4話 ドライブしたあの日・13話後のミヤビ
Episode11からEpisode13の内容を踏まえた上で、この話を読んでいただけると嬉しいです!!
出演:ヒョウガ、クミホ、コウ、ミヤビ
『ヒョウガから珍しくお誘いなんて・・・』
そんなことをこぼしながら、車へと乗り込む仲間たち。
運転はミヤビ。助手席にはクミホ。後部座席には俺・ヒョウガとコウさんだった。クミホとコウさんの関係を考えると、後部座席に彼女ら二人なんだろうが、俺はみんなの姿をこの目に焼き付けたかった。
『で、どこに行くか計画はあるんだろうな?』
コウさんはいつもの任務と変わらない様子で話しかけてくる。
『みんなでいろんなところに行きたい!!思いつきで行きたい人はどんどん言って!!!』
『はあ!!??行き先めてないの!!!!』
コウは驚いた表情を見せる。彼女は計画で動く人だから、全く計画なしというのは考えられない。
『じゃあ、俺ボウリングにしよう!!!』
『いいね!!!』
* * *
『ういー!!!』
なんてこの点差だ!!ミヤビのこの圧倒的ストライクに面白みがなかった。
『つ、次だ!!!次へ行こう!!!』
* * *
次はカラオケ。
これならみんなで平等に歌えるだろうと。俺も歌ってみたい曲がどれくらいのスコアになるか気になってたし。
そう、マイクを握る。
最初は前奏。皆さん!!歌う時は、座って歌う派ですか?立って歌う派ですか? 俺は、立つ派ですが、ただ立つだけじゃない。椅子の上をステージの舞台に立つ歌手になりきって、ライブツアー感覚で歌うのが醍醐味なのです!!!
最初の歌詞だ!!!ここは力を特に入れずに語りかけるように歌うことが多い。俺は気持ちよくサビを歌いたい人なので、サビに向かって歌声に力が込められていく。
やってきたサビ!!!ああああ!!!いいーですわ!!!!←(かなりテンション高めのヒョウガです。しばらくお付き合いください)
* * *
『次は、コウさんの番ですよ!!!』
『ええ!!私は・・・結構だ』
『いいから歌えって!!!任務ない時ぐらいくつろげって!!!』
俺のお誘いに続き、ミヤビが緊張感を与えない雰囲気づくりに貢献してくれる。それでも、コウさんはなかなか歌い出せないでいる。
『もしかして、歌音痴?』
『な!!!なわけないだろ!!!』
ミヤビの言葉に過剰に反応するコウさんは急に、人気の曲をチョイスする。あっという間に画面は、俳優さんの深刻な表情で俯く映像背景に、歌詞と歌い出すラインを表示する。
『ああ〜〜〜〜〜!!!』
あ・・・誰もが思った・・・歌音痴だと。コウさんのことは好きだが、正直耐えきれないぐらい酷かった。
でも、また可愛いと思ってしまった。
だって、コウさん自身も歌うのが下手だと気づいているのに、彼女は頬を赤くしながら必死に1曲を歌いきった。
その歌を完走し切る前に、ミヤビと(コウさんの)恋人のクミホさんまで部屋から退散していた。
『あ・・・あれ?(汗汗)ヒョウガ以外いないの?』
『ドリンク取りに行ったみたいですよ』
『そ、そう・・・』
『なんか・・・いいですね』
『何が?』
『コウさんが歌ってるの・・・なんか新鮮で。嘘偽りなく歌っているとことか』
さすがに音程が下手で聞いてもいられないとは言えない。でもどこか必死に届ける歌い方は気に入ってる。
それを言葉として伝えたおかげか、コウさんはさらに頬を赤くし、次の曲をチョイスする。
『じゃあ、次も・・・歌っちゃおうかな』
『どうぞ!!』
『ヒョウガと一緒に歌える曲にする。どれ歌いたい?』
思わぬコウさんの誘いに、俺は驚きと心の中で跳ね上がる嬉しさが込み上げてきた。
『じゃあ、これを』
その後、二人で歌える曲を楽しんだ。
* * *
時系列は13話後の現在に戻る。
クミホは、綺麗な自然の木々に囲まれる場所で埋葬した。大気汚染でその色鮮やかさは隠れてしまうが、ここ以外にいい場所は思いつかなかった。
その後、俺は、廃墟と化した街並みを淡々と歩いた。ドームはいくつか存在するらしいが、基本ドーム外に位置するこの荒廃した地に足をつけた以上、ドームへと入ることはできない。
どうせ、この地にもアイツらのような武装集団がいるのだろう。
だが、そんな情報が目につくだけで俺の心は仲間が死んだ現実と向き合うので精一杯だった。
ヒョウガもクミホも死んだ。これ以上身近な人を失うことが怖くなった俺は、トウクマを一人で月田冬至のとこへと行かせた。
クソだな・・・俺・・・・子供一人に任せるなんて・・・
そんなことがひたすら脳裏に描かれるだけで、希望を持つ気になんてなれなかった。
* * *
ひたすら、仲間の死に呪われた俺は、目の前の光景と共に、過去の記憶がフラッシュバックする。
そういえば、ヒョウガのドライブでこんな感じの場所に来たっけ。焼け焦げた跡からも確認できる銭湯の暖簾に目をつけた。その暖簾に書かれた文字に引き起こされるように俺はドライブしたあの日を思い出した。
結局、カラオケ行った後も、どこかドライブしに行って、そのまま銭湯へ行った気がする。
観光スポットも行ったな。なんだかんだで、人生で何回か楽しいと思ったことを詰め込んだような1日だった。
『あー!!!!ほうへらはうやー!!!』
あー、奇声発してもうたわ。まあ、誰も聞いてないだろ。
『お前さん!!!ちょっとええか!!!』
一人の世界。そう思っていた俺の視界に一人のお婆さんが映る。寒さを凌ぐために、マフラーやコートを"これでもか"と言う勢いで身につけている。見えるのは布の中から出す顔だけ。
『ほっとけ!!!』
『頼みがあるんだ!!!』
『うるせーって!!』
俺はやたら声をかけてくるウザさから目を逸らすべく、先を急ぐ。
『待て!!!そこのお前さん!!!」
何をそこまでして、止めるのかと思いきや、俺の腕に全身の体重を乗せるもたれ具合でしがみつく。
『子供を・・・孫を助けて欲しいんじゃ!!!』
* * *
どう言うわけか知らんが、さっきクミホのために使った医療機器を手に、おばあさんの元へと戻ってくる。もちろん怪物の力を借りなきゃ、すぐには戻って来られなかっただろうな。
医療機器を手にした俺は、そのままお婆さんが案内する先へと足を進める。その先は暗がりの廃墟の中に赤色のテントが微かに見える。出入り口に覆い被さる(テントの)2枚の布を両手で退けると、そこには息が絶え絶えながらも、生きながらえる幼い少年が。トウクマと同じくらいの年齢だろうか。
『孫を助けてほしい!!!』
おばあさんも涙ながら俺に懇願するも、正直治療法なんて分かりやしねえ。だが、できないことを理由に彼が死にました。俺は納得できない。急いで、彼の元へと跪く。この怪我・・・体の内部で言うと、腸を損傷しているのか。
何かが貫通したのか、空洞が描かれている。なんか母親が観てたドラマで同じような状況になってた患者がいたな。
あの時、言ってたのは抗生剤投与か。急いで医療機器の中に抗生剤らしきものが入っていないかキットの中を確認する。
そんなことを試行錯誤しながら、30分が経った・・・
『医者じゃねいから分かんねえけど、落ち着いた方なんじゃない?呼吸が安定しているし』
『あ・・・・あああああ、ありがとう!!!』
よく状況はわからないが、涙を流しながら俺の腕に掴みかかるお婆さんはこれほどにない感謝を伝えているようだった。よっぽど感謝しているのか、婆さんはこんなことを言い出した。
『よかったら、飯でも食うか?』
『ああ、じゃあもらうわ』
* * *
『うめええな!!!ビーフシチュー!!!』
『な?うめえだろ?この子の大好物なんだ・・・」
嬉しそうな笑顔を見せる婆さんは、孫との関係をある程度気づかせてくれる思い出話を披露してくれる。あまり興味なかったから、聞き流した。
『あー。なんかカラオケで歌いてーわ』
『お前さん、誰か大事な人は居ねえのか?』
こいつ!!人がカラオケ行きてーゆうてんのに、この話なかったことにしやがった。まあいいか。
『大事な人?そんなの全部失ったわ』
『・・・どおりで人生を見失ってるような顔しとるわ』
『だろ?』
婆さんも踏み込んではいけない話題だと、しばらく黙り込む。
『お前さんはまだ若いんだから、人生を見失うことはあろうとも、死のうとするのだけはダメじゃ』
『はいはい、年配様のアドバイスを聞けパターンね』
『 バカにはしねえで欲しいねえ』
『・・・・じゃあ、聞いてやるよ』
特に何もすることない俺は、婆さんの話し相手になろうと耳を傾けた。
『私もね。いろんな人を失ってきた。何もかも失って、一人だけで生きた時代もある。でも自分から死のうとは思わんかった』
『辛いのにか?』
『もっと生きて生きて、いろんな人生を経験したいし、その感動を伝えたいんだよ!!!天国にいる仲間たちに!!ここまで生きてきたよって!!!そしたら土産話が豊富な私は現世でも天国でも幸せになれるじゃろ』
そんなことを言いながら、婆さんはポッケから一冊の分厚く使い古されたノートを取り出す。
『ここには大事な人と話したいことを毎日メモしてるんじゃ』
『はあーーーーーーーー。変な考え方するね、アンタ』
『でも、私はそれで生きてきたし・・・お前さんにはまだできることがたくさんある。だから死んでほしくはないんだ』
『そりゃ、どうも・・・』
よう分からん婆さんだったな。その日は廃墟の建物に潜む婆さんのテントで泊まることに。
なんだろうな。変な考え方をする婆さんの言葉が何故か、胸の奥で回り込んでいく。気づけば、俺は婆さんと孫が寝ている間に外の世界へと歩み出していた。
婆さんの言う考えで行くなら、俺はトウクマにもコウにもいろんな人生を経験して得た感動を天国にいるクミホやヒョウガに聞かせてやってほしい。だから絶対アイツらは救ってやる。婆さんも孫と一緒に長生きしろよ。
そう心で語った俺は、少年が向かった先へと進んでいく。




