あゆみ
寒い冬にこそ温かい心で穏やかな日々を
「お母さん荷物持てるよ。」バスで買い物帰りに両手に買い物袋を持つお母さん。僕は両手で大事に持っていたお菓子を片手に持ち替えて一つを持とうとする。
「たっくん。大丈夫。そうね。この子が産まれたらお願いしようかな。たっくんはそれまでお兄ちゃんになる為の事を考えてて。」
「分かった。でもお母さん無理しないでね。パパからママの事助けてって言われたから」
「じゃあバスを降りたらゆっくり前を歩いて。今日は雪だからたっくんが歩いた後ならパパもママも安心」
「わかった」
「たっくん。お婆ちゃんとこんな雪の日に出掛けたの覚えてる?」
「お婆ちゃん元気かなぁ?」
「たっくんに思い出して欲しくて空から雪を降らせてるのかもね」
「そっか!お婆ちゃんに会いたいよー」
「空は広いからお婆ちゃんもすぐには来れないよ」
「トナカイさんとサンタさんは来るのに?」
「お婆ちゃんはトナカイさん飼ってないもの」
「そう言えばそうだね。明日もっと雪積もるかな?」
「楽しみだね。たっくん。明日はもっと大きい雪だるま作れるかなぁ?」
「絶対作る!」
ママの作ったご飯を綺麗に食べ、帰ってきたパパとお風呂に入り、僕はすぐに眠ってしまった。
「トナカイさんはどうやって空を飛んでいれるの?僕は直ぐ地面に落ちてしまうよ!」夢の中でトナカイに問いかける。
「たっくんはそれで今は良いんだよ。雪の積もった地面も、春の桜の絨毯も、夏の雨上がりの水たまりも、秋の紅葉がもえる地面にも、まだまだ靴跡で僕らに芸術をみせて欲しいんだ。」
「トナカイさんはじゃあどうして空を飛ぶの?トナカイさんの足跡みたいな!」
「僕らは朝に君達が見せてくれる芸術を空から満喫したいんだ!だから空を飛ぶ。それに君達を飛べる様にするには僕たちはまだまだ見たい君達だらけなんだ」
「お婆ちゃんもそう思って見ていてくれてるかな?」
「勿論だよ」
たっくんの目が覚める。枕元に置かれたお菓子の入った長靴を自慢気に抱えてみせる。雪はシンシンと窓の外を積もらせていた。今日の朝は足跡を残しながら、いつか消えるうーんと大きい雪だるまを作ろう。