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MAD KNIGHT-怒り狂う悪魔たちと歪んだ閉鎖都市-  作者: 竜
Season1

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15/22

Episode12  覚悟 

新幹線内から聞こえるものとは思えない爆撃音と轟音。


『今のは!?』


思わず、新幹線内部で繰り広げられているとは思えない振動と衝突音に振り返る。音の距離からして、視力が届く距離ではない。


『お前の仲間たちが殺されてるかもしれないな』


目の前にいるのは、父と同じ外見を施した偽者だ。その顔を見るだけで、体全身から衝動的な怒りが込み上げてくる。


『そんな、簡単に死ぬような人たちじゃない!!』


僕・トウクマは殴りたかった。

今目の前にいる敵を!でも、敵が繰り出した手錠でまともに動けない。両足もそうだ。だが、抗う気力は失くさせたのは、彼が突き出した携帯の画面先だった。

そこには、言葉にするのもつらい現実が広がっていた。ほとんど一緒にいる機会はなかったものも、面識あるヒョウガ兄さんが無惨な姿で死んでいる。あまりの悲惨さに目を背けたくなるも、辛い現実を受け入れるしかないと。自分の中で込み上げてくる涙を押し殺した。


『死んだら、俺のところに写真を送ってもらうように伝えてある』

『ほ、本当に!! クズ野郎だな!』


そう手錠を引き剥がす思いで怒りをぶつけていく。同時に込み上げてくる熱い涙もまた必死に沈める。"こんな奴の前で泣くわけにはいかない"と教え込んで。


『お前をここまで引っ張ってきたのは、取引したいからだ。それに、君の返答次第では、私をクズにしなくて済む』


そう表情ひとつも変えず、淡々とぶつけてくる変異者の言葉を受け入れざるを得ない。何か裏があると踏んだからだ。


『何?』

『私からの頼みは二つ。一つは仲間の身元を教えること。二つ目は、お前が私らの監視下で静かに暮らすこと』

『仲間の身元を教えるってことは、殺すってことだろ!!!』

『いや。私との取引を受け入れたら、彼らを記憶喪失にさせた上で、我々の下で働いてもらう』


*  *  *


コウは、彼女を追いかけるように号車を移り変わっていく。クソ!!なんでこんな時に!!!目の前になかなか堅いの大きいスーツ姿の男が、俺の進路を塞ぐ。だが、そんな奴を相手にする時間なんてない。今にもクミホが・・・


*  *  *


時系列は過去に遡る。


これは俺・コウと仲間たちが、このドームへとたどり着く前の話だ。

『クソ!!!走れ!!!』

まだ、大勢の武装集団に追われていた頃の時期だ。奴らは、ヒョウガの不注意で装甲車から追跡されていたことが発端。何発もの放たれる銃弾。それも1発でも喰らえば、終わりだ。

『コウさん!!!どうすんですか!!??』

廃墟となった高層ビルのど真ん中を走り抜けるにも限界がある。そこで、ミヤビは答えを突き出した。

『おい!!あそこに橋が!!!橋から川へと飛び込むぞ!!!』

『よし!!!あそこを目指すぞ!!!』

走り抜けるも、クミホは他の仲間に比べて、加速度が落ちているように見える。そう気にかけた先には、クミホが俺らとは反対へと向けた背中。装甲車へと攻撃を仕掛けるために武器を手に握る姿が。

『おい!!!クミホ!!!何してる!!!』

俺の声に反応することもなく、手に握った武器は形をかえ、ロケットランチャーへと姿を変える。それは姿を完璧に変える前に、衝撃波と鼓膜を刺激するほどの勢いで、装甲車へと放たれる。その勢いは、装甲車に丸い穴を型どった後、辺りに強烈な炎とフラッシュを解き放つ。


『はははははあ!!!!私らの怒りを思い知れ!!!もうお前たちの犬になるつもりなんてねえよ!!!』

『おい!!クミホ!!!』


彼女は燃え盛る炎に笑いを溢す隙に、周囲で見張りをしていた銃武装の男が物陰から銃口を突きつけていた。

俺は体がみなぎってくる力を頼りに相手の腕に目掛けて銃弾を放った。

俺と相手の射撃、早かったのは幸いなことに俺の方。見事に腕を貫通し、相手の心臓を射抜いていた。周囲の安全へと目を通した後、俺は一直線に彼女の元へ。

『おい!!クミホ!!大丈夫か?』

『う、うん・・・』

彼女の身体にも怪我がないことに安堵したと同時に、僕はクミホを強く抱きしめた。

『バカが!!俺の許可なしに、勝手に動くな!!』

『でも、誰かが殺されるよりマシかと!!』

『だからって装甲車と見張りの武装集団達がいたんだぞ!!!』

気づいた時には、熱い涙が溢れていたのは覚えている。

『お前に・・・は・・死んで・・・ほしくない・・・』


そこで、ミヤビからの思いがけない一言がかかる。

『なあ、コウ。クミホの選択は正解だったみたいだぜ』

俺はミヤビが指す視線の先には、橋の下の川には、更なる見張りの武装集団が何機にも及んでいた。確かに状況を見る限り、クミホの判断は正しかったと言えるだろう。だからって・・・クミホを。

『っく・・・』

俺はミヤビへと背を向けて、その場を後にした。


*  *  *


とにかく、武装集団が目につかない一時的に安全な隠れ家へと息を潜めた。瓦礫の下敷きとなった下には、小さな空間。微かに上空から照らす光と青暗く見える景色の中で、俺は下を俯くことしかできずにいた。そんな俺の気持ちに感づいたのか、ミヤビとヒョウガはあたりの偵察へと軽く外へ踏み出した。


今ここにいるのは、俺・コウとクミホのみ。

『なあ・・・クミホ。俺は今日・・・すごく怖かった。というか、君を安全な学校に居させるべきなんじゃないかと思った』

俺、何言い出してんだろう。もう一人の自分が切り出した話を気にしているが、クミホは俺の顔と向き合って、真摯に話を聞いてくれた。

『だけど、俺が君と一緒に戦うことを許したのは、君がそばにいてくれた方が守れると思った・・・だから・・・だから』

そう想いを告げようとしたその瞬間、俺の真正面に寄ってくる顔と唇に温かい熱を感じた。


もしかしてキスしている?

突然、クミホが俺に向かってキスをしてきたことに赤面するも・・・彼女はしばらくやめなかった。それに俺も嫌な気はしなかった。だって・・・人生で初めて愛した人だから。

『守ってくれてありがとう。私もあなたが好きだから、ここまでついてきた。そして、私は死なない。あなたが生きる限り・・・』

キスの温もりを得た後に、クミホは俺に対する想いをぶつけてくれた。それが何より嬉しかった。そして彼女を幸せに、みんなを幸せにすることが俺の務めだと思った。


*  *  *


そして時は現在へと戻る。

クミホは、あの少年を探し回った。


『トウクマ!!!』

私は必死に探し回った。あの少年を・・・そしてやっと自動ドアを開いた私の先には、トウクマが手錠と鎖で繋がれた手足を引きずる姿が。

『トウクマ!!』

『姉さん!!後ろ!!!』


少年の声と同時に迫り来る鋭い刃物を瞬時に躱す。狙われたポジションから華麗に手足の弾みで少年の元へ。そこにいたのは、高身長の黒いスーツの上からコートに身を包んだあの男・月田冬至が。そう、少年の父を殺した張本人であり、父の姿に身を包んだ変異者。

『その皮、ひっぺはがしてやる!!』

『そりゃ、面白い』

余裕の笑みと同時にポケットから取り出したのは、銃。私は少年の手足を封印する鎖へ銃弾を4発を放つ。私を狙う銃弾も華麗な躱しで被害を免れる。流れるような動きを利用し、少年を抱き抱えた後、座席のシートを盾に、銃弾を避けた。

『大丈夫?』

私の両手は少年の両肩へ。その肩を揺さぶる勢いとともに、少年も頷く。

『いい?私の言う通りに、動いて。私が奴に攻撃を仕掛けたら、連結部分のトイレで鍵を閉めて待ってなさい』

『僕は・・・』

『いいから、行け!!!!』

私は、少年の揺らいだ心に鞭を打つように、彼の行動力を奮い起こす。


月田とは銃撃戦。こいつと言うのもアレだから、"大臣"と仮あだ名をつけさせてもらおう。私は、座席の影へと隠れながら、隙を狙っていた。弾の装填が必要になる時間を。

そして、その時は来た。そう顔を座席から顔を出した時、私の目の前に降りかかってくれるのはピンが抜かれた手榴弾。与えられた逃げ時間は3秒。


3・・・私はこの状況を把握。

2・・・どう動くか頭を働かせる。

1・・・逃げようと1歩を踏み出す。

0・・・辺りは真っ白な光と共に遅れてやってくる衝撃波。私はそれを全身に強烈な爆風と共に受け止める。


座席の原型を吹き飛ばし、車両に風穴を開けたその勢いは数知れず。霞む視界に揺れ動く景色をコントロールしようと自分を奮い起こす。

だが大臣の攻撃はこれで終わらない。

加速した瞬間移動で現れた大臣は、追いつけない速さで銃弾を3発撃ち込む。近距離で受けた銃弾は当然のように、内臓を貫通し、大量の血液が(私の)体の外へと溢れ始める。

『はい、もう死にました』

私は大臣の言葉とともに、膝から崩れ去る。

なんで・・・私の身体は次第に重くなり、みなぎっていた力は嘘のように失われていく。

『じゃあな』

気づけば、銃口を前頭部へと突き付けられた。もう終わりだ・・・そう思った瞬間、私の脳内に誓ったあの言葉が蘇ってくる。コウとかわした約束。"絶対、死なない"。


私はその言葉に感化されるように振り上げた手には変異できるミュータジンで大臣の攻撃に抗う。気づけば型どった私のナイフは、大臣の腕を斬り落としていた。

『バカな!!!』

斬り落とされた左手とは反対の手をまた斬り落とした。

『はははは!!!変異者のバカが!!!』

私は両手を切り落とされたことに対する大臣の動揺に、思わず大笑いを突き飛ばした。

『血がなくなるくらい吐き出させてやるよ!!!!』

私の両手へと形を変えるのはロケットランチャー。それでチェックメイト。音が追いつけない光の速さに、大臣は向こう側の連結部分まで身を吹き飛ばされ、出血量が増えていく。

『はい!!はい!!!』

何発もの放つ攻撃に相手はこれ以上、引き下がれない場所まで追い詰めていく。

『やめろ!!!』

そんな声なんてもう届かない。手を伸ばすも、ロケットランチャーによる私・反撃は止まらない。


*  *  *


『少しは、大人しくなったか・・・』

『なぜ、こんなことを・・・』

地面には大量の血液と共に同化したように倒れる大臣が。きっと高かっただろうコートやスーツは焼け焦げ、もう原型なんてものはない。

『これ以上、人間を騙すようなことはやめた方がいいよ。と言うより、お前ら変異者の目的は何なんだ?人間になりすまして何がしたい?』

私は真の目的を淡々と大臣に求めた。だが、私の攻撃を受けすぎたのか、反応も鈍い。

『はあ・・・なんか言えよ』

そう私が放った時、また身体に強烈な痛みが走る。え・・・今度は背後から来る何かに気づけず、鋭利な刀が私の気管支を貫通していた。飛び出た刃は背中から胸へとはみ出ている。

『チェックメイトだな、クミホさん』


背後にいる何かに目を向けるも、さっき受けた腹部の銃弾3発で体力はかなり失われていた。だが、私のロングヘアに掴みかかる大きく皮膚の厚い手が正体を知らせる。なんと、そこにいたのは倒したはずの大臣だった。目の前には無惨な姿をした大臣がいるのに・・・今背後から刺した大臣は綺麗なスーツにコートに身を包んだままだ。


『もしかして、自分のコピーを作り出してたの?』

『なかなかの芸当だろ?お前らが呼ぶ変異者ってのはこんなこともできるんだぜ・・・』

『そんな・・・』

私はまだ・・・そう右手に握る銃の感覚がない。

『もう諦めろ』

『まだ・・・まだ死ぬわけにはいかない!!!』

まだ立っている。動ける。そう信じろ!!!そう私の感覚はまた相手への攻撃に集中する。手に握るナイフで大臣は距離を取るも、余裕の構えにキレのある動きを見せていた。

『どっちみち、お前らは全員死ぬ。諦めろ』

『はあ、私は全員救う。愛する人も・・・』

私は最後の最後まで力を振り絞った。動け!!動け!!!動け!!!!そう体に教え込んだ。

気づけば、大臣の蹴り足で、握っていた私のナイフはどこかへと弧を描く。なら拳!!!右に!!!左に!!!!拳を打ち込む。殴る力もない。


『クミホさんに手え出すなああああああああ!!!!』


霞む視界でも誰かが介入してきたことはわかった。"隠れてろ"・・・そう命令したはずのトウクマは、大臣の腕に噛み付く。大臣の太い腕に歯で噛み尽くす勢いは、皮膚にめり込み、血が溢れ出す。

『お前!!!!狂犬かよ!!!』

また強烈な蹴りがトウクマの内臓まで刺激し、そのまま身を打ち付ける。大臣の意識が少年へと向いてるうちに・・・そう握りしめた銃を大臣の姿をした変異者へと向ける。


『死なないよ・・・コウ』

私の目には熱い涙が、線を描いていた。もう地面と同化しかける私は全身を動かすこともできない。唯一挙げれるのは腕だけ。そう手を伸ばした。

『死なないから・・・』

震えた声で。最後の一声を上げた。


*  *  *



銃声が鳴り響いたことに、体から溢れる焦りと不安の数々。


『クミホ!!頼む!!応答しろ!!!』


駆けていた私・(コウ)の足はさらに加速。勢いと共に開いたドアの先には、銃を頭に突きつけられていたクミホと月田冬至の姿が。背後には地面に倒れ、意識を失っているトウクマの様子。


やめろ・・・・クミホを助けてくれ・・・なんでもするから

そんな一言さえ放つ機会をくれないまま、クミホの頭に突きつけられたその銃弾は放たれた。


その時、クミホが振り払った手の勢いで命中箇所は頭から回避。だが、銃弾は首の側面に流れる動脈へと直撃し、目の前で描かれる血飛沫の海が広がっていく。同時に、大きな物音と共に膝をついた彼女はそのまま、うつ伏せへと。


『はあ・・・はあ・・・・』


俺の中で乱れ始める一定の呼吸。


『クミホ?・・・クミホ』


何度か呼ぶ彼女の名前。しかし、反応するどころか、彼女の首からは赤い海が床一面を染めていく。


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