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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
56/73

episode 53 絶体絶命を希望に

 「……今何て言った?」


 「アーダは………既にお前が持ってるんだよ」


 「…僕が?」


 「父さ…


 お前がシグナスからアーディルを取り出した時

 アーダはシグナスに宿ってた…。


 俺には受け継がれてはいない…」


 「………嘘をつくならもっとマシな嘘が

 あると思うけどね」


 「俺は真実を話してる。 

 後は信用するかしないかはお前次第だ。


 レリスを放せ」


 「せっかくチャンスをあげたのに…


 残念ながら取引は…不成立だよ」



ディウスはレリスに宿るアーディルを自身の身体に

吸い寄せ始めた。

レリスは霊力を本能的にアーディルへと集める。



 「僅かな力で抵抗してるみたいだけど、

 それも時間の問題だ。 くっくっく」


 「させるかぁぁぁっ!!」



ディウスに飛び掛かったアッシュは

右手にありったけの霊力を込めて全力で顔面を殴った。

アッシュの拳は確実にディウスの頬を捉えた。


しかし…。



 「ふっふっふ…もう遅いよ…」



ディウスは既にレリスからイーヴァを

吸収した後だったのだ。

吸収した事でパワーがさらに飛躍したディウスに

アーディライズしたアッシュの攻撃でさえも

全く通じていないようだ。

それでもアッシュは何度もディウスにありったけの

怒りをぶつけていく。



 「よくも……レリスをぉぉぉぉ!!」


 「心配しなくていいよアッシュ。


 彼女は生かしたやったから」


 「………?」


 「僕は優しいからね。 くっくっく。


 ほらちゃんとスキャンしてみなよアッシュ」



倒れているレリスをスキャンすると僅かに

まだ魔力の反応が出ていた。

アッシュはすかさずアーディライズを解き

レリスの元へと駆け寄る。



 「レリス!? レリスしっかりしろ!!」


 「…………あ……う……ぅ…ん…」


 「僕は今まさにアーダとイーヴァ、 

 2つのアーティファクトを手に入れた!!


 くっくっく…くっくっく…




 あっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!」


 「お前………まさか」


 「君に言われた通り確かにあったよ。

 吸収したアーディルを片っ端から

 調べるのは時間かかったけどね。


 正直驚いたよ。 くっくっく。

 それを隠すのに大変だったんだから」


 「時間稼ぎだったのか…。



 き…さまぁぁぁ…!!」


 「ちゃんと約束は守っただろ?

 僕は殺してない」


 「でも何でだ…? アーディルを抜かれた

 ヴァルファリエンは死ぬはずなのに…」


 「だから僕が生かしてやったと言ってるじゃないか。

 君達…特にアッシュ、 君には色々と

 楽しませてもらったからねぇ

 だからそれはせめてもの“お礼”なのさ」


 「………じゃあ俺もお礼と言うか教えてやるよ。

 お前はまだ勘違いしてるぜ…ディウス。

 アーダとイーヴァを手に入れても

 エターナルサーガは発動しない」


 「ふっ、 マリスナディアか?」


 「…………知ってたのか。



 …俺達にもチャンスがあるって事だ」


 「あっはっはっはっは!!!



 そうかそうかチャンスか…くっくっく」


 「何だよ」


 「そんな君こそ…


 何か勘違いしてるみたいだね」


 「……?」



ディウスは手を掲げた。

すると彼の前に黒いローブを纏った者が現れた。

フードを取った瞬間アッシュの頭が真っ白になった。

それは信じられない事にあのヴィーゼと

シェイルだったのだ。

アッシュは2人を見て初めは混乱していたが

徐々に状況が飲み込めた。



 「……味方だと信じた俺が最低だな…

 あんたらを信じて…ここまで…」


 「あらぁヴィーゼ、 アッシュに味方って言ったの?」


 「……………」


 「最低だなあんたら…」


 「わかってもらえたかい? くっくっく」


 「エターナルサーガを破壊するとか…

 あんたらの目的なんだろ!?

 あの時の事も忘れたのか!!? マーディン様に…」



とその時いきなりヴィーゼが接近してきた。

アッシュの腹に一撃を打ち込むとディウスにこう言った。



 「ぐはっ……ぁ!?」


 「ディウス、 後は我々に任せろ。 

 貴様は早くアーディルを完全に引き出せる様に

 準備しておけ」


 「くっくっく。 悪いねアッシュ。


 僕は君達を生かしてあげたいと思ってたけど…


 ヴィーゼ、 シェイル、 この2人を殺したら

 例の場所に来て」


 「はいは〜い♪」



ディウスは笑い声をあげながら姿を消した。

すると空間は溶けていきやがて元いた森に

戻っていった。



 「行っちゃった」


 「あんたら…自分が誰に手を貸しているか

 わかってるのか!?


 ディウスだぞ!? エターナルサーガを発動すれば

 あんたら絶対に殺されるぞ?」


 「………」


 「何がしたいのか意味がわからないんだよ!

 おい!! 何とか言えよ!!

 俺に話した事は全部嘘か?」


 「………」


 「あーそうかよ、 わかったぜ…。

 そんなに戦ってほしけりゃやってやるよ」


 「………」









一方、 ティナ達は…。







 「おりゃぁぁぁ!!!」



ゼアとリーベルトが激しい戦闘を繰り広げていた。

無事にアーディルが全快しアーディライズしたゼア

そしてそれまで時間稼ぎしていたティナとリルティ。

倒れていたディックはゼアの復活を期にティナ達に

助けられ意識を取り戻した。

クレイドの事を2人から聞き怒りを込み上げながら

戦闘を見ていた。



 「今のところ互角に戦ってます……多分」


 「リルティ、 無理にスキャンして追わなくていい。

 少しでも魔力の回復に専念するんだ」


 「あ、 はい……」


 「もう私達では戦闘を把握する事さえできない…

 ゼアに頼るしかないわね…」


 「大丈夫だ。 ゼアもヴァルファリエン。

 きっとやってくれるぜ!!」



ゼアとリーベルトは息継ぐ暇なく激しい攻防戦を続ける。

お互いのパンチが顔に命中したのを合図に

地上へと降り立ち、 距離を取った。



 「おめぇ本当に人間かよ…」


 「………さすがヴァルファリエンだな。


 あれだけの攻撃をくらっても息一つ切れてないとは」


 「ヴァルファリエンを甘く見ると痛い目に合うぜ…」


 「だが…この戦いにも飽きてきたな…。


 何故だかわかるか?




 お前の力の底が見えたからだ」


 「俺ぁまだまだ本気を出しちゃいねぇぜ」


 「…これまでの攻撃力から見て恐らく

 70%程度に抑えている様だな。


 一つだけ教えてやる。

 俺を倒したければフルパワーで来るんだ。


 そしてもっと楽しませてくれ」


 「(……確かにこのままやり合ってりゃあ

 俺の方が先に参っちまいそうだ…。


 だが…あの野郎の余裕は何なんだ……?

 奴も本気じゃねぇってのはわかる…



 フルパワーでやるしか…ねぇか……よし!)」



腰を深く落とし全身に力を溜めはじめたゼア。

白い光の粒がスパークと共に身体を激しく巡る。

台風レベルの衝撃波がゼアの身体から放たれ

辺りを暴れ回る。



 「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



ティナ達は余りにも凄まじく荒々しいゼアの

魔力、 霊力に立っている事さえ困難と感じ

クイックフェザーで空へ避難していた。



 「フルパワーでやるつもりだな…」


 「す、 すごいわね……こんなに離れてるのに

 ここまでエネルギーの波動が肌に感じるわ…」


 「あぁ…これならリーベルトの野郎を

 倒せるかもしんねぇ!」


 「……やっちゃえ!! ゼアさん!!」











 「………ほう、 予想以上のパワーレベルだ。



 これは少し誤算だったな…」


 「へへ少し…? さぁ…少しかな…?」



4枚の翼を大きく広げるとゼアは

リーベルトに接近していく。

向かって来るゼアに持っている刀を構えると

彼も魔力を込め始める。



 「おぉぉぉぅぅぅるるるぁぁぁぁ!!!!!!!!」



ゼアの右拳が強く輝き出した。

そして斬り掛かって来るリーベルトの刀を

意図も簡単にぶち折ると輝いた拳は

そのまま顔面に炸裂した。

クールでいて美形なリーベルトの顔が

一瞬、 別人かと思う程激しく歪むと

身体ごと回転しながら吹き飛んで行った。

今回の戦闘で初めての手応えある一撃だった。

リーベルトは何の抵抗も無いまま地面に落ちていく。



 「おいディック!!


 おめぇのあの…ドラゴなんとかってスペル


 あれの“オーブスケール”教えてくれ!」



ゼアがいきなり遠くのディックに向かって話しかけた。



 「おーぶすけーる?


 何だよおーぶすけーるって」


 「…さぁ…?」


 「おい早く教えてくれよー


 せっかく霊力を込めたバージョン

 見せてやろうと思ってるのによー」



その間に倒れたリーベルトがゆっくりと

起き上がろうとしていた。

ゼアはそれに気づくと魔力を両手に集めながら

リーベルトの真上へと素早く移動する。



 「ちっ、 俺ぁあまり引き出し持ってねぇんだよ…。




 バスタァァフレ…」



…とゼアがスペルを詠唱しようとした時



 「!?


 あいつがいない!?


 どこにいった!?」


 「…覚えておけ。


 敵は常に背後へと回る事をな…」


 「!!!!!?」



ゼアは決してよそ見していた訳でも

油断していた訳でもない。

逆に常にスキャンで確認していたはずだった。

リーベルトはいつの間にかゼアの背後に現れ

手には先程破壊したはずのフォースエッジが

握られていたのだった。

ゼアの両目にスローで動くリーベルトの姿が映っている。

刀を振り上げ一気に振り抜いて行った。



 「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 「ゼァァァァァ!!!」



ゼアの身体は肩から斜めに分断されていた。

そしてそのまま地上に落ちた。



 「ふむ、 徐々に力が馴染んできたな。

 これで要約陛下の力を使いこなせる…」


 「ティナ!! 回復スペルだ!

 早くしろ!!」


 「ディック…貴方わかってるでしょ?

 ヒーリング系は治癒能力を促進する働きを…」


 「いいから早くやれよ!!」


 「………」



ティナは詠唱しながらゼアの元に向かって行く。

しかしその前にはリーベルトが…



 「!?」


 「回復スペルは生き物に効果がある…






 あいつは既に死んでいる…

 何をしても無駄だ…」


 「……」



その言葉を聞いて気力を無くしたかの様に

詠唱を止めるとティナは力無い声でリーベルトに話す。



 「……殺しなさい…もう貴方に敵う相手はいないから…」


 「…では遠慮無くそうさせてもらおう。


 心配はいらん一瞬でチリにしてやる…」


 「ばかやろぉぉ何やってんだぁぁ!!!!」



ティナは叫んで向かって来るディックに振り返り

苦い笑みを見せた。



 「ついでだ…あいつと一緒に死ね」



リーベルトの周囲を激しいプラズマが覆った。

彼の得意スペル、 ギガスパークだ。



 「天国か地獄か知らんが……


 せいぜいそこで自分の非力さを恨むんだな…





 ギガ…スパーク」



リーベルトの全身からついに放たれてしまったギガスパーク。

ティナもディックもその光に包まれていった。

死を覚悟したからなのか

2人は痛みを感じてはいなかった。

それもそのはず

ギガスパークは2人には命中していなかったのだ。


ティナの前に盾になって防いでいる者がいる。

ディックは後ろにいてリルティは離れているので違う…


では一体何者がティナ達を救ってくれたのであろうか…








 「……貴様は」 


 「ティナさん…まだ死ぬのは早いっすよ」


 「お、 おめぇ…」


 「ジェノー!!」



クイックフェザーでふらつきながら頼り無く

近づくリルティが涙目でジェノの名を呼んだ。



 「おめぇ…ジェノか?

 (何だ…? 何かが違う…)」


 「あ! サングラスしてない!!」


 「ジェノ・クラヴィスか…」


 「ディックさん、 出来るだけ離れて下さい。

 なんならここから避難した方がいい…」


 「おめぇ…一人でやるのか?」


 「ジェノ無茶だわ…あいつ…とんでもない強さよ?

 確かにあんたの魔力が飛躍的に上がったのはわかるけど…」


 「……クレイドさんは?

 ここには来てないんですか?」


 「…クレイドは…」









 「俺が消してやった。 跡形もなくな…」



それを聞いた瞬間、 ジェノはゆっくりと

歯を食いしばって憎悪を作り上げた。

いつもはサングラスに隠れていた彼の表情だったが

これ程かとまで言わんばかりに怒りをあらわにしていた。

3人共にそんなジェノを見た事がないので

驚きの余り声が出ない。



 「早く離れてくれ…巻き添いは出したくない…」


 「……頼んだぜ。 ジェノ…」



ディックはジェノの背中に向けて言葉をかけた。

そしてクイックフェザーで3人はその場を離れたのだった。



 「てめぇ…よくもクレイドさんをやりやがったな…。



 てめぇだけはこの俺様一人の手でぶっ殺してやる」


 「……何だ? 何をした?」



ジェノは片手をリーベルトへ向けると緑色の光を放った。

その光を受けるとリーベルトの傷や体力が

みるみると回復していくではないか。

スペルでは無い為自らの体力を魔力に

変換したものなのだが何故この様な行動に出たのか?

それほど自信があるのだろうか…?



 「完璧な状態のてめぇをぶっ殺す為に決まってんだろ。


 俺様はぜってぇぇてめぇを許さねぇ…」


 「ふっ、 自信があるのは認めるが

 それが実力に結びつくかな…?

 言っておくが今までの俺と思ってたら痛い目に合うぞ?」


 「ばかが。 てめぇこそ痛い目に合わせてやるからよ。



 …喋りはここまでだ…」



ジェノは両手にフォースエッジを出すと

強い睨みと共に構えた。



 「…まさか魔力の使い方を忘れたのか?」


 「喋りは終わりだっつってんだろ。


 さっさと来いよナルシスト」



ジェノの言葉を皮切りにリーベルトが猛スピードで

攻撃を仕掛けてきた。

刀を無駄なく使いこなし連撃を繰り出す。

それを2つの斧で防ぐ。

しばらくリーベルトが攻撃を続けるがジェノは

全てその攻撃を防いでいた。

リーベルトが回し蹴りを放つもあっさりと回避する。

その後距離を取って刀を振り下ろし

衝撃波を繰り出して来た。



 「むん!!」



クレイドもディックもそしてゼアも

この攻撃は避けるしか手は無かった。

だが彼はリーベルトの衝撃波を素手で受け止め

握り潰したのだった。



 「こんな技で俺様をやれると思ってんのか?」


 「……貴様こそ、 そんな温い魔力では

 この俺は殺せんぞ」


 「だったら俺様に本気を出させろよ」


 「……いいだろう…。


 つい先程、 陛下の力が馴染んだ所だ。

 フルパワーを見せてやる。

 俺もどれ程パワーが増すか知らんのでな

 楽しみだ」


 「奇遇だなおい。


 俺様もついさっきエルフの力が

 使い熟せるようになったとこなんだよ」


 「エルフ?」


 「おぉぉぉぉぉぉ…!!!!!!!」


 「(一気に…あのハゲ頭の魔力を抜いた…


 ……まだ上がっている…)」



 「おぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

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