旅の思い出
「今度の連休は旅行にでも行こうか。」
「旅行ってなあに?」
「皆でホテルに泊まって、遊んで、それで楽しむんだよ。ゴールデンウィークは俺も休みをもらってるし、箱根行くか箱根。」
「箱根ってどこお?」
「温泉が有名な所だよ。神奈川の南のほうだから、ここからだと高速に乗って二時間ちょっとって感じだな。」
四月の終わり、三十日。
今日は平日だけど、明日から土日を挟んでゴールデンウィークが五連休だ。
もうホテルの予約がいっぽいかなぁとか思いながら、とりあえず空いてそうなホテルを探してみる。
「温泉って、前行ったところと同じ?」
「冬に行ったやつか?あれは銭湯、源泉かけ流しだから温泉と同じ様なもんだけど、ちょっと趣が違うな。温泉は、地下から湧いてる源泉を適温にして、そこに入るんだ。色々とお肌によかったり、腰によかったりするんだよ。滋養強壮の目的で入る人もいる、って感じだ。」
浩介は今年小学四年に上がった、悠治が中学三年で、今年は受験生だ。
まだまだ受験勉強もゆっくりやってるみたいだけど、丁度良い息抜きにもなるかな。
浩希も来年には中学生になる、もうだいぶお兄ちゃんとしてしっかりしてきた頃だ。
「宿ー、お、あった。」
「にいちゃ、楽しそうだけどどうしたの?」
「浩ちゃん、明日から旅行行こうと思ってな。皆で箱根、行かないか?」
「箱根!行くー!」
「じゃあ、悠ちゃんと悠治に伝えてきてくれ。明日朝出発するから、泊りの準備してくれって。」
「はーい!野球はどうしよう?」
「監督には俺から休む事を伝えておくよ。」
浩希が二階から降りてきて、風呂に入る前に顔を出してきた。
と思ったら旅行の話でテンションが上がって、風呂の前にと悠介と悠治に話をしに行く。
「えーっと、監督監督……。」
監督の連絡先を探して、電話する。
「もしもし?悠介君かな?」
「お世話になってます。浩介と浩ちゃんと悠ちゃんなんですけど、明日と明後日お休みしてもいいですか?」
「構わないが、どうしたんだい?」
「急なんですけど、旅行に行こうと思いまして。」
「そうかそうか、思い出を作ってやるのが優先だ!明日と明後日だね、了解した。」
「ありがとうございます。」
電話を切る、監督は優しいから有難い。
こういう時、熱血系のめんどくさい人だったら、どっちを優先するんだ!とか言いそうだし。
「じゃあ浩介、着替え今のうちに用意しておいてくれな。俺も用意しとかないと。あでも、リュックがないか。今から買いに行く、のはぎりぎり大丈夫だな。浩介ちょっと出かけるか。」
「どこに行くの?」
「リュック買いに行こう。エナメルバッグでもいいけど、やっぱりそういう時用のがあった方が便利だからな。悠治ー!ちょっと浩介と出かけてくるー!」
二階にいる悠治に大声で伝えて、浩介と二人で出かける。
近所にでかいモールがあるのが助かる、今は午後八時だから、ぎりぎり間に合うくらいだろう。
「どれがいい?」
「うーん……。」
ショッピングモールについて、子供用のショップについた俺達は、ちょっと急がないとな、って思いながら、買い物だ。
「くまさんあるかなぁ?」
「くまさんか。探してみよう。」
あんまり時間はない、二手に分かれてバッグを探す。
浩介が眺めてる場所と、もう一か所バッグを置いてある場所があるから、俺はそっちを眺める。
「うーん……。」
浩介は、バッグを眺めながら唸ってる。
俺も探さないとな、って見える所からバッグを眺める。
「お、これ。浩介ー、これどうだー?」
「あ!くまさん!」
見つけたのは黒いバッグで、黄色のくまさんが正面にプリントされてた。
浩介はそれを見ると、眼をきらきらさせる。
「これがいい!」
「よし、買っちゃおう。」
「ありがとう!お兄ちゃん!」
決めた、って言って、浩介はそれを抱きしめてる。
「会計済ませなきゃだからな、一回渡してくれ。」
「うん!」
一緒に会計に行って、買い物を済ませて、車に戻る。
「なぁ浩介、最近の生活はどうだ?何か不自由はあったりしないか?学校では友達たくさん出来たか?」
「えっとね!お友達たくさん出来たよ!誠也君が、紹介してくれたの!それでね!野球も、僕上手になったんだよ!監督が、浩介は早く上手になるだろうなって!僕、野球選手になりたいんだ!」
「そうかそうか、きっとなれるさ。浩介はひたむきだからな、きっとなれる。」
「ひたむき、ってなあに?」
「頑張り屋さん、って事だよ。勉強はどうだ?ついていけてるか?」
車の中で、久しぶりというか、ちょっと聞いてなかった何気ない日常を聞く。
普段は浩介が言わないし、俺も無理して聞く事でもないかなと思ってたから、こんな風に話をするのは、保護した頃だけだった。
主張をあんまりしないタイプな浩介が、どっかで見落としてる部分で辛かったりしないかな、とは思ってたけど、あんまり話したがらないのに聞くのもな、って考えてたから。
「おっきいね!」
「日本一大きいサービスエリア、って言うのも伊達じゃ無いな。」
「おっきいね……。迷子にならない様にしないと。浩ちゃん、悠ちゃん、浩くん、離れちゃ駄目だよ?」
「はーい!」
「わかったぁ!」
翌朝、朝早くから高速を飛ばして、海老名サービスエリアで休憩だ。
「メロンパンが有名なんだったっけか。小腹も空いたし、皆で食べようか。」
「メロンパン!美味しいかなぁ?」
「有名って事は、美味いんだろうさ。さ、こっちだ。」
海老名で有名なメロンパンを買いに行く、朝九時半だから多分開いてるだろう。
「悠にぃ、あれじゃない?」
朝九時半って言っても、伊達に連休の初日じゃない混み方をしてるサービスエリアの中で、ちょっと目立つ装いをしてるメロンパン屋さんを発見した悠治が、こっちこっちと手を振ってる。
「いらっしゃいませ。」
「メロンパンを五個下さい。」
「メロンパンを五個ですね?お会計千五十円になります。」
「はい、どうも。」
ぽるとがる、って所の、海老名メロンパンを五個買って、どっかで食べれる場所と思ったけど、フードコートなんかは混雑してそうだし、これは車の中で食べた方が良いかな。
「おっし。ちょっと探検するか。」
「探検?」
「お店見て回って、それから出発しよう。せっかくの旅行なんだ、道中も楽しまないと、な。」
「にいちゃ!あっち!」
「はいはい。」
悠介が行きたい方向に歩いて行って、五人でサービスエリアの中を探検だ。
あーでもないこーでもないって言いながら、まだ時間に余裕はあるから、まったりと行こう。
「楽しかったぁ!」
「楽しかったね!」
「うん!メロンパン美味しいよ!」
車に戻ってきて、メロンパンを食べながら暫し休憩だ。
案の定フードコートは家族連れで混みあってて、こんな時間から混んでるのか、って感心だ。
「海老名メロンパン、だっけか。美味いな、これ。」
「美味しいね。」
メロンパンは、外はクッキー生地がさくさくで、中の緑色のパンはもちもちだ。
これは行列が出来るのも納得だ、売れ行きが良いっていう情報も間違ってはいないだろう。
これが二百円ちょっとで食べられる、っていうのもポイントは高い。
「さて、行こうか。皆、シートベルトしめてなー。」
「はーい!」
海老名まで来ちゃえば、箱根まではそんなにかからない、と思う。
午前中には到着しそうだな、って思いながら、車を発進させた。
「さて、ホテルのチェックインは夕方だから、散策でもするか。」
「悠にぃ、温泉饅頭だってよ。」
「お、良いな。」
箱根湯本のホテルの駐車場に車を止めて、チェックインの夕方までは時間がある。
というか、昼ご飯をまだ食べてない、渋滞に捕まったけど、今は丁度昼頃だ。
とりあえずの腹ごなしに温泉まんじゅうを買って、歩きながら食べて店を探す。
「海鮮ってなあに?」
「お刺身とか、魚の事だな。海鮮丼、っいうのは、お刺身がたくさん乗った丼の事だよ。海鮮丼にするか、美味しそうだし。」
「お魚ぁ!美味しいかなぁ!」
「さあ、食べてみてのお楽しみだ。」
海鮮丼の暖簾を下げてるお店に入って、五人ですっていうと、丁度空いてたのか、すぐに席に案内される。
「ウニって美味しいの?」
「大人は好きな人が多いかな。俺は苦手だ、なんか、ちょっと食感がな。」
「マグロだぁ!僕、マグロにする!」
「僕も!」
浩希と悠介はマグロが好きで、浩介はサーモンが好きで、悠治は光物が好きで。
それぞれ好みがあるだろうけど、色々と取り揃えてくれてるのがありがたい。
「食った食った。お腹いっぱいだ。さて、箱根と言えば温泉、温泉だけ出してる所もあるし、行ってみようか。」
「あっちに温泉の所あるっぽいよ?」
「お、良いな。そっち行ってみるか。」
海鮮丼を満喫して、店を出てぶらぶらして、温泉を探す。
悠治が看板を見つけて、そっちの方に行くと、温泉独特の香りがしてくる、というか、ここいら全体がそんな香りがする気がする。
「温泉楽しみだね!お兄ちゃん、腰が痛いって言ってたの、治るかなぁ?」
「どうだろうな。一回入って治るんだったら、医者がいらなくなっちゃうかもしれないぞ?」
キャッキャしながら、温泉の施設に到着だ。
入口で入場の処理とタオルなんかの貸出をしてもらって、後は入るだけ。
「お外にあるんだ!」
「露天風呂って言ってな、外に風呂があるんだよ。」
「凄ーい!」
浩介は初めての露天風呂の景色に見惚れていて、悠介達は転ばない様にと気を配る。
浩介は、この感動をきっと忘れないだろう、と感じ取っていて、こういった所に連れてきてくれた悠介に、感謝していた。
小学四年になり、まだまだ自分が経験不足だという事は認識していた、だが、これから経験していけば良いだろう、という悠介の言葉を信じ、半年間生活をしてきた。
皆が経験している事を経験出来なかった、という感覚は払しょくされてきたが、しかし、新しい事に触れるという感動は、今でもなくならないのだろう。
「浩介、はしゃいで転ぶなよ?痛いぞぉ?」
「うん!」
美しい景色を眺めて、この景色を心の中にしまっておこう、と目に焼き付ける。
湯船に浸かり、体を温めながら、外の景色に夢中になる。
「にいちゃ!ちょっとぬるぬるする!」
「とろみ湯みたいだな、お肌に良いんだ。」
「悠治にいちゃ!背中流してぇ!」
「はいはい。」
周りの声が聞こえなくなる程度に、浩介は景色に夢中な様子だ。
暫く眺めた後、ハッとした表情を見せる。
「ねえお兄ちゃん。」
「なんだ?」
「僕、幸せだよ。お兄ちゃんと会って半年くらいしか一緒にいないけど……。でも、会えて嬉しかったよ。僕、ずっと父ちゃん達としか関わらないで生きると思ってたから。だから……。だから、皆と会えて良かったなって、思うんだ。」
「俺もだよ。浩介に会えて良かった。」
悠介に頭を撫でられる、その感覚が心地良い。
浩介は、あの冬の出来事があったから、こうして今を過ごせる、という事に感謝していた。
それは、両親との決別だったかもしれない、親に捨てられたという事に他ならない。
しかし、そうして出会った縁が、今は大切だと。
「ベッド広ーい!にいちゃ!僕達こっち使っていい?」
「悠治は一人の方が良いだろ?シングルベッド使うと良いよ。俺と浩介がダブル使って、浩ちゃんと悠ちゃんはツインの所使うと良いな。」
ホテルにチェックインして、部屋に案内してもらう。
たまたま空いてた部屋がおおきい部屋で、全員が一緒に泊まれる部屋だったのが有難い。
「綺麗!」
「夕日が見れるかな、高い所って苦手だけど、こういう景色が見られるのは嬉しいな。」
「高いの苦手なの?お兄ちゃん、苦手な事とかないと思ってた!」
「あはは……。俺、結構苦手な事多いぞ?ジェットコースターなんかは乗れないし、高い所も苦手だし、狭い所も苦手だしな。日常生活を送る分には問題ないんだろうけど、飛行機は怖かったよ。」
飛行機には人生で一回乗ったけど、あれは怖かった。
なんとも言えない浮遊感というか、心臓が置いて行かれる感覚というか、それの代表みたいな感じだったな。
「飛行機乗ってみたい!」
「高校生になったら、修学旅行とかで乗れるんじゃないか?俺は怖いから嫌だけど。」
「そういえば、僕来月修学旅行だ。京都行くんだけど、悠にぃは行った事ある?」
「んや、ないな。修学旅行は欠席したから、そういう思い出がないんだ。皆楽しそうにしてたけど、まあこればっかりは仕方がないな。施設も金があるわけじゃない、修学旅行の積立金とかまでは面倒が見れないって事だな。皆、生活させるのに精一杯、って所だ。」
修学旅行に行けない、って言われた時、不思議と納得した覚えがある。
それは、今生活させてもらえてるだけで有難かったから、っていうのもあるけど、施設の先輩がぼやいてたのをどっかで聞いてたからだろう。
修学旅行に行きたかった、ってぼやいてる二つ上の先輩がいて、俺は当時小学校の修学旅行が近かったけど、行けないんだろうなって、どっかで納得してた。
「じゃあ、お土産いっぱい買ってこないと。京都って何が有名なんだろう?」
「定番な所だと京菓子、八つ橋とかだな。後はなんだろうな、俺も行った事がないからよくわかんないな。」
「うーん……。そっか、わかった。でも楽しみにしててね、きっと良いお土産いっぱい買ってくるから。」
「あぁ、楽しみに待ってる。さて、夜ご飯までちょっと時間があるけど、温泉入るか?それともまったりするか?」
「ホテルの中、遊べる場所あるかなぁ?」
「そう言えば、一階に遊べそうな場所があったな。行くか?」
「行くー!」
一階にフリースペースというか、子供が楽しめそうな遊び場があった気がする、と思って、とりあえずそっちに行く事に。
「ゲームセンターだ!」
「ゲームセンターってなあに?ゲームが出来る場所なの?」
「色んなゲームが置いてあるんだよ!これやろ!」
浩希が、太鼓を叩く音ゲーを見つけて、それをやりたいってはしゃぐ。
そういえば浩介は音ゲーはやった事がなかったっけか、なんて思い出しながら、百円を入れてゲームを開始する。
「浩くんもやってみる?」
「うん!」
バチをもって、浩希が歌を選んで、一緒に叩いて遊んでる。
悠介は隣にあるクレーンゲームを悠治とやって、俺はちょっと手持ち無沙汰だ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんはこれやった事あるの?」
「ん?昔はよくやったな。目隠しで出来るくらいには譜面覚えててな。」
「凄い!やってやって!」
「今でも出来るかな……。」
浩介に話を振られて、昔話をすると、見てみたいと眼をきらきらさせる浩介。
昔取った杵柄、じゃないけど、覚えてるかな、なんて思いながら、得意だった曲を選んで一番難しい難易度を選択して、譜面が見えないモードにする。
「集中するか……。」
不思議と譜面は覚えてる、ただそれを叩けるかどうか、って感じだ。
「わぁ!凄い!」
曲の途中で、コンボが途切れずに続くもんだから、皆が見てざわざわしてる。
ホテルに泊まってるであろう他のお客さん達まで見てるみたいで、ちょっと恥ずかしくなってくるけど、ここまで来たらフルコンしたいと思って、集中する。
「ふぅ……。」
「お兄ちゃん、凄い!」
「悠にぃ、覚えてたんだね、譜面。いつ見ても凄いや。」
曲が終わって、ちょっと見物客が増えてきた。
フルコンボ、ってでかでかと表示されてる中、誰かが拍手を始めたのか、パチパチとちょっとした見世物だ。
「にいちゃ、凄いね!」
「ねぇ!凄おい!僕、覚えられないよぉ!」
「何回も通ってたからな、自然と覚えたんだろ。こういうの覚えるの、得意だったしな。さて、ちょっと恥ずかしいからお暇しようかな。悠治、浩ちゃん達を任せても良いか?」
「わかった。夜ご飯の前に、部屋に戻ればいいよね?」
「そうだな。」
俺はそれだけ言って、見物客に挨拶をして部屋に戻る。
悠治達はもうちょっと遊んでから戻るって言ってて、ちょっと一人の時間が出来そうだ。
「ふー……。」
久々に酒を飲みながら、って言ってもカクテルなんだけど、ちょっと飲酒だ。
普段は飲まないし、昔は悠治がお酒を極度に嫌ってたから飲む機会がなかった、だからちょっとだけ久しぶりだ。
カルーアミルクを飲みながら、窓辺の椅子に座って景色を眺める。
丁度日の入りで、夕日がよく見える、綺麗な景色だ。
「……。」
これからの事、ちょっと考える。
二か月前、綾ちゃんが結婚して、それ以来週一くらいのペースでお父さんとお母さんが遊びに来る様になった、時々綾ちゃんと良太も遊びに来る。
二人を見ていると、いつか子供達も結婚するのかな、どんな子を連れてくるのかな、なんてちょっと考えてしまう。
ハンデのある家庭だから、向こうの親を説得するのは大変だろうな、とか、どんな子を連れてきて、どんな家庭を築いていくのかなとか、そんな事を漠然と考える。
「結婚、かぁ……。」
俺はする事は生涯ないと誓えちゃうくらいには、春ちゃんの事が好きだ。
だから結婚するつもりはない、でも、子供達がどういう結婚相手を連れてくるか、それは興味があるし心配もしてる。
「まだ見ぬ未来の話、だと思ってたけどな……。」
それは、もっと先の未来の事だと思ってた。
でも、小学生だった綾ちゃんが結婚した、あれから八年経ってるんだから、そう言う事もあって当たり前なんだけど、如何せん俺の中での綾ちゃんの認識っていうのが、小学生から飛んだもんだから、あっという間に感じる。
きっと、それは間違いじゃない。
あっという間に大人になって、あっという間にそういう相手を見つけてくるんだと思う。
お父さんとお母さんも言ってた、あれから時間が経ったはずなのに、あっという間に感じたって。
綾ちゃんの子供を見るのが楽しみだ、子供達が孫を連れてくるのが楽しみだ。
おじいちゃん、なんて言われる日が来るのかな、なんて妄想に耽りながら、時間はゆっくりと過ぎていく。
「浩介、だいぶ体つき良くなってきたな。」
「そうかなぁ!」
「うん、会った頃に比べれば、だいぶ良くなってきた。まだちょっと細いけど、筋肉もついてきてるし、大丈夫だろ。」
夕食をすまし、露天風呂に入っていた五人。
悠介が定期的に浩介の体型をチェックしていたが、半年でだいぶん体つきは良くなったと言えるだろう。
身長も、小学四年生にしては小さいが、そこまで騒ぎ立てる程でもない、という状態まで伸びてきていて、何らかの障害などがなかった事に、悠介は安心していた。
「浩くん、ちょっとがっちりしてきたよね。野球やってるおかげかな?」
「そうかもな。今まで運動っていう運動をしてこなかったってわりには、体の出来方が早いからな。才能があったんだろうな。」
「才能?あるのかなぁ……。」
「きっとあるよ。浩介は賢い子だから。」
「僕達も頑張ってるよ!」
「そうだな、皆頑張ってる。皆、俺にとってっは最高の弟達だよ。」
安心しながら、しかしまだ油断は許されない、と悠介は考え直し、露天風呂からの景色を眺めていた。




