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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
26/73

episode 25 心を一つに…

最近ハイペースで投稿しているので誤字などあるかも知れませんが…。とりあえず25をお楽しみ下さい☆



−シークレットエリア−

 封印庫前






 「うがぁぁぁぁ!!!!!!!!」



頭を抱え、 苦しそうに悶えるアッシュとその光景をただ見ているだけのディアナ。

アッシュからとてつもなく邪悪な気が放たれているのを感じとり、 驚きと焦りが汗に混じり地面へ落ちる。



 「(想像をはるかに超えた力だ……。

 恐らくアッシュ・バーナムの力が飛躍的な進歩を遂げたせいだろう…。


 今の私には暴走どころか立つだけで精一杯……どうする……)」


 「あぁぁ……ぁぁ…」



強く放っていた紫の輝きは少しずつアッシュの身体に馴染んでいく。

痛みが次第に落ち着き光も徐々に消えていく。

そんな状況の中、 ジェノ、 リルティが到着した。

ディアナを一目見ると次はアッシュを見る。



 「アッシュ!?」


 「リル待て!! 様子がおかしい……。

 (何だ…この魔力の反応は……今まで感じた事のねぇ…反応だ)」



はぁ…はぁ…はぁ…と息を調えながらアッシュはムクッと立ち上がると目の前のディアナを睨む。



 「う…うぅぅ」


 「…く…そ…身体が言う事を……」


 「アッシュ!!」



少し離れた所からアッシュを呼ぶリルティ。

それに反応して顔を向けるが殺意に満ちた表情で2人を睨む。



 「あ、 アッシュ…ど、 どうしちゃったの……?」


 「あいつ、 まさかもうアーディルを…」


 「う…うぅぅ…」



一歩一歩ゆっくりとジェノ達に近づくアッシュだが明らかにいつもとは様子が違う。

今にも襲い掛かりそうな程の威圧感で2人を凝視しながら近づいて来る。



 「…リル、 俺様の合図で一気に上を目指せ…。

それでこの事をディックさん達に伝えるんだ…わかったな……」



するとジェノは全魔力をシールドに送り強度を高めた。



 「ジェノ…」


 「いいか…全力で走れ……あいつは俺様が何とかする……」


 「うん…わかった…」



ジェノはリルティを隠す様に前へ出て構える。



 「うぅぅ…ううぅぅ」


 「まさかてめぇとこんな形でやり合う事になるとは思わなかったぜ…」


 「ぐぅぁぁぁー!!!」



アッシュがジェノに襲い掛かって来た。

ジェノがリルティに合図を出すとリルティは全速力で走って行った。

そして向かってくるアッシュに防御態勢を取ったジェノ。



 「ぐがぁぁぁ!!!」



いきなりスピードを上げて接近してくるとジェノの首を持ち上げた。



 「あ…が…ぐ…おい…離せ…よ…」



間近で見ると明らかにアッシュではなかった。

白目でよだれが垂れた、 そう…それはまるでゾンビの様だった。

ジェノはアッシュに蹴りを数発打ち込むが首に掛かる力は全く落ちない。

離れた所で横たわりながら様子を見ていたディアナは、 やっと動けるまでに回復するとゆっくりと立ち上がった。



 「な、 なんと言う恐ろしい魔力だ………このままでは…計画が……」



ジェノを壁へ叩きつける様に投げ飛ばすとまた唸り声を上げるアッシュ。

全魔力をシールドに注いでもたった一撃でかなりのダメージを受けたジェノは余りにも力の差がある事に驚きを隠せないでいた。



 「だ、 だめだ……全然…はが…たた……ねぇ…」



締め付けられた首に手を当てながら起き上がり、 ふと見ると石化したマーディンを見つける。

アッシュに気を取られていたせいなのか全く気付かなかった様だ。



 「マ、 マ…スタ…。

 お…おい…てめぇ…がやっ…たのか…」


 「………」


 「……マスターを戻せ! でないとてめぇも死ぬぞ!!」


 「……そうだな…やはりここはマーディンの…力が必要だな…」



ディアナはマーディンの所へと向かうとアッシュが一歩また一歩とゆっくりとだがディアナへ近づいて来る。



 「…ちっ、 阻止しようってか……」



スッと息を吐いてまた静かに息を吸い込むとジェノは再び闘志を燃やし叫んだ。



 「てめぇとの勝負はまだ終わってねぇんだよぉぉ!!」



魔力を通常の状態に戻しフォースエッジを精製すると今度は全魔力をフォースエッジに注ぐ。



 「これが今俺様のできる最高の技だ……。


 スティンガーサウザントォォォ!!!」



全魔力が込められたジェノの最後の一撃。

光の球はアッシュ目掛けて飛んで行く。

しかしアッシュに気付かれてしまった。

振り返り弾こうとするがすり抜けて体内へと入って行った。



 「………」



光が入った胸の辺りにゆっくりと目を向けると中から無数の光が飛び出して来る。

その衝撃で態勢を崩し地面へ倒れたアッシュ。



 「今の内に早くやれ!!」


 「く…。

 開け! 我が魔力の扉!!

 クリアステイト」



マーディンの石化が解けていく。

胸を中心に癒しの緑の光が全身に広がるとついにマーディンの石化が解除された。

目の前のディアナと目が合うとたったそれだけでおおよその事を把握するマーディン。



 「うう…ぅぅ…ぅ」


 「アッシュ……」


 「マスター、 今のこいつに何を言っても無理です!」


 「あぁジェノ…よくぞ無事で…」



マーディンはすぐにジェノの側へと向かう。



 「大丈夫ですか…」


 「マスター、 あいつの中にアーディルが…」


 「わかってます…後は私に任せて貴方はここから避難して下さい」


 「ま、 マスター…」


 「大丈夫です。 私はこの様な困難を幾度となく乗り越えて来ましたから」


 「…わかりました。

 でも気をつけて下さい、 今のあいつの魔力は桁違いです」


 「みたいですね…。

 しかし私も一応ディルウィンクエイスのマスターなのですよ。

 さぁ、 行きなさい」



マーディン、 ディアナそして変わり果てたアッシュをその目でもう一度確認するとジェノは全力で走って行った。



 「……さて、 どうしましょうか……。

 今の彼に封印術は期待できないでしょうね……ならば力づくで止めるしかない…」


 「う…うぅぅ…がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



すると突然アッシュは雄叫びと共に力を高め始めた。

離れた所から見ていたディアナはさらに上昇するアッシュの魔力に次第に恐怖感を覚える。

あのディアナが余りの恐怖に身体の芯から震えている。



 「ど、 どんどん魔力が上がっていく……。

この…わ、 私が…こんな事…初めてだ…」


 「…困りましたね。

 私の魔力を超える勢いでまだまだ上がっている…。

 これは本当にアレを使わざるを得ないところまで来ていますね……」



紫の輝きに包まれたアッシュはマーディンを睨むと雄叫びと共に襲い掛かってきた。

とてつもない早さのアッシュの動きについていけないディアナはただ驚きの表情を強める。

しかしマーディンは…。



 「オーバードライヴ!」



アッシュの超スピード攻撃を受け止めたマーディン。

その受け止めた直後に電流が全身に流れる様な感覚が伝わる。

アッシュは次々とマーディンに攻撃を仕掛けていく。 飢えたカラスが死体をつつく様に物凄いスピードで技を繰り出していく。

アッシュの表情は気味が悪い程、 笑いに満ちていた。



 「(早すぎて何もみ、 見えない……。

 い、 一体どうなっているのだ……)」



 「フローズンダガー!」



マーディンが放ったスペルがアッシュを取り囲んだ。

周りを見渡すアッシュに向かって容赦なく全方向から飛んでいく氷の刃は

命中すると瞬時に凍り次々とアッシュの身体にヒットしていく。

最後の一撃がヒットするとアッシュは全身が氷づけになっていた。

しかし今のアッシュだとまたすぐに動ける様になると思ったマーディンはこの数秒の間に次の手を考えていた。



 「…やはり致命的なダメージを与えなければアッシュを気絶させる事はできないみたいですね…。

 一か八か…できれば使いたくありませんが……」






一方リルティは今入口へと戻って来た所だった。

ディック達は予想通りの表情を浮かべながらリルティの説明を聞く。



 「なんだと!? アッシュが…」


 「…間に合わなかったか…」


 「で、 ジェノは?」


 「ジェノはあたしから目を背ける為に残って……」


 「はぁはぁ…はぁ…はぁ」



すると洞窟の奥から息を切らして向かってくるジェノの姿を見つける。



 「ジェノ!? アッシュはどうなったの?」


 「はぁはぁ…リル、 後で説明してやるから…」



ジェノも現在の状況を説明した。



 「…で、 今はマスターがアッシュと戦ってると思います」


 「ディック……どうする」


 「心配すんなクレイド、 戦ってるのはマスターなんだろ? だったら俺達は信じて待つしかねぇ」


 「ディックさん、 あいつの魔力は桁違いに凄いんです! こっからじゃスキャン届かないですけど……とにかくやばいぐらい凄い力なんです……いくらマスターでも…」



ディックは初めてアッシュがヴァルファリエンだとわかったあの洞窟での出来事を思い出していた。

あの時のアッシュは一般の候補生レベルにも及ばなかった魔力をアーディルの力が不十分な形で発動し、 そしてマテリアルフォースを使用した…。

あの時のアッシュの魔力が飛躍的に上昇したのをディックは覚えていた。



 「だが俺達が行ってもただの足手まといになるだけだ! ジェノ、 行きたい気持ちはよーくわかる!! でもな、 今の俺達には待つ事しかできねぇんだよ!」


 「とりあえずティナ、 ジェノを治療してやってくれ」


 「わかったわ…。

 開け! 我が魔力の扉!!

 ヒーリング」



ジェノはティナの治療を受けながらアッシュの事を考えていた。

伝説のヴァルファリエンが何故伝説として語られているのか…。

そしてディアナ達がアーディルを狙っている理由も何となく理解したジェノ。



 「(アッシュがまさか伝説の…ヴァルファリエンだったとはな……でもな、 俺様は必ず…てめぇを超えてみせる……必ずな…!!)」



すると突然地面が激しく揺れ始めた。

しかし皆すぐに気づく。 これはマーディン達が起こしたものだと…。



 「お、 おい…なんか馬鹿でっけぇ魔力が上がってくるぞ…!」


 「アッシュ…」


 「…想像以上に凄まじい魔力だ……我々を遥かに超えている…」


 「クレイド関心してる場合じゃねぇだろ!!

 もうすぐ来るぞー!!」


 「ジェノ、 リルティ! いける?」


 「はい!」


 「でもどうするんすか!? あんなとんでもねぇ魔力を…」


 「あらジェノ、 随分と弱気じゃない? 候補生時代のあんたはもっと闘志むき出しだったはずよ」


 「…ティナさん、 あいつと戦ってみればすぐにわかりますよ…」


 「マスターは??

 マスターの魔力を感じないんですけど……まさか…!?」


 「ばかやろう! そんな簡単にやられる訳ねぇーだろ!! 国1番の…いや世界一のエレメンツだぞ!? スキャンの範囲にいないだけだ」



そう話し合ってる時だった。

ディック達の前方からいきなりアッシュが地面を割って飛び出して来たのだった。

淡い紫の輝きに包まれた悪魔に取り付かれたかの様な形相にディックはあれがアッシュなのかと言わんばかりの驚きの表情を浮かべる。



 「うがぁぁぁ!!!」


 「く……な、 なんと言う魔力だ…これ以上は近づけん…」


 「アッシュ……」



しばらくするとマーディンの魔力がスキャンの反応に出た。

アッシュが空けた穴から飛び出して来た。



 「マスター!!!」



しかしマーディンはかなりの傷を負っていたのだった。



 「ティナ、 マスターを頼む!!」



ティナはマーディンの元へと駆け寄りすぐに治療スペルをかける。

そしてディック、 クレイド、 ジェノとリルティはアッシュを取り囲んでいた。

だが凄まじい魔力で立っているだけしかできなかった。



 「さ、 さっきよりもまた魔力が上がっていやがる……」


 「うう…うぅぅ…」



一人ずつまるで品定めしているかの様にディック達を睨みつけるアッシュ。



 「ディック…どうする…」


 「とにかくシールドを高めるんだ…。 あんな魔力で攻撃されたら即死だ…」


 「リル、 全員にクイックフェザーをかけてくれ」


 「うん…。

 開け! 我が魔力の扉!!

 クイック…」


 「うぅぅがぁぁぁ!!!!!!!!」



一瞬でリルティの元へと移動するとスペル詠唱中の彼女に殴りかかった。

拳を振った瞬間、 台風の様な衝撃が周りに飛び散る。



 「り、 リルー!!!!!」


 「リルティ!!」


 「がぁぁーっはっは!」



豪快に笑いながらリルティが吹き飛んでいく様を見続けるアッシュ。



 「て、 てめ…ぇぇぇぇー!!!!!!」



怒り任せのジェノの攻撃はもちろん効かなかった。

そればかりかアッシュに近づく前に衝撃波で押し戻される。

魔力が尽き、 どうする事もできなくなったジェノはただ怒りだけで自分を動かしていた。


一方ティナの治療を受けていたマーディンはほぼ傷が治ると再び全身に魔力を巡らせた。



 「ティナ、 リルティはまだ生きています。

 すぐに治療しに行って下さい」


 「マスター! まだ傷が完治していません!!」


 「私はもう充分です。

 それより早くリルティを…」


 「…わかりました!!」



アッシュを警戒しながらリルティの元へと急ぐティナ、 それを確認するとマーディンはアッシュの元へと向かった。



 「アッシュ……」


 「あがぁぁぁ…」


 「マスター!! そんなに近づいたら危険です!! 早く離れて下さい!!!」



マーディンは離れようとはしなかった。

リルティに駆け寄っていくティナを狙おうしているアッシュにマーディンが話しかける。



 「アッシュ! やるなら私をやりなさい!!

 こうなってしまった事の原因は私にあるのです…。

 あの時ディアナとの戦闘中にオーブを恐れて攻撃できなかった…しかしこんな事になるのであれば…」


 「うーうがぁ…うがぁっはっはっはぁー!!」



マーディンの涙が地面へと一滴また一滴と落ちていく。

それを見て何故か腹を抱えて笑い出したアッシュ。

見た目はアッシュだが心はもう人間ではなかった。



 「さぁアッシュ、 私から殺しなさい」



挑発にもとれる発言にまんまと乗ったアッシュはティナからマーディンへと目標を変えた。

獲物を狙うかの様な鋭い目つきで睨むと掌をマーディンへと向けた。

光が掌に集まり輝きが強まっていく。



 「おいやべぇぞ!!」


 「ディック行くぞ! マスターの盾になるんだ」



ディックとクレイドは全魔力をシールドに送るとマーディンの元へと走って行く。

向かって来る2人がアッシュの瞳にハエの様に映ったせいなのか、 追い払うかの様に衝撃波を放つ。

物凄い突風がディックとクレイドを襲う。



 「く…そ…」


 「ぐぐ…これ…以上…は…耐え…られ…ん」



耐え切れなくなった2人は一瞬にして遥か遠くまで吹き飛ばされた。

近くで見ていたジェノやリルティ、 ティナにしてみれば消えた様な感じに錯覚を起こす。



 「う…ぅぅ…」


 「アッシュ…私だけを見なさい」


 「がぁぁぁ!!」



マーディンの首を持ち上げるとまた笑い出すアッシュ。

シールドに守られているとは言え今のアッシュの想像を超えた力の前ではほとんど意味を持たない。 逆に言うとシールドがなけばマーディンの首は掴まれた瞬間に消え去っていた事だろう。

その間にティナの回復スペルで要約意識を取り戻したリルティ。



 「リルティ!」


 「てぃ…な…さん…」


 「よかった…大丈夫みたいね」


 「!? ティナさん! マスターが…」


 「わかってる…」



ティナはアッシュの元へと向かった。

首を掴まれているマーディンの意識は徐々に薄れ始めていた。

それでも最後の最後までアッシュを見つめながら願う彼女はそんな状態でありながらも必死で言葉を繋いだ。



 「こ……こ…ろを………ひ……と…」



心を一つに…再びマーディンはアッシュへと告げる。

それに満足した様な表情を浮かべるとマーディンの瞳はゆっくりと閉じていった…。



 「がぁー!」



アッシュはマーディンを捨てる様に投げると頭を抱えながら空に向かって雄叫びを上げた。

心を一つに…その言葉がアッシュの頭の中に張り付いて取れない。

今までとは違うアッシュの行動にチャンスを見出だしたのか、 ティナはマーディンを抱き抱えるとアッシュから再び距離を取る。



 「マスター!!

 ……心臓が止まってる……。

 早く医療施設に連れて行かないと…」


 「うがぁ…うぅぅがああ!!!!」



苦しみ悶え始めるアッシュをただ見ているだけのジェノは少しずつアッシュに歩み寄っていく。



 「はぁ…はぁ…はぁ」


 「ジェノ!! 何考えてるの! 早く戻りなさい!!」


 「ジェノー! 今のアッシュはもう誰も止められないよー!!」



ティナ、 リルティの声は聞こえているはずなのにジェノは返事をしなかった。

唸りながら苦しむアッシュの前へやって来たジェノは攻撃するでもなくただアッシュを見ていた。



 「アッシュ…てめぇあの時の事覚えてるか…?

 俺様とてめぇが始めて戦った候補生時代の時の事だ…。


 …努力もしてねぇ奴と修行したくねぇって言った一言に…キレてたよな…」


 「う…う…がぁぁぁあ…」


 「あの時、 てめぇと戦って俺様はいつの間にか…てめぇを超える事だけを考えて修行してきた気がするぜ…」


 「がぁぁあがぁぁ…」


 「…それがこんな訳わかんねぇ化けもんみてぇになりやがって……。

 てめぇの思いは…力は…そんな得体の知れねぇ

もんに負けんのか?」


 「ジェノ……」



ジェノの言葉が効いたのかアッシュはさらに苦しみ悶える。

その危険分子を取り除こうとアッシュは無差別に光の球を飛ばした。

それはディルウィンクエイス全体まで届き居住エリアや訓練エリアなど各エリアに命中し大きな爆発と共に崩壊していく。

浮いている島が地上へと落ちていく様子をティナはその目ではっきりと見た。



 「俺様はな、 努力もしねぇでエレメンツ気取ってる奴がだいっきらいなんだよぉぉぉぉ!!!」


 「がぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 「うがぁ!! ぐはっ…」



目の前のジェノを蹴り飛ばすとアッシュは苦しみながらどこかへと走って行く。



 「あが…がぁぁぁ!!!!!」



そのままアッシュは飛び去ってしまった。

リルティは横たわるジェノの元へ急いだ。



 「ティナさん!!」


 「早く連れて来て!!」












それから3時間が経った。



ディック、 クレイド、 ティナ、 ジェノ、 リルティはマーディンを医療施設へと移し一命を取り留める。

しかしマーディンの意識はいまだ戻ってはいなかった。

ディルウィンクエイスの半分以上が崩壊し、 医療施設はここしか残ってなかった。

他のエレメンツ達は下の街で待機しているみたいだ。

昨日まであったエリアがたった一日で消えた。

5人は被害状況を把握するべくディルウィンクエイスを一周りする。

誰一人として、 口を開く事はなくただ歩いている。

そんな時、 その沈黙を破ったのはリルティだった。



 「ティナさん…アッシュはどこに…」


 「……わからない」


 「…アッシュが村や街を襲ってると思うと……あたし…」


 「でも今のところは大丈夫…今のアッシュが街や村で暴れてたらすぐにわかるわ…とにかく今はマスターの意識が戻るまで待つしかないわ……」


 「そうですね……」



1番後ろを歩いているジェノは2人の会話を聞きながらどうする事もできない自分に腹を立てる。



 「(くそ!! 今まで俺様は何をしてきたんだよ!

 マスターを助けに行く事でさえできなかったじゃねぇか!!

 何で俺様はこんなに弱ぇんだ!!)」



力み過ぎたのかまだ完全に体力が戻っていないせいなのか、 急に立ちくらみがジェノを襲う。

視界がぼやけていくがしぱらくすると戻った。



 「…今回は体力も魔力も空っぽになるまでやったからな…疲れてるんだな」



そんなジェノには気付かないままセントラルエリアへとやってきた5人。



 「我々が気絶していた時にこんな事になっていたとは…」


 「あぁ…とんでもねぇ力だったぜ……」


 「アーディルを宿すヴァルファリエン…まさに神々の力だ」


 「いやクレイド、 悪魔の力だよ。 あんな忌ま忌ましい邪悪な魔力は神様の力な訳がねぇ…。

そりゃあグランベルクが欲しがる訳だわ」



その後からティナとリルティが続く。



 「マスターの意識はいつ戻るんでしょうか…。

 …アッシュの事も気になります……」


 「そうね。 …でもマスターの意識が戻っても…どうしようもないかもね…」


 「…ティナさん」


 「あのマスターでさえあんな状態…私達がアッシュを力づくで止めるのは0に近いと思うわ…」


 「じゃあ…どうすれば……」


 「リルティ、 何も力が全てって訳じゃないでしょ? きっとマスターが何とかしてくれる!

そう信じるしかない…」



そして最後にセントラルエリアへやってきたジェノ。



 「(あの時マスターに拾われてなければ今の俺様はいねぇんだ…。

 なのにマスターが死ぬかも知れねぇって時に何故動かなかった!?

 何故だ? 何故なんだよジェノ・クラヴィス!!)」



それぞれいろんな思いを胸に抱いていた。

ディックとクレイドがセントラルエリアの中心に来ると他の3人を待った。



 「そういえばディアナはどうなったんでしょうね…」


 「あいつの事だから生き延びてるはずだわ。

 あいつ相当しぶといから」



ティナ、 リルティそして少し遅れてジェノがディックの元へ辿り着くと今後の事について話し始めた。



 「よし、 とりあえずマスターの意識が戻るまで俺達ができる事をやっていこうぜ。

 誰かいい案が浮かんだら言ってくれ…ん?」



ディックは疲れた表情のジェノを見ると…。

今の俺達に必要なのは休息かもな…と溜め息を吐く。



 「…予定変更だ。

 各自しばらく睡眠を取るんだ…万全な状態でないとできるもんもできねぇ……ん? どうした?」


 「あ…あ…ぐ…ぐぁぁ…」



すると突然ジェノが苦しみ出した。

頭を抱えながら悶え苦しんでいる。

その姿はあのアッシュの様だった。

皆、 ジェノに何が起きたのかわからないまま彼を呼ぶ。



 「ジェノ!! おい! どうした!?」


 「あがぁぁぁ…」


 「ジェノ〜! しっかりしてぇ! ジェノ〜!!」


 「どう言う事??

 何でジェノが…?」



脳みそをわしづかみされているか様に頭が痛む。

痛々しい叫びと共に辺りを転がり身体を左右に揺らしながらジェノは悶え続ける。



 「あぁぁがぁぁぐぃぁぁー!!!!!」




一体ジェノの身に何が起こったのだろうか…。

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