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4.腹が減っては何とやら

 「よく聖女召喚成功しましたね」


 いろいろ突っ込みたい事はあったが、取り敢えず出てきた感想がそれだった。


 「でも、私って本当に聖女なんですかね? さっきの話だとこの国に精霊はいないんですよね」

  

 結依の言う通り、確か精霊の加護があって初めて聖女になるという話だったはずだ。


 「精霊に関しては詳しく調査してみなければ分からないが、聖女に関しては間違いないだろう。聖石が反応したのがその証拠だ」

 「そうなんですね」


 と言って結衣は自分の手を握ったり開いたりして何かを確認する。


 「何か力とか出そう?」

 「全く出る気がしないです」


 困惑顔の結衣に公爵が言う。

 

 「魔術同様訓練を受けなければ使える様にはならないだろう」

 「魔術訓練ですって翠さんっ」


 結依はその言葉を聞いて目を輝かせたが翠はさほど魔術には惹かれない。

 幼い頃は魔法もファンタジーも好きだった筈だが、何故だろうと翠は首を捻る。

 そんな事より今後のことだ。


 「魔術の事はちょっと置いといて、もし結依ちゃんがこの国に協力するとなった場合、どんな生活になりますか?」


 食いつきの悪い翠に結依は少し不服そうに唇を尖らせた。

 公爵は指を顎に添えて思案する。


 「そうだな、まずは聖魔法を扱える様になるために学園に通ってもらうのがいいだろう」

 「学園ですか?」

 「王立ロサリオス学園と言う貴族の子息息女が通う学校だが、聖魔法と同時にこの国の歴史や文化、貴族のマナーや社交も学べるのだが、結依は随分若い様だが歳は?」

 「16です」

 「16? もっと幼く見えたがそうか、ならば丁度いいだろう」


 丁度いい?


 「もしかしてその学園に先ほどの王太子殿下も通われてたりしますか?」


 ジト目で翠が見ると、公爵は視線を逸らした。

 

 あの自己中王太子に結依ちゃんのこと任せるとかあり得ないんだけど。

 と言うか召喚された聖女が王太子と同じ学園に通うとか、テンプレな乙女ゲームな展開で嫌な予感しかしないですけど。


 「王太子殿下に結依ちゃんを任せたりしないですよね」

 「王太子は一つ上の学年になるから任せるならば王太子の婚約者である私の娘と通ってもらう事になる」

 「私と同い年の娘さんがいるんですか!?って言うか婚約者!?」


 結依は信じられないと口に手を当てて驚いた。確かに16歳で婚約者がいる現実は驚くが、貴族の結婚は早いのが常識だ。公爵は若々しく見えるが翠の目から見て公爵は恐らく30代後半、結衣くらいの歳の子供がいてもおかしくない。


 王太子の婚約者とくればツンデレと決まっているが、、この公爵の娘なら99%がツンでできているに違いない。まあ結衣ちゃんなら大丈夫だろうが。


 「なんだ?」


 翠が一人で納得していると、公爵が凍てつく様な視線を向けてくる。


 「何がですか? 公爵様の娘さんなら安心だと思ったんです」


 思ったんですとも。と微笑みを貼り付けて応える。

 30歳まで仕事漬けで良かったと思った事は唯一、神経が図太くなった事だ。口煩いお姉様方の相手も、扱いづらいおじさんの相手をするのも、やる気の無い新人の相手をするのも慣れたものだ。


 「じゃあ、翠さんは通わないんですか?」


 結衣のとんでも無い質問に翠はすかさず応える。


 「私は通わないよ。聖魔法なんて使えないし。10代の子達と勉強するってのもね」


 翠は自分が思春期真っ只中の少年少女に混じって教室に座っている姿を想像して身震いした。しかも貴族の子息女って言えば言葉遣いやらマナーやら派閥やら気を使うことが多すぎる。

 翠はもう頑張らないと決めたのだ。


 「そんなぁ、翠さんと通えないなんて・・・」


 目に見えて落ち込む結依はきっと今は不安が勝っているだけだ。学園に通い出したら友達もできてきっと楽しくなる。


 「でも結依ちゃんが学校に前向きみたいで安心した」

 

 あ、と結依は自分が学園に行く前提で話している事に気付いたようだ。

 

 「でもこれはあくまで結依ちゃんが聖女としてこの国に協力してもいいと思った時の話であって、絶対ではないからね。王宮を出たいならそう言ってもいいし、部屋でゴロゴロしてたいならそうしたっていいんじゃない?」


 ねえ公爵様? と思って公爵を見ると、余計な事は言うなと目で訴えてくる。

 そうは行かない。主導権はこちらで握っておかなくては。


 「まあ、ユイが望むならだが」

 

 そう言うと結依も少しだけ表情を和らげた。


 「じゃあ翠さんはどうするんですか?」


 そう問われて翠ははた、と考える。

 正直今は何もしたくないし考えたくもない。

 こちとら残業明へばかりか晩ご飯にもありつけてないんだ。


 あ、そうだ。

 

 「公爵様、私から一つお願いがあります」

 「なんだ」

 「軽食でもいいので食事がしたいです。夕飯前にこちらにきたのでもうお腹が限界です」


 そういうと、公爵は鷹揚に頷いた。

 

 「すぐに用意させよう」

 「甘いものもお願いします」


 エネルギーには肉! 疲れには糖分! 

 腹が減っては何とやら。

 大事な事を決める前は、まずはお腹を満たさないとね。

 

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