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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
50/73

episode 47 迫る黒き闇

―ラミュンダ―

チリク







ワープゲートで元の世界へとやって来たアッシュは

レリス、 ゼアをティナ達のいるチリクへ運んだ。

2人はティナ達エレメンツに手当をしてもらい

今宿屋のベッドで眠っている所だった。

そしてアッシュはティナ達にマーディンについてと

自分の話をした。

ディルウィンクエイスのエレメンツ達は皆驚いていたが

“神”と言う雲の上の話に

ピンときていない表情を浮かべていた。

そうこうしているとレリスとゼアの意識が戻ったと

報告を受け、 アッシュは1人で宿屋に向かった。

部屋のドアを開けると身体を起こしている

2人がキョロキョロと不思議そうな目で

周りを見ているのが見えた。

アッシュが2人に説明しながら近づいていく。



 「ここはチリクって村で俺の世界だよ。

 2人とも大丈夫そうだな」


 「アッシュ…すまねぇ…。

 フィルとレジェアが…あいつらに」


 「……あぁ。 あいつらは絶対許さない」


 「アッシュ…?」



レリスに話かけられた瞬間に

あのどうしようもない胸の鼓動が再び強く脈打ち始めた。

アッシュは唾をゴクンと飲み干して冷静さを装う。



 「アッシュ……貴方本当にアッシュ?」


 「え? …そ、 そそれってどういう…」


 「そいつは俺も思ってたけどよ、 術成功したのか?」


 「術?」


 「転身の秘術じゃねぇか。

 あいつと一緒に里に行って来たんだろ?」


 「…………」



そう


この2人はアッシュをシグナスだと思っているのだ。

2人の問い掛けに言葉を詰まらせるアッシュは

どう説明をしてらいいのかわからないまま

起こった出来事をそのまま彼らに告げた。

予想できる範囲を超えたアッシュの言葉に

ゼアは度肝を抜かれたと言わんばかりに声を荒げた。

しかし、 レリスは…。



 「…あたし…なんとなくわかってたんだ…。

 あなたを初めて見た時、 心の中で

 シグナスには無かった何かがあなたが持ってるって

 感覚がしてたの…ずっと…ね…」


 「……レリス」


 「おめぇシグナスと戦ったのか?」


 「……あぁ」


 「あいつ…アーディライズしたのか?」


 「あぁ、 お互い本気でやったと思う」


 「あの馬鹿、 アーディライズできるだけの

 堪えられるアーディルじゃねぇのに…まったく…」


 「…それ、 どういう意味なんだ?」


 「おめぇももう知ってると思うけどよ

 おめぇと半分ずつになっただろ?

 あいつのアーディル」


 「あぁ、 聞いたよ」


 「おめぇに接触しようといろんな

 実験をしていた時からあいつのアーディルは

 そのまた半分になっちまったんだ…」


 「…え?」


 「シグナスはね、 初めからきっと貴方に

 託したかったんだと思う…。

 だからわざとああ言う事をしたんだよ…」


 「わ、 わざと!?」


 「だってシグナスもあなたも同じアッシュでしょ?

 きっと貴方にそのままストレートに言っても

 断られると知ってたんだよ…だから…」


 「(そういえば…


 アーディルを使い熟せるトレーニングも

 意味はないって言ってたけど…

 結局あれのおかげでもあるもんな…。

 それに…記憶を見せてくれたのも…)」



シグナスのアーディルがさらに半分になっていた事を

今初めて知らされたアッシュ。

レリスの言った事は推測ではあるが

シグナスが本当にアッシュの為にしていた事

だったのなら彼は自ら悪を演じていた事になる。

そして彼の本心ではないと言う事を

誰にも気づかれないまま散っていったのである。



 「あたしはそうだと信じてる…」


















―イフリナ―






一方、 リューゼとの死闘を繰り広げていた

ヴィーゼとシェイルはあれから周りを広範囲に渡って

スキャンするも今だに見つけられないでいた。



 「どういう事だ?

 あの程度であいつが死ぬはずがないと言うのに…」


 「今がチャンスじゃない。

 今の内に私達もアッシュの所へ…」


 「それがどういう事になるか考えて

 言ってるんだろうな…シェイル」


 「だって! その身体じゃ無理よ!

 それに魔力も感じないし、 きっと死んだわよ」


 「“きっと”じゃ駄目だ!!

 確実に息の根を止めねばならん!!」


 「……兄の台詞とは思えないわよ」


 「あいつはもう弟でも何でもない…」


 「…………」


 「シェイル、 アーディライズを解いて

 マリスナディア発動の準備をしろ…」


 「ヴィーゼ…」


 「俺達の使命はエターナルサーガを破壊する事…

 その危険を脅かす者は誰であっても

 防がねばならんのだ」



そう言いながらマリスナディア発動の準備を

進めるヴィーゼ。 胸から取り出し

手にしたアーディルを見せながらシェイルに話す。

すると2人のすぐ後ろの海から急に

水しぶきが上がり飛び出して来た。

それは変身が解け傷ついたリューゼだった。



 「はぁはぁはぁ…はぁはぁ…

 や…や…やるじゃ…ないか」


 「やはり生きていたか…」


 「なんで…」


 「?」


 「あ…んな…にパワーアッ…プし…たのになんで

 俺がこん…な…惨め…な…」


 「………これなら発動するまでもないな」


 「ちっくしょお…ちくしょおぉぉ!!」


 「…失せろ」


 「はぁはぁはぁ……う、 失せろ?」


 「見逃してやると言ってるんだ。

 俺の前に2度と現れるな」


 「お、 おいおい…まだ終わってねぇよ。

 これから……




 !!!?」



リューゼの話の途中にいきなり彼の胸倉を掴み

地面に叩き付けるヴィーゼ。

そして鬼の形相で睨み付ける。



 「がふっ……ぁ…ぁが…」


 「まだわからんのかぁぁ!!!

 俺の気が変わらん内に消えろと言ってるんだ!!

 本当に殺されたいのかっ!!!」


 「へ…へへ…へ。

 あ…んたの魔…力は俺より劣ってる…んだ。

 あんたを…ぎゃ…逆に殺してやる…よ」



それを聞いてヴィーゼは横たわっている

リューゼの首を片手で掴み持ち上げながら

声を吐き飛ばした。



 「手加減してやってるのがわからんのかぁぁ!!」



そう叫びながらリューゼの腹を一発殴ると

片手を顔の前に持って行きそこへ魔力を集め

魔光弾を形成する。



 「今の貴様がこれをくらうと粉々になるぞ!!!

 さっさと消えんかったら貴様の存在を

 消す事になるからなぁ!!」


 「……う…」



リューゼは口から出た血を手で拭うと

空高く跳び上がった。



 「また会おうぜぇ!! へへへ!!」



リューゼはそのまま空に消えていった。

魔光弾の魔力を戻すとシェイルが

彼の肩を叩いて一言声をかけた。



 「安心したわよヴィーゼ。

 やっぱり兄弟が争うのはダメよ」


 「………あいつはまた必ず現れる。

 その時は全力で殺しにかかる」


 「……も、 もうヴィーゼったら〜」























―ラミュンダ―





 「じゃあそのヴィーゼとシェイルって野郎が

 今あいつらと戦ってるのか?」


 「あぁ、 だから俺行ってくるから」


 「ま、 待てよ! 俺も…」


 「ゼアはまだアーディルが回復してないだろ

 今は体力の回復をしてろよ。

 大丈夫だってあんな奴らに負けないから」


 「あ…あぁ」



アッシュはワープゲートを使いその場から消えた。



 「レ、 レリス……あいつ…

 なんかやっぱ変わったよな…。

 シグナスでもあの時のアッシュでもねぇ…」


 「何言ってるんだよゼア。

 あれが本当のアッシュでしょ。

 戻って来たんだよ、 長い時間をかけて…」


 「そっかぁ?

 まぁ幼なじみのおめぇが言うんだから違いねぇか」


 「うん!


 (ほんと、 長かったね…。

 やっと…やっとあの頃のアッシュが帰ってきたんだ)」









おかえりなさい





アッシュ…。







そして同じチリクにいるティナ達はアッシュの

話を聞いてグランベルクとの戦いの作戦を練っていた。

この村の東側に大きな広場がありそこには

ティナを始めディック、 クレイドやジェノの

ディルウィンクエイスのエレメンツと

アックス、 セイバそしてランスのマシーナもいた。

マシーナの特徴は何と言ってもレグ。

彼らにレグを操らせたら右に出るものはいないと

言われるぐらいレグ召喚の技術に長けている。

ただその他の事は苦手としている為そこが弱点となる。

そこを踏まえ話を進めていく。



 「マシーナのあんた達は常に3人で動いて欲しいの。

 ハウスがなくなってから偵察部隊もなくなって

 エレメンツも少なくなった今偵察に

 1番向いてるのはあんた達しかいないわ。

 あれからグランベルクの動きが把握できていないから

 あんた達に偵察に言って欲しいの」


 「偵察か…よし、 わかったぜ」


 「準備が出来たら直ぐに向かって」


 「偵察なんてクラスBがやる任務だろぅ?

 まぁクラスがどうとか言ってる場合じゃないか…。

 久々にやってやろうじゃないのさ!」


 「じゃあ頼んだわよ」



アックス達はそれぞれ準備に入った。



 「…で、 俺達はどうすんだ?」


 「あたし達を入れても全然戦力が…」


 「あの…ちょっといいっすか…」


 「何だよジェノ」


 「修業したいんすけど」


 「修業だぁ? おめぇいつ襲ってくるかも知れねぇ

 こんな時に何言ってやがんだよ」


 「あいつが……

 アッシュがすげぇパワーアップしてるのは魔力を

 抑えててもわかるんですよ。

 このまま闘いに参加しても

 足手まといになるだけなんで修業して

 技を磨きたいんです」


 「気持ちはわかるがなジェノ」


 「いいぜ」


 「ディ、 ディック!」


 「ただし、 とびっきり強くなってこい。

 いいな?」


 「もちろんあいつを超えるつもりでやりますから」



サングラスの位置を整えると何処かへ

歩いて行ってしまった。

ジェノの後ろ姿を見ながらディックが言葉を零す。



 「ジェノのやつまだアッシュと張り合ってるんだな」


 「アッシュとジェノの関係は

 確か候補生の時からそうだな」


 「ですねぇ、 あたし覚えてますよ今でも」


 「ほぇ〜、 ライバルってやつか〜」


 「ジェノはアッシュの事になると

 いっつもムキになったりするんですよぉ」


 「良い関係じゃない、 ライバル関係って」


 「でもティナさん、 間に挟まれてるあたしは

 2人がケンカしないかいつも

 ハラハラドキドキなんですよぉ」


 「そ、 そう…。

 その割には何か嬉しそうだけど…」









イフリナから少し離れた辺りに光の渦が現れた。

その中から出て来たのはアッシュだった。

到着するや否やイフリナの崩壊を目にし

直ぐさまヴィーゼ達の魔力をスキャンする。





―イフリナ―






 「ヴィーゼェェ!! シェイルゥー!!」



廃墟と化し建物の残骸が散在している。

この街の中心にヴィーゼ達の反応を感じた。

辺りを見渡しながら街の中心へと足を運ぶ。

ふと視線を落とすと瓦礫達に紛れてある物体が目に入った。

それは空に浮かんでいた幾つもの乗り物だった。

初めてこの街を訪れた時、 それに乗った覚えがある。



 「(………そうだ、 ヴィーゼ達を見つけないと…

 スキャンじゃ、 もう近くに……)




 いた! ヴィーゼェェ!!」



ヴィーゼ達に駆け寄っていくアッシュ。

2人の身体はボロボロに傷ついていた。

特にヴィーゼの損傷は酷かった。

シェイルが手を振ってアッシュに答える。



 「あいつら、 倒したんだな!!」


 「いや………1人逃した」


 「リューゼはまだ生きてるわ…」


 「そうか…とにかく無事でよかった。

 じゃあ行こう」


 「………どこへ行くんだ?」


 「ティナ達のとこだよ、 これからディウスと闘う。

 あんた達の力が必要なんだ」


 「……俺達は行けない」


 「え? 何でだよ」


 「言っただろ、 俺達は貴様の味方ではない。

 俺達は俺達の判断でディウスと闘う」


 「アッシュ、 わかって。

 私達の中にはマリスナディアがあるの。

 このアーディルは強大な力があって貴方の仲間と

 一緒にいると巻き込んでしまうかもしれない…

 一緒にはいられないの…」


 「…………わかった。 じゃあ仕方ないな…」


 「だがディウスの元へは必ず行く。

 その時にまた会う事になるだろう」


 「あぁ。 2人とも無事でな!!

 じゃあ、 またな!」



2人に別れを告げるとアッシュは再び

ワープゲートを繋ぎ元の世界へ帰って行った。













―グランベルク―

周辺空域







3つのレグがグランベルク目指して飛行していた。

魔力を悟られない様に出来るだけ魔力を抑え

視界に入らない遥か上空を飛ぶ。

間もなくしてグランベルクが見えて来た。

アックス達3人はスキャンで地上の反応を調べている。


と、 3人同時に同じ言葉を発した。



 『何だ、 この反応…』



何の反応もなかったグランベルクの周辺に

いきなり馬鹿でかい魔力の反応が現れた。

それも1つや2つではない。

数え切れない程の反応がどんどんと増えていく。



 「ま、 まじかよ……あいつらまだこんな

 化け物を隠してたのかよ…」


 「と、 とてつもない魔力だよ…。

 シキやロゼなんて比じゃない…」


 「アックス、 セイバ、 引き返そう…。

 早くこの事を報告……





 お、 おい…こっちに向かって来てないか?」


 「………や、 やべぇ気づかれた!!」


 「全速力で逃げるよぉぉ!!」



地上にはまるで病原菌の様に増殖し続ける

黒き物体がいる。

それが遥か上空を飛ぶレグに向かって行っているのだ。

アメーバーの様な姿の物体は物凄いスピードで

アックス達を追いかける。



 「な、 なんなんだよあれはぁぁ!!」


 「セイバ! いいから今は逃げる事だけを考えろ!」



しかしアメーバー達のスピードはアックス達を

追い抜き周りを取り囲まれてしまった。



 「こうなったらや、 やるしかねぇ!!」


 「レグナガン、 発射!!」


ランスは先手を打ってレグナガンを放った。

ず太い光線は複数のアメーバーを消し去った。

だがその膨大な魔力の反応に他のアメーバー達が

一斉に地上から襲って来たのだ。



 「馬鹿野郎!! さらに増えたじゃねぇかぁ!」


 「ど、 どうする?」



成す術を失ったアックス達にアメーバーの大群は

一気に3人のレグに張り付いて来た。



 「何すんだよ!! く、 操作できねぇ…」



アメーバー達はジワジワとレグの中へと進入していく。

そして3つのレグは真っ黒染まった。

アックスやセイバ、 ランスの声が途絶えた。





しばらくすると…。









 「………さぁ、 帰ろうぜ…」





アックス達のレグは何事も無かったかの様に

ティナ達の元へと帰って行った。






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