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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
27/73

episode 26 隠された真実

物語もいよいよ中盤へと差し掛かってきました☆それでは26話をお楽しみ下さいませm(__)m



−ディルウィンクエイス−

セントラルエリア






地面に転がり回り汗と共に怒鳴り散らす。

脳みそが膨脹し破裂しそうな程の頭痛を今ジェノは必死にそれと闘っていた。

周りの誰もが彼の名を呼びかけるが当然ジェノは返事をしない。

悶え苦しむ身体を包む様に抱きしめるリルティは泣き叫びながらディックに問う。



 「ディックさん!! ジェノは…ジェノはどうなったんですか!?」


 「わかんねぇよ! 俺も何が何だかさっぱりだ」


 「……一応スキャンには何も異常は見当たらないし…どうなっちゃったのよ…ジェノ」


 「…待て……治まって来ているみたいだぞ」



クレイドの言葉にもう一度ジェノの顔を確かめるリルティ。

潤んだ瞳に映ったのは彼の安らかになっていく表情であった。

ジェノはしばらく粗く呼吸していたが次第に落ち着いていきやがて眠りに落ちた。



 「ジェノ…? ジェノ? ねぇジェノ!?」


 「心配ない…眠っただけだ」






ジェノが目を覚ますと何も見えない暗い場所にいた。

何の考えも浮かばないままゆっくりと立ち上がり周りを見渡す。



 「(どこだ…? 俺様は…一体…どうなった…?)」



どこが前なのか方向もわからないままとりあえず歩いてみる。

真っ暗な闇をひたすら何かが見つかるまで歩いていく。

歩いている気がしない奇妙な感じだった。



 「(俺様は…死んだのか…?)」






−ディルウィンクエイス−

居住区・一般医療施設






ジェノはベッドへと運ばれた。

すぐに検査が始まり本格的に今の状態の分析と治療を始める。

となりには意識の戻っていないマーディンが死んだ様に眠っていた。



 「(マスターに次いでジェノまでも……アッシュは変になっちまうし……くそっ!!)」



部屋の外で壁に頭をぶつけながらどうする事のできない自分と今の状況に悩むディックをそっと見つめていたティナ。

ディックの心の声が聞こえているかの様に彼女もまた顔を下げる。



 「先生!! ジェノは…ジェノはどうなったんですかぁ!?」


 「今始めたばかりなのでまだ何とも…すみません今からは本格的に検査するので検査室に彼を移さなければならないので…これで」


 「リルティ、 先生の邪魔をしたら駄目だ。

 さぁ…」


 「………はい…」



俯き加減で部屋を出ていくリルティの肩を後ろから支えながらクレイドも部屋を出て行った。










−バリオン領−

とある森






森と森の間に浅い川が流れ川の真ん中辺りに人が座れるだけの岩がある。

その岩の上に傷を追いながらも何とか逃げ延びた1人のエルフ……そう、 ディアナの姿があった。



 「…はぁ…はぁ」



彼女の身体は既に限界を迎えていた。

タフなスタミナも魔力も使い果たし、 与えられた任務にも失敗…。

性も根も尽きた今の彼女は自分のハウスに帰る資格はないと悟ったのかここで自害を決めようとしていた。


息を調えながら目を閉じると1年前のある出来事を思い出していた。

この任務に就いた時の事を……。










1年前…。






−エルザード国−

マナフォビッド



エルザード国は世界で唯一エルフだけが暮らしている国である。

もちろん国もエルフが治めている。

エルザード国は大陸自体が空にある浮遊大陸で言わばディルウィンクエイスの巨大版と言っても過言ではない。

一説によるとディルウィンクエイスはエルフが関与している為それを真似て作られたと言われている。


マナフォビッドと言うエレメンツハウスはその大陸の中心に位置し、 城そのものがハウスとなっている。

従って国王とはすなわちエレメンツマスターの事を意味するのだ。


これは今から1年前の出来事である。






−マナフォビッド−

マスタールーム



 「君達は今よりエレメンツクラスCとして任務にあたってもらう。

 候補生とは違い本格的な任務だ、 そこでチームを組んでもらう事になる。

 今から私が言うメンバーで任務を熟してくれ。

 まずは……」



部屋に10数名のエルフがきちっと整列し自分の名前が呼ばれるのを待っていた。

その中に、 ディアナの姿があった。

次々と呼ばれてチームとなり解散していくエルフ達。



 「ディアナ、 ノア、 ドレイア、 前へ」



呼ばれた3人は前へ出て再び整列する。



 「お前達はこの中で1番成績がよくそれに能力も優れている。

 これからは3人の特徴を把握し、 上手く活かして任務を成功させてくれ。

 お前達には期待しているぞ」


 『はい』



それが3人の出会いであった。

それまで候補生時代では言葉を交わす事も無かった3人。

初めはお互いを理解する事は無かった。

ノアは楽観的、 対象的に細かく冷静に判断するディアナ、 無口なドレイア。

しかし任務を重ねる度に少しずつチームとしての力を発揮し始めていく。


それから様々な任務を熟して来た3人はある任務に就く事になった。

マスタールームへと呼び出された3人は部屋の扉を開けた。



 「来たか…」


 「マスター・ルシア。

今回は急な任務なのですね」


 「ディアナ、 今回の任務はいつものそれとは違うのだ。

 極めて極秘な任務だ」


 「ルシアさまぁ、 だったら何でそんな重要な任務をオイラ達クラスCがやるんですか?」


 「クラスBやAだと能力的に問題があるのだ」


 「能力的?」


 「それも後で説明してやる。

 まずは任務を言う。

 お前達はこれよりディルウィンクエイスに潜伏し、 そこでエレメンツになってもらう」


 「ディルウィンクエイス?

 あのハウスは我々とは友好的なハウスのはず…。

 何故その様な事を?」


 「いいか? 今から約6ヶ月後にアッシュ・バーナムと言う男がディルウィンクエイスのエレメンツとなる。

 だがこの男は人間ではない…」


 「人間じゃないって、 エルフって事ですかぁ?」


 「アッシュ・バーナムは…

 ヴァルファリエンだ…」


 「な…!?」


 「ルシアさま、 い、 いま、 ヴァ、 ヴァルファリエンって…?

 あ、 あ、 ああの…伝…説の……?」


 「そうだ…。

 これは我がエルフの神、 ジーナ様の予言なのだから間違いない」


 「……それで我々はどうすれば? 潜伏の訳を教えて下さい」


 「…皆知ってると思うが意識体であるジーナ様の寿命はそう長くはない…。

 だがヴァルファリエンが宿すあの超エネルギーを放つオーブ…アーディルがあればジーナ様を元の形に戻す事ができるのだ」


 「本当ですか!?」


 「君達3人はディルウィンクエイスのエレメンツとして潜伏しアッシュ・バーナムを側で監視、 報告が基本任務だ。

 そしてアーディル奪還の隙が出来たら持ち帰ってくれ」


 「マスター・ルシア、 それはバリオン国との条約を無視する事になるのでは?

 戦争になりますよ?」


 「そうだ…ジーナ様はもちろん望んでおられない…。 だから極秘任務なのだ。

 ディアナ、 ジーナ様は我々エルフの神だ…希望なのだ。 もし戦争となるのであればやむを得ないだろう…」


 「いいじゃないすかぁ♪

 オイラは全然戦争ありですけど☆」


 「ノア、 少し黙ってろ。

 マスター・ルシア、 私は命令に逆らうつもりはありません…それもジーナ様の存続がかかっていると言うのなら…

 しかし友好的な国はバリオンただ1つ…それを失う事になるのですよ?」


 「ディアナ…やるかやらないか2つに1つだ…」


 「…もちろん受けます」


 「全ては我がジーナ様の為に」


 「全ては我がジーナ様の為に…」










そして目を開けたディアナ。

辺りはすっかり夜になっていた。



 「眠っていたのか…?

 ふっ、 我ながらたいした生命力だ。

 …まだ生きてる」



穏やかな流れの川の音がジーナの耳で囁いている。

微かに虫の音と風で揺れる森達。

冷静に考えろと言われているかの様だった。

ディアナは森や川達の助言に従い冷静に次の行動を考える。



 「…ノア達と合流してマスター・ルシアに報告…そして再びアッシュ・バーナムを見つけアーディルを暴走させる。

 暴走させて呼び出された住人に魔力を奪われている隙を狙いアーディルを抽出し、 そして持ち帰る…。

 問題は…あのとてつもない力をどうするかだ…










−グランベルク城−

謁見の間






 「ご報告致します。

 ディルウィンクエイスで物凄い魔力を捉えました。

 そしてディルウィンクエイスは崩壊している模様…」


 「原因はなんだ?」


 「それはまだ調査中です」


 「そうか…あのハウスを崩壊する程の魔力…その魔力のレベルはわかるか?」


 「し、 信じられない事ですが…恐らくレベル7…」


 「れ、 レベル7だとぉー!!?」


 「い、 いえ…シキ様…。

 それはディルウィンクエイスを崩壊した時のエネルギーから算出したものでして…お、 恐らく本体となるとそ、 そ、 それ、 い、 以上に…」


 「レ、 レベルせ、 せ、 7以上だというのか!?」


 「くっくっくっあははは。

 シキ、 何を恐れてるんだい?」


 「へ、 陛下…レベル7と言えば陛下と同等の魔力を持っていると言う事ですぞ!?

 まさか世界に陛下と同じ力を…い、 いや…それ以上の…」


 「アーディルだよ、 シキ」


 「アーディル? 例のアーティファクトの事ですか?」


 「うん。 絶対そうだよ。

 アッシュ・バーナムがついに封印を解いたんだね」


 「ロゼの報告ですとこの前話し合いに向かった時にはそのアーディルはマーディンが封印してると…」


 「まぁ何かディルウィンクエイスで問題が起こったんだろうね。

 ハウスが崩壊するってよっぽど何かあったんだ」


 「へ、 陛下! そんなのんきに構えてる場合ではないですぞ!!

 それならばお早く何か手を打ちませんと…」


 「そうだね…。

 でもレベル7なんだろ?

 もう少し様子を見てってレヴィナードに伝えて。

 それとシキ、 君のハウスからもエレメンツ出して向かわせて」


 「わかりました」


 「何かわかったらすぐに知らせて、 すぐだよ?

 報告次第で僕も向かう事になるんだから」


 「へ、 陛下が?

 それは一体どのような…」


 「いいから早く行って」


 「御意!!」



シキは急いで謁見の間の扉を開け自分のハウスへと向かった。

そしてそのシキの後ろ姿をじっと見つめたまま少し口元に笑みを作るディウス。



 「(思ったより早かったねぇ…アッシュ・バーナム。

 ふふふ、 ついに…ついにアーディルが僕の物に…)」



王座を離れその後ろの階段から自室へと戻るディウス。

生温い笑みを浮かべながらついにこの時が…と何度も何度も同じ台詞を零していた。










 「…光…だ」



暗闇の先に僅かに一筋の光が見え始めた。

ジェノはその光を目指し歩いて行く。

しばらくすると光は次第に大きくそして眩しくなっていった。

気がつくとジェノは森の中に立っていたのだった。

後ろを振り返ってみるが彼の周りは全て森だった。



 「今度は…森か…」



また目的もなく歩き始めたジェノ。

どれぐらい歩いて来たのか、 生きているのか死んでいるのかでさえも今のジェノの頭では考える事が難しかった。

そんな中、 彼は見覚えのある場所に辿り着いたのだった。



 「ここは……」



ジェノが辿り着いた先はなんとアッシュにも縁がある、 あの湖だった。

深い霧で覆われ全体を見渡す事はできないが何かに引っ張られる様にジェノは湖の岸へと足を運ぶ。



 「…気味がわりぃな…」


 「やぁ、 ジェノ君だよね?」



いきなり後ろから声が聞こえた。

とっさに振り返り、 身構えるジェノの瞳には一人の少年が映っていた。



 「てめぇ誰だ」


 「そんなに警戒しなくてもいいよ、 敵じゃないから安心して。

 僕の名前はフィル。

 訳あって今、 君の意識に入り込んでるんだ。

 でも大丈夫! 話が終わればすぐ戻れるから」


 「…俺様の…意識にだと?」


 「まずは謝らないとね。

 君の意識に勝手にお邪魔して本当にごめんね。

 どういう訳かアッシュとは繋がらなかったから出来るかどうかわからなかったけど一応君と繋げてよかった。 でも相当苦しかったと思う…ごめんなさい」


 「そんな事はどうだっていい…それより理由を教えろ」



フィルはジェノに自分達の事やアッシュの事、 ディウスの事などを説明し始めた。

腰を下ろし湖を見つめながら会話は進んでいった。


 「…なるほどな。

 これで頻繁にあいつが倒れていたのがわかったぜ…」


 「僕達の世界は徐々に君の世界と引き合い始めて来ている。 早くなんとかしないとどっちの世界も消滅してしまう…」


 「だが世界が無くなっちまうとディウスもその6大魔導とやらもみんな死んじまうんじゃねぇのか?」


 「多分あいつらは次元に穴を作ってまた別の世界へ逃げる事ができるから世界が無くなっても生き延びれるんだよ…」


 「ディウス達がもし世界を破滅させてもそんな事をして奴に何の得があんだよ」


 「それはわからな…確かなのは今、 君達の世界と僕達の世界は終わりへと近づいていってるって事だけ…」


 「今はそれよりアッシュがとんでもねぇ事になってんだ…早くなんとかしねぇと世界はもっと早く消える事になる…」


 「アッシュが? ……詳しく話して」



ジェノはアッシュがアーディルの力で暴走している事を伝える。

腕を組み、 顎をつまみながらフィルは彼に返答した。



 「…ジェノ君、 君の身体少しの間借りてもいいかな?」


 「…それはどういう事だ」


 「ごめん、 話している時間はないっ!!」



そう言うとフィルの身体は光となってジェノにぶつかった。

また眩しい光を浴びながら景色が白に塗り潰されていった。










−ディルウィンクエイス−

居住区・一般医療施設






部屋にはリルティとティナがそれぞれジェノとマーディンのベッドの前に座っていた。

うとうとしながらマーディンの状態を確認するティナとジェノの手を握ったまま眠ってしまっているリルティ。

もうジェノが倒れて5時間が過ぎようとしていた。

しばらくするとリルティが握っていた方の手に感触が伝わる。



 「…! ジェノ?」



ジェノはゆっくりと目を開くとすぐ近くのリルティを視界に入れた。



 「ティナさん!! ジェノが…ジェノが目を覚ましましたぁー!!」


 「本当!?」



それを聞いてリルティの所へとやってきたティナ。

ジェノはぼやけている景色の中にティナを見つけるとゆっくりと2、 3回まばたきをした。



 「よかった…ジェノ〜もう心配したんだからねぇ」


 「私はディック達に知らせて来るから!」



ティナは嬉しそうに涙ぐむリルティの頭をそっと撫でると部屋を出て行った。



 「…リル、 俺様が倒れてから大体どれくらい経った?」


 「ん〜5時間…ぐらいかなぁ。

 外はもう明るくなってきてるね」


 (ジェノ君、 聞こえるかなぁ?

 僕だよフィル…わかる?)


 「!? どこにいる?」



ジェノは体を起こすと部屋の辺りを隅々まで見始めた。



 「ジェノどうしたの?」


 「…聞こえないのか?」


 (聞こえてるのは君だけだよ。

 さっき君の身体を借りようとしたら体力がまだ戻ってないからダメだったみたい…)


 「え? 何か聞こえるの? …ジェノ…?」


 「…あ、 あぁ悪い…まだ疲れてるみたいだ…」



不思議がるリルティに1人にしてくれと頼むジェノ。

リルティは心配しながらも頷いて部屋を出て行った。



 「…で、 てめぇ今どこにいんだよ」


 (う〜ん…簡単に言うと君の頭の中…かな。

 さっきも言ったけど君が完全に回復したら身体を使わせて欲しいんだけど)


 「その前にちゃんと理由を話せよ」


 (そうだね、 君が回復するまでには少し時間があるみたいだから…わかった! 説明するね。


 まず事の発端はグランベルクがある石版を見つけたんだ。

 その石版には神と魔族、 そして人が争った戦争の事が記されていたんだ…それで…)


 「…おいちょっと待て…神と魔族と人間の戦争って……【神魔人大戦】の事を言ってんのか!?」


 (ど、 どうして君が知ってるんだよ)


 「俺様だけじゃねぇ…神魔人大戦は伝説としてみんな知ってる話だ。

 そしてヴァルファリエンを生み出した人間がその戦争に勝利したんだろ?」


 (お、 驚いたなぁ…まさか君の世界と共通するものがあったなんて…う〜ん凄く興味い)


 「てめぇもヴァルファリエンと言ったよなぁ?」


 (うん。 今は僕を入れて5人生き残りがいる。)


 「てめぇに聞きたい事がある…」


 (もう説明はしなくていいの?)


 「俺様が今知りたいのは……。


 アッシュの事だ…」


 (アッシュ…確かアーディルに…)


 「その事もあるが…

 アッシュは何故2人いるんだ?」


 (…それは…)


 「…あいつは辺境の村で育ったらしいから世間を知らないのは当然かと俺様もそんなに気にしてはなかった…。

 たがクラスCになってあいつといる時間が多くなってきてからは段々あいつが世間知らずじゃなく、 本当に何も知らねぇんじゃねぇかと思い始めた。

 そして力の差もどんどんと広がっていった…

 それもそのはずだ…あいつはヴァルファリエンだったんだからな…」


 (………)


 「…てめぇが知ってる事を全て教えろ…いいな全てだ!!」


 (……わかったよ。

 これから君に話す事は他のみんなには…特にアッシュ本人には内緒にしといて欲しいんだ…)


 「…何故だ?」


 (真実は…知らなくてもいい事だってある)


 「…わかった黙っててやる」










−バリオン領−

とある森






ディアナはノア、 ドレイアと合流を果たし通信オーブでマナフォビッドへと送っていたところだった。



 「はい。 …失敗です。

 …わかりました」



通信を切り3人は一度帰還する事となった。



 「急いで帰って来いとの命令だ。

 帰るぞ…」



ディアナを先頭に3人は風の様にその場を去った。

どれだけ飛ばしてもエルザードまではまだ10日程かかる距離…。

急いでいる為なのか走りながら話すディアナ達。



 「オイラ達ディルウィンクエイスから結構離れてたのにオイラ達のところまで魔力が届いて来たのにはほんとびっくりだよ…」


 「アーディル…危険な力だ…」


 「でもあのディアナがボコボコにされてたもんな…オイラ達が見つけた時はほんとに生きててよかったよ」


 「(ふっ…あのまま死のうとしてたなんて言えないな)」


 「ん? 何がおかしいんだ?」


 「何でもない。

 話しはここまでだ。

 もっとスピードを上げるぞ!!」



足に魔力を送り一気にスピードを上げるディアナ。

ノア達を置いていく勢いで駆け抜けて行く。



 「あ、 あいつさっきまで死にかけてたのに…。

 ドレイアオイラ達も! 負けてられないよ!!」



ノアも魔力を送りディアナを追いかけた。

やれやれと言う顔を残しながらそれに続くドレイア。

3人は森を抜け、 見渡しのいい平原を走り去って行った。










−ディルウィンクエイス−

居住区・一般医療施設






 「何やってんだリルティ…」



リルティは部屋の扉の隙間からジェノをそっと覗いていたのだった。

そこをディックに見つかってしまう。



 「(!? も、 もぉ〜脅かさないで下さいよぉ)」


 「何で中に入らねぇんだ? ジェノが目ぇ覚ましたんだろ?」



しぃ…と口に手を当て静かにするようにディックに小声で話す。



 「(お前に…こんな趣味があったとはな…)」


 「(ち、 ちがいます!! なんかジェノの様子がおかしいんですよ!!)」


 「(おかしいって何が?)」


 「(…さっきから誰かと話してるんです…内容はわからないけど…)」


 「(…ちょっと見せてみろよ)」



扉の隙間からジェノの様子を見るディック。

彼がリルティと交代している間にジェノは窓側に向きを変えていた。

今はディックから彼の背中しか見えない状況にあった。



 「(な、 なんてタイミングわりぃんだ…)」


 「(ディックさん、 なんかわかりました?)」


 「(それがあいつ向き変えやがってよぉ。

 でも何か喋ってんなぁ…)」


 「(でしょでしょ!

 何かおかしいでしょ?)」


 「(くそ…こっち向けよ!! こっち向け!)」



祈る様に隙間から見るディック、 そしてディックの後ろからリルティもジェノを見る。

ほんの小さい隙間は彼等の好奇心からか少しずつ隙間が広がって行く。

ジェノは再び体をベッドへ寝かせると天井を見ながら口を動かす。



 「(あ! 寝やがった…もうちょっと…起きろ…あと少しだけ…)」


 「あんたたち…何やってんのよ?」


 「うわぁ〜!」



いきなり後ろからのティナの声で2人は扉を全開にしたまま前へ倒れ込んだ。

もちろんジェノはすぐに気づいた。



 「な、 なにやってんすか…ディック…さん」


 「いちち…え? あ、 あぁ…いやぁ〜ほら、 あれだ……あの……」



頭をかいてそう言うとちらっとリルティを見るディック。

リルティは絶対話したらダメ! と言う表情でディックに訴えかける。



 「えっと…あ! お前意識戻ったんだな☆

 全く心配かけやがってよ〜」


 「本当にすいませんでした…リルの話だと5時間も眠ってたって…」


 「んな事気にすんなよ! んじゃ1時間後に会議室に来いよ!

 いろいろ作戦立てなきゃならねぇから」


 「了解!」



ディックはリルティの肩をポンと軽く叩くと部屋を出て行く。

そしてティナとすれ違う時に言葉を置いて行く。



 「(ティナ…話がある…ちょっと来い)」


 「え? う、 うん…」



廊下に消えて行くディックの背中を見ながらティナは何で小声で話したんだろうと首を傾げながらゆっくりとついて行った。










−ディルウィンクエイス−

作戦会議室



作戦会議室と言っても居住区の図書館を臨時に使っているだけ。

そこにディックとティナの姿があった。



 「話って何よディック」


 「その前に……。

 お前なぁいきなり脅かす事はねぇだろ!?

 あともうちょっとで……ったく…」


 「脅かしてって普通に声かけただけじゃない。

 …で話って何よ、 まさかそれを言う為に場所変えた訳じゃないでしょ?」


 「あぁ…ジェノの事だ…」


 「なに? ジェノがどうかした?」


 「さっきリルティと見てたんだけどよ、 どうも様子がおかしんだよ。

 あいつ、 誰かと話してたんだ…」


 「誰かと? 誰?」


 「それを探ってたらおめぇが来て……まぁとにかく…俺の推測じゃあ今のジェノの状況はアッシュに起こってたのと同じ気がすんだ…」


 「そう言えばこの前…アッシュもフェアリーとそんな事あったわね…。

 でも何でジェノに…?」


 「俺はアッシュが特別だからと思ってた…。

 だがもし同じ事がジェノにも起こったとなると…あいつも何らかの特別な力があるのかも知れねぇ…」


 「で、 どうするの? ジェノに聞いてみる?」


 「多分あいつから話してくれるだろ…俺達はその時を待つだけだ」


 「…なんかとんでもない事になってきたわね……ディルウィンクエイスの半分以上はもう消えて無いし…エレメンツは機能していない…」


 「そんな時こそ力を合わせるべきだろ?

 大丈夫だ何とかしてやろから! 俺に任せとけって☆」


 「…あんたのその前向きなところ、 少しは見習わないとね」










−ディルウィンクエイス−

居住区・一般医療施設






 「…リル疲れてんだったら……少し休めよ」


 「…え? うん!

 でも大丈夫だから☆」


 「リル、 …無茶すんな…俺様の事はいいから休め」


 「う、 うん…。

 じゃあまた来るから!」



リルティは手を振りながら笑顔で部屋を出て行った。



 「おいフィル、 いるんだろ? 続き聞かせろよ」


 「(うん。

 えっと…どこまで話したんだったっけ?)」


 「…こっちにいるアッシュは……


 試作品レプリカってとこからだ…」

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