表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縛られた城  作者: 輝 久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

真実の重み、そして誓い

ロベルトは激痛が走る背中も、凶暴なクマの姿も忘れて、ただ目の前のステイシーを見つめていた。はだけたシャツから覗く白い肌、男にはありえない柔らかな感触。そのすべてが、ステイシーが女性であるという、ロベルトが長年抱いていた疑惑を確信に変えた。ステイシーの顔から血の気が引き、その碧い瞳には、絶望と恐怖の色が浮かんでいた。秘密を知られてしまった。もう、後戻りはできない。

ロベルトは、その表情から、ステイシーの心にどれほどの恐怖が渦巻いているかを察した。彼は、自らの血を呪い、この悲劇的な運命を断ち切るために、男として生きる道を選んだのだ。すべては、この忌まわしい血を絶やし、誰も不幸にしないために。

「大丈夫か!?」

駆除隊の男たちが駆け寄り、クマの注意をそらす。その隙に、ロベルトはステイシーを抱きかかえ、安全な場所へと移動した。ステイシーは、ロベルトの腕の中で、まるで壊れそうなガラス細工のように震えていた。

「どうして……どうして、僕を……」

ステイシーは、ロベルトの背中の傷を見て、嗚咽を漏らした。しかし、ロベルトは、その問いには答えず、ただ静かに彼女の頬に触れた。

「ステイシー……僕は、すべてを知ってしまった」

ロベルトの声は、優しく、それでいて強い決意に満ちていた。ステイシーは、その言葉に絶望的な表情を浮かべた。しかし、ロベルトの瞳には、一切の嫌悪も、戸惑いもなかった。そこにあったのは、彼女への深い愛情と、すべてを受け入れようとする覚悟だけだった。

「僕が、君を守る。君が背負ってきたものは、もう一人で抱えなくてもいい。この呪われた血も、君の孤独な決意も、すべて僕が受け止めよう」

ロベルトは、ステイシーの瞳をまっすぐに見つめながら、そう告げた。その言葉は、ステイシーの心を貫き、彼女の目から一筋の涙が溢れた。それは、長年張り詰めていた心が、初めて解放された瞬間だった。

ステイシーの男装は、彼女を守るための鎧だった。しかし、ロベルトは、その鎧を脱いだ素の彼女を、ありのままに受け入れた。ロベルトは、金銭目的でこの城に来たが、今、彼が望むものは、ただ一つ。ステイシーという、一人の女性の幸せだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ