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俺は転生者、今生の名前はマス・タウラス。運よく男爵家三男に生まれ、戦闘技術の教授と身体には恵まれ身の振り方自体は自由だ。
振りたい先がビミョーなんだがな!
家に残り家や領地を守り騎士爵を目指すルート。別に家族仲は悪くないし性格も悪くない。なお襲撃してくる敵は山賊どころではない。
冒険者になる道もある。なお道端エンカの質。キャラシもった?じゃねえんだよ。
普通に前世大学生だったので商人や文官もありはあり。なお移動時の死亡リスク。戦闘力はあればあるだけいいそうな。
……この世界、もとはモンスターと戦うのが主体のVRゲーが原作だったのだが、モンスターを狩るノウハウが弱体化してて大型モンスターによる都市の崩壊とか大規模小型モンスター湧き対策失敗農地壊滅とかが割とあるらしく、貴族家のうちはかなりマシな生活をしているが平民マジつれえ、みたいな世界っぽい。
具体的には、背丈が20mある怪獣みたいなのが出て火を噴くし、雑魚の大量湧きは幅がmじゃなくkm単位だった事があるとか(単位はゲームオリジナルとかではない)。ちょっとした大海嘯だな。
俺の中に平民への憐れみはなくはないが、滅私奉公的ヒーロー意識より『世界やばい』が先に来る。隠しボスモンスターが数百年に一度の目覚めを迎え、という事態ならまだしも、十年に一度の大型選手程度のモンスターで領地や都市ごと死にたくない。どこにいてもびくつくのはごめんだ。人類に逃げ場なし、イコール俺にも逃げ場なしだ。
そこで俺は、流派を立ち上げることにした。数は力だ。再現性のある技術体系を作れば、多くが生き残れるだろう。そしていずれは、それが俺を含めた多くを救うのだ。そう、お前も、お前も、俺の為に戦え。技術はやるから。
幸い技術体系には当てはある。ゲーム時代の戦法を再現すればいいことも、なぜ誰もそれが出来ていないのかも見当は付いている。
そこで俺は、学術都市と呼ばれる街へ旅立つ事にした。
なぜここが目標地点なのかは、都市の性質と関係している。
ここはゲームでよくある、現実でも存在した、独立した権威と情報が集まる大学などが中心の都市だからだ。
俺の流派がこの世界で有効だと立証された場合、最悪なのが御留流にさせられる事だ。俺の流派は『俺の生きる』世界を護る為にある。せめて世界の半分くらいの勢力にすり寄って取り入るんでなきゃ意味がない。新興国が覇権を握れるかギャンブルするのもごめんだし、大国の政治的暗闘に巻き込まれるのも目的達成の障害になる。
対人も込みなら大国の軍閥蚕食RTAでもやるのは無しでもないが、どちらにしろ時間がかかるし暗殺リスクが高すぎる。
だったら新技術の理論を引っさげ学術都市にばらまくのが最適と判断したわけだ。
田舎男爵の家生まれなので、まあまあの駄獣や頑丈な櫃などを貰って俺は旅立った。