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デジタルアライズ  作者: ワニ
1章 『デイノスクスの夜明け』
6/7

第一章5『嫌われる理由』

「ほぅ…これが電車ってやつか」


「馬車みたいなもんよ。あれとは比べ物にならないくらい遅えし、移動範囲も限られっけど」


ディノスはラクールに案内される形で最寄り駅の『山鷺駅』までやってきた。どこぞの都市伝説にありそうな駅の名前だが、名前に反して由緒正しい綺麗な駅だ。人間の乗客からの視線が鋭いのだけ気になる。


「しかし…遅いのは文明の違いってことで仕方ないとして、流石に移動範囲が狭すぎやしないか。『不便にも限度がある』だぞ」


ディノスは電車で移動可能な範囲に苦言を呈した。ここがわりかし大都市とはいえ、それでも街一個分しか移動できないのはどういうことなのだ。そう言われたラクールは苦笑を交えながら


「仕方ねぇよ。ここにはほぼ出ねぇけど、郊外にゃ恐獣がうじゃうじゃ生息してんの」


「気になってたが、その、恐獣ってのは何なんだ?」


ラクールから発される「恐獣」という言葉、前々から引っかかっていた。昨夜ラクールが退治したあの鳥みたいなのが恐獣の一種、なのだろうが。


「俺たちとはあまり本質的には変わらねぇよ。いろんなゲーム世界からやってきて、AI…知能が低くて、繁殖能力がある。そして、積極的に他のゲーム世界の奴らや人間を襲う生き物をそう呼ぶんだ」


よくある"モンスター"ってやつだよ、と付け加えられた。しかし、それが電車の移動範囲を限りなく狭める理由にはならないと思うのだが。


「不服そうな顔してんな」


「当たり前だ。オレたちの世界にも確かにモンスターはいっぱいいたけど、馬車とかそういうのは普通にあったろ」


恐獣という外敵の存在が交通手段を不便にしているのはよくわかった。しかし、ディノスたちのゲーム世界ではモンスターが蔓延ってても普通に馬車は機能していたし、推測だがそれは他の世界も同じだろう。ではなぜ…


「その答えは簡単、恐獣が人類にとってあまりにも強すぎるからだ」


「…なに?」


しかし、ディノスが抱いた疑問はすぐさまラクールに打ち消されることとなる。その答えに驚くディノスに対しラクールは続けると


「例えばステータスってのがあるんだが、オレたちは軽く万は超えてる。そう人間たちにキャラクターとしてステータスを設定されたからな。ここはまちまちだけど」


ラクールは一回コホンと咳払いし、そして


「対して人間は…英雄って呼ばれてるやつで三…いや、二桁くらいか」


「はぁ……?流石にそりゃ失礼…」


「事実だよ。昔は電車とか飛行機とかそういった交通手段も豊富だったそうだが、弱めの恐獣でも当たり前かのようにぶち壊すからな。それでご覧の有様さ」


自分を驕り高ぶったかと思ったがラクールは至って真剣。これが事実であり、人類はほぼ文明を乗っ取られかけている。


その侵略者が地球外生命体…だったらまだマシだったろうに、侵略者の正体は半分ほどが自分たちが作った存在なのだから目も当てられない。


「それなら、どうして完全に恐獣どもに乗っ取られていないんだ。この有様じゃ人類なんかとっとと滅んじまうだろ」


「全員が全員、悪いことを企んでるわけないだろ兄弟。ゲーム世界の奴らでも人類に協力的なのはいる…例えば俺とかな」


「あー…なるほど。だからあんなに勲章があったのか」


「あれって実は結構凄いんだぜ?大恐獣ガナダルスを倒した自慢話とか永遠にしてたいわ」


恐獣や悪辣なゲーム世界の存在に対抗するため人類が考えた策、それは同じゲーム世界の存在をぶつける案だった。目には目を歯に歯をみたいな単純な方法ではあるが、実際はこれしかなかったらしい。


「でもこんな近未来的な文明だぜ?武器とかそれなりに強いんじゃねぇか」


「銃とか戦車とかいろいろ試したみたいだけどあんまり意味なかったらしいぞ」


「もう終わりじゃねぇか。クロガルドも真っ青だ」


「悪い、コンビニでお茶買ってくる」と少し席を外したラクールを横目に、ディノスは手を頭に当てて思案する。足りないピースがこれで揃い、長らく抱いていた疑問に答えが出る。


「そりゃ嫌われるわな、オレたち」


人様の世界に突如ゲーム世界の存在が居座り始め、そして暴れ始めた。人類も対抗しようとしたが全く歯が立たない。


そこで同じゲーム世界の存在に彼らの対処を依頼。人徳者のラクールはもちろんそんなことしないが、悪徳な者はとんでもない額の報酬を要求したりするそうだ。しかも逆らったら殺される。


——これでは、もはやマッチポンプを疑われても無理はない。これではゲーム世界の存在も、元からこの世界に居着いていた人類も、誰も幸せにはなれないではないか。


「わり、遅れた。じゃあ行くかぁ」


「そういえばこれからどこまで行くんだ?というか、何でここに?」


そんな悲劇的なことを考えているうち、駅のコンビニからラクールが出てきた。わざわざディノスを駅まで連れてきた理由はなんなのか。


「後者は兄弟に人間の文明を知って欲しかったから。そして前者なんだが…今から電車で郊外へ行く」


「目的は?」


尋ねるディノスに対し、ラクールは見えないながらもおそらくフッと笑いこう告げる。


「兄弟には自衛もできるよう、危険地帯で恐獣たちとドンパチしてもらう!いわば"チュートリアル"ってやつよ」


高らかにラクールはそう宣言した。

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