episode 40 望まれない存在
ハイペースでUPします!!
ただ誤字脱字があるやもしれませんので
その時はごめんなさいm(__)m
最近いろいろと忙しいのでGW中になんとか
あと2〜3話UPします
読者の皆様!!
エターナルを読んで頂いてほんとにありがとうございます。
長文失礼します
「お前…いつの間にそんな力を…」
「だぁぁっ!!」
目にも留まらぬ速さとよく言うが
アッシュの場合“スキャンでも拾えぬ速さ”と
言ったとこだろうか。
ハイレベルな人間でもキャッチするのが困難な程の
アッシュの超スピード。
光速に近い速さだった。
「き、 消えた…そんな…馬鹿な…」
アッシュは背後へと瞬時に移動し
両拳から凄まじい速さのパンチの嵐を浴びせる。
「うがぁ! ごぁっ! な、 何…!?」
そして両手を背中の中心に添えると
掌から衝撃波を繰り出す。
「がはっ…。
(父親のこの私にこれ程の…ダメージを)」
「父さん、 遠慮しなくていいから
本気でやってくれよ」
「遠慮だと…?
お前、 この私に…。
シグナス・バーナムに本気でやれと言うのか?」
「シグナスバーナム…。
シグナス…。
シグナス…」
(皆、 これから俺を…そうだな…
シグナスと呼んでくれ)
(シグナス…親父さんの名前か)
「(あの時確かゼアがそう言ってたな…。
やっぱりこれはあいつの記憶なのか…
俺の父親もシグナス…。
何でだ…?
何で今まで気がつかなかったんだ…)」
「アッシュ、 お前本気で言ってるのか?」
「(そうか…これがアッシュ・バーナムの
本当の真実なのか…。
ミリアも魔力が使えるわけだ…。
ヴァルファリエンなんだから)」
アッシュは次第に構えを解きギガドライヴを解除した。
そしてその場に力無く座り込んだ。
「おい…どうした?」
「(なるほどな…そういう事か…。
シグナス…段々わかってきたよ…。
あんたが何を見せようとしているか…)」
「アッシュ、 おい、 アッシュ!」
「(これが真実なんだな…。
今までの俺の記憶や想い出は偽物…。
子供の頃の記憶がないのは
思い出せないからじゃない…。
元々無いんだ…。
俺はあんたのクローン…。
造られた存在だからな…)」
でも何でだ……?
あんたの想い出なんか見せられて
何の意味があるんだ?
俺に真実を認識させる為か?
俺は…おれは……。
おれは一体…何の為に…生まれたんだ…?
気がつくと景色が変わっていた。
だがミスト村の中という事は間違いなさそうだ。
しかし美しかった景色はそこにはない。
建物が破壊され辺りは火の海と化していた。
この景色、 アッシュは覚えていた。
忘れるにも忘れられない悲劇。
「……これは……」
アッシュの思考回路はパンクしかけていた。
“考える”という行いができなくなっていながらも
とりあえず歩いて回る。
「父さん……か…あさん…。
ミリ…ア…」
そしてアッシュはゆっくりと地面に倒れ込んだ。
火の粉が身体に降り注いでも痛みなどはない。
夢なのか現実なのか…。
シグナスの記憶なのか。
しかしどれにしても心の底から込み上げる
悲しみは変わらない。
アッシュの瞳からは涙が押し出され
意思を持つかの様に流れ続ける。
「な…んだ…よ…これ。
あんた……俺を…どうしたい…んだ…よ」
するとまたもや景色が一辺する。
今度は森の中を走っていた。
突然の事で状況を飲み込めず立ち止まると
後ろから声が聞こえて来た。
「いたぞ!! 1人見つけた!!!」
黄金の鎧を纏った兵士らしき者がアッシュに
駆け寄って来る。
しかしアッシュは逃げようとはしなかった。
これも以前見た景色だった。
「観念したか…へへっ」
「あんた…グランベルク…兵」
「さっさとアーディル抜かれちまえよ化け物め!」
「そうか…確かディウスがアーディルを…」
「さぁ…少しだけ眠って貰おうか!!」
兵士が剣を振り上げてアッシュへ斬りかかった。
剣がアッシュの頭数センチのところで
ピタッと止まると兵士は地面へと倒れた。
その兵士を挟んだ向こう側から走って来る
レリスが目に映った。
「アッシュ! 大丈夫!?
どうしたの?」
「…レリス」
「……よかった。
アーディル抜かれたかと思ったじゃない。
ほら、 早く逃げないと!」
「レリス…俺は…」
「…どうしたの?」
「おれは…造り物なんだ…」
「造り物? 何…どういう意味?」
「そのままの意味だよ…。
俺は…アッシュ・バーナムじゃないんだ…」
「………ちょっと、 薬か何か打たれた?」
「俺は……あいつのクローンなんだ…。
俺は…偽物…なん…だ」
「アッシュ、 今はとにかく逃げないと!」
「俺はアッシュじゃない」
「いいからとにかく走って!!」
「俺はアッシュなんかじゃなぁぁい!!!」
レリスの手を振りほどきどこかへと走って行く。
アッシュは自分自身がわからなくなっていた。
名前を呼ばれてもそれは自分の名前じゃない。
【アッシュ】と言う言葉に違和感を覚え始めた。
「アッシュ! アッシュー!!!」
俺はアッシュなんかじゃない…。
名前なんてない…俺は誰でもないんだ…。
ただの…人形なんだから…。
今度は様々な機械で埋め尽くされた部屋にいた。
自分の身体の色んな所に
吸盤みたいなものがくっつけられている。
そしてレリス、 ゼア、 フィル、 レジェアの
姿がガラスを隔てて見えた。
モニターと自分を交互に見ながら何かを入力するフィル。
「ダメだ…これでも安定しないよ」
「フィル、 そこの数値をレベル60に合わせて
もう一度試してみて下さい」
「ダメなんだよレジェア…。
それ僕も考えたんだけどこれ以上はアッシュの
肉体が消滅するよ…」
「オーブ抽出値を半分にすれば肉体に影響なく
分離できます」
「半分に? そんなの無理だって。
ただのオーブだったらできるかも知れないけど
アーディルを半分になんて
どうやったってできないよ…」
「確かにエネルギーは強力ですが…
可能性は0ではないんです」
「でももし仮に半分に分離できたとして
半分はアッシュにもう半分はどうするの?
半分でも12000バルツもある
アッシュのアーディルに堪えられる
入れ物ってないよ」
「それは…」
フィルとレジェアが話し合う中をレリスが
止める様に入ってきた。
「ねぇ、 少し休憩にしない?
アッシュもずっとあのままだし…。
頭を休めれば何か浮かぶかもしれないよ?」
「……そうですね」
「うん、 わかったよレリス。
…アッシュ、 少し休憩しよ!
今それ取ってあげるから動かないで」
マイクを通してアッシュに話すとフィルは
モニターの画面を数ヶ所触った。
するとアッシュについていた吸盤が
全て一斉に外れた。
「お疲れ様」
レリスはそう言ってアッシュに近寄るが…
「俺に触るなぁ!!」
「!?
ちょ、 ちょちょっとアッシュどうしたの?」
「アッシュじゃない…。
俺は……アッシュじゃないんだ…」
「え? どういう事?」
アッシュは突然天井に向かって叫び出した。
「おい! 元に戻せ!!」
様子がおかしいアッシュに気がついたフィル達も
駆け付けた。
叫ぶアッシュを不思議そうに見ながら
フィルはレリスに話しかけた。
「どうかした?」
「わからない…急にアッシュが…」
「おい、 どうしちまったんだよ!」
「まさか長時間の影響でアッシュに…」
「いえ、 それは有り得ません…。
まだデータを算出していた段階で…」
「うん。
シュミレーションしてただけだからね…」
「そう、 じゃあなんで…」
「そうか…そういう事か…。
あんた達が俺を造ったんだな」
「…造った?」
「そうか、 これは記憶なんだった。
じゃああんた達に聞いても無理なんだな」
「アッシュ、 どう言う事?」
「じゃあこれは答えられるだろ?
ここであんた達は何をしているんだ?」
「何って……アッシュ何言ってるんだよ。
ディウスに君のアーディルを渡さない為に
こうして研究してるんじゃないか。
君が提案した事なのに忘れた?」
「……それで俺を造ったのか」
「…アッシュ、 言ってる意味がわかんないよ。
君を造ったってどう言う意味なの?」
「そうか。 まだそこまで行ってないんだな。
じゃあ教えてやるよ。
あんた達はアッシュを造るんだ。
アッシュ・バーナムのクローンをな」
「なっ!?」 「なにぃ!?」
「え!?」 「!?」
「それにアーディルを半分宿らせて
他の世界に送るんだ」
「ちょ、 ちょっと待ってよアッシュ。
意味が理解できないよ」
「そうかわかったぞ!
シグナスはアーディルが欲しいんだ。
俺に宿った半分のアーディルが」
「アッシュ…どうしちゃったの…?」
「シグナス…やっとわかったよ。
あんたが何で俺を造ったのか」
そう、 全てはディウスからアーディルを守る為
あんたのアーディルはフィルやゼア達と違って
特別って事ぐらい聞かなくてもわかる。
俺を造ったぐらいなんだからな。
そして今あんたが半分のアーディルを求めている。
何で今あんたが求めてるか俺にはわからない。
きっと“特別な力”を使いこなせるだけの
域に達したとかそんなとこだろうな。
だから俺について来て欲しかったんだ。
俺は…ただの入れ物に過ぎない。
そうなんだろ?
シグナス…。
いや…。
アッシュ・バーナム!!
「確かに…お前の言う通りだ…」
そしてアッシュはシグナスの部屋へと
戻ってきた。
「あんなものを見せて……
俺を苦しめてそんなに楽しいか?
あんな回りくどい事をしないと俺がわからないと
思ったのか?」
「アッシュ」
「俺をアッシュと呼ぶなっ!!」
「…………」
全身を震わせてアッシュは一言一言に
いろんな思いを込めながらシグナスにぶつける。
悲しみや怒り…そういう一つのカテゴリーには
収まりきれない複雑な思いだった。
「何であんな映像を見せたんだよ!!
俺に何の意味があるんだよ!!」
「…アッシュ」
「俺はアッシュなんかじゃない!!」
「いや、 お前はアッシュだよ」
「…何だそれは哀れみか?
人形の俺に同情してるのか?」
「お前は勘違いしている」
「勘違い? ふっ…あはははは!!
勘違いだって? 何も勘違いなんてしてないさ
俺はあんたのクローン…違うか?」
「聞け…。
アッシュ、 俺が見せた記憶…
あれは…お前の記憶なんだ」
「……俺の?
言ってる意味がわからないな」
「確かにお前は俺のクローンだ。
だがそれは肉体的な意味での話だ」
「………」
「意識はお前が本物のアッシュなんだよ」
「何だっ…て?」
「あの時…。
クローン化が成功した時だった。
お前の身体に半分のアーディルを宿す工程で
意識も一緒に移ったんだ。
成功直後俺達は何日も目を覚まさなかったらしい。
俺…
つまり別人格はその間に誕生したんだろう。
お前に移ったはずの記憶が
何故か断片的にこの身体に残っていた。
それを元に人格は出来上がっていった。
“俺”…がな」
「そ、 そんな…事が」
「俺はお前より数日早く目が覚めた。
そして自分は別人格だとすぐに気がつく事になる。
俺は……絶望したよ。
モニターを見ると意識がクローンに移り
消える事なく安定していたんだからな。
俺は偽物なんだと…絶望は恐怖に変わった。
この事はまだ誰も知らない。
もし知ってしまえば俺は消される…。
俺はお前に移った記憶を取り戻したいと思った。
それで完全なる“俺”になれると思ってな。
結果は失敗に終わった。
このままお前が目覚めればやっかいな事になる。
お前の記憶を封印し、 そして別次元の世界に
送る事を思いついた。
ディウスからも守れるし一石二鳥だった。
反対する者などいなかった」
「………」
「だがディウスの事では誤算があった。
奴はすぐにお前の後を追ったんだ。
アーディルを吸収したディウスは信じられない
パワーアップをしていた。
自分だけで異次元に穴を開け
お前の世界と繋いだ。
そんな真似、 今の俺にだってできない…。
だがディウスも完璧ではなかった。
奴はお前より時間軸のずれた時代に飛ばされた。
計算外だったと思う。
だがそれを利用して自分の帝国を築いたんだ。
グランベルク帝国をな…。
そしてお前がやって来るその時まで
失った力を蓄え始めた。
数千のヴァルファリエンのアーディルを吸収した
ディウスのアーディルでさえ堪えられなかった。
それだけ異次元の世界と繋ぐのは
膨大なエネルギーを必要とするんだ」
「………」
「ディウスがお前を送った世界にいると知ったのは
遥かに遅かった。
きっかけはこの世界とお前の世界とが
引き合い始めた事だった。
原因はディウスが以前繋いだ時の、 エネルギー
そしてそれで生じた穴だった」
「…それだったら原因は俺にもあるんじゃないか?
俺もそうやって送られたんだろ?」
「計算に計算を重ね時間軸もちゃんと
影響がない所を選んだお前の場合と違い
ディウスは力任せにエネルギーを流し込み
無理矢理穴を開けた。
だからお前のは要因には入らない」
「ディウスは…
やっぱりこのアーディルを狙って来たのか?」
「それ以外考えられん…。
俺達はお前のアーディルを回収する為
俺の中の記憶を見せたり
コンタクトを取ったりしていたと言う訳だ。
本当はもっと早く気づいてもらうはずだったが
途中で予想外な邪魔が入った。
6大魔導の、 ガルだ」
「あの時か…」
「正直俺達は焦った…。
まさか6大魔導が動くとは思ってなかったからな。
それに俺達には弱い相手でもお前から見れば強敵。
最悪の事態だった。
おまけに俺達がお前の世界に行くと
引き合うバランスが一気に崩れる。
例え1人でもな」
「だからあんな事をしてたってわけか…」
「…俺はこの時から独自にお前を監視する事にした。
お前はガルを倒した。
これには本当に驚かされた。
お前の成長はここから一気に腫れ上がっていく。
そうしてお前を監視している間に
次第にこう思うようになっていった。
お前の全てが欲しいと」
「…………」
「お前のパワー、 知識、 経験そして記憶
全て手に入れたいと強く思った」
「……俺の……?」
「お前はヴァルファリエンの力を使わずして
ガルを倒した。
アーディルに頼らなくても
お前は何故か超パワーを発揮できるんだ。
その力がプラスされれば間違いなく
俺は究極になれる…」
「あんた……それじゃあ、 あいつと…
ディウスと同じ考えじゃないか」
「……そうかも…知れんな」
「…シグナス……あんたは…」
「……フィルやレリスはお前に意識が芽生えたと
勘違いしている。 今でもな…。
これは俺にとって絶好のチャンスなんだ」
「………」
「俺は偶然里で“転身の秘術”と出会う。
2人が1つの存在として生まれ変わる。
知識、 経験、 魔力、 全てを吸収する。
術の効果はまさに俺の望みそのものだった。
調べていく内に封印された禁断の術だと言う事も
知った。 恐らく我々の祖先が封印したんだろう。
何から何まで条件が揃っていた。
俺は運命だと悟った」
「俺は……俺は………。
あんたに吸収される為に造られたのか…」
「…いや、 違う…。
お前は俺のアーディルを宿す器…入れ物だ」
「……入れ物」
「間もなく里へ到着する。
俺は術を身につけお前を吸収する。
お前の役目は…
そこで終わりだ……」