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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
33/73

episode 30 帝国の力

episode30ということできりがいいので急遽UPしました。


−キルキア−

とある村




神父の様子がおかしい。

この獣に見覚えがあるのだろうか…。



 「あの時の…あの時の魔物です!!」


 「グルルル…」



黒く尖った牙をちらつかせ、 ジェノ達を威嚇する獣。

真っ赤なたてがみがまるで炎の様に揺れる。



 「ジェ、 ジェノ…すごい魔力だね…」


 「(…セレインはこんなバケモンを

 たった1人で殺ったってのか…)」


 「グルルル…ガァ…アァァァっ!!!」


 「おいっ、 離れてろ!」


 「は、 はい…!」



神父が無事離れた事を確認すると2人は

一気に魔力を解放する。

底知れない獣の魔力を感じたジェノ、 リルティは

初めから魔力をフルパワーで解放した。



 「来るぞっ!!」


 「グルアァァ!!!!」



いきなり巨大な体で突進してきた獣は

左右に散った2人を瞬時に確認すると

勢いよく尻尾をしならせ振り払う。

低い音と共に風を切ってジェノに向かっていく。



 「な、 なに!?

 ぐぉ…」


 「ジェノ!!

 開け! 我が魔力の扉!!


 アイスファングゥゥ!!!」



直ぐさまスペルを放ったリルティ。

しかし獣は体を回転させて近くのジェノを

その風圧で押し退けると地の底からとも呼ぶべき

雄叫びを上げ、 リルティのスペルを掻き消した。



 「う、 うそ…スペルが通じない…」



吹き飛ばされたジェノはすぐに体勢を立ち直らせ

また獣へと向かって行く。

走りながらフォースエッジを精製してそれに魔力を込めた。



 「ちっ、 本当にバケモンだな…。


 オォォラアァァァックス!!!!」



空高くジャンプして獣の尻尾目掛けて放ったオーラアックス。

真空の刃が獣の尻尾を切り刻む。

ダメージがあるのか獣は痛々しい叫びを響かせた。



 「効いたか…?」


 「グルァッ!!」


 「…な!?」



獣はオーラアックスの刃を弾き、 なんと口から

何かを出そうとしていた。

巨大な口を限界まで開け、 巨大なエネルギーの塊が

ジェノをまるごと飲み込んだ。

とっさに全魔力をシールドに送り直撃する

エネルギーの塊を待ち構える。



 「俺様をなめんなぁぁ!!!!」



ジェノに命中すると大爆発を起こした。

獣はその後、 爆発に気を取られている

リルティの元に突進していく。



 「!!?」



右から来る巨大な爪がリルティの身体を裂く。

シールドで重傷は避けられたものの、

ダメージはかなりのものだった。

身体から滲み出る血が地面に飛び散る。

また反対からも巨大な爪がリルティを狙う。



 「きゃぁぁっ!」


 「(リル…!?)うぐ…。

 う、 うぉぉぉ!!!!


 こぉぉんのぉぉ! やろろぅがぁぁ!!!!!」



防ぎきったジェノはフォースエッジに

魔力をフルパワーで送り、 その強度を増した斧を

力いっぱい投げ飛ばした。

魔力がこもった斧は青い光を放ち、 獣の

背中へと飛んで行く。

それが終わるとジェノはすぐにダッシュで獣に駆け寄る。



 「開けぇ! 我が魔力の扉ぁぁ!!」



投げた斧が獣の背中に命中すると、

なんと背中の皮膚をえぐり骨に刺さった。

耳を突ん裂く声を上げた獣の前まで来ると、 

両手を地面に向けて魔力を放つ。



 「しにやがれぇぇ!!!


 イィンスパァイィアァァァ!!!!」



すると獣を取り囲んだ光の円から土が持ち上がり

地面から巨大な針が胴体ごとを貫いた。

驚く事に串刺し状態になってもまだ獣は生きていた。



 「ギャァァァ!!!」


 「ま、 まだ生きてやがる…」



フォースエッジを呼び戻して再び魔力を込め

フォースエッジを斧から光の玉へ変化させると

胸辺りで安定させて獣との距離をとった。

ジェノの両手が胸の前で激しく揺れる。



 「はあぁぁぁぁ〜!!」


 「ジェ、 ジェ…ノ…。 うぐっ…」



傷ついたリルティは力を振り絞って立ち上がると

攻撃を再開させる。



 「あたしもやられてるだけじゃないんだから!!

 …虚空の空に浮かぶ月よ

 我が扉に光を落とし

 双龍の門と化せ…」



リルティが念じると両腕に異なる紋様が浮かび上がって来る。



 「心術!

 

 魔双心!!!」


 「リルーッ! 土と風だ!!

 こいつは土と風に弱ぇー!!」


 「りょ〜かい!!」



光り輝く紋様の宿った腕に魔力を流して

スペルの準備に入った。



 「開け! 我が魔双の扉ぁ!!

 

 エアァァ・スパァァイクゥ!!」



エアサークルとスパークニードルを放ったリルティ。

真空の円刃と土で精製された無数の針が一気に獣へと飛ぶ。



 「てめぇもこれで…


 さいごだぁぁぁぁ!!!」



胸に圧縮された光の玉を持ち上げて

ぎりぎりまで魔力を押し込む。



 「スティンガァァァァ!

 サウザントオォォォー!!


 うるるるぁぁぁぁっ!!!」



リルティのダブルスペルに

ジェノのフルパワーで放たれたスティンガーサウザント。

これをまともにくらった獣はひとたまりもないだろう…。

ジェノとリルティの攻撃は大爆発を引き起こした。

爆風が辺りに漂い、 煙りが舞う。

2人とも荒い息遣いで獣の最後を見届ける。



 「はぁ…はぁはぁ…。

 や、 やった…よね…?」


 「こ、 これで生きてたらバケモンだマジで…。

 はぁ…はぁはぁ、 ぐ…や、 やべぇ…

 フルパワー連発したからま、 魔力が…」



地面に手をついて踏ん張っていたが

暫くすると仰向けに倒れた。

荒い息遣いが自身の耳が聞き取る。

話す事も辛いこの状態で顔だけを起こして

死んだであろう獣を見据える。

リルティも傷口を押さえながらゆっくりと座る。



 「(す、 すごい…。

 な、 何なんだ…この人達は……)」



爆風が収まり煙りがやんだ。

獣は黒焦げになって倒れていた。

それに安心したのか2人の表情が少しだけ緩む。



 「やったね…へへ」


 「はぁはぁ…あ、 あぁ……ま、 マジで辛れぇ…。

 や…やり過ぎたな…くっ…はぁ…はぁはぁ」


 「て…てか、 ジェノさ土属性使えるんだね。

 あれ結構ランク高いスペルだよ…?」


 「ま、 まぁ…な…。

 はぁ…はぁはぁ」



獣を警戒しながら神父が恐る恐る近づいて来る。



 「死んだのですか…?」


 「はい…でも一体何故急に現れたんでしょう…」


 「セレインがいなくなってから今までこんな事

 一度もありませんでした…」


 「セレインと関係があるんでしょうか…」


 「わかりません……」



暫く俯きながら沈黙する2人。

ジェノは息を整え立ち上がると獣の方へ歩き出した。

それを目で追うリルティと神父。



 「(……セレインはこんなバケモンをたった一撃で…)」



セレインが一撃で倒したと言う事に疑問を抱くジェノ。

巨大な身体見上げていると獣に異変が起きた。

突然獣の体が光を放ち宙に浮き上がったかと

思えば光と共に消え去った。



 「な、 なんだよ…驚かせやがって…」


 「獣が…消えた…」



すると微かにだが何か音が聞こえてくる。

音を感知できたのはジェノだけだった。

3人は音がする場所へと急いだ。

そう、 あのオルゴールの奏でる音色だった。



 「またオルゴールが鳴ってる…」


 「獣のせいで聞こえなかったけどな、

 多分ずっとなってたんだろうぜ…」


 「私の家に…何故…」


 「神父様は知らなかったんですか?」


 「アンディが持ち出したっきりです。

 この家は何故か入る事ができないと言うのに…

 何故…私の家に…」


 「え、 あたし達の時は入れましたよ?」


 「本当ですか!?」


 「何回か入ったぞ。

 オルゴールを見たのもここだからな

 …くっ! ダメだ開かねぇ…」



そう3人が話している間もオルゴールの音色は聞こえて来る。



 「ここへ来てどれぐらい経ったんだ?

 早く村から出ねぇとグランベルクが来るぞ」


 「うん…何とかここから出ないと…」


 「貴方達も村から出られないんですか??」


 「そうなんです。

 セレインの謎が解けたら出られると思って

 ここまでやって来たんですけどぉ…」



するといきなり家の扉が音を立てて開いた。



 「と、 扉が…勝手に…」



神父は思い立ったかの様に中に入って行く。

顔見合わせた2人もその後に続いた。

直ぐさま2階のオルゴールの鳴る部屋へと急ぐ。



 「セレイン!! おまえなのかい…?

 私が悪いんだ…! 許してくれるとは思っていないが

 この人達は何の関係もないじゃないか!!

 出してやってくれ! 頼む…」


 「ユ…ミ…ル…」


 「セ!? セレイン!?」



オルゴールから白い霧が出て来ると

一カ所に集まりセレインの幻影と化した。



――この時をずっと待ってた――


 「ごめんよセレイン…なにもかも私が悪いんだ…」


 「おい、 セレインって…ただのエルフじゃねぇかよ」


 (しぃー!! 黙ってて!!)


――謝るのは私だよユミル…

 貴方を助けたくてした事が逆に苦しめてるなんて

 ごめんなさい…――


 「何故私を生き返らせてくれたんだ!?

 こんな最低な人間を…」


――貴方を愛しているからに決まってるでしょ…

 私は全ての力を使って貴方を助けたの

 私は…もう貴方と一緒には暮らせないけど

 ずっと貴方を見てきたわ…――


 「セレイン…」


――この150年間ずっと貴方を見てきた…

 私の祠を作ってくれた事や毎日私に

 話しかけてくれた事も全部わかってる――


 「…セレイン…うぅ…うう」


――泣かないでユミル

 あの人達が魔物を倒してくれたおかげで

 今こうして話ができているんだから――


 「…封印されてたのか…。

 だが何故だ? 獣はてめぇがやったんだろ」


――あの獣は魔物ではないんです

 あれは私の思いが具現化した物…――


 「…じゃああの時もそうなのかい?」


――私の悲しみがあの魔物を作りあげたの…

 あの時もどこかで感じてた…――


 「なるほどな、 てめぇが一撃でやった訳が

やっとわかったぜ」


 「もぉぉジェノ〜! 少し黙っててぇ!」


 「な、 …んだよ、 何でそんなキレてんだ?」


 「セレイン…これからも私は罪を償っていくよ…」


――その必要はないわユミル…――


 「…え…? どういう事だい?」


――あの獣を倒してくれたから封印が解かれたの。

 ユミル、 貴方はもう普通に暮らせるのよ。

 私が消えたら自動的に全て元に戻るから――


 「消えたら…? セレインもう会えないのかい!?」


――言ったでしょ? 私は貴方と一緒には暮らせない…。

 私はこの後、 消えてしまうの…。

 存在もなにもかも全てね…―


 「駄目だ…セレイン…行かないでおくれ…

 私1人じゃ生きていけないんだ…」


――可愛い男の子がいるじゃない。

 私達の子だと思って立派に育てて…――



セレインの幻影は少しずつ薄く見えなくなっていく。

神父の涙交じりの声も虚しく段々と消えてしまう。



 「駄目だ!! セレイン!!

 行かないでくれぇ!!」


――ユミ…ル、 あ…なた…に会えて

 本当…幸…せだ…た…

 わた…し…生涯…で…一度だ…

 愛…した…ひ…と…――


 「セ…セレイン? セレイン!?

 

 セレイィィーン!!!!!!!!

 うう…う…ううう…」


 「神父さん…」



オルゴールの音色が完全に止まると

幻影は霧に戻り、 辺りに散った。

神父はそのオルゴールの箱を大切に抱きしめながら

オルゴールのネジを回した。



 「そんなとこについてたのか…」


 「箱の中までは見なかったからね…」



再びオルゴールの音色が鳴る。

それはセレインが心を込めて作ったたった一つのオルゴール。

奏でる音は悲しくも切ない、 まるで泣いているかの様だった。

そんな中、 リルティがある事に気づいた。



 「そこ…欠けてません?」


 「……本当ですね…

 私が投げた時に…欠けたのかな」


 「直しましょうよ!!

 これだと本当の音が聴けないじゃないですかぁ!」


 「待って下さい…確か…」



神父は1階に降りて修理に使う工具箱らしき

箱を手に戻って来た。

そしてオルゴールを修理し始める。



 「……これでどうでしょうか…」



神父は再びオルゴールのネジを巻く。

すると…。



 「……本当は…

 こんな綺麗な音色だったんですね…

 全然さっきとは感じが違いますよぉ」


 「そうですね…こんな優しいメロディーだったなんて…

 セレイン…ありがとう…」



たった1音、 たったの1音だけ欠けて

鳴らなかった真実の音色。

不思議な事にそれだけで悲しみのメロディーから

優しいメロディーへと変わったのである。

全てが元通りになった後でわかった事実…。

それはセレインが起こした最後の奇跡だったのだろうか…。

3人は家を出て村の中央へとやって来た。

既に村は元通りとなり皆、 何も無かったかの様に賑わう。



 「みんな元通りだねぇ!

 これで一見落着ぅ〜♪♪」


 「本当にありがとうございました。

 何度お礼をしても足りないです」


 「…よし、 じゃあ行くか」


 「うん! 山へ急がないとね!!」


 「山…? もしかして【アスファ山】の事ですか?」



リルティはここからも見える大きな山を指差すと

神父はまた質問して来た。



 「アスファ山ですね。

 あんな山に一体何のご用で?」


 「あたし達、 実はある植物を探しにここへ来たんです」


 「植物…?」


 「月尾草と言う植物だ。 知ってるか?」


 「つきびそう…」



神父の表情が急に険しく変わる。

どうやら何か知っているような感じだが

神父はそのまま考え込んでしまった。



 「神父…さま…?」


 「月尾草と言うのは恐ろしい植物なんですよ?

 貴方達、 それを知っていて取りに行くんですか?」


 「あのぅ…あたし達、 頼まれただけで

 どんな植物かまではちょっと…」


 「なにか知ってんなら話せ」


 「月尾草とは…それ単体では何て事もないただの草ですが

 ある物と調合する事で恐ろしい毒薬と化す植物なのです…。

 噂では人の魂を取り出すとか…」


 「た、 たましいを…」


 「取り出すだと!?」


 「誰に頼まれたかは聞きませんし

 誰に使うのかも知らなくていいです…

 ですがもし人間に使うのなら間違いなく…死にますよ…」



月尾草の効果を初めて知ったリルティとジェノは

お互い驚きと、 疑問で頭の中がいっぱいになった。

マスター・エイディアは何の為に2人に命令したのだろうか。

行き着く問の答えは2人とも同じ所だった。



 「ね、 ねぇジェノ…まさか」


 「あのマスター…


 アッシュを……殺す気だ…」






−ミダルヴァ−




その頃…ついにロゼとリーベルトのレグが

ロン達の前に現れた所だった。



 「レグナガン!! 発射っ!!」



ロンの一声で周りのレグが一斉に

フルパワーのエネルギー波を撃ち込んだ。

セイバが使った大量の魔力と引き換えに高密度の

エネルギー波を放出する事ができるあの技だ。

それをフルパワーで撃ち放つ。






【レグナガン】

マシーナ独自で編み出した技術で

大砲の様な巨大兵器を召喚しレグと

繋ぐ事によって使用できる。

ただ発射するには大量の魔力を送らなければならない。

魔力によって威力は増大し、 弱い者なら

細胞レベルにまで分解される。






ロゼとリーベルトのレグに向かって

数十のレグナガンが放たれた。

これをまともにくらうといくら

ロゼやリーベルトであっても消滅するだろう。


 「!? やばい!!」



ロゼはレグをすぐに光に変えて自身の中にしまう。

そして地上に降り立って行った。

しかし一方リーベルトは…。



 「凄まじい魔力の塊だ。 …面白い…。

 …むんっ!!」



リーベルトは力を入れるとシールドを発動した。

そしてマシーナのレグナガンが命中する。

リーベルトのシールドがかろうじて防いでいた。

そこへロンのフルパワーのレグナガンが飛んで行く。



 「消えろリーベルト!!」


 「っ!?」



リーベルトが気づいた時には既に命中していた。

シールドが剥がれロンが放ったレグナガンが

まともに直撃する。



 「やったか!!」


 「ロンさん!! やりましたねぇ!!!」



少し口元が緩んだロンは地上に下りたロゼを見た。

ロゼはただニヤッと笑みを空にいるロンへと向ける。


そんな…まさか…。


ロンはロゼの笑みの理由が気になった。

想像を絶する威力を誇るレグナガン。

リーベルトのレグに命中し辺りは爆風の嵐で

まだ収まっていない。

スキャンでリーベルトの魔力を探るロン。



 「い、 いくらなんでもまともにくらったんだ。

 そんな事あるわけがない…」



爆風が収まると煙りも消えていく。

あの威力の攻撃を受けて例え死に至らなかったとしても

相当のダメージがあるはず…。



だが…。



 「そ、 そ、 そんな馬…鹿な…」



確かにレグは破壊されていた。

しかし消滅したのはレグのみで

リーベルトはかすり傷すら無かった。

彼のシールドの性能はとてつもなく高い様だ。

しかもクイックフェザーがいつのまにか発動している。

あの攻撃の中シールドを張って堪えていた

彼のどこにスペルなどを使う間があったのだろう…。



 「さすがにあれは防げんか…。

 また作り直さないと…な」



時折光の翼を羽ばたかせながら宙に止まるリーベルト。

そしてロゼもスペルを使い浮遊しながらゆっくりと

リーベルトの横に着いた。



 「レグはまた作ればって、 あんたレグ作ると

 何日もそれに費やすじゃないかー。

 こだわり過ぎなんだよ。

 あたしのレグは3日とかからないんだから」


 「その割には、 大事そうに閉まったじゃないか…」


 「あ、 あれは……。

 あんた…痛いとこ突くじゃないか…」


 「こ、 こんなにも………こんなにも差があるのか…」



信じられない事実に心の底から恐怖した。

体の芯から震えが来る…本能で悟ってしまったのだ。

もう、 かなわないと……。



 「ラ、 ランス…。 聞こえるか…」


 「……はい」


 「ディルウィンクエイスへ行って伝えてくれ…」


 「……ロン…さん?」


 「作戦失敗だと……。 早く行け…」


 「り、 了解…」



ランスはレグを飛ばしてディルウィンクエイスへ

向かおうと微かな魔力をレグに送る。



 「あたし達から逃げられると思ってるのかい?」


 「ロゼ、 ほっとけ…。

 どうせディルウィンクエイスに行くんだ。

 今殺しても後で殺してもそう変わらん…」


 「まっ、 そうだな」



ロゼとリーベルトはランスを見逃す事にした。

絶望した表情を残してランスはミダルヴァを後にする。



 「さぁ、 マシーナのエレメンツども!!

 相手になってやるからレグから降りなー!

 そのままじゃ確実に死ぬよ!!」



ロンは戦意喪失していたが他のエレメンツは

まだ諦めてはいなかった。

レグに残りの魔力を注ぎ込み、 ロゼ達を攻撃する。



 「くらぇぇぇぇ!!!」


 「人の話は……


 ちゃんと聞きなぁぁ!!」



魔力を乱射してくるマシーナのレグに

ロゼは背中のクイックフェザーに魔力を送り

レグに飛び込んで行った。

そしてレグを真上から垂直に手刀を繰り出すと

まるでバターの様に容易にレグを真っ二つに割ったのだった。



 「やめろ……無理だ…お前達では…」



ロンの言葉はマシーナのエレメンツには届かず

最初に突撃したレグを合図に皆突撃を開始した。



 「だぁぁぁぁ!!!」


 「ふんっ」



リーベルトに接近する20機のマシーナレグ。

レグナガンを使い、 魔力をほぼ使い果たした彼等に

残された攻撃手段、 それは自らの命と

引き換えに突撃する事だった。

それをリーベルトは深く構え、 両手に魔力を溜める。



 「開け、 我が魔力の扉…」


 「させるかぁぁぁぁ!!!!」



マシーナの1人が阻止しようとレグを体当たりさせるが

リーベルトにぶつかるとマシーナのレグは爆発する。

その爆風の中から出て来たリーベルトは

そのまま何事も無かった様にスペルを放った。



 「ギガ…スパーク…」



体を縮こませ激しいスパークと共に一気に大きく広げると

全身から凄まじい程の電撃を放った。

周囲にいたレグは全て塵と化した。



 「それだけいてこのザマとは。 弱すぎる…」



そして最後のマシーナレグがロゼに向かう。

それはロンのレグだった。

全ての魔力を振り絞って突撃するロン。



 「お前達だけで、 あの世へ行かせはせん……。



 ぐおぉぉぉぉくたばれぇぇ!!!!」


 「あんたは特別にあたしの得意スペルで殺ってあげる」



ロゼは魔力を全身にみなぎらせてスペルの詠唱を始める。



 「開け! 我が魔力の扉!!


 じゃあな、 ロン指揮官♪


 スパイラルブリッツ!!」



勢いよく両手を前に押し出すと上空から無数の稲妻がロンのレグ目掛けて落ちてきた。

それが幾重にも重なってロンのレグの周りにスパークで出来たバリアが形成されるとそのまま縮小して行く。

そして一気に膨張した次の瞬間、

レグは激しい爆音と共に破裂した。



 「あら…。 ちょっとやり過ぎたか…。

 あっはっはっはっは!!!」



マシーナは…壊滅した。




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