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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
59/73

episode 56 想いは心の中で

そこは遥か地下深くにある巨大な鋼鉄要塞。



普通の要塞とは違っていた。

船のようにも見えるその独特な形状から

移動出来るように造られたのか

ただ現在の技術で造られたものではなく

古代の産物と言う事は容易に想像出来る。


その要塞の前に3つの影が並んでいた。



 「やっと見つけた…これが…あの」


 「神魔人大戦時代に使われていた伝説の要塞艦ね…」


 「ふふふ…ヴィーゼ、 シェイルよくやったよ!

 さぁ、 今日からこれが僕達の城だ」



ディウスは身体をふわっと浮かせ要塞の周りを

ゆっくりと回り始めた。

その様子を目で追うヴィーゼとシェイル。



 「いいの? ヴィーゼ」


 「…アッシュがアース神の力を引き出す時間を

 作る為だ…やむを得ん…」


 「それにしても…こんなものが地下にあったなんて」


 「これもあのデータベースにあった情報だ」


 「シグナスの?」


 「あぁ…」


 「でもよくあいつが食いつくと思ったわねぇ」


 「まあな…おかげで何日か時間稼ぎが出来た」



と、 話をする2人の元へと帰って来たディウス。

腕を組んで何かを考えながら地面にゆっくりと

着地した。



 「これ……どうやって中に入るの」


 「…さあな…わかっているのは場所のみだ」


実はヴィーゼはその術を知っていた。

これも全てアッシュに時間を作る為の行い。



 「……じゃあ2人共、 中の入り方を見つけて」


 「………」



中に入る手段など普通に探していては

決して見つからない。

何故なら中に続く扉は全く見当たらなく

壁の一部が透けて入れると言うものでもないからだ。

しかしヴィーゼは方法を知っている。

その情報をいつ、 ディウスに渡すか

調べるふりをしてはちらっとディウスを見る。



 「(この調子だと3日はいけそうだな…)」










−エルザード−

タムリル



浮遊国エルザード。

その東にある街タムリル。

ここは一般のエルフが暮らす風の街。

風車が所々に設けられクルクルと回るそれを

見ながら街を歩いていくリルティ。



 「風の街タムリルかぁ…」


 「よっ、 よっ、 …っと


 素朴だろ?」



バランスを取りながら街案内の看板の上を

歩いているノア。

ここへはリルティの気を晴らす為に

ノアが連れて来たのだった。

初めはリルティも乗り気ではなかったが

何度も説得されてやむを得ずと言った感じで来た彼女。

だが街の景色を見るとスッと何か肩の力が抜けた

感覚がして実に気持ちが洗われる。

無理もない。

ずっと窓のない部屋でジェノの側にいたのだから。



 「のどかな街だね」


 「ま、 エルザードの東は農家が多いからね。

 オイラはファーラルの方が好きだけど」


 「ファーラル?」


 「西にある街さ。

 こことは正反対の賑やかな街。

 興味があったら今度連れてくけど」


 「賑やかなのもいいけどね…」


 「…………」


 「………」


 「……よっ、 …っと」



看板からジャンプしてリルティの前へ着地したノアは

彼女の元気ない瞳を見ると話しかけてみる。


しかし理由は知っている。



 「考え事…?」


 「え? ……何で?」


 「ずっとそんな感じだから…

 君ってわかりやすいよ」


 「…へへへ、 そお…?」


 「少しは気持ちが晴れるんじゃないかと思って

 君を連れて来たんだけど返って逆効果だったかな…」


 「そんな……そんな事ないよ」


 「…戻っていいよ。 あそこの方がまだマシだった」


 「…ノア………あたしは…」



リルティが話すその途中に一人のエルフが走りながら

こちらに向かって来る。

慌てた表情で何度もノアを呼ぶ。



 「あれ? あの格好は」


 「うん、 マナフォビッドのエレメンツだ。

 何かあったのかな…。


 何かあったのかー!?」



マナフォビッドのエレメンツは息を整えながら

2人に話し始めた。



 「こんな所まで来ていたのかお前達…はぁはぁ」


 「何かあったんですか?」


 「はぁはぁ…ジェノ様が……ジェノ様が」


 「ジェノが!? ジェノがどうしたんですか!?」


 「いいから落ち着いて話して」


 「ジェノ様が……




 意識を取り戻された」



その言葉を彼女はどれだけ待った事だろう。

ノアと共に急いで向かう事にするリルティ。

ここまで歩いて来た2人だったが帰りは

クイックフェザーを惜しみなく発動させる。



 「これがクイックフェザーか……」


 「あたしがコントロールするからじっとしててよ!」


 「うんわかっ……うわわわ〜」



白い翼を広げて空高く舞い上がると

一気にスピードを上げてハウスへと飛び立つ。

あっという間にハウスとの距離が縮まっていく。

そんな中、 リルティの涙ぐむ表情を横から見るノア。



 「(ほんと君って……わかりやすいんだな)」









−マナフォビッド−

リザレクションルーム



 「ジェノ!!」



リルティが部屋のドアを開けて入って来た。

ジェノはカプセルからベッドへと移されていたのだが

状態は変わってはいなかった。

いや眠っているだけなのだろうか。

リルティが少しずつ歩み寄って行く。



 「ジェノ……」



側まで来ると手にそっと触れる。

そして両手でしっかりと握ってもう一度

彼の名を呼んでみた。

しかし返事は返って来ない。

リルティは握った手に顔を寄せて祈る様に心の中で

何度も呼び続けた。

思えばジェノにしっかりと触れた事がない彼女は

こんな状況でもそんな事を胸に秘めながら

ジェノの手を噛み締めるように握って確かめる。

出来ればこんな状態ではない時に触れたかったと

そう思いながらゆっくりと瞼を閉じた。

押し出される涙が手に落ちた。



 「………ん」


 「…! ジェノ…


 ジェノ!!」



ピクッと動いたのが伝わって来た。

ジェノがゆっくりと目を開けると

側にいる彼女に向けてこう告げた。



 「……うるせぇな…静かにしろよ…」


 「ジェノォォ〜!!!!」



ジェノの顔を見るとぎゅっと胸が締め付けられる

そんな感覚がしてならないリルティは

思わず寝ているジェノを抱きしめてしまった。



 「…ってぇよ……やめろ…ば…かが…」


 「……あ、 ご、 ごめん!」



ジェノは自分の周りをゆっくりと見渡すと

ルシアやディアナなどエルフ達に

囲まれている事に気づきフッと軽く笑った。



 「俺様は見せもんか…」


 「ジェノ様、 よくぞ頑張って下さいました」


 「てめぇ…ルシアだったな。


 どうなった?」



リーベルトとの戦いで重傷であった事

ディック達に運ばれた事

そして今までリルティがずっと見守り続けていた事を

丁寧に語っていくルシア。



 「…………」


 「や、 やめて下さい!

  あた、 あたしはただ…ジェノ…が」


 「こいつと2人にしてくれないか?」



丁寧に礼を済ませると言われるがまま

ルシアは他のエルフを連れて部屋を出て行く。

ジェノがした行動が気になって仕方がないリルティは

半分期待しつつも、 彼が次に何を口にするのか

不安や恐怖も同時に抱く。



 「リル…」


 「え、 うん…」


 「すまなかった…」


 「ううん! いいよそんなの!!」


 「行って……いいぞ」


 「…え?」


 「俺様はもう大丈夫だ……。

 早くディックさん達のとこに帰れ」


 「うん、 でもジェノと一緒…」


 「一緒にはいられねぇんだ…

 俺様はエルフになっちまったんだよ

 もうあそこにも戻る事も…ねぇ」


 「ジェノ…そんな…」


 「ディウスがまだ生きてんだろうが。

 早く帰ってディックさんやティナさん達を

 助けてやれよ」


 「何で一緒にいちゃダメなの…あたし…

 ジェノの事…」



話を終える前にジェノが話を返す。

リルティが言わんとしている事はわかっていた。

わかりすぎる程に。 だからジェノは敢えて

激しい言葉を投げかけるのだった。



 「………っるせぇんだよ……

 うじうじ言いやがって

 てめぇはそれでもエレメンツか? あぁ!?

 はっきり言わねぇとわかんねぇんだったら

 言ってやるからよく聞けよばかが


 てめぇに見守られてると鳥肌が立つんだよ!

 ろくに飯も食わねぇーでお祈りだぁ?


 一々付き纏いやがって!

 めんどくせぇ女だなてめぇは!!」


 「!?」


 「てめぇの顔なんざ見たくねぇんだよ!

 さっさと帰れ、 そんで二度とここに来るんじゃねぇ!!」


 「そこまで言う事ないだろ!!」



そこへ勢いよく部屋の扉を開けたのは他でもない

ノアだった。

怒りが込み上げ、 エルフの王となったジェノ

と言う事をすっかり忘れてしまっている。

そんな口ぶりだった。



 「何だてめぇは」


 「あんたを想って彼女はずっとここで

 座ってあんたを見ていたんだよ!

 その気持ちがわからないのかあんたは!

 エルフのオイラにわかって」


 「ノアやめて…!」


 「こんな奴、 王でも何でも無いよ。

 そうさ、 あんたは人間でもエルフでもない

 あんたはただの臆病者なんだ」


 「んだと…

 俺様が動けないのをいい事に調子に乗りやがって

 回復したらぶっ殺してやるから待っとけ」


 「殺したければ殺したらいいよ。

 でも臆病者だと言う事には変わりはないね。

 あんたは怖いのさ!


 自分の力で守りきる自信がないんだよ!」


 「……て…ぇんめぇぇぇ〜!!!」



 「もうやめてぇぇぇぇぇぇ!!!!!」










部屋中にリルティが泣き叫ぶ声が響き渡る。

2人共その声を聞いて一先ず沈黙する。

暫くするとリルティは力無い声でジェノに

こう告げた。



 「わかったよ…。 もう来ないから…

 だからもうやめてよ…」


 「……リルティ、 だってそれじゃあ…」


 「もういいの。 

 今まで知りたかったジェノの気持ちも

 やっと知れたんだしね……」


 「………」



リルティは涙を拭いながら部屋の扉に向かって行く。



 「でもねジェノ………。


 そんな事言われても変わらないよ…



 あたし……バカだからさ…」



リルティは一言言い残してその場を去った。

それと同時にジェノも身体を横に向ける。



 「あんた……何でそうまでして本心を隠すんだよ。

 何でリルティに言ってやらないんだよ」


 「(……何でって……




 そんなの決まってんだろうが…)」










あいつの事が死ぬ程







好きなんだよ



お久しぶりです。

今回と前回で恋愛系な回となったわけですが

アッシュ、ディック、ジェノと3タイプの恋愛の形?を作ってみました。


さて、そろそろエターナルも最終回に近づいて来ました。

今月から暇があればちょくちょくUPしていけると思うので

どうかよろしくお願いします

m(__)m



あとかなり放置していたにもかかわらず

読んで下さっていた方

心より感謝致します。

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