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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
57/73

episode 54 生かされた命


クイックフェザーで島を離れたディック達は

ジェノの魔力の急激なる変化に一度羽を止めた。

ゼアが放っていた台風の様な荒々しい魔力と同じ

いや、 それ以上の魔力がビシビシと

ディック達に伝わって来る。



 「ジェ…ノか? こ、 この魔力は…」


 「す、 すご…い…わ…」


 「………そんなにすごいんですかぁ…?

 あたしのスキャンじゃ……すごいのかもわからない…」


 「私だってちゃんとはわからないわ…。

 でも……10キロぐらい離れてる私達の所まで

 届いてるのよ?」


 「それだけじゃねぇぜ…ティナ…


 ジェノの魔力の波形が以前とは全く違う形を

 してやがんだよ…。

 言ってみりゃ別人になったみてぇなもんだ…」


 「あ!!


 もしかしてジェノ、 エルフの力を…」


 『エ、 エルフ!?』 


ディックとティナは声を揃えてリルティに叫んだ。

リルティは2人の大声にビクッと身体を揺らした。



 「ど、 どう言う事!?」


 「あいつまさかエルフだったのかぁ!!?」


 「あ、 あれ…?

 2人は知らなかったんですか?

 ジェノの事は前に提出したスキャンオーブに

 映ってると思うんですけど…」


 「立て続けに色んな事があったからなぁ…

 全然チェックしてねぇ…」


 「そうね。

 アッシュの事に気を取られていたのもあって

 目を通す程度にしか見てなかったから。


 でもまさかジェノがエルフだったなんて…」


 「正確には

 エルフの血を引いてるって事らしいんですけどぉ…」


 「…………!?





 おめぇら魔力を抑えろ!!」



いきなり2人にそう言ったディックは

遠くの空を焦った顔で見ていると

しばらくして遠くの方に光が物凄い速さで横切った。

ティナもリルティもその光の正体はすぐにわかった。



 「ディウス…」


 「何処かに…向かってるわよ…」


 「…ジェノ達の所じゃない…何処に行くんだろ…」


 「な、 なんて威圧感…だ…。

 こんなに離れてるってのによ…」


 「ディ、 ディックさん!

 まさかアッシュ…ディウスに…」


 「んなわけねぇだろ!!」



スキャンを広範囲に広げると

アッシュの魔力を探るディック

ここからすぐ近くの辺りからアッシュの反応を

見つけるが、 その周りに他の魔力の反応があった。



 「ほらみろ! アッシュが簡単にやられるわけねぇ!」


 「この2つの魔力………。 誰…?」


 「…なんとなく感じた事のある魔力なんだけどな…


 わかんねぇ…」


 「レリスさんじゃないんですか…?」


 「いや、 違う…」


 「行って確かめるしかないわね…」



3人はアッシュの反応がある森へと急いだ。










−バリオン北の孤島−




2つの光がフラッシュの如く辺りに飛び交っていた。

ジェノとリーベルトがぶつかり合う度に

衝撃波が発生し、 その波で周りの岩などが砕け散る。

2人は戦いの場を空へと移し

激闘を繰り広げていたのだった。



 「…なるほど、 確かにパワーアップしたようだな」


 「うらぁ!!」



ジェノは斧をぶん投げてオーラアックスを放つ。

このオーラアックス、 通常は一つの斧を

2つに分けて放つ技なのだが

今では片手でそれを熟す。

確かにパワーアップしたが相手はディウスの

力を持つリーベルト。

彼から見ればオーラアックスなどハエの様な存在。

真っ向から飛んで来るオーラアックスを

握った刀で難無く弾き消した。

ちょうどリーベルトの行動と同時に

ジェノが飛び込んで行く。

リーベルトはジェノが飛び込んで来るのを

察知した時は既に懐に入られていた。



 「!!?」


 「うるるぁぁぁ!!!!」



ジェノは魔力を込めた拳でリーベルトの腹に打ち込んだ。

強く輝いたそのオーラを纏った拳は

なんとリーベルトの腹を貫いてしまったのだ。



 「がはっ…な…なん…だと…」



体勢が崩れたリーベルトの後頭部を

組んだ両拳で打ち落とした。

そしてそのまま地面へと落下していくリーベルトを

追いかけながらスペルを放つ。



 「開けぇ! 我が魔力の扉ぁ!!



 クロストルネェェェドォォォ!!!」



ジェノの放った2つの巨大な竜巻が頭から落ちる

リーベルトの下方から発生した。

そして勢いよく上空へ上昇しながら

リーベルトの身体は切り刻まれて行く。

それぞれが異なる回転をする2つの竜巻の狭間で

ゴミの様に掻き回されているリーベルト。

そしてたった今地面に着地したジェノは

その様子を目に映した。



 「……あんな奴に……クレイドさんが…!

……くそっ!!!」



と、 ジェノのスペルをくらっていたリーベルトが竜巻を打ち破りこちらに向かってきた。



 「ギガスパーク」



今度はリーベルトのスペルがジェノを襲う。

リーベルトの全身から広範囲に渡って激しい電撃が飛び出して行く。

もちろんそれを黙って見ているジェノではない。

相手の行動は既に予測していたのだ。

ジェノはバリアオーブを唱え、 今頭上から

フォースエッジを振り下ろそうとしていた。



 「うるるるぁぁぁ!!!!」


「!?



 ぐがっ…」



続けて第二撃目を繰り出そうとするもそれは回避された。

さらにリーベルトはそのついでにジェノの側面から

蹴りを放つと直ぐさまもう一撃を顔面に浴びせた。



「ぐぁ…」



一瞬だけ怯んだジェノの隙を見て背後を取ると

フォースエッジを素早く出してジェノの背中を突き刺した。



「がぁぁ!!


……ぐ…て、 めぇ…」



貫かれた腹から見える刃に目をやると

横にある顔を睨むジェノ。

リーベルトはぐいぐいと刀を回しながら冷静に話した。



「……なるほど。


確かに以前よりも遥かに魔力が増しているな。


だが、 俺の相手ではなかった」


 「…あ……く…こん…な

 攻撃で…俺…様が死ぬ…とでも…?」



そうニヤリと薄ら笑いを零した後

一気に魔力を振り絞るとジェノは

自分のシャドウコピーを作り出し、 リーベルトの背後に出現させた。

そしてさらにコピーはリーベルトの右肩にフォースエッジをねじり込ませた。

刃は斜めに入り丁度胸の真ん中辺りで止まっている。



「がふっ…!!」


「へ、 へへ…へ…。

 …おいどうし…た?

力が弱まって…来て…るじ…ゃねぇか…?」



リーベルトの力が弱まって来ている。

今なら刺さっているこの刀をどうにか出来そうだ。


そう考えたジェノは頭を後ろに振って

後頭部をリーベルトの顔面に打ち付けると

案の定刀から手を離したその隙をついて

刀を引き抜いた。



 「…痛……ってぇ…な」



引き抜いた刀を投げ捨てるとシャドウコピーに指示を出す。



 「あ…あが…あ…ぁ」


 「まさか…こんな…んで死ぬなんて

 言わ…ねよなぁ…」


 「ぐぅ…なん…だ…これ…は…」


 「へへ…、 エルフの…力だよバカが」


 「エルフ……まさ…か…ここ…まで…」


 「てめぇ…にはな…もう…少しじわじわ…と

 時間かけて殺し…てやりたかったが…

 俺様もそん…な余…裕はねんだ…よ」



すると右手をかざすジェノ。

それはシャドウコピーにとどめを命じるものだった。

コピーは魔力を込めてリーベルトの

身体にねじ込まれた斧を下へと斬り下ろす。



 「お……俺……には…陛…下のち…ちか

ら…が宿っ……て…る……

 そ…う簡…単…に…死……ぬはず…が…な」


 「あぁ…だから…復活しね…ぇ様に…



 こ…粉々に吹っ飛ばしてやんだよぉぉぉ!!!」



ジェノの叫び声と一緒にコピーは

自らの身体を熱エネルギーに変えて

リーベルトの身体へと流れ込んで行く。

そして斬り込んだ傷口が眩しく光を放ち始めると

リーベルトの身体が一気に膨れ上がり

大爆発を起こした。

近くのジェノはその爆風に耐え切れず

飛ばされてしまうがバリアオーブがまだ辛うじて

効果を発揮している為、 ダメージを受けずに済んだ。



 「…あの…やろ…う…まさか…マジで…

 死んだの…か…」



間もなくしてバリアオーブの効果が消えると

ジェノは膝をついて改めて傷口を確認する。

血はダラダラと流れ出ていき

意識がもうろうとしていく。



 「……ちっ……やばく…なってきや…がった…ぜ


 ……まだ…死ぬ…わけ…には…」



そして段々と身体の自由がきかなくなり

その場に倒れてしまった。

僅かに開いている瞳に映るのは先程の爆発で

えぐられた地面、 ジェノの脳はその地面に

様々映像を映し出した。



 「や…べぇ…


 昔……記…憶…が………。



 遅れ…て…来…て…おいて…俺様…は



 ここで…死………ぬの……か…」



ジェノはゆっくりと瞳を閉じた。

と言うよりも目を開ける力が無くなったと

言うべきだろうか。

何かを言いたかったのか、 口を動かしたのを

最後にジェノの動きは止まった。



 「(……リ…………ル………)」







一方その頃アッシュ達は



ヴィーゼとシェイルを前にして何かを

話をしているアッシュ。

少し表情を濁しながら自分の髪を掴む。

しかし苛立ちを隠し切れてはいなかった。



 「じゃあさっきのはディウスに信じ込ませる為に

 やったって言うのかよ」


 「うふっ、 そうよ」



アッシュとは裏腹にシェイルは満面の笑みで

それに答えて見せる。



 「言っただろ。 我々の目的は…」


 「あぁわかってるよ!! けど何も殴る事ないだろ」


 「ああでもせんとディウスに気づかれると思ったからだ」


 「……それで、 これからどうするんだよ」


 「我々は奴の所へ向かい、 暫く様子を見るつもりだ」


 「…大丈夫なのか?」


 「あらぁ心配してくれてるの?」


 「………」


 「むしろ行動がわかる所にいた方が安全だ」


 「まぁ…それは…」



3人の話が一通り終わった頃

調度レリスが意識を取り戻した。



 「う……ん……ん…」


 「!? レリス!!」



アッシュは駆け寄り彼女の背中を支えながら

ゆっくりと起こした。

と同時に身体に異常がないか肉眼で確かめる。



 「大丈夫か! レリス」


 「アッシュ……よかった…無事だったんだね」


 「それはこっちの台詞だよ!

 大丈夫なのか!?」



アッシュに支えられレリスはゆっくりと立ち上がると

綺麗な笑顔をアッシュへ返した。

それは私は大丈夫だと言う事なのだろう。

そんな2人を遠目で見るヴィーゼとシェイルは

クイックフェザーを発動させた所だった。

それに気づいたアッシュはレリスと共に駆け寄り

話しかける。



 「行くのか?」


 「あぁ」


 「俺達は…」


 「逃げたとでも言っとくわ☆」


 「アッシュ。

 次に会う時には既に奴はエターナルサーガを

 発動できる段階にあるだろう。


 それまでにはまだかなり時間がある。

 時が来るまであの力を早くコントロール

 出来るようになっておく事だな」


 「あの力?」


 「アース神の力だ」



そう一言残すとヴィーゼとシェイルは

空へと消えて行った。

森はまた静寂に返る。

つい何時間か前にこの場所で闘いが行われていたとは

思えない程、 辺りは静かだった。

微かに流れる風に揺れる木の葉達。

その森の中にアッシュとレリスがぽつんと

立っている。



 「あれ……」


 「ん? どうした?」


 「あたし…確かディウスに…アーディルを…」



そう、 レリスはディウスにアーディルを

抜かれてしまった。

普通ならばヴァルファリエンは生きてはいない。

だがレリスは生きている。

やはりこれは『あいつ』の言った通りの事なのだろうか。

アッシュの脳裏にあの言葉が甦る。



 「(生かしてやった…か…。

 あいつの言葉は…本当だったのか…)」


 「アッシュ?」


 「……え? ああ…ディウスだ。

 どうやらあいつのおかげらしい…」


 「…そう…なんだ…。

 でも何でそんな事を…」


 「あいつは全てを手に入れて浮かれてたんだろな。

 “お礼”とか言ってたしな」


 「…でもアッシュ…あたし…もう戦えないよ…。

 魔力が消えてる…」



確かにレリスから一切魔力を感じない。

ヴァルファリエンはアーディルを無くすと

魔力まで奪われてしまうのか。

いやヴァルファリエンはその時点で生きてはいない為

今レリスに起こっている事が異常なのか

区別はできない。

しかしアッシュはアーディル無しでも

魔力を扱う事はできる。

これはどういう事なのだろうか。

そんな事を今考えても仕方がない。

それよりも今はレリスがまだ生きていると言う

事実だけでアッシュには十分だった。



 「戦えなくたっていいさ…。


 レリスが生きてるだけで俺…いいんだ」


 「…あたしにはもう何も出来ない…。

 これからって時なのに……」



レリスは今にも泣きそうな声で

アッシュへと語りかける。

アーディルを無くした事によるものなのか

今のレリスは非常に弱く見えた。

“弱い”とは何も力の事を指しているのではない。

病を患っているかの様に感じた。

まるで粉砂糖で出来ているかの様な

彼女に触ればスッと消えて無くなる様な

そんな感覚がしてならない。

“この命に変えても守ってやりたい”

何故か心の中で言葉が作り上げられレリスへと伝える。

それはアッシュの口からではなく。



 「皆の足手まといになるだけなら…


 あのまま…死ん…」



レリスが話し終える途中で

アッシュは激しくレリスを抱きしめた。

その言葉は言わせないと言わんばかりに。

と同時に実感してしまった。

自分は本当にレリスを愛していると言う事を


今まではただの一目惚れなのだと思った。

そして彼女の笑顔に恋をしていた。

だがそれはこの時より変わったのだ。

アッシュは彼女の存在、 全てが愛おしいのだと

自分の命そのものが彼女であるのだと。



 「……頼むから」


 「……え…」













頼むから……俺の為に…生きてくれ。






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