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愛を売るので、心をください。  作者: 悠介


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8/13

サンタさん

「メリークリスマース!」

「クリスマス?」

「十二月のお祝い事だよ。まあ、俺は仏教の家庭だったから関係ないけど、まあ良いだろ。ケーキとチキン食べて、プレゼントを受け取って、そんな日だよ。」

「へー!」

 十二月二十四日、そういえば今年はツリーを出してなかったなって思い出して、急いで飾り付けを始める。

 浩介はその様子を眺めながら、きらきら光る飾りをつぶさに眺めてて、サンタの人形を見て、これがクリスマスなのか、ってうんうん頷いてた。

「浩介も飾りつけするか?」

「うん!」

 雪に見立てた綿を渡して、五人皆で飾り付け。

 あーでもないこーでもない言いながら、それなりにさまになった様な気がするツリーが完成した。

「じゃあ、今日はチキンとケーキだな。後はプレゼントだけど、買い物行くか。」

「買い物?」

「皆にプレゼントをな、ホントはサンタさんの役目なんだけど、代わってくれって言われてるんだ。」

「サンタさん!?サンタさんとお友達なの!?」

「そんなとこだ。それで、サンタさんが浩介達にプレゼントを聞くのを忘れちゃっててな、それで俺が代わりに買ってこい、って話だよ。」

「凄い!」

 サンタさんという話は聞いた事があるのか、浩介が目を輝かせる。

 悠介もまだサンタを信じていて、浩希は流石に気づいていたが、という感じで、浩介と悠介の二人は眼を輝かせながら、何をお願いしようか、と話し合ってる。

「さ、買い物行こうか。皆、準備してくれな。」

「はーい!」

 五人で出かけるのは銭湯以来だな、と思いながら、五人でお出かけだ。


「浩くん、何がいいかなぁ?」

「うーん……。」

 まずは浩介と悠介のプレゼントを選ぼう、とやってきたのは、洋服の店だ。

 浩介が洋服が良いと言い出して、それで洋服屋に来てる。

「くまさん、あるかなぁ!」

「くまさんが良いのか、うーん、こういうのはどうだ?」

「良いねぇ!浩くん、それ似合いそうだよぉ?」

「ほんと!?じゃあ、僕これが良い!」

 可愛いくまの柄のパーカーを選んで、会計に持っていく。

 そのまま次は悠介の買い物、次に浩希で、最後に悠治にプレゼントだ。


「チキン、って鳥さん?」

「そうだよ、鶏肉を焼いたやつだ。美味しいから、食べてご覧?」

「うん!いただきます!」

 悠介達は買い物から帰ってくると、そろそろ昼時と言った時間だった。

 夕食はまた別で用意があるから、と悠介はチキンレッグを用意して、浩介に一口食べさせる。

 浩介はきらきらと眼を輝かせながら、チキンレッグをほおばり、タレを口の周りにべったりとくっつけながら、笑う。

「美味しいだろう?」

「うん!」

「今日のケーキはなあに?」

「今日は果物をたくさん使ったケーキだよ。」

「やったぁ!」

 他愛のない会話をしながら、団らんの時間は過ぎていく。

 こんな時間がずっと続けばいいな、と悠介は笑いながら、それを願った。


「これで、正式に浩介は家族だな。」

「そうなの?お手紙になんて書いてあったの?」

「俺を親権者として認める、つまり浩介のお父さんとして認める、って内容だよ。まあ、お兄ちゃんのままで良いと思うけどな。一応、俺達は親子だ。」

「そうなの?……。」

 年の瀬、家裁から手紙が来てて、正式に養子縁組を進める手続きを、と来ていて、それを浩介に説明すると、一瞬浩介は顔に陰りをみせた。

「じゃあ、お兄ちゃんはお兄ちゃんだから、お兄ちゃんだ!」

「あはは……。でも良かったよ、これで駄目だったら困るって感じだったから。」

 多分、陰りの原因は両親だろう。

 親に捨てられた、それを正式に通達された、という意味合いもあるのだから、そこだろう。

 正確には親権は両者にある、つまり普通養子縁組なわけだけれども、それは多分今言った所でわからないだろう。

 そのうち説明しなきゃな、とは思いつつ、今は浩介の心のケアの方が優先順位は上だ。

「じゃあ、今日は行ってらっしゃい。」

「浩くーん、行くよー!」

「はーい!」

 今日は年末最後の野球の日で、浩介はユニフォームを着ながら浩希達を追いかける。

「まったく……。」

「どうしたの?」

「家裁からな、正式に養子縁組の手続きを進める様に、って通達があったんだ。これで、浩介はホントに家族になるな。」

「そっか、良かった。ここまで来て、やっぱり駄目ですなんて言われたら、寂しいもん。」

「そうだな。」

 コーヒーを淹れながら、さて俺も年末の仕事納めをしないとな、って仕事部屋に引っ込む。

 煙草を一口吸いながら、これからの事を考える。

「……。」

 浩介は、浩希は、悠介は、悠治は、これから先どういう人生を送るんだろうか、俺がした事は正しかったのか、子供を引き取って暮らしている今の人生は間違いではないか。

 考え始めたらきりがない、独りでしか考えられない、答えの無い問いの数々。

 昔からそうだ、変な事を聞いて困らせる子供だった、って印象が色んな人の中に残ってるんだろうなって思うくらいには、色んな事を疑問に思って、色んな質問をして、その結果答えは得られなくて。

 結局、答えは出ないが答えなんだろうけど、それでも考えちゃうのは、きっと俺の性なんだろう。

「さて、と。」

 今日は新人の応募者の作品に目を通して、選考に持っていく作品を選ぶ準備期間の最終日。

 今日選んだ人が、作家としてデビューの可能性を掴める、向こうからしたら、地獄の様な心境の中で向かれるであろう、そんな時間だ。

「……。」

 作品を読んでると、雑念も無くなってくる。

 いつもの事だ、おっちゃんがかつて小説の編集さんをやってた、っていう話から興味を持った仕事だけど、それが俺の性に合ってるんだろうな。


「浩くん、上手になってるねぇ!」

「そうかなぁ?えへへー。」

「監督も褒めてたよ!浩くんは上手になるのが早いだろうって!」

「ほんとに!?」

 帰り道、談笑しながら帰っている三人。

 浩介は、得難い経験をしている、と心の何処かでわかっているのだろうか、この話を忘れてはいけないと感じていた。

 それは何故なのか、と問われると言語化は出来ないが、しかし、忘れてはいけない、幸せなのだと感じていた。

「頑張る!」

「ファイトだよぉ!」

「頑張ろうね!」

 励まし合いながら、玄関をくぐって帰路につく。

「ただいまー!」

「お帰り、年末の練習はどうだった?」

「浩くんがね!上手になるの早いだろうって、監督が言ってたよ!」

「そうかそうか、それは良かったな。」

 浩介がえらく嬉しそうな顔をしている事を不思議に思った悠介が、浩希の言葉を聞いて納得する。

 悠介は年末最後の仕事を終え、一息ついている所だった。

「頑張るね!」

「頑張れ、浩介。今までの分、いっぱい楽しむんだ。」

「うん!」

 得難い幸福感の中で、浩介は疲れと幸せを噛み締めていた。

 それは、今までは経験が出来なかった、これからはいくらでも経験が出来る、そんな事かもしれない。

 だが、浩介はこの感情を忘れる事はないだろう、きっと、逝くその日まで、この感情を忘れないだろう。

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