episode 10 消えた候補生
お待たせしましたエピソード10完成です。
体調が悪いせいか少し短めです・・
誤字脱字は改めて直しますので!!
では、 どうぞっ!
投票の方もよろしくお願いします。
「ねぇ〜、 ねぇってばぁ〜。」
3人は次のカードの反応を探り走って
目的地まで向かってるところであった。
2人の後ろから少し遅れてついて来ているリルティだが
それは考え事をしている為であった。
何を考えていたかと言うとあの2人の笑みについてだった。
どうしても理由が知りたいリルティは次の目的地までずっとこの調子で
アッシュやジェノに話しかけている。
「ねぇ〜、 アッシュぅ〜、 ジェノぉ〜。」
ひたすらリルティの言葉を無視する2人であったが蠅の様に纏わりついてくる
その声にジェノがついに切れた。
「うだうだうだうだ、 うるせぇんだよ! バカが!!
さっきからてめぇはそれしか言ってねぇじゃねぇか!!」
「だってさぁ、 2人とも教えてくれないじゃん・・・」
「だから言ってんだろうが! 俺様は笑ってねぇって!!」
「いぃや笑ってたぁ〜、 確かにあたし見たんだもんっ!」
どうしてもあの光景がたまらなく気になってしまうリルティ
それほどあの2人の笑みは彼女の中では衝撃だった。
「んもぅ! 気になって気になって任務に集中できないよ〜」
そして反応の近くまで来るとペースを落とし再びスキャンで
辺りを探る3人。
「気になったで思い出した事があるんだけど・・・。」
「なぁに?」
「ジェノ、 サングラスしてるだろ? いつも・・・」
「・・・。」
「そんなに・・・眩しいのか?」
その言葉に1人つぼに入った者がいた。
「ぷぷぷぷっ、 あっはははははは!!!
アッシュ面白い〜、 うける〜 うぷぷわっはっははは!!」
「な、 なんだよ? なにがそんなに面白いんだよ・・・。」
「アッシュ・・・ てめぇまじで言ってんのか?
俺様がグラサンしてんのはまじで眩しいのが理由だと思ってんのか!?」
「なんだよ・・・違うのか?」
「オシャレに決まってるじゃん! ありえないよアッシュ!」
「悪かったな・・・! 俺は村で育ったからそういうオシャレとか
わからないんだよ・・・!」
どうでもいい話をしている中ジェノがカードの魔力を見つける。
「おい、 見つけたぜ。 ここからすぐ近くだ。」
「・・・ん? ちょっと待って! その周りにいっぱい魔力を感じるよ!
これって他のチームじゃなぁい? 1・・2・・5・・7、 9人って事は・・・
3チーム集まってるんだよね!?」
アッシュもスキャンで探ってみた。
「あぁ確かに感じるけど魔力の波がみんな一定だ」
「みんな気絶してるか、 眠らされてるか・・・。
なんにしても今がチャンスだ。 そうと決まったらさっさといこうぜ。」
リルティが候補生全員の数を頭で数える。
無意識に人差指を立て唇を触る。
目は宙を舞い右へ左へ動いている。
「ん〜と〜、 1チーム3人でしょ・・・。 今回参加したのは確か15人で
今あそこにいるのは3チーム・・・9人・・・
で、 あたし達で12・・・」
「じゃ、 じゃあその残りの1チームが他の3チームを倒したって事か!!?」
「バーカ、 まだそう決まった訳じゃねぇよ。 だがどっちにしても
俺様達に運が傾いているって事には変わりねぇ!」
「あたし、 心遠眼で探って見ようか?」
「心術使えるのかリルティ!?」
「この術だけ、 だけどねぇ〜」
そう言いながら目的の方向に体を向け両手で円を作る。
「・・・あらぁ〜、 見事にみんな気絶してるじゃん・・・
でもこれ、 戦闘の痕跡だとするとすごい戦いだったんだろうね・・・。」
「リル、 その周辺に残りのチームは見当たらねぇか?」
「えーとちょっと待って・・・・・・。」
さらに範囲を拡大して辺りを探るリルティ。
アッシュもスキャンで魔力を探るが・・・
「ダメだ・・・。 こっからじゃ魔力は感じない・・・。」
アッシュの行動を見て思い出したかの様にスキャンで心遠眼の中を覗いたリルティ。
「器用な事できるんだなリルティは。」
「し〜、 話しかけないでっ! 集中力いるんだから・・・
・・・いない・・みたいだね・・・うんいないっ!」
「まぁとりあえず、 行ってみるか・・・。」
3人はカードの反応がある場所へ向かった。
辿り着くと候補生と思われる者が倒れていた。
ある者は木の枝に、 またある者は上半身だけ川の中に浸かっていた。
「これは酷いな・・・。 みんな血だらけだ・・・
気絶ってレベルの問題じゃないぞ・・・。」
「・・・・・・。」
「なぁ! こっち来てくれ!!」
アッシュがいる所に集まるリルティとジェノ。
「おい! こいつ・・・死んでるじゃねぇか!!!」
それは候補生の無残な姿だった。 背中に大きな3つの引っかき傷が見える
その1つは皮膚がはがれて骨まで達していた。
これは明らかに魔物の証拠、 しかしなぜこんなところに・・・
「魔物・・・がやったのかな?
でもここディルウィンクエイスの中だよ!?
なんで魔物がいるの?」
「いや・・・これはただの魔物じゃ・・・ない感じがする・・。」
「・・・何でてめぇにそんな事がわかんだよ?」
「リルティが言った通りこんな上空まで上ってこれるとは思えない。
それにディルウィンクエイスは通常外からは見えない様に
バリアで覆われているんだ。 侵入できるはずがない。」
「じゃあこれは何なんだよ!? このでけぇ爪痕は魔物がやった以外に
考えられねぇだろうが!」
「俺は普通の魔物じゃないって言ったんだよ!」
「アッシュ! それってもしかして・・・マテリアルフォースの事!?」
「ああ・・・多分な。」
「てめぇバカか!? あれは候補生が使える代物じゃねぇって
事ぐらいわかんだろうが!! 何を言い出すかと思えばマテリアルフォースだと!?
へっ! てめぇの頭はオーク以下なんじゃねぇの?」
『・・・・・・。』
沈黙が続く中、ふとアッシュが空を見上げると遠くの方で小さく光っている
のを視界が拾った。 その光はこちらに近づいている感じがした。
しばらくすると3人の目の前までやって来たのだった。
「・・・これは・・・通信オーブ!?」
「マスターから・・・みたいだよ?
・・・あたし宛てにだぁ・・・でも何で・・・。」
「いいから繋いでみろよ。」
リルティは丸い光の中に手を入れて念じ始めた。
すると光は地面に落ちやがてその光は人型へと形作られていく。
―――リルティ、 他の2人も無事ですか!?―――
アッシュとジェノの服を引張りマーディンに確認させるリルティ。
「みんな無事です〜!」
―――あぁよかった。 実は緊急事態なのです!!―――
「まさか・・・魔物ですかぁ!?」
―――リルティ、 何か思い当るところがあるのですか?―――
「あ、 いやぁ見たわけじゃないんですけどぉ・・・。」
アッシュがリルティに変わって説明する。
「マーディン様、 候補生一名の死亡を確認したんですけど
背中に大きな爪痕がありました。
その事で魔物なんじゃないかとみんなで話していたところなんです。」
―――・・・そうですか・・・ここで説明してる時間はありません
詳しく話しますので私の所まで一度帰って来て下さい。―――
「あのー、 ここに倒れている候補生達はどうすればいいですか?」
―――救助隊を今送ったところです。 リルティ、 一刻を争います
早くこちらに来て下さい。―――
「わかりました! 通信切ります〜」
マーディンは丸い光に戻りフラッシュと共に消えた。
「・・・・・・マスタールームに行こう。」
3人はマーディンの元へ向かう事にした。
その走っている途中でアッシュの言葉を頭に並べ考えの整理をつけているジェノ。
少し前を走っているアッシュの背中がジェノのレンズに映る。
「(マテリアルフォースだと・・・あれはクラスAで初めて習得できる術。
そんな術を本当に使える候補生がいるのか?
・・・ったく、 ややこしい事になりやがって・・・!!)
おい! もっと、 スピード上げろっ!!」
3人は足を早め急いで向かった。
そしてマーディンが待つ部屋の前までやって来た。
アッシュがドアノブに手をかけた時だった、リルティの声がアッシュの手を止める。
「なんか・・・残念だね、 初任務がこんな事になっちゃって・・・。」
「・・・リルティ。」
「まだ任務は続いてんだよ、 へこむんなら終わってからにしろ。」
「・・・そうだね。」
「開けるぞ。」
アッシュはノブを廻した
「失礼・・・します。」
部屋の中に入ると、 クラスAと思われるエレメンツが数名
深刻な表情で何かを話していた。
「よっ!!」
いきなり右肩に手が乗せられた、 思わずビクッと肩を揺らすアッシュ
「・・・ディ、 ディック!!!」
「久しぶりだなアッシュ! しばらく見ねぇ間に少し感じ変わったんじゃねぇか?
ここに来た時と比べると魔力もかなり上がってるしなっ!」
「まあな、 あんたを超えたかもなっ!!!」
「へっ、 俺と比べるなんてまだまだだっつーの。」
ジェノはクレイドの元へ行く。
「クレイドさん、 いったい何があったんすか?
クラスAのしかもトップクラスが集まるなんて」
「その事は私よりもお前の方が知っているんじゃないのか?
私も今着いたばかりなんで状況を把握してないんだ。」
「そう・・・っすか・・。
(これだけの人数がいるって事はあいつの言った通り
マテリアルフォースを使ったって事か・・・?)」
そしてリルティは、 ティナの元へ。
「ティナさん、 クラスAに昇格したんですかぁ!?」
「まぁねっ! それよりあんた今までの事、 記録してるわよね?」
「まかしてくださいよぉ! 今出します。」
そう言いながら胸の前で手を合わせゆっくりと両手を開いて行く。
するとその手の間から薄いプレートの様なものが現れ出した。
「どうぞぉスキャンオーブです!
任務が始まった時からセービングして来ましたので全部映ってると思います。」
ティナはリルティから受け取ったプレートの様なものを両手で持ち
それに魔力を流し始めた。
しばらくするとそのプレートの中にリルティが見たものが映像として流れ始めた。
3兄弟との戦闘の映像が流れている。
「み、 水属性のスペル!? あんた水属性使えるのっ!!?」
「あ、 はい! 苦労して覚えましたぁ!!」
「や、 やるわねぇ〜
(あたしがこのスペルを習得したのはたしか正式なエレメンツになってだから
クラスCあたり・・・あたしも当時はすごいだの言われていたけれど
まさか候補生で習得するなんて・・・
・・・・・・あ、 問題の映像を見ないと・・・早送り早送りっと・・・。)」
奥の部屋からマーディンが姿を現した。
「みなさん、 事態は急を要します! 一度しか言わないので
しっかりと耳に入れてください。」
『はいっ。』
「候補生の初任務中にある事件が起こりました。
あるチームとチームとの戦闘中に1人の候補生がマテリアルフォースを発動しました。」
「!!!!?」
「(くそっ! 今回もあいつの読みが当たった・・・。)」
「候補生は戦士見習いも同然、 暴走は避けられませんでした。」
ティナがリルティのスキャンオーブをマーディンに渡すとマーディンは宙に浮かべ
プレートのサイズを大きくして皆にそれを見せた。
「これを見て下さい。 発動した候補生は暴走を食い止められず召喚した者に
殺されています。 この爪痕からすると恐らく・・・」
「ちょ、 ちょっと待って下さい!!」
「・・はい、 なんですかアッシュ。」
「なんでその候補生が召喚したとわかるんですか!?」
「・・・いいですかアッシュ、 マテリアルフォースを発動して暴走を引き起こすと
呼び出した者を制御する事ができなくなり、 その者は魔物と化し召喚者を殺します。
それは自由になる為と考えられています。
簡単に言うと狂暴な猛獣に首輪と手綱をつけて散歩していると考えて下さい。
この状態が、 マテリアルフォース発動時です。
首輪は召喚者を認識する為の、手綱はその者を制御する力の事を意味します。
この猛獣が自由になる為にはその手綱を持っている召喚者が手を放すか
あるいは噛みつかれるか・・ですよね? 強い力で引っ張られるとそれだけ
こちらも強い力で支えなければなりません。 しかし召喚者の体力が落ちて来ると
猛獣の力が強まり引っ張られる形になりますよね?
そして手を放してしまった、 これが暴走です。
今回の暴走は恐らく、 不十分な魔力が引き起こしたものと考えられます。
わかりましたか?」
「あ、 はい。」
「では続けます・・・。
アッシュ達が発見した時にはすでに他の候補生のチームは気を失っており、
暴走した魔物の消息も途絶えたと聞いています。」
「マスター、 少し気になった事があるんですけど・・・。」
「・・・ディック、 なんでしょう?」
「今回の候補生、 15人5チームの参加と聞いてますが
アッシュ達を入れてもまだ1チーム足りません。」
「・・・・ティナ、 今日参加者のリストを持ってきてください。」
「わかりました。」
ティナがマーディンの引き出しから透明な板を出し彼女に渡した。
マーディンがその板を持つと文字が浮かび上がった。
「・・・・・・。
ノア達のチームがまだ戻ってません・・・。」
リルティが手を上げマーディンに話しかける。
「あたし達がスキャンと心遠眼を使って辺りを調べました・・・でも
反応はありませんでした。」
「そうですか・・・・・・。」
後ろにある全身がすっぽりと入るぐらいの大きな窓からスキャンで
ディルウィンクエイス全体を調べるマーディン。
普通のエレメンツはここまでの能力はない、 これが
エレメンツマスターの超魔力なのだろうか・・・。
「すでにここにはいないみたいですね・・・暴走中の魔物の反応もありません・・。
困りましたね・・・下に行かれてしまってはいくら私でも国全体をスキャンする事は
できないですから・・・。」
「マスター、 俺達はどうすれば・・・?」
「・・・・・・こうしていても先へは進みません。
今から私が言うチームでそれぞれの場所へ捜索に向かって下さい。
まずはディック。」
「はい。」
「貴方はアッシュと下に向かい街の被害状況などを調べて来て下さい。
一通り調べ終えたら報告する事も忘れないように。」
「わかりました。 アッシュいくぞっ!」
「あぁ!」
「ティナはリルティとここに残りもう一度この辺りを捜索してください。
念のためです。」
「わかりました。」
「了解でぇす!」
ティナ達もすぐに向かった。
「クレイドとジェノは・・・少し範囲を拡大しますがラジュ村付近までお願いします。
残りのみなさんもこの2人と向かって下さい。」
『はい!』
クレイドとジェノはクラスA数名と共にラジュ村へと向かった。
「・・・やっかいな事にならなければいいのですが・・・。」
マーディンは再びリストを手に取り名前を確かめる。
「(ディアナ・フライアとノア・セレスティ・・・
ディアナとノア・・・どこかで聞いた名前ですが・・・。
それに【セレスティ】はエルフ語で【精霊の世界】と言う意味のはず・・・
どう言う事でしょうか・・・?)」