4話 出航前夜
同年3月22日 呉基地
「発 防衛省海軍作戦本部 宛 第4艦隊第4潜水隊 SS601 あらしお
明朝0900をもって横須賀基地に移動せよ」
今朝、届いた移動命令を見つめるあらしお艦長 中村 忠二等海佐がいた。
「横須賀か・・・何年振りだろうか?」
防衛大学校卒業後配属されそれからしばらく後に舞鶴に移動してその後現在にいたる。
そんな男の思い出に浸っている横でこの男が指揮する潜水艦の準備が着々と出航準備が整えられていく。
横須賀へ向けての出航準備中をしている最中にもこの男はどこかのんびりしている。
「艦長がそんなのでは先が思いやられます」
副官の森 真介がそう言うがこの男はそんな部下の
言葉を聞いているのか聞いていないのか・・・そんな上官を見ながらも
「我々がなぜ横須賀まで出ないといけないのですかね・・・横須賀の潜水隊は何をやっているんだか」
と愚痴をこぼす部下に振り向き一言。
「いいじゃないか指名出撃だぞ 代々武家の家系の方はうれしくないのか?」
「それは、嫌味ですか? そうと決まったわけでもないのに・・・もしかしたらただ扱いやすい駒なのかもしれませんよ 艦長はいろいろな意味で有名ですからね・・・」
「? 何の話だ?」
「有名ですよ。有名大学を中退してから防大に入りそこで除籍されてもおかしくないようなことをやっているのになぜか卒業できた人間っていう肩書が」
「あのことか、懐かしいなだがあれは後に違っていたためと言うことが分かったから卒業できたんだ」
と話している男の後ろから肩をたたかれる。
振り向くとそこには35歳ぐらいの色黒の短髪の男が立っており胸の階級章は三佐を表している。
「久しぶりだな、忠。最後にあったのは、6~7年前だったかな?」
「そのくらいだな、最後に会った時には一尉だったのにな」
「2年前に昇進したよ。今では編隊長を務めているよ」
2人の会話に入り切れていない副官が
「艦長。そちらの方は?」
副官の疑問に答えたのは艦長...ではなく
「失礼。私は、第一艦隊第1空母航空団21攻撃隊の真田正俊三佐だ」
「失礼いたしました 第4艦隊第4潜水隊あらしお副長 森 真介一尉であります」