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私・《わたし》》・《私》・わたし・ワタシ


 小さく息を吐いた。

 息を潜ませ、階段を上る。二段ベットがキィと音を立て、その度に足を止め上の気配をさぐる。そしてまた、一歩、足を。

 神経をすり減らし、一秒を永遠に感じるほどの時間をかけて着くと、――――の身体に触れないように気を付けながら柔らかな布団へ足を下した。

 天井はすぐそこで、四つん這いの姿勢でそろそろと音を立てる布団に苛立ちながら進む。

 ――――はすやすや寝ていて、起きる気配はまるでない。

 馬乗りになる形、嫌でもその顔が目に入って、湧いてきた吐き気に目を逸らす。

 そして、ギチギチと刃を押し出す。

 そっと、その刃をそいつの首元に沿わして、カッターの柄を握る手にぐっと力を込め――


「おはよう」


 腕を掴まれ、その声が耳朶を打ち、私は失敗したことを悟ると「チッ」と舌打ちした。

 また、ダメだった。

 もうすぐ月曜日が始まる、また訪れてきた日常に胸を焦がされそうだった。


「結局、《わたし》の愛は受け入れてもらえなかったか」


「……愛なんて、ばかばかしいことを言うな。《わたし(お前)》は私を生かして苦しめたいから、あんなことを言ったんだろう」


「あ……、そういう風に解釈しちゃったのかぁ」


《わたし》が肩を下しているが、そんなわざとらしい動作に私は惑わされない。

 胸に渦巻く、どす黒い殺意。煮えたぎったそれは、私に《わたし(こいつ)》を殺せと蠢く。


 私は《わたし》が嫌いだ。それなのに、《わたし》から好かれてるとか。

 なんてつまらない冗談だろう。


 この自己嫌悪がある限り、私は《わたし》がそばにあり続けるなんて耐えきれない。

 変われるという希望も、諦めてはいない。

 あんな戯言にほだされるものか。


「《私》の性質で、どうしようもないものなんだって。無理だよ~」


「じゃあ、その性質都やらも一緒に――殺してやる」


 ワタシを殺して殺して殺して殺して殺して、自分という存在が無くなったとしても、それで望むものが出に入るというならば構わない。

 このまま生きていくのは嫌だ。

 だったら、それくらいしてでも変わってやる。

 望む《自分》を、手に入れてやる。


「わ~、かっこいい。私の妄執、《わたし》は本当に愛してるよ」


 キモチワルイ音に耳を塞ぐ、耐えきれない嫌悪に顔を歪ませていると、《わたし》はより一層嬉しそうに笑う。


「あぁ、そういえば、殺意と恋情って似てるよね。あの、燃え盛るような――だから……」


「――――黙れ」


 頭が痛い。

 気持ち悪い。


《わたし》の顔から眼をそむけ、湧き上がってくる殺意を、胸を抑えて堪える。


 絶対にあきらめない。



 ――――私は、変わってやるんだ。




 完結です!!


 短く、しかも超手探りで書いていったので、自分でも全然趣旨が分からなくなりました。

 ハッピーエンドでも、バットエンドでもない、なんと中途半端な終わり方……


 私私私書きすぎて、ゲシュタルト崩壊が起き、わたし→たわしに見えてしまっていたラスト……


 日の目なんて見られそうもない作品ですが、ほんの数行でも読んでくださった方々、本当にありがとうございます!!

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