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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
47/73

episode 44 神命なる魂

レヴィナードのマスター、 ロゼ

アストルーラのマスター、 シキ

そして2人に決して劣らないパワーを持つ

クラスAのリーベルト。

グランベルク帝国のトップ達が

ついにディルウィンクエイスへ辿り着き

ティナ達と激闘を繰り広げていた。


はっきり言ってティナ達には勝ち目は無かった。

いくら優秀なエレメンツであっても

マスタークラスが2人、 それも4大ハウスの

レヴィナードとアストルーラ…

相手が悪すぎた。

ティナ達はそれぞれ持てるだけの力を使い

多種多彩な攻撃を繰り出すがどれも満足できる

ダメージは与えられなかった。








−ディルウィンクエイス−

セントラルエリア上空






 「はぁはぁはぁ…はぁはぁ…」



ロゼを相手にしていたティナのスタミナが

切れ始める。

その他にもシキと戦っていたクレイド

リーベルトを2人がかりで攻めていたジェノとリルティも

息を切らし魔力も残りあと僅かとなっていた。


 「さすがはディルウィンクエイス、 あたしら相手に

 よくここまで持ちこたえたねぇ」


 「はぁはぁはぁ……」


 「あんたらは訓練を積めばさらに強くなるよ。

 その素質は十分ある」


 「……褒めてもらえて光栄だわ…ハアハァ…。





 やぁぁぁ!!!!」



仁王立ちしながら宙に浮かぶロゼに向かって

殴り掛かるティナだったが

あっさりと回避され逆に反撃をくらってしまった。

そして勢いよく地面へと背中から落下し

激しく打ち付ける。

立ち上がる為の力も段々となくなってきている。



 「あ……う……ぅ」


 「ティナさぁぁぁん!!!」



背中の羽根が消えた。

クイックフェザーを維持するだけの魔力が

もうティナには残っていなかったのだ。

正真正銘、 魔力0の状態である。

そこへリルティが空から急降下しながら

ティナにスペルをかけに向かう。

ジェノの攻撃を冷静にかわしながら

その状況を見ているリーベルト。

だが特に邪魔をする素振りは見せない。



 「………」


 「…こいつは以外だな。 邪魔しねぇなんて」


 「邪魔? そんなものする必要がない」


 「んだと?」


 「貴様らはもうすぐ死ぬ。 1人残らずな」


 「あ?

 俺様がてめぇみてぇなネクラに

 負けるわけねぇだろうが」


 「強がりはよせジェノ・クラヴィス、

 貴様の魔力はもうカラに近い。

 




 …それに貴様の技は通用しない」


 「(問題はそれだ…。

 俺様とリルがもう何十発と撃ち込んでる

 スペルや技が全然効いてねぇ…。

 あれだけの威力を防ぐだけの魔力を

 シールドに送りながらも上級スペルを連発して

 来やがる…。

 潜在魔力そこが……見えねぇ…)」


 「見ろ。

 クラスAのあの男でさえあのザマだ…」



リーベルトの視線の先を目で追うジェノ。

彼のサングラスには苦しい表情を浮かべた

クレイドの姿が馬鹿笑いをするシキと共に映っていた。



 「はぁ!」


 「ぬるいっ!」


 「ぐ…ぁ」



腹部に重い衝撃が打ち込まれ思わず身を縮めるクレイド。

彼もまたクイックフェザーを維持できなくなり

地面に墜ちて行った。

今、 上空にはロゼ、 シキ、 リーベルト

そしてその3人の前にいるジェノ。



 「開け! 我が魔力の扉!!




 ヒールブレス!!」



リルティの放つ癒しの吐息に包まれた

クレイドとティナの傷がみるみる回復していく。

そしてリルティ自身にも同じ効果あらわれた。



 「ありがと…助かったわ」


 「すまないリルティ…」


 「で…でも…もう限界…です…。

 いま…の……で」



リルティはそのまま地面に倒れた。



 「リルティ!!」


 「…私もそろそろ限界だな」


 「クレイド………。




 駄目よこんな所で倒れたら…。

 それにまだジェノが…」


 「わかっている…

 ……だが……もう助けに行く力が…」


 「(クレイドも私も…もう限界…。

 このままだと……全滅…だわ)」



そんなティナ達を見ながらシキはジェノに向かって

こう話し始めた。



 「このまま殺すのは簡単…。

 ここは1つ取引をしようではないか」


 「…取引だぁ?」


 「アッシュ・バーナムを渡せば…

 ここは大人しく引き下がってやる」


 「………んだと…!?」


 「おいシキ、 聞いてないよそんな事」


 「陛下の命を忘れたか? 我々の任務を」


 「アッシュ・バーナムの奪還…」


 「その通りだリーベルト」


 「お遊びはここまでかい…。

 つまんないねぇ」


 「さぁ言え。

 アッシュ・バーナムは何処にいる?」


 「…残念だがな、 ここにはいねぇんだよ」


 「隠しても無駄だぞ。

 この辺りでとてつもない魔力の反応が

 あったのを知らないとでも思ったか?」


 「…………」



シキは片手をジェノへと向けるとそこに魔力を

溜め始めた。

その間にも話は続く。



 「もう1度だけ聞く。



 アッシュ・バーナムの居場所は何処だ」



しばらく睨んでいたジェノは皮肉を含んだ笑みを作り

それをシキに見せた。



 「俺様が……

 そんな事てめぇらに言うと思ったか? バカが」


 「そうか……では残念だが死んでもらうしかないな」



溜めた魔力はさらに大きく密度を増していく。

掌が光で満ちた時、 ジェノへと向かって放たれた。



 「さらばだ!!」


 「くっ…」



残りの魔力を全てシールドに回して防御体勢を取った。

しかしその行動も無駄に終わる…。















と、 シキの放った魔力がジェノに命中しようとした時

それに向かって何処からか光線が飛んで来て

撃ち抜いた。

2つが衝突した事でフラッシュと爆発が起きた。



 「何者だ?」



眩しい光が収まって辺りを見回すシキ。

目の前には1機の飛行型レグの姿があった。



 「…なに!?」


 「あのレグは……マシーナ……。

 生き残りがいたのか…」


 「ロゼ、 ジェノ・クラヴィスが消えた」


 「なんだって!?」



つい30秒程前まで目の前にいたジェノが

いつの間にか消えていたのだ。

それと代わって出て来たかの様なマシーナのレグ。

そしてリーベルトの瞳はもう1機のレグも確認した。



 「おい、 下にもう1機いる…」


 「ふぅ…間に合った…」



ティナ達の真上にレグが現れた。

マシーナのレグを見てティナ達は驚きを隠せなかった。

クレイドは身体を起こしながらティナに言った。



 「マ、 マシーナのレグか!?」


 「そんな…だってマシーナは全滅したって…」


真上に止まっていたレグは突然

ティナ達に向かって光線を放つと身体を吸い上げ

レグの中へと入って行った。



 「アックス、 完了した!」


 「よしセイバ、 行ってくれ!!」



ティナ達を乗せたセイバのレグは猛スピードで

戦線を離脱する。



 「リーベルト! 追うのだ!!」


 「そうはさせないぜっ!!!」



アックス操るレグはリーベルトの前で立ち塞がり

魔力を一点に溜め始めた。



 「あの光…まさかあの時の…!?」


 「ロゼ! 何しておる! 早く離れるぞ!!」



シキはそう言うと急いでその場から離れる。



 「ちっ!」



ロゼもシキに続く。

だがリーベルトは…。



 「………」


 「逃げねぇと消えちまうぞぉ〜。








 へぇ、 てめぇは逃げねぇのか。

 じゃあ…お望み通り死にやがれぇ!!



 レグナガン!!」



アックスのレグから放たれた図太いレーザーが

リーベルト1人に向かって飛んで行った。



 「この前のアレか………。



 ……むんっ!」



リーベルトはシールドを張り巡らせると

特に防御体勢を取る訳でもなく

その場に止まっていた。

そこへ巨大な光が待ったなしでやって来る。

リーベルトを飲み込みそのまま通り過ぎて

遥か遠くの山に命中すると爆発した。

それを見ながらロゼとシキはレグナガンの威力を

改めて確認した。



 「凄い、 山が吹っ飛んだよ!!」


 「な、 なんと言う破壊力…。

 魔力圧縮度は中々のものだな…」



そして2人のすぐ後ろにいつの間にかいたリーベルト。

ダメージはほとんどない。

彼のシールドはとてつもない強度のようだ。



 「逃げられたぞ…どうする?」


 「放っておけ。

 今はアッシュ・バーナムが優先なのだ」


 「くっくっく、 あいつらハウスを置いて逃げたよ。

 エレメンツ失格だねぇ。 くっくっく」


 「しかし妙だな…。

 マーディンの気配がない」


 「アッシュ・バーナムと一緒にいるんじゃないのか?」


 「ふっふっふ、 なら手間が省ける。





 このハウスの何処かに必ずいるはずだ。

 捜すぞ」



シキ、 ロゼ、 リーベルトはディルウィンクエイスのセントラルエリアへ降り立った。















その頃6大魔導のヴィーゼ達に連れられ

研究所にいたアッシュはカプセル状の

入れ物の中に入るところだった。

人が入れる程の大きなカプセルの中には

緑色の液体が半分入っており

ねったりとした泡がボコッと浮いて来る

それが何だかやけに気持ちが悪く

入るのに少し戸惑っているアッシュだった。



この中に入れと言われてから既に30分が経っていた。



 「なぁ…本当に大丈夫……だよ…な?」


 「もう6回目よ…。

 それとも大丈夫じゃないって

 言ってあげた方がいい?」


 「い、 いや……そういうわけじゃ…」


 「早くしろ。 貴様が入らなければ

 先に進めん」


 「わかっ…てる……けど…」



カプセルに入るには上から飛び降りるのだが

これが何と無く溶岩に身を投げるみたいで

どうも足が前に行かない。



 「(い、 いやぁ〜…これ無理だろ〜。

 だって泡ボコボコ言ってるし……)」


 「ゴチャゴチャ言ってないでさっさと入れ」


 「(もう〜!!

 いっっっつも俺ばっかりこんな事させやがってぇ〜


 恨むぞぉ…神様ぁぁ…)」



ゆっくりと近寄りその中を覗き込んでると

いきなりシェイルがアッシュの背中を押した。


 「男の子……でしょ!!」


 「のわわわっ!!」



勢いよく頭からその液体に浸かったアッシュ。

子供が初めて足の届かない海に入った時の

未知な何かに触れた時の

何とも言えない恐怖がアッシュを襲う。

じっとしていると何かが足に纏わり付く感覚がする。

必死にもがきながら液体から顔を出し

上から覗いているシェイルに向かって

大声で叫ぼうとした時だった。

シェイルがボタンを押すと上から液体が滝の様に

流れて来た。



 「お、 お、 おい嘘だろ!!

 まてまてまてまてまてまてって!!!!」


 「うふふふ、 怖がってるアッシュも

 ステキよぉ☆」


 「ちょっとだけ待て!! そんな事したら


 息できな…ガプッ…い…ゴ…だポッ…ろ」



液体はついに容器一杯となった。

初めは苦しんでいたアッシュだったが

何故か水中でも呼吸が出来た。

どうやらこの液体の中は呼吸が出来るらしい。


 「……やっと落ち着いたか…」


 「ゴポ…ゴポポ…ゴポゴポ…

 {何でだ? 息が…できる…}」


 「今から貴様の身体に微量な電気を流す。

 いいか、 魔力は使うなよ?」



ヴィーゼはそう言い残しカプセルから

少し離れた所にある大きなモニターの前に行くと

何かを入力し始めた。

数秒するとカプセルの中がチカチカと光り出す。



 「ガポガポポ!!! ゴポポゴポゴポゴポ!!!!


 {あででで!!!  いででででで!!!!}」


 「うふふふ!! アッシュ〜」



アッシュと丁度同じ高さの辺りでシェイルが

手をふりながら笑みを見せる。



 「ガブガポガポガポゴポゴポ!!


 {全然微量じゃなぁぁぁい!!}」


 「暴れるな、 今貴様のアーディルの

 質量を計測しているところだ」


 「ガポプゴプパ!!!


 {死ぬぅぅぅぅ!!!}」


 「…………何だこれは!?」


 「どうしたの?」



シェイルはそこから飛び降りると

ヴィーゼのところに行く。

彼の驚いている表情を見るとすぐにモニターに目を移す。



 「見ろシェイル…こいつのアーディル…

 奇妙な波長をしているぞ」


 「ちょっと……これどう言う事!?」


 「この波長………アーダのものに似ているが

 アーダではない…」


 「こんな……アーディル初めて見るわ……。

 ちょっと代わって!!」



シェイルは興奮気味にそう言うと

モニターに入力する。



 「アーディルの……絶対…値は……」



するとアラームが鳴る。



 「そ、 測……定出来ないだ…と…!?」


 「ち、 ちょっと待って!! おかしいわよ!!

 私達のマリスナディアでも測定出来るのよ!!

 ………じゃあ別の……魔力系数から算出して…



 ……う、 うそ…で…しょ…


 ……100……万バルツだって……」


 「そんなアーディル……聞いた事ないぞ…」


 「これは絶対アーダじゃない…。

 どういう事!?

 アッシュに受け継がれたんじゃないの!?」


 「シェイル……別の端末から

 ヴァルファリエンのデータベースにアクセスしろ…」


 「データベース? 何でよ?」


 「いいから言われた通りにやれぇ!!」


 「わ、 わかったわ…」



シェイルは急いで他の端末へ向かい

電源を入れて立ち上げる。

そしてデータベースに繋ぐとヴィーゼに声をかける。



 「…コードナンバーは7373241だ」


 「7373…………シグナス?

 それで? 何を調べるの?」


 「下から2番目の項目を選べ……」


 「アーディルについて?









 ダメ……ロックされてる」


 「くっ、 パスワードか!?」


 「何か思いつかない?」


 「……EDYLと入れてみろ…」


 「エディルね! 






 ………ダメ」


 「駄目か………」


 「貴方シグナスと親しかったんでしょ?

 何か心当たりないの?」


 「…………ない」


 「あぁ…やばいわ…。

 回数が設定されてるみたい…。

 あと1回しか入力出来ない」


 「なんだと!?」


 「ごぽ…ごぽごぽ!!」



アッシュがカプセルを激しく叩いている。

それに一瞬目を向けたヴィーゼだったが

またモニターに視線を戻す。



 「電流は止めてあるだろ!!

 少しそこで大人しくしていろ」



それでもアッシュは仕切にカプセルを叩く。

何処か少し様子がおかしい。

ヴィーゼ達はそれには気づかずに

パスワードを考えている。

しばらくすると画面にカウントダウンしていく

数字が現れ、 秒読みされていく。



 「何よこれ!! カウントダウンされてるわよ!!」


 「その先には絶対何かあるはずだ…」



数字は60秒を切った。

チャンスは1回…しかし慎重に選んでいる時間はない。



 「ごぽ!! ゴポゴポガポッ!!!」


 「もうっ! それぐらい我慢出来ないの!?







 え…?」



数字は20を切る。

すると突然ヴィーゼは入力を始めた。

しかし彼の表情からすると自信はないようだ。

最後の入力を終えて決定しようとするが

ためらっている。



 「頼む…」



あと10秒…






9…8…7……6










5…









するとそこへシェイルが大声で叫ぶ。

ヴィーゼはそれを再びパスワードに打ち込んだ。


3…












2…












1…


























 「……開いたぞ…」



間一髪でパスワード入力をクリア出来た。

シェイルもほっと胸を撫で下ろした。

そしてヴィーゼはその先のページを開いた…。















画面にはシグナスのアーディルについてが

記述されていた。



 「やはりバーナム家の系列は皆アーダの血筋だ…。

 シグナスもアーダを受け継いでいる」


 「ヴァルファリエンは代々アーディルを

 親から子へと受け継ぐ…。

 アッシュも例外なく儀式を行ったはず…」


 「あぁ。 だがこいつのはアーダではない…」


 「………ねぇ…それって……まさか…」


 「こいつは……











 バーナム家の血筋ではない…」


 「……でもそんな事って……」


 「それで先程のパスワードの事だが……







 マーディンとは何だ?」



なんとヴィーゼは“マーディン”とパスワードを

入力したのだ。

何故パスワードがマーディンなのだろうか…。

2人はアッシュの前に向かう。

パスワードの答えはアッシュから聞いた。

シェイルは尋ねようとカプセルへ寄っていくが

アッシュは気を失っていた。



 「………アッシュ!!」


 「心配ない……ただの気絶だ」















2時間後…。













アッシュが目を覚ますとベッドの中だった。

しかし自分が何故こんな所で眠っていたのか

その前の記憶も完全に抜け落ちている。

それとは逆に物凄い清々しく体は軽い。

体を起こすとシェイルが机に伏せて眠っていた。



 「……ん、 アッシュ起きたの?」


 「俺……どうなった? 何かすごい……

 身体が軽い」


 「あぁ、 身体を入れ換えたからね」


 「……て事はつまり…」


 「そうよ、 おめでとうアッシュ」


 「……めでたいのか? これって…

 まぁでも……一応礼を言うよ。

 ありがとう」


 「オーブの出力が以前より上がったから

 これで私達とほぼ対等なレベルになってるはずよ」


 「……うん。 確かに何か沸き上がってくる感じだな。

 これでディウスと戦える」


 「先走っちゃダメよ。

 確かに強くはなったけどそれでも

 まだまだディウスの方が上」


 「…そうか……何かやれそうな気がするんだけどな…」


 「うふふふ。 

 (それはあのアーディルのせいよ)」



そこへヴィーゼがやってきてアッシュに声をかける。



 「話がある…下の研究所へ来い」


 「……わかった」


 「私も行くわ」



アッシュ達は研究所へと向かった。

下と言っても階層で言えば60階に相当する

程かなり深い地下にある研究所。

その間には何もない。

1階にある部屋と地下の研究所だけである。

深い場所に作る理由は明白。

研究を秘密で進める為。

それは何処の世界でも共通している。

そんな深い場所へ向かうのに徒歩では行かない。

ワープで一瞬で地下60階まで行くのだ。

だからあまり実感が湧かないのは事実。

研究所には一足先に着いていたヴィーゼが

モニターと手元のプレートを見ながら

入力していた。



 「何だよ話って」


 「来たか…」



ヴィーゼは手を止めるとゆっくりと

アッシュに歩み寄って来た。



 「貴様の言うマーディンとは何だ?

 何故パスワードがマーディンだと知っている?」


 「マーディンって言うのは俺がいた世界の

 エレメンツって組織のマスターだ」


 「マスター?」


 「えっとつまり王様……かな」


 「マーディンとは人の名か?」


 「あぁ」


 「何故パスワードがマーディンだと知っている?」


 「う〜ん…勘…だな。

 ……そうとしか説明できない」


 「マーディン……」


 「ヴィーゼ、 それでわかったの?」


 「……あぁ。 ぶったまげるぞ」


 「わかったって…何を?」


 「マーディンと聞いてどうも引っ掛かったのでな

 昔の神話や文献を調べてみたのだ。

 初めはヴァルファリアンの言語だと思ったが

 実はさらに昔の言語だった……。




 マーディン……神話の時代の言葉に直すと


 マー

 知恵や知識と訳される…


 そしてディンは…

 偉大なる存在。


 つまりマーディンとは……知識の神となる」


 「知識の……神」


 「そしてそのマーディンと対をなす存在…





 戦いや力の神…オーディン」


 「オーディン…」


 「シェイル、 俺達は間違っていた…。



 遥か神魔人大戦の時代…

 破壊神マリスナディアがエターナルサーガを

 創り世界を創造したとあるが…

 そのエターナルサーガは

 この神々によってもたらされたのだ…」


 「ちょ、 ちょっと待って!!

 だって私達が研究していた当時から

 そんなデータ何処にも無かったわよ!?」


 「これもシグナスのページにあった…」


 「シグナスの!? どうして…」


 「いいから最後まで聞け…。


 こう書いてあった…」







 月と太陽の巡る地を護る


 偉大なる知識の王と力の王。


 月と太陽巡る地にて災いを降らす子らに


 戒めの厄を与えん。


 9暦刻みし時 我高みへと昇る


 厄に杖をもたらし彼が子らを導くであろう。










 「つまり、 この宇宙を創造したのは

 マーディンとオーディン…


 そして神族、 魔族、 人間の戦争を止めるべく

 破壊神マリスナディアを創造したのだ。

 

 9暦と言うのは恐らく神話暦の事で

 これは終わりを意味している…。


 争いが終結を迎えなかった場合

 マーディンとオーディンはこの宇宙を手放し

 マリスナディアに委ねるという事だ…。


 杖と言うのはエターナルサーガの事だろう」


 「そんな……」


 「…ぜ、 全然わからない…」


 「まだ続きがあるが言語が古すぎて

 訳す事ができないところがある…







 が……




 最後にこう書いてあった…」








 新たな災いの種芽生えし時


 我 月と太陽に魂を結びて


 彼を新たな王とせん。









 「つまり…こう言う事?



 再び災いが起こった時

 オーディンとマーディンの子が誕生して

 それが神になるって事?」


 「まぁそんなところだ…。


 災いとは恐らくエターナルサーガを

 発動させようとする者…

 そしてアッシュ……





 貴様が……その神なのだ」


 「な!? 俺がぁ!?」


 「そ、 そうよ!! きっとそうだわ…!!

 あのアーディルが証拠よ!!」


 「だが謎が残る…。


 そのマーディンとやらは一体何者なのだ…?」


 「マーディンがもし本当にその知識の神だとしたら

 これは大変な事よ…!!」


 「マーディンに直接聞くか…


 貴様、 居場所は知ってるのだろう?」


 「あ…あぁ。





 え? て事は…」


 「貴方の世界に行くの!」


 「か、 帰れるのか!?」


 「貴様のアーディルがあれば

 ゲートを繋げられるはずだ。



 今すぐ向かうぞ」


 「待ってくれ!!


 だったらもう1人連れて帰る奴がいるんだ!!

 ちょっとそのまま待……」



最後まで話す間もなくアッシュは光と共に消えた。



 「………」


 「あらぁ、 帰って来ないか心配?

 大丈夫よ。 もし逃げたんだったら

 とっくにそうしてるわよ」


 「例えここから逃げても…

 運命からは逃げられん…」













−イフリナ−








ワープドアから出てくるとアッシュはすぐに

ディックを探す。

するとトレーニングルームにそれらしい反応が

あった。

アッシュは急いで向かった。

そしてたどり着くや否やアッシュの手を引っ張り

ワープドアの準備をする。

この状況を飲み込めないディックは驚いた顔で

言った。



 「な、 な、 なんだどうしたんだ??」


 「元の世界に帰るんだよ」


 「え? 嘘ぉ!!?」


 「理由は後で話すから」


 「お前…でもあれどうすんだよ?

 6大魔導…攻めてくんだろ?」


 「6大魔導?


 あぁ、 そんなのないない」


 「へ?」


 「アッシュ…」



部屋にはレリスの姿もあった。

アッシュはレリスを見つめると

ディックと光の渦の中に消えて行った。



 「アッシュ……また…会えるよね…」




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