ステイシーの決意
燃え盛る城を背に、ロベルトの腕に抱かれながら、ステイシーは静かに空を見上げていた。夜空を焦がす炎は、まるで自分の中に渦巻いていた狂気と絶望が、すべて燃え尽きていくようだった。
マデイラの愛は、歪んで、狂っていた。だが、それはステイシーの孤独な覚悟が生み出した悲劇だった。マデイラを愛するふりをすることで、ロベルトの心を突き放そうとした。そして、自分自身の運命を否定し、男として生きることを選んだ自分。
すべては、この呪われた血を終わらせるためだった。しかし、ロベルトは、その血も、そのすべてを理解し、受け止めてくれた。彼の優しさは、ステイシーが長年築き上げてきた心の壁を、いとも簡単に崩してしまった。
ロベルトの腕の中で、ステイシーは初めて、本当の自分として生きることを許されたような気がした。もう、偽りの姿で誰かを欺く必要はない。恐怖に怯える必要も、一人で孤独に耐える必要もない。
「ロベルト……」
ステイシーは、掠れた声で彼の名を呼んだ。ロベルトは、彼女を優しく抱きしめ、何も言わずに答えた。彼の温もりが、ステイシーの凍てついた心を溶かしていく。
燃え盛る城は、マデイラとシェラザードという、哀しい愛の犠牲者を飲み込んでいった。彼らの死は、ステイシーの胸に重くのしかかるだろう。しかし、それは同時に、新しい人生への始まりを意味していた。
ステイシーは、もう迷わない。この呪われた血を受け入れ、そして、ロベルトと共に生きていく。彼のまっすぐな愛情は、ステイシーの心を包み込み、決して離さないと誓ってくれた。彼の存在が、ステイシーにとってどれほど大きな救いであるか、言葉では言い表せなかった。ロベルトの愛が、ステイシーの人生に、希望という名の光を灯してくれたのだ。




