真実の重み、そして誓い
ロベルトは激痛が走る背中も、凶暴なクマの姿も忘れて、ただ目の前のステイシーを見つめていた。はだけたシャツから覗く白い肌、男にはありえない柔らかな感触。そのすべてが、ステイシーが女性であるという、ロベルトが長年抱いていた疑惑を確信に変えた。ステイシーの顔から血の気が引き、その碧い瞳には、絶望と恐怖の色が浮かんでいた。秘密を知られてしまった。もう、後戻りはできない。
ロベルトは、その表情から、ステイシーの心にどれほどの恐怖が渦巻いているかを察した。彼は、自らの血を呪い、この悲劇的な運命を断ち切るために、男として生きる道を選んだのだ。すべては、この忌まわしい血を絶やし、誰も不幸にしないために。
「大丈夫か!?」
駆除隊の男たちが駆け寄り、クマの注意をそらす。その隙に、ロベルトはステイシーを抱きかかえ、安全な場所へと移動した。ステイシーは、ロベルトの腕の中で、まるで壊れそうなガラス細工のように震えていた。
「どうして……どうして、僕を……」
ステイシーは、ロベルトの背中の傷を見て、嗚咽を漏らした。しかし、ロベルトは、その問いには答えず、ただ静かに彼女の頬に触れた。
「ステイシー……僕は、すべてを知ってしまった」
ロベルトの声は、優しく、それでいて強い決意に満ちていた。ステイシーは、その言葉に絶望的な表情を浮かべた。しかし、ロベルトの瞳には、一切の嫌悪も、戸惑いもなかった。そこにあったのは、彼女への深い愛情と、すべてを受け入れようとする覚悟だけだった。
「僕が、君を守る。君が背負ってきたものは、もう一人で抱えなくてもいい。この呪われた血も、君の孤独な決意も、すべて僕が受け止めよう」
ロベルトは、ステイシーの瞳をまっすぐに見つめながら、そう告げた。その言葉は、ステイシーの心を貫き、彼女の目から一筋の涙が溢れた。それは、長年張り詰めていた心が、初めて解放された瞬間だった。
ステイシーの男装は、彼女を守るための鎧だった。しかし、ロベルトは、その鎧を脱いだ素の彼女を、ありのままに受け入れた。ロベルトは、金銭目的でこの城に来たが、今、彼が望むものは、ただ一つ。ステイシーという、一人の女性の幸せだけだった。




