ねぇ、あなたには……
嫌いなものは嫌い。
涙が出そうになるくらい、大嫌いだ。
耐えきれず母に、「もう嫌だ」と言ったことがある。
怒られた。泣かれた。
申し訳ない気分になって、すぐに頭を下げて泣いて撤回した。
少しも心は変わってないのだが、この感情を背負うのは私だけであるべきなのだと理解した。
もう言わないと、心の中で誓った。
誰にも言わず、胸に憎悪だけが募っていく。
視界の端に映っただけで頭が割れそうなほどの感情に襲われて、あいつがいるからだと苦しみの中で呪った。
包丁を持つ手が、あいつのことを思うだけで、震えて震えて仕方なかった。
その気持ちを、周りの人に隠すのがすごくすごく大変だった。
だから、見ないようにした。
だから、思い出さないようにした。
一生、会いたくなかったのに――
ねぇ、あなたには、殺したいほど嫌いな人がいる?
その人と、一生離れられないとしたら、どうする?
狂っちゃうよね。
そんな人生、なんて。
導入部分ですw
連続投稿の次話から本編に入ります。
読むだけで暗い気持ちになる鬱々した小説になると思うので、落ち込んでいる時に読むのはお勧めできません(汗