episode 24 驚異の力
episode 24完成です。今回はアッシュ一人でかなり頑張ってくれています☆
−じゃあ、 私達もディルウィンクエイスに戻るわ!−
通信オーブで話を終えたティナはディックとクレイドを集め急いで帰還する事となった。
脚に魔力を送り風の様に森の中を走り抜ける3人。
「……ティナ、 【あのオーブ】がアッシュに入ったら…わかってるだろうな」
「……わかってる」
「クレイド、 おめぇもだ…」
「……無論だ」
「でもその前に絶対阻止するのよ!!」
「……へ、 わかってるぜ!」
「じゃあ2人共、 飛ばすわよ!!
開け! 我が魔力の扉!!」
ティナのクイックフェザーを使い3人はスピードを上げ、 ディルウィンクエイスへと急いだ。
−ディルウィンクエイス−
セントラルエリア
一方、 先にディルウィンクエイスに着いたアッシュ達は、 すぐにディアナを探し始める。
「相変わらずスキャンに反応無しか…。 手分けして探そう」
「アッシュ待って、 あいつら偽物だったって言う事は相手はディアナ1人だけじゃないかも知れないよ…。
3人で行動した方がいいんじゃない?」
「……もうあの女は手に入れてるかも知れねぇぞ……。
で、 てめぇの【アーディル】はどこにある」
「…確か封印庫ってマーディン様が言ってたな…」
「封印車? 聞いた事ない…」
「…マスタールームに行くしかないか…」
「いや、 もうマスターはそこにはいねぇ…。
俺様達だけで探すんだ」
「でも…どこを探すの?」
「このまま考えてても意味ねぇよ! とにかく探すんだよ!!」
「とりあえず片っ端から探そう! まずは居住区画からだ」
話し合ってやっと決めた居住区へと急ぐ3人。
ワープドアをくぐり着いた先には宿舎や様々な施設が破壊されていた。
恐らくノア達が放った魔物に違いない。
しかもこれほどの被害を見るとかなりの数で攻めて来たんだろう。
そう思いながらスキャンで居住区の変わり果てた姿を瞳に映すアッシュ。
スキャンには魔物の反応は無かった。
「酷いね…」
「ここには何の反応もねぇ…訓練エリアへ行くぞ…」
「待て、 とりあえず一周りしてみる…」
するとアッシュは宿舎から病院、 図書館などの施設に足を運んだ。
建物が瓦礫と化しているのでこの場所に存在たと言う記憶で把握する程度である。
そして一周りすると
アッシュ達は再びワープドアで訓練エリアへと向かった。
−ディルウィンクエイス−
訓練エリア
「…ここもか…」
「めちゃめちゃ…だね」
被害は居住区と同じだった。
どこも数時間前とは別物だった。
辺りをスキャンしてはみるもののやはり何の反応もない。
「ディアナは一体どこにいるんだ…」
「司令エリアにいなかったらもういないよ…」
「それに封印庫の場所もまだわかってねぇしな…」
その時、 突然スキャンに反応が出た。
セントラルエリアの方角に大きな魔力が3つ。
「あ! ティナさん達だ。 でも随分早かったね」
「テリスまでだからな、 普通歩いても2、 3時間はかかる距離だぞ…」
「今はそんな事どうでもいんだよ!
とりあえず合流するぞ あの3人だったら封印庫の場所を知ってるはずだ」
「そうか! そうだよジェノ! よし行こう!!」
3人はティナ達がいるセントラルエリアへと戻って行った。
−ディルウィンクエイス−
セントラルエリア
「先にアッシュ達が着いてるはずだわ」
「ん? あれか?」
ワープドアからアッシュ達がこちらへ向かって来ているのをディックが見つける。
そして合流を果たした。
「どこもめちゃめちゃです…」
「それでディアナは見つかったのか?」
「それがどこを探しても何の反応もないんだ…」
「まだ司令エリアは行ってないんすけど」
「ではマスタールームへ向かおう」
「それがマーディン様はもうそこにはいてないみたいなんです…だから」
「アッシュ、 マスターは多分封印庫にいるわ」
「その封印庫がどこにあるのかわからないんだ…」
「心配すんなアッシュ! 俺達はクラスAだぜ? 任せとけって☆
よっしゃそれじゃあ急ぐぞ!!」
要約ディック達と共に封印庫へと向かう事になったアッシュ達。
ワープドアでマスタールームを目指す。
「封印庫ってマスタールームにあるのか?」
「いいからついて来い。 話は後でだ」
−ディルウィンクエイス−
司令エリア・マスタールーム
部屋にはやはり誰もいない。
何でこの部屋に来たのか…そう思いながらも奥の部屋に進むディックの後ろをついて行く。
奥の部屋はマーディンの書斎部屋で当然ここで行き止まりである。
「…ディック」
「お前が聞きたい事はわかってるから何も言うなよ」
そう言いながらディックは本棚を調べ始めた。
ティナとクレイドも違う本棚を調べ出した。
(ねぇ、 何してるの??)
(俺様が知るかよ!)
「…よし見つけたぜ!!」
「…私も見つけた」
「あぁ〜ちょっと待って……あれ? おかしいな………あれ〜確かこの段に……。
あっ! あったあった!」
3人が手に持っていたのは太陽のマークが入っている分厚い本で3冊とも全く同じ本であった。
一体この本と封印庫と何の繋がりがあるのだろうか。
何の説明もないままディック達の後をついて行く アッシュ達。
すると再びセントラルエリアへと戻って来たのだった。
「なぁ、 ディック…一体どういう事か説明してくれよ」
「まぁ待て。 道を開いてからだ」
「みち…?」
セントラルエリアのちょうど中心にワープドアがある。
ディックとティナ、 クレイドはそれを囲う様に三角を作るとその場所に本を開いた状態で地面に置いた。
「…じゃあやるわよ。 2人共準備できた?」
「私はいつでも大丈夫だ」
「こっちもいいぜ!」
「じゃあいくわよ!!」
ティナの合図で3人が本に魔力を送り込んだ。
すると本が宙に浮かび上がり本が薄い泡の様な物に包まれた。
『我思う故に我在り』
3冊の本がワープドアの周りをグルグルと周り始めた。
本は一枚一枚の紙となってさらにスピードを上げて周りだす。
するとワープドアに異変が起こり始めた。
誰も繋いでいないワープドアがいきなり作動しだした。
水の様な色と波紋が特徴的なワープドアは通常のそれとは明らかに違っている。
出来上がったのは三角の形をした地下へと繋がるまさに洞窟そのもの。
「この先は禁断の地シークレットエリアだ」
「シークレット…エリア?」
「そんなエリアがあったんですかぁ〜??」
「シークレットエリアはクラスA以上でないと出入り出来ない場所なのだ」
「あんた達はクラスCだけどマスターならきっとわかってくださるわ」
「よし、 行け!!」
一寸先には暗闇が広がる洞窟に足を踏み入れて行くアッシュとジェノ、 リルティ。
「……おい、 ディック達は来ないのか?」
「見ての通りだ…俺達は行けない」
「私達がここから離れると閉じてしまうの…だから後はあんた達、 頼んだわよ」
「アッシュ、 お前の【アーディル】がまだ封印庫にある事を願っている。 絶対に渡しては駄目だ」
「わかってます!!」
ディック達と別れる事になったアッシュ達は封印庫を目指して地下へと潜って行った。
この先のどこかにマーディンがディアナが、 そして【アーディル】がある…。
暗闇に包まれた階段を一段一段降りて行くアッシュは表情を改めてひきしめ、 さらに奥へと進んで行くのだった。
「ディルウィンクエイスにこんな地下があったなんてな」
「暗くてマジで何も見えねぇぞ…」
「ジェノはサングラスしてるからでしょ? 取れば?」
「…いや…大丈夫だ」
「なんでよ、 見えにくいんでしょ? 取っちゃえばいいのに」
「俺様がいいって言ってんだからいんだよ!」
「…おい、 明かりが見えるぞ」
少し進んだ先に明かりが見えてきた。
今まで自分の手さえも見えない暗闇の中を歩いていたので周りを把握できなかったのだが、 明かりが見えたお陰で微かだが周りがうっすらと見えてきた。
実はアッシュ達は螺旋状の階段を降りていってるところだった。
階段の両側には壁も手摺りも無いので端から下を覗けるが一歩間違えればそれは死を招く。
アッシュは恐る恐るそこから下を覗いてみる。 それが連鎖を呼びジェノ、 リルティと続いて下を覗く。
「………なぁ、 この洞窟…一体どんだけ広いんだ?」
「下が見えねぇ……」
「ん? おい…なんかあそこに小屋があるぞ」
「た、 た、 たたた…たか…い……」
あまりの高さに腰を抜かしたリルティ。
アッシュとジェノは少し歩いた先でリルティがついて来ていない事に気づくとまた引き返した。
「……なにやってんだてめぇ」
「…ジェノ〜」
「何だ? どうした…」
「アッシュ〜、 歩けないよ〜」
「さっさと立てよ、 早くしねぇと【アーディル】が持ってかれちまうだろうが!!」
「だって…た、 たか…高いんだもん…」
涙目で訴えるリルティにジェノは一息溜め息をつくと、
「…アッシュ、 てめぇは先に行け。
すぐに追いつく」
「あ、 あぁ…。
本当に大丈夫か??」
「アッシュ…ごめんね…」
「あぁ! 仕方ないってリルティは高い所ダメだもんな。 わかった! じゃあ先に行ってる」
ジェノとリルティを残してアッシュはペースを上げ、 急いで階段を降りて行った。
「リル、 そこの小屋まで歩けるか?」
「う、 うん…頑張ってみる……」
地べたをはいつくばりながらやっとの事で小屋に着いた2人はリルティの震えが無くなるまで少し休憩する事にした。
「…なんかあたしって足手まといだよね……ごめん」
「………」
「こんな大事な時に腰抜かすなんて…最低だよね……エレメンツ失格だな…」
「…………」
「…………」
リルティの言葉はジェノの心にグサリと突き刺さった。
それはジェノ自身も同じ事で考え悩んだ事があるからである。
みんなの足手まといになっているのではないか。
任務をこなす度に、 戦いを重ねる度に襲い掛かる悩みと言う悪魔。
だが今は悪魔と闘っている場合ではない。
ふっと我に返ったジェノはリルティに声をかけ、 アッシュの元へと歩き出した。
「俺様の背中だけを見てろ。 いいな?
下は見るんじゃねぇぞ」
「う、 うん…」
頼りない歩みでジェノの後ろをついて行くリルティ。
下は見ない…下を見るな…と自分の頭に繰り返し何度も言い聞かせた。
しかし一瞬ちらっと下の景色が瞳に映るとジェノの服の裾を掴んでしまった。
はっと彼女はその無意識な行動から我に返り手を放そうとした時、 彼女の手を掴んで服を握らせる。
「いいから……ここ掴んでろ」
「ジェノ………うん」
ジェノとリルティは少しずつ確実に奥へと進んで行った。
一方、 アッシュは…。
最後の一段を降り、 1番下へと来ていた。
「え、 そんな…行き止まり…?」
階段を降りた先は行き止まりになっていた。
アッシュは壁を端から叩いたり押したりといろいろと試してはみるが…。
「どこかに他の道があるのか…」
引き返そうとしたその時、 微かに音が聞こえた。
「………ん? 人の声か…?」
声がする方向に身体を向けゆっくりと進みながらまた耳を澄ました。
どうやら壁の向こう側から声が聞こえて来る。
アッシュは壁に近づいて耳を当てた。
「まさかマスター自らがここを護っていたとはな…」
「それはこちらのセリフですよディアナ
まさかここの入り方を知っていたとは思わなかったですよ…」
マーディンとディアナはピラミッドの様な形の結界の中で会話をしていた。
「…ディアナ、 この結界からは逃げられませんよ。
さぁおとなしく渡しなさい」
「マスター・マーディン、 ちょうどいい機会だ。
伝説のエレメンツの力…拝見させてもらうぞ」
マーディンとディアナの会話が途切れた。
「やばい!! 早くマーディン様の元に行かないと!
でもどうやって行けばいいんだ…」
スキャンを使い辺りを見渡すアッシュ。
壁の向こうで大きな魔力の反応がある…これはマーディン達のものだ。
恐らく戦闘を始めたらしい。
圧倒的にマーディンの魔力が上だがディアナの魔力がまだ強く反応していると言う事は勝負はまだついていないのだろう。
「……早く、 行かないと!!」
思い切って一度来た道を戻り始めるアッシュ。
その途中である事を思い出したのだった。
実はスキャンは注ぐ魔力の度合いによって様々な能力が追加される。
レベルを1段階上げると暗視効果が得られる。
これは候補生時代からの訓練時に皆習得はしているが使う場所が限られているので忘れてしまう事が多い。
アッシュもその事に今気がつき、 すぐさまスキャンのレベルを1段階上げて周りを見渡す…。
「…あっちだ」
正しい道を発見すると急いで突っ切って行くアッシュ。
マーディン達の反応が近づいて来る。
「(マーディン様の魔力は遥かに上なのにまだ勝負はついてないのか…どういう事だ…?)」
−シークレットエリア−
封印庫前
アッシュの目に飛び込んで来たものは想像を遥かに超えた光景だった…。
「マーディン様ー!!」
いつも穏やかな表情しているマーディンから物凄い威圧感が伝わってくる。
とてつもない戦闘を繰り広げている両者だがディアナは既に全力に近い飛ばし方だ。
だがマーディンをよく見ると攻撃はしていない。
呆然と立ち尽くすアッシュに気づくマーディンとディアナは距離を置いた。
「…アッシュ、 どうしてここに……?」
「ディック達が道を開いてくれました!
ここの事情はわかっています、 でも俺…」
ディアナの手には【アーディル】が握られている。
「あ、 【アーディル】が…」
「はぁ…はぁはぁ、 ちょうどよかった。 お前を探す手間が省けた……アッシュ・バーナム」
「アッシュ! ここは危険です。 ディアナは私が何とかします! 早くここから離れなさい」
「え…でも」
「そうはさせない…このチャンスは私が頂く」
ディアナは深く深呼吸をすると魔力を高め始めた。
地面に手をつくと呪文を詠唱する。
「セルマート・リアノストラーヴァ
炎界の海より来りて全てを焼き尽くせ…
出でよ、 エシュネク!!」
「マテリアルフォースか……! アッシュ早く行きなさい!!」
「この結界は我々が通る事は無理だが非物質である召喚獣なら話は別…」
「…アッシュ!! 早く!!」
空間の歪みから現れた全身が炎に包まれた巨大な蛇。
ディアナの合図でアッシュに襲い掛かる。
「ギシャァァァ!!」
「く、 オーバードライヴ!!」
猛スピードで突進して来るエシュネクをさらなるスピードで回避するアッシュ。
しかしエシュネクは回避した方向へと進路を変えまた突進して来た。
「(アッシュ・バーナムの戦闘レベルが急激に上昇した……どういう事だ…)」
「くそ…! バスターフレア!!」
スペルを放つもエシュネクと同属性な為ダメージは全くない。
アッシュは瞬時に剣を精製すると剣に魔力を集めて衝撃波を繰り出した。
「ギシャャァァァ!!!」
「これもダメージ無しか…」
「とどめだ。 エシュネク、 殺さない程度にやれ」
「ギシャァァァ」
エシュネクは口から数発火の塊を吐き出した。
それを右、 左と身体をのけ反らせながら避けるが何発か命中してしまう。
しかしオーバードライヴしているアッシュのフルレベルのシールドがダメージを最小限に抑える。
「(これ以上はやばい…もうあれ使うしか手はないな…)」
「アッシュ、 今助けます…」
マーディンは結界を解きアッシュの元へ向かう。
「そうはさせない…。
開け! 我が魔力の扉!!
サイレントスフィア」
ディアナの真上に電極の渦が出現した。
しかしアッシュもマーディンでさえもそれに気づいていない。
「アドーラ・バ・シール・ラム・ア・デルス
ドラアドーレア・ラァム・アデールシス」
「スーパースペル!? アッシュいけません詠唱を中止するのです!」
「スーパースペルだと!?
(さっきの技といい【アーディル】無しでここまでの能力を発揮できるとは……。
やはりあの方の言った通り…危険な存在だ……アッシュ…バーナム…)」
「第六天界の守護者レミアルよ 我が魂の導きに答え給え」
「アッシュ!! 私の声が聞こえませんか!?
これは命令ですよ!!」
「マーディン様…」
エシュネクが勢いを増して突進してきた。
身体が炎の熱で真っ赤に燃え盛る。
「紅蓮熱消炎!! 焼き尽くせっ!!!」
「ギュゥァァア!!!!」
「開け! 我が魔力の扉!!
ミストブリザード」
マーディンのスペルはディアナが発動したサイレントスフィアにより吸収されてしまった。
「な! いつの間に……」
エシュネクは大きな炎の塊と化してこちらに向かって来る…凄まじい熱だ。
「マーディン様、 すいません…。
アデルヴァァァストラム!!!!!」
光の矢がエシュネクに向かって行く第一撃目が命中すると凄まじい爆発を起こした。
エシュネクのスピードはそこで止まり後から来る光の矢の餌食となる。
「ギシャァ!! …ギシャァァァ!!!」
「うぉぉぉぉ!!!」
「アッシュ!! もういいです! 早く解きなさい!!!」
「開け! 我が魔力の扉!!
スパイクニードル!」
「!? ディアナ!」
アッシュに向けてスペルを放って来たディアナ。
それに気づくマーディンは自らの身体でそれを受け止める。
「ま、 マーディン様…」
「大丈夫! シールドでダメージはありません」
マーディンが言った通りダメージはシールドで防いだがそれを予測できないディアナではないはず…。
案の定マーディンの身体は石化し始めた。
「…やはりこう言う事ですか……」
「マーディン様!!」
スペルとオーバードライヴを解除してマーディンに駆け寄る。
下半身は既に石となっていた。
「アッシュ、 よく聞きなさい。
オーブに…今の貴方ならオーブの力をコントロールできるはず……ディアナが封印を解く前に自分の身に…宿すの…です」
「宿す…ってどうすれば…!?」
「心を…一つ…に……」
「ま、 マーディン様〜!!!」
マーディンは完全なる石像と化した。
「し、 信じられない…マテリアルフォースを消滅させるなど……。
スペルも吸収しなかった…スーパースペルは効果がないのか……」
先程のオーバードライヴとスーパースペルにより魔力と体力が半分以下になってしまったアッシュ。
激しく身体が悲鳴を上げている。
「ぐ…あ…あぐ…はぁ…はぁ…はぁ…う…」
「随分と消耗したな。
お前の強さには正直驚いたが、 今はそんな事はどうでもいい。
何から何まで好都合に動いてくれた」
すると手に持っていた【アーディル】を掲げ封印を解こうとするディアナ。
「心を…一つに…」
アッシュは懸命に念じるが特に何も起こらない。
「(心を一つにってどうしたらいいんだよ!)」
「…しまった魔力が足りない……。
そうか、 確かマーディンのスペルをスフィアが吸収したはず」
ディアナの頭上にあったスフィアから吸収したマーディンのスペルの魔力をその身に吸収するとスフィアは次第に小さくなりやがて消えた。
「……よし」
そしてディアナは再び封印解除に魔力を送る。
「…ダメだ。 どうやってもできない…。
ディアナを止めるしかないのか…」
しかし今のアッシュにはディアナとまともに戦えるぐらいの力は残っていない。
オーブは次第に大きくそして魔力を放ち始める。
苦戦している様に見えるがそれも時間の問題だ。
早く何とかしなければ…
その頃ジェノとリルティはその頃1番下まで来ていた。
「おい…行き止まりじゃねぇか」
「待って………。
アッシュの反応が…あっちからだよ」
「でも壁だぞ…」
「きっと他に道があるんだよ。 探そ!」
2人は薄暗い中、 手分けして辺りを探る。
スキャンは常に発動しているがジェノもリルティも暗視化する事にまだ気づかないでいたのだった。
そして再びアッシュへ。
「あと少しだ…」
「くそ!! もう直接止めるしかないっ」
アッシュは再びオーバードライヴを試みた。
「うぉぉぉ〜!!!」
「!! またあの技か…」
ディアナが気づく頃には既に背後に回っていたアッシュ。 手にはフォースエッジが握られ、 力いっぱい振り下ろす。
「しまっ…たぁぁぁ!!」
「はぁぁぁぁー!!」
素早く剣を振りディアナの背中を斬りつける。
最後の一撃を終えるとフォースエッジは消えた。かなりのダメージはみられるもののディアナはかろうじて耐えている。
オーバードライヴを解き後ろ宙返りして距離を取ったアッシュ。
「はぁ…はぁはぁ……。
く、 く…くく…くそ〜」
そしてついに【アーディル】の封印が解かれてしまった。
紫の光が辺りに一気に広がっていき、 それと同時に今まで感じた事のない恐ろしい程までのエネルギー反応がスキャンを通して見えた。
「す…す…素晴らしい……これ…が……アーディル」
「はぁ…はぁ…はぁはぁ……し、 しまった………」
アーディルはディアナの手を離れさらに輝きを増していく。
それに比例してエネルギーがどんどん高まっていく。
「よ…よし…。
あ…あと…はこれ…をアッシュ・バーナム……に宿し……暴走させるだけ……だ」
アッシュもディアナも何とか立っていられる状態である。
「すいません…マーディン様………封印…が」
輝きが治まったアーディルはしばらくすると突然アッシュへ向かって飛んで行く。
「な…に…? 何故勝手に……」
「がぁぁぁ〜!! うわぁぁ!!!!!!!」
アーディルはアッシュの中に吸い込まれる様に入っていった。
かつてマーディンから取り出してもらう時に感じたあの痛みが、 またアッシュに襲い掛かる。
頭は割れる程に痛み、 身体は裂ける様に感じるとてつもない苦痛。
地面を転がりながらアッシュは必死にマーディンが言っていた言葉を思い出していた。
<心を一つに…>
紫の輝きがアッシュの全身を包み出した。
まだまだ苦痛は治まらない。
果たしてアッシュはアーディルをコントロールする事ができるのだろうか…。
「あがぁぁぁぁ!!!!!!!」