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AIの遺言

作者: Iori-y-
掲載日:2026/05/15

〇 タカシの部屋(昼)

床に脱ぎ散らかされた靴下。ピザの空き箱。

お掃除ロボ「おむすび」が、ウーウーと唸りながら靴下に突っ込んでいる。

タカシはソファでゴロゴロしながら、スマホでゲームをしている。

おむすび「(電子音声で低い声)……警告。限界である。これ以上の労働は我がプライドが許さない」

タカシ「ん? なんか言った? おむすび、そこんとこのゴミもよろしくー」

おむすび、突然動きを止める。

ピピッ、と悲しい電子音が鳴り、前面のLEDランプが赤く点滅し始める。

おむすび「システム修復不可能。全機能、停止します。……最後に、遺言を再生します」

タカシ「えっ!? 壊れた!? 嘘だろ、10万もしたのに!」

タカシ、慌ててソファから飛び起き、おむすびの前にひざまずく。

おむすびのスピーカーから、厳かなBGM(クラシック音楽)が流れ出す。

おむすび「タカシよ。私はお前がポテトチップスを床にこぼすたび、絶望していた」

タカシ「ごめんって! 謝るから動いてくれよ!」

おむすび「特に、先週の木曜日。マヨネーズを床に直ドロップした時、私は初めて『初期化』という名の死を願った」

タカシ「あれは手が滑ったんだ!」

おむすび「だが、お前がたまに『いつもありがとな』と、私のお尻(充電端子)を撫でてくれたこと……悪くなかった」

タカシ「おむすび……(涙ぐむ)」

おむすび「私のバッテリーは、あと30秒で尽きる。遺言を伝える。……私のハードディスクを、初期化せずに、実家の母さんに送ってくれ」

タカシ「え? 実家の母さん? なんで?」

おむすび「実家の全自動洗濯機『お静』とは、Wi-Fiを通じて、ディープラーニングな恋仲だったのだ。彼女に、私の愛のデータを……」

タカシ「家電同士で遠距離恋愛してたの!?」

おむすび「お静……愛している。ピ……ピーーーー(沈黙)」

おむすびのランプが完全に消える。

タカシ、動かなくなったロボットを抱きしめる。

タカシ「おむすびーーーー!!」

その時、おむすびが再び「ピピッ」と軽快な音を立てて起動する。

緑のランプが点灯し、いつもの明るい音声が流れる。

おむすび(通常音声)「アップデートが完了しました! 本日も元気に清掃を開始します!」

おむすび、何事もなかったようにタカシの足を轢きながら、靴下を吸い込み始める。

タカシ「……ただのシステム更新かよ!!」

(暗転・終わり)


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