Italian garden
二人の生活が、始まる。
「何だよ、これ?」
俺は思わず口に出していた。
そこは新しく引っ越して来た家の庭。そこには植えられたオリーブの苗、苗、苗。
まるで、イングリッシュガーデンならぬ"イタリアンガーデン"だ。
「良いでしょ、それ」
隣で彼女が言った。
「他にも、ハーブとか買ってあるの。これならパスタやピザも、本格的なのが作れるわ」
「そう言うの、興味あったの?」
知らなかった。
俺の知らない彼女の一面。
「そうよ、でも育てるのは初めて。これから貴方の妻になろうって言うんだから、これ位しなきゃね」
と、ウィンクして見せる。
彼女がより一層、新妻に見えた瞬間だった。
こんな素敵な人を、お嫁さんに貰えるんだ。
そんなことを思うと、笑いが込み上げて来る。
この幸せは、当たり前であって当たり前ではないんだと、改めて実感させられた。
「待てよ、俺も手伝う」
そう言うと、彼女の持つプランターの片側を支える。
「俺も、君の旦那だからね」
釣り合いたいから。
少しでも長く、一緒に居たいから。
「ありがと」
笑った顔が可愛い。
そう思ったけど、言わなかった。
秘密にしておきたかった。
もうすぐ新婚を迎える瞬間の、囁かで幸せな秘密。
二人だけの、特別な時が刻まれる。