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愛を売るので、心をください。  作者: 悠介


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12/13

旅の思い出

「今度の連休は旅行にでも行こうか。」

「旅行ってなあに?」

「皆でホテルに泊まって、遊んで、それで楽しむんだよ。ゴールデンウィークは俺も休みをもらってるし、箱根行くか箱根。」

「箱根ってどこお?」

「温泉が有名な所だよ。神奈川の南のほうだから、ここからだと高速に乗って二時間ちょっとって感じだな。」

 四月の終わり、三十日。

 今日は平日だけど、明日から土日を挟んでゴールデンウィークが五連休だ。

 もうホテルの予約がいっぽいかなぁとか思いながら、とりあえず空いてそうなホテルを探してみる。

「温泉って、前行ったところと同じ?」

「冬に行ったやつか?あれは銭湯、源泉かけ流しだから温泉と同じ様なもんだけど、ちょっと趣が違うな。温泉は、地下から湧いてる源泉を適温にして、そこに入るんだ。色々とお肌によかったり、腰によかったりするんだよ。滋養強壮の目的で入る人もいる、って感じだ。」

 浩介は今年小学四年に上がった、悠治が中学三年で、今年は受験生だ。

 まだまだ受験勉強もゆっくりやってるみたいだけど、丁度良い息抜きにもなるかな。

 浩希も来年には中学生になる、もうだいぶお兄ちゃんとしてしっかりしてきた頃だ。

「宿ー、お、あった。」

「にいちゃ、楽しそうだけどどうしたの?」

「浩ちゃん、明日から旅行行こうと思ってな。皆で箱根、行かないか?」

「箱根!行くー!」

「じゃあ、悠ちゃんと悠治に伝えてきてくれ。明日朝出発するから、泊りの準備してくれって。」

「はーい!野球はどうしよう?」

「監督には俺から休む事を伝えておくよ。」

 浩希が二階から降りてきて、風呂に入る前に顔を出してきた。

 と思ったら旅行の話でテンションが上がって、風呂の前にと悠介と悠治に話をしに行く。

「えーっと、監督監督……。」

 監督の連絡先を探して、電話する。

「もしもし?悠介君かな?」

「お世話になってます。浩介と浩ちゃんと悠ちゃんなんですけど、明日と明後日お休みしてもいいですか?」

「構わないが、どうしたんだい?」

「急なんですけど、旅行に行こうと思いまして。」

「そうかそうか、思い出を作ってやるのが優先だ!明日と明後日だね、了解した。」

「ありがとうございます。」

 電話を切る、監督は優しいから有難い。

 こういう時、熱血系のめんどくさい人だったら、どっちを優先するんだ!とか言いそうだし。

「じゃあ浩介、着替え今のうちに用意しておいてくれな。俺も用意しとかないと。あでも、リュックがないか。今から買いに行く、のはぎりぎり大丈夫だな。浩介ちょっと出かけるか。」

「どこに行くの?」

「リュック買いに行こう。エナメルバッグでもいいけど、やっぱりそういう時用のがあった方が便利だからな。悠治ー!ちょっと浩介と出かけてくるー!」

 二階にいる悠治に大声で伝えて、浩介と二人で出かける。

 近所にでかいモールがあるのが助かる、今は午後八時だから、ぎりぎり間に合うくらいだろう。


「どれがいい?」

「うーん……。」

 ショッピングモールについて、子供用のショップについた俺達は、ちょっと急がないとな、って思いながら、買い物だ。

「くまさんあるかなぁ?」

「くまさんか。探してみよう。」

 あんまり時間はない、二手に分かれてバッグを探す。

 浩介が眺めてる場所と、もう一か所バッグを置いてある場所があるから、俺はそっちを眺める。

「うーん……。」

 浩介は、バッグを眺めながら唸ってる。

 俺も探さないとな、って見える所からバッグを眺める。

「お、これ。浩介ー、これどうだー?」

「あ!くまさん!」

 見つけたのは黒いバッグで、黄色のくまさんが正面にプリントされてた。

 浩介はそれを見ると、眼をきらきらさせる。

「これがいい!」

「よし、買っちゃおう。」

「ありがとう!お兄ちゃん!」

 決めた、って言って、浩介はそれを抱きしめてる。

「会計済ませなきゃだからな、一回渡してくれ。」

「うん!」

 一緒に会計に行って、買い物を済ませて、車に戻る。

「なぁ浩介、最近の生活はどうだ?何か不自由はあったりしないか?学校では友達たくさん出来たか?」

「えっとね!お友達たくさん出来たよ!誠也君が、紹介してくれたの!それでね!野球も、僕上手になったんだよ!監督が、浩介は早く上手になるだろうなって!僕、野球選手になりたいんだ!」

「そうかそうか、きっとなれるさ。浩介はひたむきだからな、きっとなれる。」

「ひたむき、ってなあに?」

「頑張り屋さん、って事だよ。勉強はどうだ?ついていけてるか?」

 車の中で、久しぶりというか、ちょっと聞いてなかった何気ない日常を聞く。

 普段は浩介が言わないし、俺も無理して聞く事でもないかなと思ってたから、こんな風に話をするのは、保護した頃だけだった。

 主張をあんまりしないタイプな浩介が、どっかで見落としてる部分で辛かったりしないかな、とは思ってたけど、あんまり話したがらないのに聞くのもな、って考えてたから。


「おっきいね!」

「日本一大きいサービスエリア、って言うのも伊達じゃ無いな。」

「おっきいね……。迷子にならない様にしないと。浩ちゃん、悠ちゃん、浩くん、離れちゃ駄目だよ?」

「はーい!」

「わかったぁ!」

 翌朝、朝早くから高速を飛ばして、海老名サービスエリアで休憩だ。

「メロンパンが有名なんだったっけか。小腹も空いたし、皆で食べようか。」

「メロンパン!美味しいかなぁ?」

「有名って事は、美味いんだろうさ。さ、こっちだ。」

 海老名で有名なメロンパンを買いに行く、朝九時半だから多分開いてるだろう。

「悠にぃ、あれじゃない?」

 朝九時半って言っても、伊達に連休の初日じゃない混み方をしてるサービスエリアの中で、ちょっと目立つ装いをしてるメロンパン屋さんを発見した悠治が、こっちこっちと手を振ってる。

「いらっしゃいませ。」

「メロンパンを五個下さい。」

「メロンパンを五個ですね?お会計千五十円になります。」

「はい、どうも。」

 ぽるとがる、って所の、海老名メロンパンを五個買って、どっかで食べれる場所と思ったけど、フードコートなんかは混雑してそうだし、これは車の中で食べた方が良いかな。

「おっし。ちょっと探検するか。」

「探検?」

「お店見て回って、それから出発しよう。せっかくの旅行なんだ、道中も楽しまないと、な。」

「にいちゃ!あっち!」

「はいはい。」

 悠介が行きたい方向に歩いて行って、五人でサービスエリアの中を探検だ。

 あーでもないこーでもないって言いながら、まだ時間に余裕はあるから、まったりと行こう。


「楽しかったぁ!」

「楽しかったね!」

「うん!メロンパン美味しいよ!」

 車に戻ってきて、メロンパンを食べながら暫し休憩だ。

 案の定フードコートは家族連れで混みあってて、こんな時間から混んでるのか、って感心だ。

「海老名メロンパン、だっけか。美味いな、これ。」

「美味しいね。」

 メロンパンは、外はクッキー生地がさくさくで、中の緑色のパンはもちもちだ。

 これは行列が出来るのも納得だ、売れ行きが良いっていう情報も間違ってはいないだろう。

 これが二百円ちょっとで食べられる、っていうのもポイントは高い。

「さて、行こうか。皆、シートベルトしめてなー。」

「はーい!」

 海老名まで来ちゃえば、箱根まではそんなにかからない、と思う。

 午前中には到着しそうだな、って思いながら、車を発進させた。


「さて、ホテルのチェックインは夕方だから、散策でもするか。」

「悠にぃ、温泉饅頭だってよ。」

「お、良いな。」

 箱根湯本のホテルの駐車場に車を止めて、チェックインの夕方までは時間がある。

 というか、昼ご飯をまだ食べてない、渋滞に捕まったけど、今は丁度昼頃だ。

 とりあえずの腹ごなしに温泉まんじゅうを買って、歩きながら食べて店を探す。

「海鮮ってなあに?」

「お刺身とか、魚の事だな。海鮮丼、っいうのは、お刺身がたくさん乗った丼の事だよ。海鮮丼にするか、美味しそうだし。」

「お魚ぁ!美味しいかなぁ!」

「さあ、食べてみてのお楽しみだ。」

 海鮮丼の暖簾を下げてるお店に入って、五人ですっていうと、丁度空いてたのか、すぐに席に案内される。

「ウニって美味しいの?」

「大人は好きな人が多いかな。俺は苦手だ、なんか、ちょっと食感がな。」

「マグロだぁ!僕、マグロにする!」

「僕も!」

 浩希と悠介はマグロが好きで、浩介はサーモンが好きで、悠治は光物が好きで。

 それぞれ好みがあるだろうけど、色々と取り揃えてくれてるのがありがたい。


「食った食った。お腹いっぱいだ。さて、箱根と言えば温泉、温泉だけ出してる所もあるし、行ってみようか。」

「あっちに温泉の所あるっぽいよ?」

「お、良いな。そっち行ってみるか。」

 海鮮丼を満喫して、店を出てぶらぶらして、温泉を探す。

 悠治が看板を見つけて、そっちの方に行くと、温泉独特の香りがしてくる、というか、ここいら全体がそんな香りがする気がする。

「温泉楽しみだね!お兄ちゃん、腰が痛いって言ってたの、治るかなぁ?」

「どうだろうな。一回入って治るんだったら、医者がいらなくなっちゃうかもしれないぞ?」

 キャッキャしながら、温泉の施設に到着だ。

 入口で入場の処理とタオルなんかの貸出をしてもらって、後は入るだけ。


「お外にあるんだ!」

「露天風呂って言ってな、外に風呂があるんだよ。」

「凄ーい!」

 浩介は初めての露天風呂の景色に見惚れていて、悠介達は転ばない様にと気を配る。

 浩介は、この感動をきっと忘れないだろう、と感じ取っていて、こういった所に連れてきてくれた悠介に、感謝していた。

 小学四年になり、まだまだ自分が経験不足だという事は認識していた、だが、これから経験していけば良いだろう、という悠介の言葉を信じ、半年間生活をしてきた。

 皆が経験している事を経験出来なかった、という感覚は払しょくされてきたが、しかし、新しい事に触れるという感動は、今でもなくならないのだろう。

「浩介、はしゃいで転ぶなよ?痛いぞぉ?」

「うん!」

 美しい景色を眺めて、この景色を心の中にしまっておこう、と目に焼き付ける。

 湯船に浸かり、体を温めながら、外の景色に夢中になる。

「にいちゃ!ちょっとぬるぬるする!」

「とろみ湯みたいだな、お肌に良いんだ。」

「悠治にいちゃ!背中流してぇ!」

「はいはい。」

 周りの声が聞こえなくなる程度に、浩介は景色に夢中な様子だ。

 暫く眺めた後、ハッとした表情を見せる。

「ねえお兄ちゃん。」

「なんだ?」

「僕、幸せだよ。お兄ちゃんと会って半年くらいしか一緒にいないけど……。でも、会えて嬉しかったよ。僕、ずっと父ちゃん達としか関わらないで生きると思ってたから。だから……。だから、皆と会えて良かったなって、思うんだ。」

「俺もだよ。浩介に会えて良かった。」

 悠介に頭を撫でられる、その感覚が心地良い。

 浩介は、あの冬の出来事があったから、こうして今を過ごせる、という事に感謝していた。

 それは、両親との決別だったかもしれない、親に捨てられたという事に他ならない。

 しかし、そうして出会った縁が、今は大切だと。


「ベッド広ーい!にいちゃ!僕達こっち使っていい?」

「悠治は一人の方が良いだろ?シングルベッド使うと良いよ。俺と浩介がダブル使って、浩ちゃんと悠ちゃんはツインの所使うと良いな。」

 ホテルにチェックインして、部屋に案内してもらう。

 たまたま空いてた部屋がおおきい部屋で、全員が一緒に泊まれる部屋だったのが有難い。

「綺麗!」

「夕日が見れるかな、高い所って苦手だけど、こういう景色が見られるのは嬉しいな。」

「高いの苦手なの?お兄ちゃん、苦手な事とかないと思ってた!」

「あはは……。俺、結構苦手な事多いぞ?ジェットコースターなんかは乗れないし、高い所も苦手だし、狭い所も苦手だしな。日常生活を送る分には問題ないんだろうけど、飛行機は怖かったよ。」

 飛行機には人生で一回乗ったけど、あれは怖かった。

 なんとも言えない浮遊感というか、心臓が置いて行かれる感覚というか、それの代表みたいな感じだったな。

「飛行機乗ってみたい!」

「高校生になったら、修学旅行とかで乗れるんじゃないか?俺は怖いから嫌だけど。」

「そういえば、僕来月修学旅行だ。京都行くんだけど、悠にぃは行った事ある?」

「んや、ないな。修学旅行は欠席したから、そういう思い出がないんだ。皆楽しそうにしてたけど、まあこればっかりは仕方がないな。施設も金があるわけじゃない、修学旅行の積立金とかまでは面倒が見れないって事だな。皆、生活させるのに精一杯、って所だ。」

 修学旅行に行けない、って言われた時、不思議と納得した覚えがある。

 それは、今生活させてもらえてるだけで有難かったから、っていうのもあるけど、施設の先輩がぼやいてたのをどっかで聞いてたからだろう。

 修学旅行に行きたかった、ってぼやいてる二つ上の先輩がいて、俺は当時小学校の修学旅行が近かったけど、行けないんだろうなって、どっかで納得してた。

「じゃあ、お土産いっぱい買ってこないと。京都って何が有名なんだろう?」

「定番な所だと京菓子、八つ橋とかだな。後はなんだろうな、俺も行った事がないからよくわかんないな。」

「うーん……。そっか、わかった。でも楽しみにしててね、きっと良いお土産いっぱい買ってくるから。」

「あぁ、楽しみに待ってる。さて、夜ご飯までちょっと時間があるけど、温泉入るか?それともまったりするか?」

「ホテルの中、遊べる場所あるかなぁ?」

「そう言えば、一階に遊べそうな場所があったな。行くか?」

「行くー!」

 一階にフリースペースというか、子供が楽しめそうな遊び場があった気がする、と思って、とりあえずそっちに行く事に。


「ゲームセンターだ!」

「ゲームセンターってなあに?ゲームが出来る場所なの?」

「色んなゲームが置いてあるんだよ!これやろ!」

 浩希が、太鼓を叩く音ゲーを見つけて、それをやりたいってはしゃぐ。

 そういえば浩介は音ゲーはやった事がなかったっけか、なんて思い出しながら、百円を入れてゲームを開始する。

「浩くんもやってみる?」

「うん!」

 バチをもって、浩希が歌を選んで、一緒に叩いて遊んでる。

 悠介は隣にあるクレーンゲームを悠治とやって、俺はちょっと手持ち無沙汰だ。

「お兄ちゃん、お兄ちゃんはこれやった事あるの?」

「ん?昔はよくやったな。目隠しで出来るくらいには譜面覚えててな。」

「凄い!やってやって!」

「今でも出来るかな……。」

 浩介に話を振られて、昔話をすると、見てみたいと眼をきらきらさせる浩介。

 昔取った杵柄、じゃないけど、覚えてるかな、なんて思いながら、得意だった曲を選んで一番難しい難易度を選択して、譜面が見えないモードにする。

「集中するか……。」

 不思議と譜面は覚えてる、ただそれを叩けるかどうか、って感じだ。

「わぁ!凄い!」

 曲の途中で、コンボが途切れずに続くもんだから、皆が見てざわざわしてる。

 ホテルに泊まってるであろう他のお客さん達まで見てるみたいで、ちょっと恥ずかしくなってくるけど、ここまで来たらフルコンしたいと思って、集中する。


「ふぅ……。」

「お兄ちゃん、凄い!」

「悠にぃ、覚えてたんだね、譜面。いつ見ても凄いや。」

 曲が終わって、ちょっと見物客が増えてきた。

 フルコンボ、ってでかでかと表示されてる中、誰かが拍手を始めたのか、パチパチとちょっとした見世物だ。

「にいちゃ、凄いね!」

「ねぇ!凄おい!僕、覚えられないよぉ!」

「何回も通ってたからな、自然と覚えたんだろ。こういうの覚えるの、得意だったしな。さて、ちょっと恥ずかしいからお暇しようかな。悠治、浩ちゃん達を任せても良いか?」

「わかった。夜ご飯の前に、部屋に戻ればいいよね?」

「そうだな。」

 俺はそれだけ言って、見物客に挨拶をして部屋に戻る。

 悠治達はもうちょっと遊んでから戻るって言ってて、ちょっと一人の時間が出来そうだ。


「ふー……。」

 久々に酒を飲みながら、って言ってもカクテルなんだけど、ちょっと飲酒だ。

 普段は飲まないし、昔は悠治がお酒を極度に嫌ってたから飲む機会がなかった、だからちょっとだけ久しぶりだ。

 カルーアミルクを飲みながら、窓辺の椅子に座って景色を眺める。

 丁度日の入りで、夕日がよく見える、綺麗な景色だ。

「……。」

 これからの事、ちょっと考える。

 二か月前、綾ちゃんが結婚して、それ以来週一くらいのペースでお父さんとお母さんが遊びに来る様になった、時々綾ちゃんと良太も遊びに来る。

 二人を見ていると、いつか子供達も結婚するのかな、どんな子を連れてくるのかな、なんてちょっと考えてしまう。

 ハンデのある家庭だから、向こうの親を説得するのは大変だろうな、とか、どんな子を連れてきて、どんな家庭を築いていくのかなとか、そんな事を漠然と考える。

「結婚、かぁ……。」

 俺はする事は生涯ないと誓えちゃうくらいには、春ちゃんの事が好きだ。

 だから結婚するつもりはない、でも、子供達がどういう結婚相手を連れてくるか、それは興味があるし心配もしてる。

「まだ見ぬ未来の話、だと思ってたけどな……。」

 それは、もっと先の未来の事だと思ってた。

 でも、小学生だった綾ちゃんが結婚した、あれから八年経ってるんだから、そう言う事もあって当たり前なんだけど、如何せん俺の中での綾ちゃんの認識っていうのが、小学生から飛んだもんだから、あっという間に感じる。

 きっと、それは間違いじゃない。

 あっという間に大人になって、あっという間にそういう相手を見つけてくるんだと思う。

 お父さんとお母さんも言ってた、あれから時間が経ったはずなのに、あっという間に感じたって。

 綾ちゃんの子供を見るのが楽しみだ、子供達が孫を連れてくるのが楽しみだ。

 おじいちゃん、なんて言われる日が来るのかな、なんて妄想に耽りながら、時間はゆっくりと過ぎていく。


「浩介、だいぶ体つき良くなってきたな。」

「そうかなぁ!」

「うん、会った頃に比べれば、だいぶ良くなってきた。まだちょっと細いけど、筋肉もついてきてるし、大丈夫だろ。」

 夕食をすまし、露天風呂に入っていた五人。

 悠介が定期的に浩介の体型をチェックしていたが、半年でだいぶん体つきは良くなったと言えるだろう。

 身長も、小学四年生にしては小さいが、そこまで騒ぎ立てる程でもない、という状態まで伸びてきていて、何らかの障害などがなかった事に、悠介は安心していた。

「浩くん、ちょっとがっちりしてきたよね。野球やってるおかげかな?」

「そうかもな。今まで運動っていう運動をしてこなかったってわりには、体の出来方が早いからな。才能があったんだろうな。」

「才能?あるのかなぁ……。」

「きっとあるよ。浩介は賢い子だから。」

「僕達も頑張ってるよ!」

「そうだな、皆頑張ってる。皆、俺にとってっは最高の弟達だよ。」

 安心しながら、しかしまだ油断は許されない、と悠介は考え直し、露天風呂からの景色を眺めていた。

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