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ETERNAL SAGA  作者: 紫音
19/73

episode 18 証

 


 「やはりこの近くには2人の気配はありません」


 「そう…ご苦労だったわね。 (これだけ探しても見つからないなんて……)」


 「ティナさん、 大木の近くにこんなものが……」



それはリルティ達が持っていたあの小瓶だった。



 「……これは2人に渡した例の…。 残り少ないって事は…

 ターゲットに接触した可能性は大ね…」



ティナは大木の辺りを行ったり来たりしながら2人の行方を推理する。

右手に持ってる小瓶に目線を向けて首を傾げたり小瓶を振って残りを確認しながらまたティナ

はその辺りをうろつき始める。 そしてその彼女の言葉を待つ2人のエレメンツ。

彼等の緊張した表情とビシッと足を揃えて立っているその姿から見てどうやら候補生のようだ。

彼女が考えている間に小声で会話を始める。



 (おいラッド、 ディルウィンクエイスで一番の美人って言われてるけど近くで見ると

 やっぱすげぇ奇麗だなー…俺…こっち系かも…)


 (おま…! お前さっき話した時リルティさんって言ってたじゃんかよー)


 (リルティさんは可愛い系、 ティナさんは奇麗系! ジャンルが違うんだよジャンルが♪)


 (何がジャンルだよ…知ったような事言って……。

 …じゃあティナさんのどこがいいか言ってみろよ)


 (…全部だよ全部!! あのクールな瞳がまたいいんだよな〜)


 「なにこそこそ話してんの……え〜と……」


 「あ、 ディズです! それでこっちのメガネは…」


 「ラッドです」


 「2人ともこの事をマスターに報告して来てくれる?」


 「あ、 はい! …ティナさんはどうするんですか?」


 「まだこの辺りを調べてみるわ。 遠くまで付いて来てくれてありがとね」


 『は、 はい!!!』



微笑んで話すティナにディズとラッドは嬉しそうにその場を後にした。

その道中にもまた2人は彼女の微笑みについて討論し始める。

ティナの微笑みは自分に向けられたものだとお互いが主張し合いその声は

近くの流れる滝に勝とも劣らない程だった。

長い橋を渡って2人は再び森の中へ言葉を零しながら消えて行った。









−チリク村−






何とかジーナの家に行く事ができたリルティとジェノ。

家の中はこれまでと違い木製の普通の家だった。複雑な模様の赤い絨毯(じゅうたん)の上に数人が食べられる程のテーブルその上に白いクロスが敷かれ細長い形の青いクリスタルの様な石がその真ん中から天井に向けて伸びている。

よく見るとこのテーブルは足が無くクリスタルだけで支えられているようだ。

今皆がいるこの部屋は50畳程ありこの家で1番広い部屋なのだが何処を見ても外と繋がる窓が1つも見当たらない。

少し息が詰まりそうな表情を浮かべているジェノ。

彼のその顔を先程のテーブルで何かを飲みながら じっと見つめているアッシュだが

サングラスが邪魔でそれ以上は表情を覗けなかった。フッと少しだけ笑みを零すと

最後の一飲みを終えた。



 「さぁさぁ、そんなところにいつまでも突っ立ってないでとりあえずそこに座って寛いでおくれよ」



 テーブルを囲む様に座ると、 ジーナが切り出した。



 「どれ、 もう一度見せておくれ」



隣にいたアッシュの瞳の中をもう一度じっくりと見つめるジーナ。

瞳の中の何かがまたゆっくりと回り始める。

その正面に座っているリルティとジェノはただその様子を静かに見ていた。

しばらくすると黙って立ち上がりジーナは奥の部屋へ消えて行った。

そしてまた少しして戻って来た。 



 「あのぅジーナさん、 急にどうしたんですか?」


 「ん? あぁ、 これを持って来たんじゃよ」



右手に持っていた水晶の様な透明な丸い石を見せてアッシュの前に置いた。

3人とも頭の中は同じ疑問だった。

アッシュが顔を近づけて見るとそこには自分ではない誰かが映っている。

ゆっくりと顔を触って確かめていくアッシュ。 その水晶の端に自分の行動を見ていた

ジーナの顔に気づくとその水晶に溜息を乗せて彼女に渡した。



 「この水晶はな、本来は悪霊なんかを封じ込める為のものなんじゃが

 もしかしたらフュリンをこの中に入れる事が出来るかも知れん一時的に…じゃが」


 「ほ、 ほんとですかぁ!?」


 「でもそうなったら俺どうなるんだ…? 身体の宿主になってしまうんじゃ…」


 「何も今使うとは言っておらん、 これは最終手段じゃよ。

 それにできるかも……じゃ」


 「…で、 あとどのくらいなんだ?」


 「ここへ来る間にも言ったが、 多くみてあと5日ってとこじゃろうな」


 「なぜわかる?」


 「…そうじゃな。 …お前さんには言わん」


 「んだと!? どう言う意味だよババァ」


 「そのまんまの意味じゃ。

 お前さんには言わん」


 「て〜んめぇ〜!」


 「無駄じゃ、 そんな力ではワシにかすり傷一つもつける事はできんぞ」


 「…言ってくれるじゃねぇか! なら試してみるか? クソババァ」


 「フォースエッジを出す前にワシの衝撃波で一発じゃ」


 「(…何で今フォースエッジを出すとわかったんだ?)」



ジェノは躊躇いながらも攻撃手段を変える事にした。

右手に魔力を集め始める。



 「ジェノやめなよ! そんな事したらお家が」


 「大丈夫じゃ心配せんでもあやつの攻撃ではそこの壺1つ壊せん」


 「この俺様を怒らせたらどうなるか今教えてやるよ


 このクソババァァッ!」



風の刃がジーナに向けて飛んで行く。 命中するかと思いきや、 

ジェノのスペルは跳ね返って来たのだった。

予想もしなかったこの事態に自分のスペルをまともに受ける事となったジェノ。



 「う、 ぐぐ…」


 「もう立てんのか? 情けない奴じゃのう」


 「こ、 このやろ〜!」



 「ほっほっほ。

 まさかそれで終わりではないじゃろう?」


 「ジーナ……さん?」



立ち上がったジェノはフォースエッジを作り出そうとしていたが

その前にジーナが掌から衝撃波を放った。

まるで台風の様な物凄い風と衝撃に耐え切れなくなったジェノは吹き飛ばされそのまま意識を失ってしまった。


そばにいたアッシュとリルティも巻き添えをくらい壁に叩き付けられる。


 「った〜い…んもう!! ジーナさん!」


「く…あ、 あんた何考えてるんだ」


 「いやすまんすまん。 気絶でもさせんと大事な話ができんからのう

 やはりこの方が自然かと思っての」



 「全然自然じゃないです〜!!

 …え?気絶させる…?」


 「とりあえず、 ほれそっちを持ってベッドに運んどくれ」







そして数分後…




 「2人は多分こう思っとるじゃろう…

 なぜあやつにあんな事をしたのかと」



2人はそのまま彼女の目を見つめたまま心の中で頷いた。


 

 「その理由も話すがその前に…

お前さん達今までワシの事を不思議に思わんかったか?

 なぜこんなに声が若々しいのに話し方は老人が話す様な感じなのかと……」


 「ずっと思ってましたよー

何か変な人だなぁと…」


 「リルティ!」


 「あ…ご、 ごめんなさい!!」


 「ほっほっほ、 いいんじゃよ。 その秘密を知りたくはないかい?」



ジーナの言葉に2人はすぐに返事を返した。

すると両手からプレートの様なものを出したジーナは2人にそれを見せた。



 「これは……スキャン…オーブ?」


 「これが秘密ですかぁ?」


 「一部じゃがワシのこれまでの事が記録されておる」



手に取ったリルティがそのオーブに魔力を流し込むとプレートが薄く光り出した。

そして少しずつノイズに混じりながらもその中に映像が流れ始めた。

しかしそのほとんどがうまく見る事ができなかった。



 「すまんのう…なんせもう数百年も前じゃからのう…やはりちゃんとメモリーに保存しとくんじゃったな」


 「あれ…この場所って…

 アッシュ、 この場所見覚えない?」


 「ん? いや…知らないな…」



 「ほらよ〜く見てよ! この湖ってアッシュが前に行方不明になったあの森だよ!」


 「…そうか? でもこの映像のは森じゃないだろ」


 「だって何百年も前の映像だもん、 ここから何年も何年もかけて森になったんだよきっと

 ……って、 ねぇねぇ、 誰か湖にやって来るよ」


 「女性…か? はっきりと見えないな」


 「湖に入ってくよ。 何してんだろ…」


 「ん? どこかマーディン様に似てないか?


 「あ、 あれ? え? ちょ…消え…ちゃった」



プレートはまた元の透明な板に戻っていた。

リルティが再び魔力を送ってみるが何も起こらなかった。

今の映像が秘密だったのだろうか…。

彼女が何故これを見せたのか理解できないままジーナにそれを渡した。



 「ジーナさん、 あの秘密って…」


 「最後に映ってた女性。 あれがジーナ……いやジーナ様なのじゃ」


 「ジーナ…」


 「さまぁ?」



 「…そう、 ワシはあの御方の付き人の1人…名はヴァレア

 またこの名を口にする時が来ようとは…のう」


 「あんたジーナじゃないのか?」


 「どう言う事なんですか?」


 「話せば長くなるが…」













一方その頃…






 「おかしいわね…確かにこの近くから魔力の反応があるのに辿り着けないなんて…」



あれからティナは大木周辺を何度も調べてリルティ達の行方を追っていた。

米粒程の微量な魔力を感じるまでには到ったが

それがどこから発しているのかスキャンを駆使しても未だ発見できないでいた。

クイックフェザーを用いて空から広範囲にスキャンしてやっと範囲を絞りこんだティナだがそれまでに費やした魔力が彼女に体力と集中力を奪っていく。


 「この辺りから反応があるのは間違いないのに…

ふふっディズ達を帰らせたのは失敗だったわね」



そして地面に降り立ちスペルを解いたティナ。

顔から疲労と汗が滲み出し、 これ以上の続行は無意味だと彼女に教えている。



 「駄目…これ以上はわからないわ……。

 リルティ達どこに消えたのよー!」



叫んだ声は虚しく響き近くの滝の音が代わりに反ってくる。



 「そこにあっても届かない……まるで蜃気楼ね…。



 しん…きろう……?


 そうか! 蜃気楼だわ!!」



何かが閃いたのかティナは再びスキャンを始め微量な魔力の流れを感じた所へと向かった。

確信に満ちた笑みを浮かべて辿り着いた先はあの大木の前であった。

大木に手を当てて魔力の流れを掴んだティナ。



 「この大木周辺から感じてた二人の魔力は別次元へ行ったと考えた方がいいわね。 いくらこの場所を探しても空間が違うんだもん、 見つかるはずないわ」



蜃気楼と言うキーワードからリルティ達の行方を掴んだティナだがまたしても彼女に難題が降り懸かる。



 「問題はどうやって行くか…ね。 ワープドアの様なものかしら…原理が同じならアクセスコードみたいな暗号を必要とするはず……



 駄目だわ…もしわかってもワープドアを作れるのはディルウィンクエイスではマーディン様だけ…今のあたしにはとてもじゃないけど無理だわ。

 やっぱり一度出直した方がいいかもね」



一度戻る事を決めたティナだった。










 「…と言う訳なんじゃ」


 「てんしんの…ひじゅつ…?」


 「ジーナ様は当時のエルフの中でも魔力がずば抜けていての、 いろんなスペルや秘薬をお作りになられていたんじゃ。

 皆の希望、 救世主としてある時は邪悪な悪魔を封じる為に、 またある時は不治の病を治す為にそのお力を振るわれたのじゃ。


 じゃがの、 皆の事を思うが故に自身の生命力までも注ぎ込む様になっていったジーナ様の身に変化が起こり始めた。


 皮膚は変色を始め急激な老化にも関わらずジーナ様は微笑みながらこう申されたのじゃ…

これも神の試練だとな…。


 皆にはそう言っていたがそばで見ていたワシはそんなジーナ様を見てはいられなかった…。

 ワシは禁断の術とされる転身の秘術の封印を解いてジーナ様に我が魂とオーブを捧げる事にしたのじゃ…」


 「それでその秘術の効果はどんなものなんだ?」


 「転身の秘術とは相手の魂を吸収と言う形で自分の中に取り込むと言う術。

 吸収した者にその者の知識、 経験、 魔力などがプラスされる。

新しい一人の人として生まれ変わる事ができる。

ワシはこの身を捧げてもよいと思っておった……」






【転身の秘術】

エルフに伝わる禁断の術。

術者が相手の魂を抜き取り自身の中に入れるとその者の知識や魔力、経験などがプラスされまた術者の魔力次第では永遠の若さを保つ事も現実的に可能なのだ。

容姿などは二つが合わさった形で変わる者もいれば全くの別人になる者達や一切変わらない者達と確定はしていない。

エルフが人間より長寿なのは遥か昔にこの術が繰り返された名残だとも言われている。






 「本来は術者が相手の魂を我が身に取り入れると言うものなんじゃが魔力のコントロール次第でその逆も可能なのじゃよ」


 「ヴァレアさんならできるかも…こんなものすごい魔力量は見た事ないです!」


 「半分以上はジーナ様のものじゃよ」


 「なぁ、 転身の秘術をコントロールしてジーナに吸収されたんだよな? だったらなんであんたが今こうして話してるんだ?」


 「……術は失敗に終わったんじゃ…。

 転身の秘術はただ術を発動すればいいと言うものではない。

 お互いが望まなければ成功は有り得ん…恐らくジーナ様が拒んだんじゃろうな…」


 「失敗? だってヴァレアさんさっき…」


 「この姿はもちろん声や魔力、 知識は全てジーナ様のもの…しかし意識は何故かワシが支配しておる…理由はわからん……」


 「この村の住人は知らないんだな?」


 「ヴァレアは行方不明と言う事になっておる。この事実を知っているのはここにいるお前さん達と…あとはフュリンだけじゃ」


 「あなたがジーナさんじゃないのはわかりました。 でもその事がジェノとどういう関係が?」



ヴァレアは一息ついて腰を上げると二人を背に語り始めた。



 「これはお前さん達と会った時からわかっていた事なんじゃが…



 ジェノと言う男は…



 人間ではない」










−ディルウィンクエイス−

マスタールーム






 「と言う訳で一度引き返して来ました」


 「ご苦労様でしたねティナ。

後でスキャンオーブを提出しておいて下さい」


 「わかりました」


 「…恐らく二人はジーナと接触しています」


 「そう思います。 ただ向こうに行く手段がありません」


 「貴方の話が本当ならば私でも無理です…

 ここは帰りを待つしかありません」


 「アッシュの方はどうなってますか? 変化ありました?」


 「いえ、 あれから眠ったままです。

 もう一人のアッシュが現れるとほぼ同時に眠り出しました」


 「アッシュが二人いるなんて今でも信じられないです」


 「正確にはフュリンと言うフェアリーの中にアッシュの意識が入ってると言う状態ですけどね。

こちらにいるアッシュはディックがついていてくれています。 何かあれば彼が報告してくれるでしょう」


 「ではあたしも医務室に…」


 「ティナ、 貴方は疲れてます。 休息をとってゆっくり休んで下さい」


 「でも…」


 「ティナ、 命令してもいいんですよ」


 「…わかりました」



ティナは一礼するとマスタールームを出て行った。











 「ジェノが人間じゃないってどういう事なんだ?」



ヴァレアは目を開きその中のうごめく物体を見せた。

彼女の急な行動に少しのけ反った二人にその行動に理解する事もできず言葉を失っていた。



 「これは神の目と呼ばれていて少し先の未来を見る事ができる」


 「未来を?」


 「肝心なのはそこではない…この瞳は代々エルフにしか宿らん力、 それも長老クラスの超エリート階級に…じゃ…」


 「何が言いたいんですか?」


 「ジーナ様の本名はなジーナ・クラヴィスと言うんじゃよ…」


 「…と言う事は…まさか!!?」


 「そう、


 ジェノ・クラヴィス…



 ジーナ様の…血族じゃ」

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