Episode5 攻撃 (新キャラside)
Episode5に関してですが、ミヤビsideと新キャラside、好きな方を選んで読むことができます!!!両サイドを読むことができますが、同じ時系列で困惑する可能性が高いので、どちらかだけを読むことをお勧めします。
アクションを重視する方はミヤビside。父との関係が気になる方は新キャラside。
12.19。
『おい、朝だぞ!!』
そう扉を開けた時には、父の驚く姿が目に映る。
『もう、起きてたのか?朝ごはんができたぞ』
『う、、、うん!!!今、行くよ!!』
僕の緊張感は声に出てしまい、父・・・いや父の姿をした別の人間が、目を細めた仕草で僕の動きを観察していく。
『どうした?そんな緊張して・・・』
『き、緊張なんかしてないよ』
そう、疑いの目を引きずりながらも、父はゆっくり扉を閉める。だがそのカチャリとしまった時に訪れる静寂に、僕は膝をつき、崩れ去る。同時に、呼吸の流れを止めていた息が僕の口から吐き出される。相手にバレないようにするので精一杯。そう言わんばかりの姿勢と共に、正常な振る舞いを意識することしか頭にない。
* * *
『早く支度しなさいよ!学校、遅れるわよ!』
リビングに顔を出すと、そこには夜遅くには帰ってきた母が何事もないように、朝ごはんを食べていた。刑事という威厳と態度は大きいものも、上品に食べる姿は女性らしさも兼ね備えている。それより、リビングのテレビの上に壁際にかけられている針時計には、もう朝起きて30分が過ぎていた。僕はその間も放心状態で動けなかったのだろう。
『どうしたの?』
『え・・・』
『朝ごはん食べなよ!』
まただ。僕は漠然と、沈黙の時間が流れていた。
『母さん、ご飯食べ終わっちゃったよ』
そういい、さっきまで食べていたサンドイッチは彼女の手から消え、皿をキッチンへと運んでいく。自分も取り残されるのが怖くて、やっと机の上に置かれたサンドイッチに手をつける。母が警察バッジ、コートを手に取るごとに、僕も急いでサンドイッチを口に頬張っていく。だが、子供のような小さい口では収まり切らないし、到底追いつくものでもない。
『じゃあ、行ってくる!!学校は遅刻しないように!』
そう言い残した母は、重い玄関扉を開き、ゆっくり幕を閉じていく。ヤダ!!取り残されるのはやだ!!それに父が偽者だって・・・母さんに言っていない。
『ご、ご馳走だま!』
言葉に詰まりながらも、平然を装うように自分を適応させていく。それは、父に疑われないように。というより、さっきから彼の姿が見当たらない。といっても、家出るまでの時間がいつもより余裕がない。急いで、歯磨きや制服の着替えを済ませ、そのまま玄関へと直行する。
『じゃあ、父さん!行ってきます!!』
何とか、"これで家からの脱出は成功"と玄関のドアを手に取る。
『なあ、トウクマ!』
準備完了するまで声をかけてこなかったはずの父が僕をを引き止めようと、玄関の方へと近づいてくる。思わず、名前を呼ばれた身体を一瞬、震わせながらも彼の方へと視線を向ける。恐る恐る父の方へと体を向けると同時に、額から汗が少しずつ滲み出てくる。それでも彼と目線を合わせた。
『何?』
『昨日は、何時に寝たんだ?』
『え?・・・・何でそんなことを聞くの?』
まさか父にバレた!?さっきまで廊下に立っていた父は容赦無く、玄関の土間へと足を踏み込む。気づけば、父は少年の息が届く距離まで詰め寄る。その時の父の目は完全に敵意剥き出しの狂気を放っていた。
『本当は・・・何時に寝たんだ?昨日、あの後、夜更かし(・・・・)してたんじゃないのか?』
言葉では柔らかく聞こえる。だが、父の向ける鋭い視線。もはやその瞳の奥には光のない死んだ目に見えた。あまりにの威圧に、息を呑む込む音を鳴らす。
『そ、それは・・・どういうこと?』
『やっぱり知ってるんだ・・・』
抑え切られない動揺に、確信を突いた父。鋭く光のない瞳はやがて瞼を閉じると同時に、普段の目つきに返る。少年と同じ高さの目線で話していた彼はゆっくり腰を上げ、見下ろす強い視線。
『今日は学校を休んでいいよ。今日の授業より大事な話があるからな。今後の家族について』
そう父は僕を誘うように、優しく肩を添える。だが、その優しさの奥には、僕を口止めさせるための口実にしか聞こえなかった。命の危険に感じたサインはやがて、泳ぎ出す目、額を伝って床に滴るいくつもの汗。誰か助けて!!!
ピンポーン!!
緊張感へと高鳴っていた胸の鼓動、それは一つのインターホンの音で静止した。父もこれ以上、攻め入る余裕がなかったのか一旦身を引く体勢に入る。その証拠として、彼は、インターホンが位置する壁際へと玄関を離れていく。
『はい!』
『すいません!トウクマくんを呼びに来たんですけど・・・今日は学校、来ない感じですか?』
父ならきっと嘘をついて、(僕のことを)家に留めらせるだろう。そう感づいた僕は偽の父が一言を突き出す前に答えを突きつけた。
『父さん!!友達も待ってるから、やっぱり学校行くと!!帰ってから話そ!!』
そう噛みながらも、父の返事を待たず、玄関の扉を開けた。彼から逃げるように。
* * *
『ヤッホ!!トウクマくん!!』
僕が出てきたこと目視できた少女は合図を示す。高く挙げた手と声。僕は思わず、その彼女を見ながら、目をまん丸とさせた顔を晒す。何せ、朝は誰かと一緒に登校する約束はしないし、誰かと約束したことがないからだ。だが驚いたのは、それだけじゃない。その相手があの少女・ナナハだった。
そして彼女がピンチを助けた救世主に見えた僕は頼るように、白い肌に、綺麗な流れを描いた髪が特徴的な彼女の元へ駆け寄る。
『ナナハ!!どうして!?ここに?』
『朝合流するのに、理由がいるの?』
これ以上、ナナハの言葉に返す立派な言葉はなかった。でも、正直僕は嬉しかった。なぜかは分からないけど、純粋に嬉しかった!!
『なんか・・・ありがとう!!』
そう少年は素直な気持ちを言葉にする。それに対し、彼女は笑顔で返す。
『なんか・・・どういたしまして』
* * *
なんか、僕の悩みは大したことない・・・そう思うようになっていた。ナナハの絵に描いたような笑顔と楽しいクラスの雰囲気になぜか和んでいた。もちろん、あの太っちょないじめっ子以外だけど・・・何よりもうすぐクリスマスで学校も休みに入ることが嬉しすぎる。そんな期待は、あっという間に4時間目を終えていた。今はお昼ご飯の準備時間だ。みんな白いエプロンと共に配膳をしている姿が一様に広がっている。その時に、僕に嫌味ばかりぶつけてくる先生に呼ばれた。
『トウクマ!!少し話したいことがある。ちょっと算数準備室まで来てくれ』
そう、先生に呼ばれ、周りの生徒の視線は僕に向けられた。"何かしでかしたのでは?"と言わんばかりの表情で。あのいじめっ子はにやけた口元で、僕に視線を向ける。まあ、先生に呼ばれたからには・・・
* * *
僕は急いでその算数準備室に向かった。何を話したいのか、気になる。だが、そこに期待はなかった。あの先生の言い方・・・とても期待するようなものではなかった。僕は、そのまま長く木面が色鮮やかに照らす廊下を抜けた先に、狭いドアが一つ見える。純粋な白色に少し薄汚れた色。その先からは横に引くドアを開く。そこからは、ちょうど太陽の反射で黒いシルエットとして描かれた先生の姿が。
『き、来ましたよ』
昼灯りの日光で照らされた部屋といえど、それ以外は黒く暗く染まった部屋の雰囲気にどこか不穏な空気を感じる。
『よく、来たね。まあ、そこに座ってくれ』
背筋が凍っているけど、これ以上逆らえなかった僕は、そのまま目の前に置かれた丸椅子にゆっくり腰をかける。
だが、先生に言われた通りの指示に行った行動からは、何も指示がない。僕は目を逸らしたくなる。
『うっ!!!っく!!!』
突如、大人の出せる力に押しつぶされるくらいの威力で僕の頬を抑え込む。やがて、その威力は皮膚に爪を立てる力から、歯茎にまで浸透するほどの力が迫り来る。
『お前が父の仕事の盗み聞きをしたのはもう知ってる。だが聞かせてくれ。お前はどこまで聞いた?』
やっぱりそうだ。何か嫌な予感がした。人に聞く態度じゃない。喋りたくても、めり込んでくる指の数々。もはや顎の骨まで砕きそうな力にもう涙が出てくる。
『ご・・・ごめんなさい!!』
『ハハハ!!このツラはなかなか見応えがある。もっとだ!!もっと苦しめ!!!』
そうついには、骨の砕けそうなラインまで差し迫った力が加わる。と同時に溢れてくる涙が止まらない。次から次へと涙が流れる。誰か助けて!!!
『なあ先生!!そう言うことするなら、部屋の鍵は閉めときなよ!!』
気付かないうちに、準備室のドアが開かれ、そこからは別の先生のような声が聞こえた。でも、聞き覚えのない声。だが、そんなこと考える間に、次のアクションは起こった。
気づけば、とてもつもない風力と衝撃波で、算数準備室の壁は窓ガラスを破壊する勢いであらゆる物体を破壊していった。僕も身もその波紋に巻き込まれ、そのまま3階と言う高さから落ちていく。体全体に染み渡る風と目の前に見える運動場への地面。
体が浮いた感覚もやがて、重力と共に急速な落下していく。
『うわああああああああああああああ!!!!!!落ちるうううううううううううううううう!!!!』
そのまま、地面に叩きつけらるはずの身体は、横を過ぎ去っていく一つの影に救われる。気づけば、声の主だと思われた大人の男性が僕を抱えていた。
『お前早く退けって!!』
両手に僕を抱えていてるせいで、塞がっている。急いで、助けてくれた恩を忘れないような意志で、両手から抜け出すももう手遅れ。伸びてきた相手の腕に掴みかかる男の首。
『っく!!!』
なんとか救世主の手から抜け出した僕は、そのまま先生、いや・・・敵の胴体に突進していく。だが、子供くらいの体格じゃそんなに威力はない。
『邪魔だ!!!』
最も簡単に、敵は僕の身体を放物線上に放り投げ出される。宙に浮いたこの肉体はそのまま硬い地面に叩きつけられる。頭を打ちつけた勢いで一瞬霞んで視界だが、そこには先生の姿をした救世主と僕を殺そうとした敵が格闘を繰り広げている。次々と突き出される拳と蹴り足でも、余裕な返しを見せる救世主。それより笑ってる。
『戦うのは久々なんだ!!もっと楽しましてくれよ!!!』
救世主は地面を踏みつける左足を軸に、回転力をつけた肉体を活かし、そのまま右足で相手の顔面を蹴りつける。強烈な勢いで蹴られた顔は、ひょっとこの如く崩れた変顔を披露する。
『おりゃあああ!!!!』
地面に打ち付けられた肉体に容赦なくのし掛かった救世主は何度も何度も拳を打ち付ける。だが、敵の様子がおかしい。どんどん、敵は運動場の砂と同化するように、地面へと飲み込まれていく。殴り込んでいく箇所にはアザや血が溢れるどころか、頬は砂が飛び散るのみ。
やがて肉体は運動場の砂と同化するように溶けていった。
『おい、ガキ!!今すぐ校舎の中に隠れろ!!』
僕は彼の言うがままに、急いで校舎の中につながるドアの方へと走っていく。だが、すでに遅かった。同時に渦を巻いていく砂の嵐は、そのまま僕に向けて拳の形を描いた砂の塊に呑み込まれる。その威力であらゆる器官に入り込むように砂が全身を覆い、校舎の方へと吹き飛ばす。その威力はそのまま付近の壁面を粉々にしていく。
やがて砂の渦を描き出した身体は、人間の上半身の形をしたフレームを浮き上がらせる。
『さあ、来いよ!!』
相手は救世主の男へと視線を向ける。7メートルくらいの巨大な上半身は思い切り、彼へと拳を打ち込む。バク転した回避技で、その攻撃に対するダメージは0。地面に振り下ろした勢いで砂埃が起こるも、そんなのお構いなし。そのまま敵の腕に沿って上りつめた救世主は、そのまま手からくり出したハンマーで、砂男の顔面をまた打ち付ける。今度は砂で描いた顔はクレーターができるような穴ぼこを作り、大きく校舎へと体制を崩す。その反動で校舎は、また城壁を打ち壊していく。今度は小学生の悲鳴が聞こえる。
『おい、出番だぜ!』
救世主は何か、笑みを浮かべる。そんな余裕が・・・すると日光の光で、よく見えないが、屋上から飛び降りる一人の影が、手に持ったハンマー状の武器を手にしながら、砂男の頭上へと目掛けて落ちていく。攻撃を定めたハンマーは頭を粉砕するように砂男の頭を破壊する。打ち付けた衝撃で、四方八方に飛び散った砂粒。敵は崩れていく。
* * *
微かに見えた視界だが、助けてくれた男ともう一つの影が、僕の目の前に現れる。もう一人の方は、女性らしい髪型。
『助けてくれて・・・ありがとう』
そう言葉を呟くも、男が向けた銃口で僕の意識はプツンと途切れた。