episode 23 エルフの罠
大変お待たせしました☆23ですが話の内容が変わったので一度見た方もまた見てくれると嬉しいです。
−バリオン城−
付近
緑と草原の王国【バリオン】は世界の中でも平和主義国家で争いを好まない国として有名である。
人とエルフが平等に暮らしておりお互いの知識や技術などを提供している仲ではあるがまだまだ発展途上。
そして【ディルウィンクエイス】を築き上げ運営をしているのもこのバリオンなのである。
「あ、 あれ…がバリ…オン城か…?
す、 すげぇーーな!!!」
「あそっか、 アッシュは初なんだったね」
「なぁ早く行こうぜ!!」
アッシュはバリオン城目指して一気に走って行った。
リルティとジェノはその後を歩きながら向かう。
「おーい! 来てみろよ! 近くで見るとさらにでかいぞー!!」
「ったく当たり前だ…バカが」
城の周りには幅が50メートル程の川が城を囲む様にして流れている。
その川には立派な橋が1本かかっておりバリオン城に向けて伸びている。
先に着いたアッシュがその前で2人を呼んだ。
「ほ〜ら、 早く来いって!!」
「な…なんかさぁ、 アッシュテンション高くない?」
「リル、 その辺の事は任せるからな…」
「ん? なぁに? そのへんのことって」
「いいから。 すぐにわかる」
「う〜ん……?」
揃ったところで再び城を目の前にした3人。
橋の向こうに門が少し顔を出している。
「近くで見るとやっぱすごいよね〜☆」
「なぁ、 でも普通城って言うと…ほらレンガでできていて……」
「………」
「塔の様なものが端にあってさ……な、 なんだよ…」
「…アッシュ、 それってお伽話の世界のお城でしょ…」
「ふっ、 てめぇの頭はそんな幼稚なもので成り立っているんだな…くっくっく」
「わ、 悪かったなぁ…俺は田舎育ちだからそんな本でしか見た事ないんだよ…!」
2人の笑い声の中を早歩きで突っ切って行くアッシュ。
すると城門前で兵士に止められた。
「ようこそ! バリオンへ。
旅の方達ですか?」
「あ、 いえ…。
バリオン王からの命で来ました」
「…王の?」
「そうですぅ。 ディルウィンクエイスから依頼で来ましたぁ〜」
「失礼ですが王が依頼をされたならば王直筆のシートをお持ちのはず…見せてくれませんか?」
「シート…ですか?」
「おい…疑ってんのかてめぇ」
「ちょっとジェノ!」
アッシュはマーディンから預かっていた一枚の透明な薄い板の様なものを出して兵士に見せた。
それを隅々まで丁寧に何度も読み返すと兵士は門横の小さな窓から向こう側にいる兵士と会話を始めた。
呟きながらアッシュ達3人を見て、 またヒソヒソと会話を進める。
「おい…何か様子が変じゃねぇか? てめぇ、 あれ本当にマスターから預かった物なんだろうな」
「当たり前だろ! 何と間違えるんだよ!!」
「もぉ2人ともー!! ケンカしないでよぉ!」
【シート】
薄い透明の板状の物でそれに触れると光る文字が浮かび上がる仕組みになっている。
一般的には手紙などに用いられるがこれを改良してエレメンツでも利用されている。
エレメンツ達が使うシートはスキャンオーブや通信オーブなどの情報や映像の記録に使用していて魔力を必要とするが一般的なシートは魔力を必要としない。
すると奥の兵士がコクッと頷くと先程のシートと一緒にどこかへ走って行った。
そしてこちら側の兵士がゆっくりと近づいて来た。
表情がさっきとは明らかに違っている。
「あ、 あの…何か問題でも…?」
リルティが兵士の変わり様に少し焦り笑いで話しながら近づこうとしたその時。
「動くな!! 貴様ら何者だ!!」
兵士が腰に下げている剣を抜いて構えるとアッシュとジェノは反射的に構えを取る。
「アッシュ、 ジェノちょっと待って!!
これは一体どういう事なんですか!?」
「どういう事だと?
しらばっくれやがって!!
シートを捏造してもすぐにわかるんだ!」
『ね、 捏造!?』
「知らなかったみたいだがな、 本物はシートの1番下にバリオン国の印があるんだよ間抜けな奴らめ!」
突然城門が開きその向こうには下級や上級の兵士が大勢揃って立っていた。
その中心にいかにも階級の高そうな風貌の者が1人立っていた。
先程の兵士が剣を納めビシッと敬礼して門の側にずれる。
「ラジェス様、 こいつらです!!」
ラジェスと呼ばれた男は鋭い目付きでアッシュ達を睨みゆっくりと向かってくる。
金色の短い髪を逆立て深い青色のマントにカチャカチャと音を鳴らす分厚い鎧が首から足にかけて覆われているいかにも位が高そうな騎士。
「…わざわざ正面から来るとは盗賊にしては正直な奴らだな。
貴様ら何者だ」
「俺達はディルウィンクエイスから来たエレメンツで王の依頼で…」
「エレメンツだと? 貴様らがか??」
「…そうだ」
「おい聞いたか? このお兄さん達エレメンツなんだとよー!!」
ラジェスが皮肉な笑みで話すと周りの兵士も声を出して笑いそして罵る。
アッシュ達はただその光景を黙って見ていた。
「ぐわぁっははは。
全く、 冗談ならもっとマシなのがあるだろう? ん〜? ぐわぁっははははは」
「おい、 やるぞ…」
「ジェノ! 駄目だって」
ジェノとリルティが会話をしながら少し動くと大勢の兵士が3人を取り囲んだ。
そしてラジェスは腕を組みながらいやらしい笑みを浮かべた口で話し始めた。
「…なるほど、 何者かは知らんが魔力は多少あるようだな。
続きは牢屋で話そうか」
ラジェスが首で合図をすると兵士が一斉にアッシュ達を取り押さえた。
ジェノは抵抗しようと抑えていた魔力を開放するために力を入れようとしたが、 アッシュがそれを止める。
「落ち着けって!! 理由がわかるまで待て!!」
「……ちっ」
そのまま3人はバリオン城の牢へと連れて行かれた。
−ディルウィンクエイス−
マスタールーム
「マ、 マスター!!!」
「どうしました? その傷は!?」
「や、 奴らです! 奴らが攻めて来ました!!」
「奴らとは誰です?」
「はぁはぁ…うぐ、 テ、 テリス近辺の森で!! ゾ…ゾイルとロイルが!!」
「ゲイル、 落ち着いて。
…奴らとは一体誰の事を言っているのですか?」
「エ、 エルフです…。
ノアとディアナ達…く……」
ゲイルは肩を押さえたままその場に倒れた。
マーディンは近くにいた者にゲイルを医務室へと運ばせるとディックとティナを任務から呼び戻した。
そして数分後…。
「2人ともよく戻ってくれました。
事態は急を要します。
ノアとディアナがいよいよ動き出したみたいです。
ゲイルによるとテリス近辺まで既に来ているみたいなので至急向かって下さい」
『わかりました』
「マスター! 遅れてすみません」
「仕方ないですよクレイド。 貴方はグランベルクでの任務だったのですから。
貴方もディック達と行って下さい。 事情は向かいながらディックが説明してくれます」
「了解しました」
ディック達はテリスへと向かった。
−バリオン城−
牢屋
アッシュ、 ジェノ、 そしてリルティと順番に牢屋へと押し入れられた。
「ちょっと! 押さなくてもちゃんと入るよ!!」
分厚い鉄扉が閉まり鍵が掛けられた。
「…おい! 一体どう言う事なんだ」
「俺に聞くなよ! 俺だってさっぱりなんだ」
「偽物って言ってたよあいつら」
「てめぇやっぱり間違って持って来たんじゃねぇのかよ!」
「あのなー、 さっきも言ったけど何と間違えりゃいんだよ!!」
「もぉ2人共やめなって! ケンカしても何にもならないじゃーん!」
「ちっ……」
「くっ……」
「はぁ…もぉ……」
部屋に静けさが戻ると足音が聞こえて来る。
部屋の扉が開かれ牢屋へとやって来た。
「やぁ、 気に入ってもらえたかな諸君」
この嫌らしい笑いに混じった話し方、 それは先程のラジェスだった。
後ろに下級兵が2人等間隔を保ってきちっと並んで立っている。
「なんだまたてめぇか、 ナメクジ野郎」
「な、 ナメクジ…。
お、 俺の1番気にしてる事を〜」
「ら、 ラジェス様!!」
「お、 おうそうだった…おい眼鏡をかけてる貴様、 取り調べた後は覚えておくんだな…くっくっく」
ラジェスが近くの椅子を持ってきて背もたれの部分を前に座ると首で合図を出した。
すると後ろで立っていた2人の兵士が牢屋の鍵を開けていく。
「まずは女からだ」
「て、 てめぇ俺様にキレてたんじゃねぇのかよ!!」
「焦るな眼鏡。 貴様は1番最後だ…くっくっくっく。
たっぷりと可愛がってやるぞ〜ぐわっはっはっはっは」
リルティがいる牢屋の扉が開かれ2人の兵士がラジェスの元へと彼女を運ぶ。
「まずはお前の名前を教えてくれないか」
「り……ぃ」
「ん〜? 聞こえないなぁ〜。
それにしてもなかなかの美人だな〜まだ若いにしてもこんなに白くて柔らかい肌はそういないぞ〜」
「さ、 さわらないで!」
ラジェスはリルティの周りをゆっくりと舐め回すかの様に見てまわると彼女の肩に優しく触れそのまま人差し指で首をなぞりながら耳元で囁き始めた。
「この…首もすごく細い…すぐにへし折れそうだぞ」
「て、 て…て、 てめぇ…」
そして首から耳を通り過ぎこめかみから髪まで手を持って行くとリルティの後ろ髪をぎゅっと掴み引っ張る。
「さぁ言え! 貴様らは何者だ!!」
「もう…我慢できねぇ!!」
突然叫び声と共に牢屋の分厚い扉が打ち破ったジェノは直ぐさまラジェスの元へと向う。
「おいジェノっ! …ったく」
アッシュも魔力を込めて同じ様に分厚い扉を打ち破るとジェノを追いかけた。
「な、 何をした!?
と、 扉が…」
兵士2人で向かって来ているジェノを止めようとするが…。
「雑魚はすっこんでろ!!」
ジェノが少し力を込めるとその風圧で壁へと吹き飛んだ兵士達。
それを目の当たりにしているラジェスは今、 目の前で起こっている事の意味が全く理解できない状況にあった。
口が半開きのまま硬直している。
「てめぇはぜってぇ許さねぇ!!」
ラジェスに殴りかかろうと振りかぶった右腕を掴んだアッシュはジェノを何とか止める事に成功した。
「ジェノ! 落ち着けよ!!
罪もない奴を殴ったらどうなるか…わかるだろ」
「こ、 こいつは!
ここ、 こいつは無抵抗のリルに……く」
ジェノの力は徐々に治まりやがてアッシュの手を離れた。
一息溜め息を漏らすとアッシュはリルティの錠を破った。
「リルティよく堪えたな」
「えへへ、 やばかったけどね」
「き、、、きさ、 貴様らな、 なに、 なにものだ!!」
「俺達はディルウィンクエイスのエレメンツだって前にも言っただろ」
「アッシュ、 マスターに報告しなきゃ」
「…そうだな。 とりあえずここを出るぞ」
アッシュは右手に魔力を集め円を描き始めた。
光は空間に揺らぎを作りやがて大きく広がっていく。
「よし一先ず帰るぞ」
リルティが先に入りアッシュがそれに続いた。
「ジェノ、 早くしろ」
「……てめぇはぜってぇ許さねぇから覚悟しとくんだな」
ジェノが最後に入ると光は小さくなりやがて消えた。
「き、 き、 ききききえ……た…あいつらほんとうに…えれ、 エレメンツだった…のか!?」
−ディルウィンクエイス−
セントラルエリア
ワープドアから出て来た3人はマスタールームへと足を運ぶ。
その途中で他のエレメンツの慌ただしさに次第に気づき始めた3人。
急いでマスタールームへと向かった。
「ただいま戻りました」
「ああ、 いいところに来てくれましたアッシュ、 ジェノ、 リルティ。
任務報告は後でいいのでとりあえず下に向かって下さい。
話しは通信オーブで送るので」
『わかりました!』
3人はマーディンが言われた通り下の街へとやってきた。
他のクラスCのエレメンツが忙しなく街を走り回っている光景に3人は事態の大きさを把握し始める。
アッシュ達は街の南門へとやってきていた。
「なんか、 かなりやな感じだよね…」
「まさかグランベルクが!」
「おい、 そんな事はいいからさっさとスキャンしろ」
「あ、 ああ」
しばらくすると空から黄色い光が接近してきた。
「マスターからの通信オーブだよ!
あたしが繋ぐね」
−みなさん、 1度しか言わないので落ち着いて聞いて下さい。
実は…−
その時だった。
街の外から数十匹の魔物の群れが押し寄せて来た。
「おい! 魔物だ」
「リルティはそのまま待機、 俺とジェノでくい止める」
「りょうかい!」
「10秒でやってやる!」
ジェノが先頭を切って魔物に突っ込んで行った。
アッシュもスペル詠唱しながらそれに続く。
「ギャァァァ!!」
オークが群れの大半を占めるが後の数匹は初めて戦う魔物だった。
しかしアッシュ達の相手にはならない。
それどころか先に突っ込んだジェノの猛攻によりほとんどが一撃で葬られている。
とどめにアッシュのバスターフレアが炸裂し見事全ての魔物をやっつけた。
しかし…。
「魔物の分際で群れやがって、 元が弱ぇんだから意味ねぇんだよバカが…」
「おい…ジェノまだだ。
今度はさっきの倍だぞ……軽く50はいる…」
「アッシュ〜ジェノ〜!!」
マーディンから一部始終を聞いたリルティはアッシュ達の元へ。
ノアとディアナの仕業だと伝えるとリルティも抑えていた魔力を開放して戦闘モードへと切り替える。
「ノアとディアナってこの前の…?」
「そうだよ! あたしとティナさんが戦ったあのエルフだよ」
「じゃ魔物もあいつらの仕業だな」
「あぁ、 多分な」
「グゥェェェ…」
「グルルルァァ」
砂埃を散らせ物凄い数の足音が次第に大きくなって行く。
先程のオークやブラックバットなど下級な魔物に混じってさらに知らない魔物が何種類かいた。
「おいまた見た事もないのがいるぜ」
「スキャンの反応通りだ。 問題ねぇ」
「よ〜し、 あたしのダブルスペルで一気に数減らしちゃお〜☆」
リルティはそう言うと2人から少し前へ行くと詠唱を始める。
「虚空の空に浮かぶ月よ、 我が扉に光を落とし、 双龍の門と化せ…
心術!!
魔双心!!!」
リルティが叫ぶと青い光が足元から全身を覆い水色の小さな丸い光が2つ螺旋を描きながらリルティの周りを巡る。
右1つ、 左1つ水色の光が腕をなぞっていくとルーン文字が浮かび上がってきた。
「準備かんりょー♪ 覚悟しなさいよ!!」
「あれってこの前のすげぇやつだよな!!」
「リル、 さっさとしろ」
「わかってる☆
開け! 我が魔双の扉!!
ブレイズ・ファング!!!」
ランブレイズとアイスファングのスペルがリルティから放たれた。
炎と化した蛇と氷でできた大きな獣の牙が流星の如く地を滑っていく。
「おい、 両手で扱うスペルをあいつ…片手で…そんな事もできるのかー!?」
「バカが、 関心している暇があったらてめぇもスペルの用意ぐらいしておけ。 零れて来る奴らがいるかもしれねぇ」
リルティが放ったスペルは魔物をほぼ壊滅したがジェノの言った通り残りの数匹の魔物が両側に散って襲いかかって来た。
「エアサークル!!」
「ランブレイズ!!」
2人はそれに見事対応しまたもや魔物を全て葬り去った。
辺りに静けさが残る。
「やったぁ♪♪♪」
「でもノア達の反応がないな…どこかに隠れてるのか?」
「ねぇ、 街の中にも魔物がいるよ…どうする? 行く?」
「仲間がいるから大丈夫だ。 俺達はノア達を探すんだ」
「うん! そうだね」
3人は辺りを警戒しながら少しずつその範囲を広げて行った。
「あ、 そうだ! ディックさん達がテリスに向かってるみたいだよ」
「よし、 じゃあ俺ちょっと行って来る。
何かあったら連絡してくれ」
そう言うとアッシュはワープドアでディックがいるテリス近辺へと向かった。
−テリス−
近辺の森
ディック、 ティナ、 クレイドはそれぞれ別の場所を探っていた。
森で辺りを探っているティナの元にやってきたアッシュ。
「ティナ、 ディック達は??」
「あ、 アッシュ!? あんたいつの間にかワープドア使える様になったのよ! ディックは村周辺、 クレイドは洞窟付近まで行ってるわ」
「街に魔物が現れたんだ。 きっとノア達だと思う」
「魔物!? ランクと数は?」
「ランク? え…えっと…わからない…でも大丈夫やっつけたから!」
「そ、 そう…。
まぁ大丈夫でないとここにあんたが来るわけないか」
「そう言う事。 でノア達の事何かわかったのか?」
「あんたも知ってると思うけどゲイル達がこの近くでノア達に襲われたの。 でもさっきから探ってるんだけどノア達どころか何も見つからないのよ…どうなってるの一体」
「俺達はディルウィンクエイスの街の周辺を探ってるからもし何かわかったら連絡して欲しいんだけど」
「わかったわ。 それにしてもあんた、 最近また腕上げたんじゃない?」
「そ、 そう? へへへ実は新しい技を覚えたんだよ! オーバー…」
「後で聞くから、 ほら早く戻りなさい」
「あ、 あぁ…」
アッシュはポリポリと頭をかくと再びワープドアで戻って行った。
「アッシュまさか【オーバードライヴ】って言おうとしたのかしら…もしそうだとしたらあいつ…私達より……」
アッシュの急激な成長に喜びと焦りが込み上げて来ているティナ。
スキャンに魔力をさらに送り範囲を広めたティナは森の中へと消えて行った。
−ディルウィンクエイスの街−
近辺の森
ジェノ、 リルティと合流したアッシュは近くの森を探し始めた。
慎重に足を運んでいく3人。
ジェノが木の太い枝に飛び乗って辺りを見渡しながらまた近くの枝へと渡りスキャンしていく。
アッシュとリルティもそれぞれ散って辺りを探る。
「(魔物の反応もなくなった…ノア達この近くにいるのかなぁ…)」
「てめぇらこっちだ!! あそこに何かあるぞ」
その声にアッシュとリルティはジェノの所へ駆け付けた。
「何か見つけたのか?」
「あぁ…。 あれだ…」
木の幹を背に話すジェノにアッシュが不思議そうに言葉をかける。
「お前何で隠れてるんだ? 何も反応はないぞ…」
「バカが!! しゃがめ!!」
ジェノに言われるがままにアッシュとリルティはその場にしゃがんだ。
リルティもアッシュと同じ疑問をジェノに話す。
少し小声になっている。
(ねぇ、 どーしたのさぁ)
(スキャンに反応なくても魔力なんて消せんだよ。 相手もエレメンツだって事を忘れんじゃねぇよ)
(なるほどそういう事か)
(…で? どうするの? あの建物に入るの?)
(俺様にふるな、 アッシュ、 てめぇが判断しろ)
(あそっか、 アッシュがリーダーだったね☆)
(…よし、 とりあえずもう少し近くまで行ってみるか)
アッシュはジェノとリルティに合図を送りジェノは左、 リルティは右そして自分は正面から一気に近づく作戦を取った。
作戦通り建物に近づくが変わらず何の反応もない。
「罠があるかも知れないから気をつけるんだ」
「誰もいないのかな…」
窓をそっと覗き込んだリルティ。
中には人の気配はないがある事に気がついた。
「ねぇちょっと、 あれを見て」
「…何だ?」
「あれは…前にどこかで見た事あるな」
「あれって前にチリクにあったワープ装置に似てない?」
「え? という事は…」
「リルが言ってる事が本当ならこの建物…どこかへ繋がってるって事になるぞ…」
「アッシュどうする?」
「…そうだな……」
マーディンに報告するか先に進むか悩んだ結果アッシュは進む事を選択したのだった。
中に入り周りを探りながら先程見た部屋に向かう3人。
「やっぱり誰もいないみたいだね…」
「でもこれどうやって動かすんだ??」
「…エルフでしか反応しねぇんじゃねぇのか」
「とりあえず乗ってみようよ」
3人はカプセル状の物体に入ったが反応はない。
しかししばらくすると…。
「……ワープしたのか?」
「…みたいだね」
ワープして来た場所は明らかに先程いた建物ではなかった。
そればかりか黄金色の空が広がった紛れも無く外だった。
「どこだよここ…」
「ノア達の世界かも知れないよ…」
「見ろよ…」
ジェノの視線の先には宮殿らしき物があった。
あそこにノア達がいるのだろうか…。
アッシュ達は周りを警戒しながらもとりあえず目指す事にした。
「反応ない…ね」
「なぁ、 もしかしてあのバリオンでの出来事もノア達の仕業じゃないのか」
「でもそれならあの偽物のシートをどうやってマスターに渡したんだ?」
「そ、 それは…」
「できるじゃない!
影術使えばね」
「そうか! コピーしたんだ!! 見た目は全くそっくりでわからないし…目立たない奴をコピーすればいくらマーディン様でも見落とした可能性があるかも知れない…」
「何故だ?」
「なぜって?」
「俺様達をバリオンに向かわせて何の得が奴らにあんだよ」
「あたし達がバリオンに向かってる間に攻める…とか?」
「でもそれなら俺様達より上級クラスを狙うだろ普通」
「何か別の企みがあるんじゃないのか?」
しばらく歩いているうちにリルティが一点を見つめながらある事に気づいた。
「…ねぇ、 なんかおかしくない?」
「どうした?」
「こんなに歩いてるのにあの宮殿…全然まだ遠くにあるんだけど…」
「そう言えばさっきから何か変だと思ってたら景色が変わってないんだ」
「ちっ…奴らの罠か」
「その通り」
「!? どこだ?」
すると突然、 黄金の空から火炎球が飛んで来た。
アッシュ達の少し前に落ち爆発する。 そして周りの景色が段々と滲んで歪み出した。
何もない空間に変わるとそこには2人の影が立っていた。
「ノア!!」
「久々だねみんな☆
それにしてもこんなにもわかりやすい罠に簡単にかかるとは、 仕掛けたオイラも思ってなかったよ…あはは」
ノアの横に立っているのはディアナ…ではなく、 細身で長身の体型のエルフだった。
「おい…あの棒みてぇのは何だ…」
「知らない…あたしも初めて見る」
「お前達の仕業だろ? バリオンに俺達を向かわせたのは」
「あはっはっは。 そんなの言わなくてもわかってるだろう?」
「やっぱりそうか…」
「悪いけど君達と話しをしに来た訳じゃないんだ。 端的に短く言うよ…
アッシュ・バーナム、 君の【アーディル】を渡してもらおうか」
「俺の…【アーディル】だと?」
「アッシュ、 【アーディル】って…?」
「エディルオーブの事だよ」
『エ、 エディルオーブー!!!!?』
「君達、 知らなかったのかい? こいつは人間じゃないんだよ…こいつは化け物さ…くっくっくっく」
「エディルオーブって言ったらあの……で、 伝説の【ヴァルファリエン】!!?」
「アッシュ、 てめぇマジなのか!?」
「…あぁ……多分な」
「(試験を受けずに候補生になれたのか…今やっとわかったぜ…そう言う事か……)」
「でも残念だったな! 【アーディル】は俺の中にはないんだよ」
「そんなのわかってるさー。
くっくっくっ、 1人いない事に気づかない?」
「…ディアナが何だ…」
「今頃ディアナがその【アーディル】を手に入れてる頃だろうね!」
「!!!?」
「おい、 じゃあ俺様達をバリオンに向かわせた理由ってまさか!?」
「そうだよジェノ・クラヴィス。
その【アーディル】を手に入れる為さ」
「やばい!! ディック達もディルウィンクエイスを離れてる…」
「後は君に【アーディル】を戻し、 ちゃんと宿るかを確認する事がオイラの任務なんだ」
「俺に宿して…どうする? 何の意味があるんだよ」
「おっと、 これ以上は言えないよ…くっくっく。
じゃあドレイア、 残りの2人を適当に相手してやって」
「わかった…」
「ジェノ、 リルティ、 頼んだぞ…」
「心配するな、 すぐ片付けてやるよ」
「任せといて☆」
ドレイアと呼ばれたエルフは無言のまま2人に向かって来た。
「リル、 スペルで援護しろ」
「りょーかい!」
向かって来るドレイアにジェノも走りながらフォースエッジで立ち向かう。
「おぉぉらぁぁぁ!!」
両手で斧を持ち一文字に振りかぶった。
ドレイアはかがんでそれをやり過ごすとジェノの右足を掴んだ。
「ぐ…」
前に引っ張り体制を崩すと自分を軸にしてジェノを大地に叩きつけていく。
「ぐっ…がはっ」
ドレイアは何度も何度もジェノを地面に叩きつけるがいつまでもやられているジェノではない。
隙をついて左足をドレイアの頭に命中させその衝撃で難を逃れた。
だが瞬間を決して見逃さないのがディルウィンクエイスのエレメンツ。
「フロストスピア!!」
上空からドレイアへと向かって飛んで行く無数の氷の槍。
ジェノが離れるその僅かな時間の隙間を突き抜けて行ったリルティのスペル。
ジェノの攻撃から僅か1秒足らずでドレイアに炸裂した。
「(ふっ、 相変わらずいいタイミングでやりやがって…)」
「ジェノ! 大丈夫!?」
「…バカが、 俺様の心配をするぐらいなら次の攻撃を考えとけ。
まだ終わったわけじゃねぇんだ」
「う、 うん…」
するとムクッと起き上がりまたジェノ達に向かって来るドレイア。 もちろんダメージの減少はみられない。
「おい来るぞ! いいか、 全力でやるぞ」
「よ〜しフロスロットルだぁ〜!!」
ジェノとリルティは魔力を高めドレイアに向かって突っ込んで行った。
一方ノアとアッシュも激しいバトルを繰り広げていた。
「そらぁぁ!!!」
ノアが大火炎球をアッシュに向けて放って来た。
「我が魔力の扉ぁ!
ラァァンブレイズ!!」
跳び上がってノアのスペルを避けると今度はアッシュがノアに向けて放つ。
そしてそのアッシュのスペルを今度はスペルで相殺するノア
「やっぱ…結構やるね。
アッシュ…バーナム」
「……そっちこそ」
「…君とは一回戦った事あったけど、 あの時の一撃の借り…ここで返させてもらうからね」
「ふっ、 ずいぶんと執念深いんだなぁ」
アッシュの言葉に少しムッとしたのか緩んでいた口元をきつく締め直したノアはまたアッシュに向かって来た。
それに深く構え直したアッシュはシールドへ魔力を送る。
「いくよぉぉ!!!」
ノアの魔力を乗せた拳がアッシュの顔面に向けて放たれた。
後ろにのけ反ってかわすとそのままアッシュは蹴りをノアの顎に向けて放ったがノアも腕でそれを弾く。
しかしもう片方の足でノアの頬に当てるとアッシュはその隙にスペルを詠唱する。
「開け! 我が魔力の扉!!
スパークボルトォォォ!!!!」
「なに!?」
至近距離から放った電撃は確実にノアを捉えた。
「ぐぎぎぎぎぎぃ…」
そのまま大きく宙返りをして着地したアッシュ。
ノアの身体は電撃で身動きが取れない状態。
このチャンスを逃がす手はないとみたアッシュは驚くべき技を披露する。
そして再びジェノとリルティ達へ…。
「おるぁぁっ!!」
ジェノとドレイアが激しい攻防戦を繰り広げているがその辺りにリルティの姿は無かった。
リルティは少し離れた辺りから魔力を高めいつでもスペルが放てるようにジェノの合図を待っていた。
「オォォラアックスッ!!」
「!?」
連撃の途中で放ったオーラアックスはドレイアの全身を切り刻んでいく。
そしてその衝撃で吹き飛ばされたドレイアは真っ直ぐにリルティの方へ。
「開け! 我が魔力の扉!!
スプラッシュ!!」
水流は吹き飛んで来るドレイア目がけて地面を滑って行った。
しかしドレイアはそんな状態にも関わらず体勢を変えて地面からの水流を防ぐべく魔力でシールドを強化する。
地面が割れて勢いよく噴き出した水流がドレイアへと向かう。
ドレイアは噴き出した水流を両手で防いではいるが水流の勢いまで止める事はできず上空へと押されていく。
「はぁぁぁぁ…」
リルティのスペルと共に上空へと追いやられたドレイアのさらに上にはなんとジェノの姿があった。
「な、 いつの間に…!?」
「俺様のとっておきをみせてやるよ!!」
フォースエッジで精製した斧が輝きながら直径40cm程の球状に形を変えると両手でその光球を胸元へと持って来た。
そしてさらに魔力を加えるとジェノはドレイアに向けて投げ飛ばした。
「じゃあな、 棒野郎!!
スティンガァァァサウザントォォォ!!!」
「…まずい」
ドレイアは魔力を放出して何とか水流をかき消すと次に迫って来るジェノの技にも同様に衝撃波を放った。
しかしジェノの技には効果が無く、 そのまますり抜けてドレイアの身体の中に入ってしまった。
「くっくっくっく。
そいつには触れねぇよ」
「お前……何をした…。
うがっ! がはっ…」
ドレイアの体内から次々に外へと貫いていく無数の光。
背中や頭、 手や足とありとあらゆる所から鋭い光のナイフが飛び出す。
「がはっ…ぐあっ…ぐぅ…あがっ…ぐ…」
そして身体の内外ともに痛めつけられたドレイアはそのまま地面へ落ちていく。
ジェノもそれに合わせて着地する。
「やったか…?」
「ジェノー」
全身が血まみれになっていたドレイアを確認するとリルティは確信に満ちた表情でジェノへ近づいて来た。
「ちょっとぉ今のちょぉーすごくない!?
あんなすごい技いつ覚えたのぉ!?」
「………」
「ねぇジェノ、 聞いてる??」
「…まだ油断すんじゃねぇ、 エルフがこんな簡単にやられるわけないだろうが」
「……でもスキャンには反応ないよ全く」
「おい…あれはなんだ?」
ドレイアの身体から黒い煙が出て来た。
そしてしばらくすると身体は水分を失った土の様にもろく崩れ去った。
「まさかこいつ……」
「うんそうだよきっと…。 こいつコピーだよ」
「…俺様達は偽物と全力でやってたのか…。
だがコピーは会話できねぇんだろ?」
「自分自身のコピーは別みたいだよ」
「おいじゃああのガキもか!?」
再びアッシュへ…。
「はぁ〜!!!!!」
アッシュの右手に高密度の魔力が集まっていく。
そして光は形を変え整っていくとアッシュの手には刃が握られていた。
「できた! フォースエッジだ」
溶岩を思わせる様な赤と黒が混ざった剣。
アッシュは深く構えると一気に駆け出した。
「でやぁぁぁ!!!」
まだ電撃に襲われているノアはアッシュが突進してくる事に気づいているが身動きがとれない状況だった。
「ぐぐぐ…く、 く…そ…。
アッシュ…バーナム…」
両手で剣を持ち勢いよく跳び上がりながらその剣を振り下ろす。
その光景がノアの瞳に映る。
そして…。
「おらぁぁ!」
1撃、 2…3撃と猛スピードでノアを斬りつけるアッシュ。
距離を取ってとどめに突きを繰り出すとノアの腹を貫通した。
「がぁはっ……う…アッ…シュ…バ…ナ……」
ノアは地面へと倒れた。
「………」
ドレイアと同じ現象がノアにも起こった。
黒い煙と共にノアの身体は消え去った。
まさか!? とアッシュもノアがコピーだと気づく頃にジェノ達もちょうどドレイアを倒したところだった。
「アッシュ〜!」
「やはりこのガキもコピーだったか」
「本物は…ここにはいない…みたいだな」
−とある森−
「ふぅ…負けたね。
…あぁ〜悔しいなぁもぉ!!!」
「しかし作戦は上手くいった」
「まぁ、 そうだな☆
後はディアナを待つだけだな……」
「」について。実は「」には結構意味があって例えば『』は2人以上のキャラが同じ言葉を話していると言う風に使っています。例えば、『わかりました!!』となっていれば複数が同じ言葉を話していると言う感じです。あとは()。例えば、「(な、なんだあの技は…)」は自分の心の中での会話ですね。(でどうするの?)(じゃあ右から行くか)となっていれば小声で会話していると言うヒソヒソ話と言うやつです。「」があるかないかで意味が変わるのでその点をわかった上で読んで頂くとより深く楽しめるのではないかと…。ちなみに小説としての知識がないので本当に使ってるのかは知りません。あくまで個人的に使ってるのでご了承下さい。