episode 14 異変
今回はいきなり謎から始まります。
始め呼んだ瞬間になんじゃこれって思うかもしれないです・・・また複雑すぎて意味わからない人もいるかもしれないですが・・とりあえず最後まで読んでみてください。
それではエピソード14 異変
御覧下さい!!
「はぁ、 はぁ・・・はぁ・・・」
1人真夜中の森の中、 暗い道に走っているアッシュの姿があった。
「いたぞ! あっちだ!!」
身の丈ほどの大剣と黄金でできた頑丈な鎧で武装した兵士達がアッシュの後を追う。
「はぁはぁはぁ・・・はぁはぁ・・・はぁ・・はぁ・・・」
後ろを振り向きながら前に道がある限り足を止めないアッシュ。 小さな水溜りが跳ねて水が
足にかかっても脳には伝達しない。 同じように兵士達も水を散らせ後を追う。
闇雲にただ逃げる事だけを考えて走って来た為、 こういう結果が答えとして
アッシュの目の前に姿を見せた。 文字通り行き止まりだ。
「行け行けぇ〜!! 奴を崖へ追い込め!!」
「はぁはぁはぁ・・・。 く、 くそ・・・。」
「もう逃げられないぜ! アッシュ・バーナム!!」
崖に追い込まれた彼を3人の兵が囲む。
崖の下には流れの早い川が岩にぶつかり水しぶきをあげる、
それは彼に警告しているようだった。 よく見ると大木も何本か流れていた。
帝国兵達を見つつ崖下の川の様子を気にするアッシュ。
「(くそっ・・・どうする? ここから飛び降りるか・・・・?)」
その時だった・・・。
突然、 兵士達の背後から火球が飛んできた。
「な、 なに!? ぐわぁぁぁ!!!」
その火球はその中の1人の兵士に命中する。 そのまま炎と舞い崖から足を滑らせ落下した。
「だ、 誰だ!!?」
兵士達のその問いに答えるかの様に姿を見せた1人の女性。
「貴様は・・・レリス・オーディア!! 貴様も脱走していたのか!?」
「何しに来たんだよレリス!! 逃げろって言っただろ!?」
「アッシュ1人を置いて逃げるなんてできないよ!! それに仲間はみんな
無事に逃げたから大丈夫だよ! アッシュが囮になったおかげでね」
「な、 なんだと!!?」
レリスは空高く回転しながら飛び上がり帝国兵達を通り越しアッシュのそばに着地した。
「これで2対2だね・・・帝国兵さん」
「お、 おのれ〜、 貴様ら〜!!」
その言葉が合図となりアッシュとレリスは構えを取る。
帝国兵が大剣を構えアッシュ達に向かおうとした時だった・・・
突然帝国兵2人とも瞳と口を大きく開き地面に倒れた。
2人は急に倒れた帝国兵達に目を向けた後、 目線を上げていく。
そこには大男が身長以上の巨大な棍棒を担いで立っていた。
腕、 足や胸、 背中にまで行き渡る膨れ上がった筋肉が少し男の顔を小さく見せる。
「おめぇらケガないか?」
大男が棍棒を前に出して念じると巨大な棍棒は光に変わり消えていった。
『ゼア!?』
2人が声を揃えて男をそう呼んだ。 ゼアと呼ばれた男は倒れている帝国兵の間を
通ってアッシュ達の所へと近づいてきた。
「お前まで助けに来たのか?」
「そうだと言いてぇところだが後ろを振り返るとレリスの姿が無かったもんでよ
急いで引き返してみりゃおめぇらがやり合ってるのが見えてよ、 助太刀したって訳だ
まぁでもレリスもいたしその必要はねぇみてぇだったがただ見てるのはどうかと思ってよ」
「・・・相変わらずお前、 よく喋るな・・」
「アッシュ、 ゼア、 早くここから離れよ。 またあいつらが来る前に・・・」
3人はこの場から離れた。
また森の中を駆け抜けていくレリス、 ゼア、 アッシュ。
―――・・・しゅ・・あ・・っしゅ・・・―――
「ん? レリス何か言ったか?」
「え? 何が?」
―――・・・しゅ・・あ・・っしゅ・・・―――
再びアッシュの元に届く謎の声。 囁く程の小さい声の為何を言ってるのかは理解できないが
確かにどこからか聞こえてくる・・・立ち止まって辺りに耳を傾けてみた。
「アッシュ! 早くここから離れなきゃ見つかっちゃうって!!」
少し離れた所からアッシュに声を飛ばすが少し控えめだ。 恐らく敵を警戒しているのだろう
だがレリスの声は彼の耳までは届かなかった。
「も〜う! なにやってんの〜!!」
早歩きでアッシュの元へやってくるリルティ。 歩みから少し怒りが顔を出している。
―――・・あ・・・っシュ・・・アッシュ・・・―――
「(・・・俺を呼んでるのか?)」
するとアッシュの肩に軽く手が乗せられる。
「なんだよレリス! お前、 聞こえないのか!?」
手を払い振り返るアッシュ・・・だが・・・
「何が聞こえるって?」
「・・!?」
「それにぃ、 レリスって誰?」
「リ、 リルティ!!」
アッシュは辺りを見回した。 そこはさっきいた場所ではなくいつもマーディンがいる
マスタールームだった。 リルティの横にはジェノの姿もあった。
「あ・・れ? ど・・うなってるんだ・・?」
「てめぇさっきから何1人でボソボソ言ってんだ、 ったく耳障りなんだよバカが・・・」
「もうしっかりしてよねー、 リーダーなんだからさぁ」
「リーダー?」
「・・・あ、 ほらっマスターが来たよ!」
奥の部屋からマーディンが姿を現した。
「お早うございます。
貴方達を呼び出しておいてこんな事言うのは何ですが・・・実は
任務で呼び出したのではありません」
「じゃあなんで呼び出したんすか・・?」
「ノア達が身を隠してからもう3日経ちます。 まだ動きがつかめない以上警戒を強める
と言う事で貴方達は下の街の警護、 見回りをお願いします。」
「それって任務じゃないんですか?」
「街の人々のほとんどはノア達の存在を知りません・・・できればこのまま知らずに事を
運びたいので任務としてではなく、 軽く息抜きするつもりでやってもらいたいのです。」
「息抜き・・ですかぁ?」
「言い方が悪かったですか? では・・・
できるだけ街の人と同じ様に普通に行動して下さい」
「はい。 わかりました」
「あとは・・・そうですね。 変わった事があればすぐに報告する事を
忘れないように。」
マーディンに一礼した3人は下の街へ向かう事となった。
その道中、 余程さっきの事が気になるのかうつむき加減で物思いにふけているアッシュ
マスタールームを出た時からずっと腕を組んで考えている。
「(あのレリスとか言う女性また出て来たな・・・それとやたらゴツイ奴もでてきた。
何かなつかしい感じがするんだけどなんだったんだ・・・あれは)」
そのアッシュを見たリルティが不思議そうに彼の顔を覗き込んだ。
リルティと目が合っても反応がない。
「なに考えてるか当ててあげようかぁ? レリスの事でしょ〜
ねぇ、 レリスって誰よ?」
歩きながら会話を交わす2人、 いや会話ではない。 リルティが一方的に声を発していると
言った方がいい。 めげずに何度も同じような質問を投げかけては見るものの
投げては捨てられの繰り返しである。 その状況が黒いサングラスに映る。
始めは黙ってやり過ごしていた彼もリルティの声にその口を段々と歪ませる。
「アッシュ、 黙ってるって事はもしかして大切な人なんでしょ?
・・・やっぱねぇ、 (きっと失恋系だなこれ・・・励まさなくては!)
うんうん、 わかるよアッシュ、 忘れられなくて辛いんでしょ?
でも時間が忘れさせてくれるから〜」
そう言って肩を ポンポン と軽く叩いて励ますがアッシュは変わらずに考え込んでいる。
下降ポイントまでくると2人を抜いてジェノが魔方陣を作り出して下降の準備を始める。
その間も2人の行動はずっと変わらない。
「ね? だから元気出して!! ほら〜!!
・・・・ダメかぁ〜。 (これは相当だな・・・ま、 まさか二股?)
そっか・・・そう言う事だったんだね・・・ なんて酷い女だぁ!
あたしがそのレリスってバカ女をぶっ飛ばしてやる!!」
そうやっている間に下に辿り着いた3人。
「(ま、 この事は深く考えるだけ無駄だな・・考えたら腹減ったなー)
なぁ、 先に何か食べないか? 俺朝食まだ食べてないんだよ・・・ん?」
アッシュが何気なしにリルティに目を向けると1人で ボソボソ と言葉を零している彼女を
見つける。 少し怒りに満ちた表情をしていた。
「ジェノ、 あいつ何であんなに怒ってるんだ?」
「俺様が知るかっ!!!?」
とりあえずアッシュの言った通り、 3人は近くの食堂へ足を運んだ。
「うーんと・・虹豚のガーリックソースとチーズリゾット・・・それとヒートポテトにあと
人面カボチャの冷静スープ・・・それとロイヤルチキン4つ!」
「お客様、 申し訳ありませんがロイヤルチキンはお1人様につき1つとなっております」
「あ・・そうなんですか・・じゃロイヤルチキンと・・この爆裂チキン3つで!」
「・・・はい。 かしこまりました」
「(そうだよね・・こう言う時は食べるのが一番だよね)」
メニューを両手に持ったままアッシュに熱い眼差しを送り続ける。
「(な、 何であいつ泣きながらこっち見てるんだ・・・?
さっきは怒ってたのに・・・)」
「ロイヤルジャンボカレーの大盛り」
そんな2人を全く無視して注文するジェノ。
その声に我に返ったリルティもメニューから選び始めた。
「え・・と・・。 日替わりランチとテリス蟹のサラダ下さい」
そして注文が終わり頼んだ品が並べられそれと同時にアッシュとジェノは食べ始めた。
リルティも気を取り直し食べ始める。
「今日の日替わり星ナスのグラタンじゃん!? あたしこのグラタン好きなんだぁ!!」
アッシュとジェノは無言で食べている。 音と共に少し皿からカレーを零すジェノ。
アッシュはロイヤルチキンを頬張り口の中に押し込める。
飲み込む時に喉を詰まらせ胸を軽く叩く。 片方の手は自然とコップへ・・・
だがコップの中に水は入っていなかった。 その予想外の事態に叩いていた手が早くそして
強くなって行く。 それを見たリルティは水を新しく入れて急いで持ってきた。
「アッシュ、 大丈夫!!? アッシュこれ」
そういって渡された水を勢いよく飲み干す。 喉を大きな肉が通り過ぎる目にはうっすらと
涙を浮かべた。 苦しいせいか食道を通り過ぎるまで必死で耐えるアッシュ。
下を向いて残りの全てが無事に通過した事を確認すると、
「うわ〜、 びっくりしたー!!! 死ぬかと思った・・
ありがとなリルティ、 水持ってきてくれて・・・」
そう言ってコップを差し出すアッシュ。 だが・・・
「え? もう一杯? まだ飲むのアッシュ」
差し出した相手はレリスだった。 そして周りを見ると森の中にいるアッシュ。
「走って来たから疲れてるんだよ<あ、 あれ?> 」
「わかった。 待ってて」
「ふぅ・・・<何でだ・・? 何がどうなってるんだ?>」
耳元に低い声でアッシュを呼ぶ者がいた。 大男のゼアだ。
脱走に成功した仲間の数をアッシュに伝える。
「・・・俺入れてたったの5人!!!?
<さっきの続きかこれ・・・>」
「みんな【アーディル】を抜き取られて殺されちゃったみたい
残ってるのはもうあたし達【ディルウィンクエイス】だけだよ」
レリスが水を持ってアッシュの元へ歩いてくる。
話しながら彼に渡してそれを受け取ったアッシュ。
「もう俺達だけになったのか・・・たった5人に・・・
<え? ディルウィンクエイスって俺がいるハウスの名前じゃないか>
それで、 フィルとレジェアは?
<でもディルウィンクエイスにレリスなんて名前聞いた事ないもんな>」
「固まったら目立つから分かれて行動する事にしたってさっき言ったばかりじゃねぇか」
「そうだよ! 何かさっきだって声がしたとか言って止まっちゃうし・・・
結局何もなかったじゃない! ゼアも先行っちゃうし・・・」
「確かに何かが聞こえたんだよ! 信じないのか!?」
「だって聞こえなかったんだもん! あたしには〜!」
「いいかおめぇら! 今はそんな事を言い合ってる場合じゃねぇはずだ。 フィル達
のいる地点まで行くととりあえずは安全だからまずはそこを目指さねぇとな」
南に進路を変え森の出口を目指す。
3人は森を抜けて広い平原に出て来た。
「よ〜し、 ここまで来ればもう追って来ねぇだろ」
「フィル達はどこにいるんだ? あいつら魔力を消してるからわからないな」
「待って・・・何かがこっちに向かって来る! きっとフィル達よ!」
3人が送る視線の先には2つの影が砂煙をまいて走って来ているのが見えた。
「フィル〜! レジェア〜!」
ようやく姿が肉眼に捉える事ができた。
そしてアッシュ達の元へ。
「お待たせしました。 少し遠くまで行きすぎたようですね」
奇麗な言葉で話す彼女はレジェア。 胸まであるウエイブがかかった髪が風になびく。
レリスより少し背が高い。
「レジェアが言い出した事じゃんかよぉ、 もう少し調べとこって」
彼はフィル。 この5人の中で背が低く一番年下である。
藍色の短髪をかきあげるがストレートな為、 また同じ形に戻る
「・・・これでみんなそろったな! それでレジェアこれからどうするんだ?」
「・・・ここから西に少し行くと村がありました。 まずはそこで
身体を休める事にしましょう。 今後の話はその時に・・・」
「じゃあそこの村の入口が待ち合わせって事にしましょ、
それまではこのまま別行動で」
「うんわかったよレリス。 じゃ向こうで待ってるから」
フィルとレジェアは再び砂埃を散らしながら走って行った。
「俺達も行くとするか」
「・・・ゼア何見てるの?」
何かに目を奪われているゼアを見つけ駆け寄っていくレリス。
気になってアッシュも向かって行った。
「おい・・なんだよありゃ・・・」
ゼアが指差すさっきの森の辺りから薄い光の玉の様なものがゆらゆらと宙を浮遊しているのが
2人の目にも映る。 その光は少しずつだがこちらに向かって来ているように感じた。
「なんだろうね・・・あれ」
「ほんとだな・・・何かちょっとずつこっちに来ているように見えるけど、
気のせいか・・? そう見えるのは・・・」
その光はいきなり急激なスピードで3人の元へ向かって来た。
「おい・・何かわかんねぇけど・・・こ、 こっちくるぞ!」
瞬きをする毎に光はアッシュ達に近づいて来る。 その度に光は大きくはっきりと見えるよう
になる。 逃げようにもその突然の光景に足がすくんで動けなくなっていた。
光は白く濁っていた。 アッシュ達の周りを少し上から回っている。
誰かを認識しているようにも見える。
「? 何してるんだあれ・・・?」
「こ、 攻撃してくるんじゃねぇか!?」
次の瞬間、 光から光線が放たれた。 その光線は3人の内の1人に命中する。
「!!!!?」
「なに? ちょっとなによこれ〜〜〜!!!?」
「レ、 レリスー!!」
それはレリスだった。
光線はまだ彼女に向かって放たれ続けている。 それが全身を包み彼女は宙に浮き上がって行く。
それと共にその光は次第に小さく凋んでいく。
「アッシュ〜!! ゼア〜!!」
その叫びと共にレリスは眩い光を放ち消えていった。
「レリスー!!!!」
「!?」
「あ、 あれ・・?」
ふと前を見ると目の前にジェノが驚いてこっちを見ていた。 サングラスが少しずれていたのを直してアッシュに怒鳴る。
「・・・・・・て、 てめぇ〜いきなり何大声出してんだよ!! バカが」
「・・うわ〜〜ん!!」
「ほらみろ! てめぇが大声出すからガキが泣き出しやがったじゃねぇか!
めんどくせぇ事しやがって」
アッシュの左手には小さな手が繋がれていた。 その先を辿っていくと女の子が泣き叫んでいる。
先程のアッシュの声で泣かせてしまったようだ。
涙を拭いながらアッシュの顔を涙目で見つめている。
「誰・・なんだよ、 この子」
「はぁ!? 誰って見回りしてた途中で親とはぐれたこいつを見つけて一緒に探すとか
何とかてめぇが言い出して今探してんだろうが!」
「・・俺が・・か? ・・・全然覚えてない・・・」
「覚えてないだと!? てめぇ・・そんなに殺されたいのか?
ぶっ飛ばすぞコラ! 今さっきてめぇが俺様に頼んだだろうが!! 一緒に探してくれってなっ」
今にも飛びかかって行きそうな程、 怒りをアッシュにぶつけているジェノ。
するとそこへリルティがどこからか帰って来た。
「ダメだぁ・・この辺りにはもういないみたいだね。 東門のとこ行ってみる?」
そのどうにもできない怒りを今度は彼女に向けるジェノ。
「おっせぇんだよぉ!!! とろとろとろとろ しやがって!!」
「? な、 何でそんなに、 怒ってるの?」
「この記憶喪失に聞きゃぁいいだろうが!」
「く、 クソ・・カスって・・・
どうしたの? アッシュ」
「俺もわからないんだ・・・気がついたらここにいたし・・この子の事だって全く覚えてないんだ・・」
「いきなり大声出すわ今度は覚えてないわって、 あぁめんどくせぇ〜!!」
「(やっぱり今日のアッシュは何かへん・・さっきも食堂でおかしくなってたし・・
これは失恋とか二股とかの問題じゃないじゃん!!)」
やっと自分の推測が間違っていた事に気づいたリルティ。
アッシュの手に繋がれていた女の子の手を取って泣き止むように優しく話しかける。
その声に安心したのか徐々に少女に笑顔が戻って来る。
「とりあえずこの子のお母さんを早く見つけよ、 アッシュの事はそれからにしよ。 ね?」
そう言って親探しを再開させるリルティ。 アッシュも彼女の後を少し離れてついて行く。
ジェノもアッシュのそのまた後ろから愚痴を零しながら遅れて歩きだす。
「・・俺様はもう話す事なんかねぇよ」
「(まただ・・・またさっきと同じ夢を・・・い、 いや夢なんかじゃない!
いったいどうしたんだよ・・俺・・)」
俯いて深く考え込むアッシュ、 その様子を後ろから見ているジェノ。
黒いレンズに彼の背中が映っていた・・・