6話 出撃①
横須賀基地 12:00
「ふざけるな」
壁を殴りながらそう吐き捨てた副長がいた。
本来副長という役職は次期艦長職になる位置であるため艦長代理にもなったり艦長への進言といったことを行うそのため冷静である必要があるがどうやらその副官はそれを忘れているようだ。
廊下にいた人間も何かと振り向いたりしているがすぐに自分の目的地へと向かうためその場を通り過ぎる
副長の横で上官たる艦長はきびきびと先へ向かう。
「艦長は不満ではないのでありますか? こんな作戦のためにわざわざ呉から呼び出すとは」
「我々を呼び出さずとも第一潜水艦群で・・・」
「そこまでだ副長。我々は軍人だ命令されればどこにでも行かなければならない」
「そうでありますが・・・」
二人に下された命令は
『明朝0800時に同基地を出航し
特務艦「あまと」の護衛に付かれたし出航後は「あまと」艦長の指示に従い行動せよ
なお本作戦は極秘任務であるため他言無用である
防衛省統合作戦司令本部』
任務であるためその命令には従わなくてはならないが詳細な内容は全く知らされていないのだ。
唯一知らされたのは行き先の大まかな座標であった。調べるとサイパンから東へ約150キロほど離れた海域を示していた。むろんこれはあまりあてにならないため本当に目的地かも疑わしいのだ。
やはりもう少し情報がほしいと二人で指令室へと足を運んだのだが結果は司令官から「詳細内容は「あまと」の艦長の指示に従え」とのことだ。
納得がいかづさらに追及をしようとしたところで艦長に襟をつかまれた状態で司令部を後にしたのだ。
「いまだに納得ができません。だいたい・・・」
そう言いながら艦長のほうを見ると何かを考えていたのか渋い顔をしていたが、何か思いついたのか胸ポケットから携帯電話を取り出しどこかと連絡を取り始めた。
連絡が終わると副長に
「出撃準備をしといてくれ用事が出来た。」
と言い残しその場を後にする。
「・・・・艦長!」
聞こえたのか聞こえていないのか判らず足早に去られた。
「あらしお」発令所 14:00
「榎本機関長からも何か言ってください。あれでは規則が・・・」
所属艦に戻り艦長の代わりに出撃準備を指揮する傍らに艦長のよき理解者でもある榎本機関長に『どうしたら艦長が聞いてくれるのだろうか』を相談するが
「無駄だよ。あの人とは4年の付き合いがるがあの性格は元からだから言うだけ無駄だ」
「一年一緒に居ればわかりますよ。」
「ならあきらめろ。それより艦長は何処に?」
「電話をするとすぐにどこかに行きましたよ」
「なるほど」
何か思い当ったのか一人でうなづいている。
その時に艦長が戻ってきたようだ。
「副長。航海長・水雷長・機関長は・・・・いるみたいだな。すぐに二人を集めてくれ。」
「艦長今までどこへ?」
「いいから早く。副長も同席してもらうぞ」
そう言うとすぐに艦長室にこもってしまった。
「了解です」
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