

 クイックフェザーをかけて

 安全な所に避難させるの」


魔力をコントロールしてリルティの操る巨人を

無事に戻すと心術を唱え始めた。

魔双心を発動するとディックにスペルをかける。


 「開け! 我が魔双の扉!!


 バリア・クイック!」



リルティが発動したのを確認すると

ティナはアッシュに向かって叫んだ。


 「アッシュ!!

 目標をあの巨人に合わせて!!」


 「…………ダメだ。 出来ない…」


 「アッシュー! 聞こえてないのぉ!?」


 「ダメなんだよー!!


 何回やってディックから外れないんだ!」



アッシュのスペルによりディルウィンクエイスの

規模はかなり縮小された。 だがそれでも

まだ地上の街が安全になったわけではない。

そして残り1000メートルを切った



 「…何も思いつかないわ…。

 どうしたらいいのよ…」


 「ディックさんにスペルをかけました!

 ティナさん! ティナさん…?」


 「(悩んでる時間なんてない…

 これが駄目なら他に手はないの?

 きっとあるはずだわ…きっと何か…)」



残り500メートルを切ろうとしていた。

薄紫の光が今も尚ディック目掛けて

無数に放たれている。

バリアオーブのおかげでとりあえずは

防げている状態でも、 もう時間が無い。

既に街が目視できる地点まで

差し掛かっている。

このままでは危険だと思ったアッシュは

いきなりスペルを解いて急降下を行った。



 「ちょ、 ちょっとアッシュー!!

 何するつもりなのー!!

 まだ完全に破壊できてないでしょー!?」



ティナの言葉に返事を返している時間はない。

アッシュはそのまま街まで降りて行ったのだった。

街の真上へと降りて来ると再び全身に力を込めて

魔力を高めた。



 「絶対に街を守るんだ!!」


この街はアッシュにとって特別だった。

それはティナやリルティにとっても特別。

だが彼の想いは恐らくこの2人よりも

強いのだろう。


初めてこの街を訪れた頃のアッシュは

自分の復讐の為だけにエレメンツを利用していた。

そんな考えを一新して新しい理由を与えてくれたのも

この街だった。

エレメンツになるきっかけを与えてくれた街。

そして幸せに満ちた笑顔が溢れる街。

アッシュはこの街に暮らす人々が大好きだった。


この街はどんな事があっても絶対に守る。


エレメンツとして歩み始めた時から

そう心に決めていた。



 「はぁぁぁぁぁ~!!!!」



アッシュの中のアーディルが鼓動を打つ様に

共鳴し始めた。


心臓の鼓動…


彼の中で何かが変わろうとしている。



 「(俺は自分を無くした…

 そして村を無くした…家族も…

 仲間も沢山無くした…。


 この街まで無くしたら…俺は…



 俺は… 






 俺は俺を絶対に許さない!!)」



上空でティナ達が急いでアッシュの元へと

向かって降りて来てはいるものの

その下にあるディルウィンクエイスですら

追い越せない。

残り100メートルを切った。



 「もうだめぇぇ!! 間に合わないよぉぉ!!」


 「アッシュに頼るしかねぇ!!」


 「(アッシュ、 お願い!!)」











 「俺の中に眠るアースの力よ!!


 目覚めろぉぉぉぉぉ!!!!!!」



アッシュは全身からアーディルを解き放ち

ディルウィンクエイスに向かって飛んで行った。



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