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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
51/73

episode 48 気高きエルフの血

廃墟と化したディルウィンクエイスに

いきなり光の渦が現れた。

光の渦はアッシュを吐き出して消えて行った。


 「あ、 あら? 何でこんなとこに…」






―ディルウィンクエイス―

セントラルエリア跡






既に壊滅しているものの浮力だけは

まだ健在のこのディルウィンクエイス。

しかしアッシュはこの場所へ繋いだ覚えがない。

まだワープゲートを使いこなせてないのであろうか。

アッシュは再びティナ達の元へと

ワープし直そうとした時魔力の反応をキャッチした。

3つの反応が急スピードでこちらに接近して来る。



 「この魔力は確か……




 マシーナの…偵察か何か行ってたのか?

 まぁティナ達に聞けばわかるか……よし!」



作りかけのワープドアを完成させ

光の渦の中に入って行った。

そしてティナ達がいるチリクへと向かう。









―ラミュンダ―

チリク







一方その頃、 チリクのティナ達は

グランベルクとの闘いに備え各々準備を整えていた。

そして1人修業すると残していたジェノはと言うと

何故かヴァレアの元にいた。

何やら話をしている様だが修業と何か

関係があるのだろうか。



 「ってな訳だ…」


 「……やはり力を求めて来たか…」


 「この俺様の中に本当にそんなものが

 あるんだったらな…」


 「……よいかジェノ。

 その力を引き出すと言う事はじゃ…



 それはエルフとして生きると言う事なんじゃぞ?

 わかってて言っとるんじゃろうな?」


 「……あぁ」


 「エレメンツも仲間も捨てる事になるんじゃぞ?」


 「あぁ………」


 「……そうか」



ヴァレアは静かに瞳を閉じてジェノの覚悟を

噛み締める様にその心にそっと聞き入れる。

そして再び話始めた。



 「…よかろう。

 じゃがその前にお前さんにはエルフの事を

 知ってもらわねばならん。


 エルフの歴史、 知識、 そして…


 ジーナ様の事をな…」


 「………」



次の瞬間、 ヴァレアが手をかざすと

2人は光に包まれてその場から消えていった。


ジェノが瞬きしている間に景色が変わっている事に

驚きこそ顔に出なかったものの

何処なのか全くわからない彼はヴァレアに問う。



 「何だ、 どこだよ…ここ」


 「………ワシも久しぶりなんじゃが…

 ここはラミュンダにあるミレイネスと言う所じゃ」


 「ミレイネス…」


 「今はそう呼ばれておる。

 最もワシがいた昔はここは大きな街じゃった。

 そして…。






 ワシが追放を受けた場所でもある…」


 「こんなとこに何があんだよ」


 「まぁ待て。 ついてこい」



色がないと思わせる程の真っ白な塔

ミレイネスはラミュンダのちょうど

真ん中に位置する。

“ゆりかご”と言う意味のここミレイネスは

今まで活躍した英雄達が眠る墓。

長く続く階段をゆっくりと上って行くヴァレア。

その後を歩くジェノ。 話は歩きながら進む。


 「これからジーナ様に会う」


 「…ジーナはてめぇと合体したんじゃなかったのか?」


 「…が、 がったいってのぉ……。




 ご、 ゴホン…


 ジーナ様は意識体となって今も存在していると

 噂では聞いておる。

 この塔のてっぺんにいらっしゃるらしい」


 「…そうか」


 「(もしそれが本当ならワシは…

 これまでの事を……謝らねばならん…。

 そんな事では決して許しては

 もらえんじゃろうが…な)」



長い階段を上がって行くと鉄の扉の前へとやって来た。

そこで立ち止まり振り返ってジェノを見る。

固い眼差しで彼に再びこう告げた。



 「ジェノ、 これが最後じゃ。

 もう1度だけ聞く…。



 本当にいいんじゃな?」


 「あぁ……」


 「後戻りはできんぞ?」


 「うだうだ言ってねぇでさっさと開けろ」


 「……わかった」



ノブに手をかけ、 重い音と共にゆっくりと

開かれた鉄の扉。

中に入ると中央に螺旋階段があり果てしなく

上へと延びている。

そして壁にはクリスタルの様な素材で出来た

石が埋め込まれていた。

エルフ語で文字が書かれている事から

どうやらこれは墓石の様らしい。

それが上までびっしりと並べられており

微量に鈍く輝きを放っている。

神聖さと不気味さをその身に感じながら

ジェノはヴァレアと螺旋階段で上を目指す。

2つの足音が塔に響き渡り静けさが嫌に冷たい。



 「……これ全部墓なのか?」


 「……そうじゃ」


 「(……気味がわりぃな…)」


 「………」


 「………おい、 まだ着かねぇのか?」


 「いいから黙って着いてこい」


 「………ジーナは意識体って言ってたが…



 意識体って何なんだ?」


 「簡単に言えば“オーブ”の事じゃ。

 これはワシの勝手な推測じゃが…

 つまりジーナ様はワシと術中の間、 もしくは

 その後、 魂の一部が何らかの理由で抜け

 この場所に宿ったのじゃ…。

 不思議な事に術はこの場所で行ったんじゃ」


 「…オーブって意識があるのか?」


 「霊なんかがそうじゃろ。

 強い思いや未練がある魂は現世に残りさまよう…」


 「………なるほどな。

 ジーナはてめぇとの合体を嫌がっていたと言う事か」


 「…………。



 (そうじゃ……ワシは…。


 ジーナ様に命を持って償わなければならない…)」



階段を一段一段確かめる様に上っていく。

しばらく進むと最上階へのフロアが見えてきた。

そのフロアの奥に1つだけ大きな墓石があり

他とは明らかに違う扱いをされている墓がある。

ジェノはすぐにそれがジーナの墓だと悟り

そこへ向かうヴァレアに問う事はしなかった。

そして数歩離れて着いて行く。



 「ジーナ様の魔力を感じる…。




 ジーナ様…」



ヴァレアは涙ぐましい表情で墓石に触れた。



 「…だが気配がねぇぞ」


 「………ジーナ様」


 「ふっ…まさか嫌われてんじゃねぇのか?」


 「…………」


 「バカが、 冗談だ。

 なに泣きそうになってんだよ」


 「いや…冗談ではない…

 きっと恨んでおられるんじゃろうな」


 「………」



 「…ヴァレア」



 「!? な、 なんだ?」



声がどこからともなく聞こえて来た。

ジェノは辺りを見渡すがその出所を掴めない。


 「久しぶりだな…ヴァレア…」


 「後ろか…!」



振り返ると螺旋階段の辺りに

1人のエルフが立っていた。



 「おい…ジーナって……






 男だったのか!?」



ヴァレアは男の顔を数秒見つめると

溜め息を吐き零しながらゆっくりとジェノの前に出た。



 「…ジーナ様ではない。 あれはルシア」


 「覚えていたか…ヴァレア。




 追放された貴様がここに入る資格はないのだ

 さっさと立ち去れ…」


 「聞け、 ルシアよ。

 ここにいる者はジェノ。

 クラヴィス家の血を引く最後のエルフじゃ」


 「な!? なんだと!?」


 「………」



ルシアはジェノをその両目に映す。

そして驚いていた表情に怒りが混ざっていく。



 「貴様…今自分が何を言っているのか

 わかっているのか?

 少しは罪を償う意志を持ったかと思っていたが

 まさかジーナ様を侮辱するとは…

 覚悟は出来てるんだろうな」


 「ルシア……お前さん

 ジェノを見てもまだわからんのか」


 「わかっていないのは貴様だヴァレア。

 人間とエルフの区別もつかないとはな」



ルシアはフォースエッジを瞬時に精製し

戦闘体制に入った。 ジェノは反射的に構える。



 「来るぞ」



ジェノもフォースエッジを出して

向かって来るルシアに突進して行く。

2つの刃が今、 まさにぶつかり合う時だった。



 「!?」


 「な!?」



ジェノとルシアの間にはいつの間にか

髪の長い女性がいた。

2つの刃は彼女により受け止められる。

はっと我に返ったルシアはフォースエッジをしまい

その場にひざまずく。



 「も、 もも、 申し訳ございません!!


 ジーナ様!!」


 「(この女が…ジーナ…)」


 「ジーナ様と呼べ、 ……ん?」


 「(俺様の心を読みやがった…)」


 「ジーナ……さま…」


 「ヴァレア、 久しいな」



ヴァレアはルシアと同じくその場にひざまずき

地面に顔がつくくらい、 頭を下げる。



 「小僧……ジェノと言ったか。

 確かにわらわの気高い血を受け継いでおるな」


 「(ま、 まさか…本当に…)」


 「お許し下さいませジーナ様!!!

 このヴァレア、 命を捧げる覚悟で

 やって参りました!!」


 「許す? 何を許すのだ?」


 「転身の秘術でジーナ様に辛い思いを…」


 「あぁあれか。 もうよい」


 「……あの…しかし…」


 「わらわは恨んでもいない。 むしろお前には

 感謝しておるぐらいだ」


 「感謝などとその様なお言葉、 この私には

 勿体ないお言葉でございますぅ!!」


 「じゃああんたは何の為にここにいんだよ 」


 「ば、 ばばばかもんっ!!」



ヴァレアはジェノの頭を数発叩くと

ひざまずかせようと服を引っ張る。



 「ってぇな!! ババァ!!」


 「立場を弁えんか!! 馬鹿者めが!」


 「あっはははは。 よいではないか!

 わらわの血を引いてるだけの事はあるな。


 答えてやろう。


 わらわのオーブはもうすぐ消滅していく。

 それは術のせいで肉体を失ったからなー」



そう言いながらヴァレアをじろーっと見る。

そんなジーナの言葉を後頭部で聞く。



 「冗談じゃヴァレア。

 わらわはお前を大変気に入っておる。

 お前を失いたくなかったその思いが

 意識だけを抜けさせたんじゃろうな。


 おい、 ルシア」


 「はい」


 「ヴァレアを許してやれ。

 こそこそと心に秘めておってもバレバレじゃ」


 「は…はい」


 「さて、 では始めるか。

 ヴァレアとルシアはわらわ達が戻る頃に

 エルフ達をこの地に集めておけ」


 「あのジーナ様……始めるとは?」


 「決まってるじゃろう、 ジェノの修業じゃ」


 「は、 はぁ…」


 「ルシア、 疑問があるなら聞けと

 言っておるのがまだわからんのか?」


 「な、 なな、 何故ジェノに修業を?」


 「愚か者、 様をつけろ。

 わらわの息子なんじゃぞ」


 「も、 ももも、 申し訳ございません!!」


 「(いつからあんたの子供になったんだ…)」


 「わらわの血を引いてるのは息子も同じじゃ!

 さぁジェノよ、 わらわの手を取れ」



そうジェノに言ったジーナだったが

自分から彼の手を強引に掴みとり

2人は眩しい光と共にその場から消え去った。

後に残されたヴァレアとルシアは…



 「あ、 相変わらずなお方じゃのう」


 「あぁ、 ま、 まあな…」







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