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MAD KNIGHT-怒り狂う悪魔たちと歪んだ閉鎖都市-  作者: 竜
Season1

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12/22

Episode9 本当の父はどこへ・・・

血の海で真っ赤に染まっていく車道。トドメを刺した勢いで地面に倒れ込んだ怪物へと歩み寄っていくコウの姿が見える。


『お疲れ様』

『気分はいいぜ、リーダー。久しぶりに暴れさしてくれたからな』

『・・・』

『そういえば、例の月田冬至は?』

深く吸い込んだ息が吐き出されると同時に悔しがる表情を晒すコウ。

『すまない。逃した』


そう、会話を交わした後は完全に真顔ながらも強面の横顔へと変化を遂げるコウ。リーダーのコウを追うように視線についていくと、そこには意識を失いかけながらも、睨みつける大きい目元が目に付く変異者の怪物。


乱れつつある変異者の呼吸。あのリズムだと、もうすぐで死ぬことは確定だな。それは、コウも分かっている。やっと獲物を捕らえた彼女は、変異者の腹部に圧をかける靴底を押しつける。


『さあ、教えてもらう。仲間は何人いる?月田冬至はどこに行くつもりだ?』

『さらなる・・・変革を起こす』


血を吐き散らしながら、一言一言、新たな情報を晒していく変異者。


『変革?それに月田冬至は関わってるのか?』

『はあ・・・はあ・・・その一歩を・・・築く・・・大事な駒だ』


敵の命はもうすぐで絶たれる。それに焦りを見せたのか、コウは怪物の上に跨り、銃口を相手に突きつける。


『その大事な駒は何をするつもりだ?』

『拡大して・・・いく。支配・・・する・・・領・・・域を』


その先を聞くことができず、果てた敵は、乱れた呼吸のリズムを失うと同時に息を引き取った。

次の任務へと移行しなければいけない現実。その事を悟ったコウの顔にはやつれていく様子が伺える。車に埋もれた奥からピチャピチャと濡れた足音を鳴らしていく何か。

すぐに視線は移すも、そこには心配そうな表情と共に現れたトウクマという少年が。その彼に鋭い眼差しを突きつけるコウは、そのまま放つ言葉もなく、去っていった。

今の行動で分かったことは一つ、コウがあの少年に敵意を向けてることに変わりはないってこと。


*  *  *


公共の場に顔を出してしまった以上、バンの回収は顔をあまり見られていないクミホに任せた。あとはバラバラにホテルの現場から隠密に離れることだけ。


*   *   *


挿絵(By みてみん)



サイバーパンクな街並みが映る僕・トウクマの視界。こんな夜中に出かけたことないけど、とても色鮮やかで綺麗だ。

父さんが言っていたネオンライトと言われる光が、カラーある世界へと誇張される。そんな世界に浸っている横で・・・

『やあ〜美味いな。このハンバーガー屋』

そう病みつきになるほどの美味しさを、口に溢れるほどの満腹感で表現しているミヤビさん。結局、あのコウさんに敵意を向けられたせいか、彼とまた合流するのが気まずくなってしまった。結局、彼らの行き先が分からず、助けてくれた目の前の男、確かミヤビさんについていくことにした。


『なあ。ここに住んでる奴らはこんな美味いもん食ってんのか?』

『まあ・・・そうです』


『お前さ、好きな人がいるだろ?』

あちこち行ってしまう彼の話に、ついていけない。でも、僕のことを知らないはずの人が的中した答えを突き出すことに、顔を真っ赤にしてしまった。


『な、なんで!?』

『名前はナナハか?』

『だからなんで知ってるの!?』

あまりの大きい声にあたりの人たちから注目の的になってしまう僕。さすがに、鋭い強面の人々の視線に、俯いて自分の立場を弁えることに。

『だって朝、お前と合流した女の子に擬態してたの俺だもん』

そう、当たり前と言わんばかりの表情を突きつけてくる。えっ・・・

『じゃあ、本物はどこに!?』

やっぱり、この人たちも僕の敵なんじゃ・・・そんなことが僕の脳裏によぎる。

『朝、お前ん家まで迎えにきた時だけだよ!あとは、本物だ。全部お前を守るためだよ』

食べながら、クチャクチャと咀嚼音を鳴らす男に少し嫌い度の度合いが僕の中で大きくなっていく。僕を救ってくれたのは、目の前にいる男。感謝はすべき相手。でも、してやった感が強すぎて、どうしても素直になれない。それに・・・

『ナナハとはどこまでいったんだ?』

みたいな言葉で、俺を茶化してくる。

『どこまでいったって何が?』

『おっと!お子様には、まだ早かったな』


『まだ小学生の子に変なこと教えないでよ!』

そう割り込んでくる一人の女性。そこには、姉さん的存在のクミホさんが。彼女は僕の隣へと深く座り込む。

『家には帰んないのか?』

今度はトークの内容がクミホさんに移行したのか、男の視線は完全に彼女の方へと標的を定めた。

『왜냐하면 그가 있기 때문에 귀찮다』

クミホさんは突然、流暢な発音とイントネーションで韓国語を披露した。それに対し、目の前の男も・・・

『아직 한 쌍의 전투가 계속되고 있습니까? 이미 헤어졌기 때문에 신경 쓰지 않아도 좋을 것입니다!』

彼女に負けない勢いで、流暢な会話を繰り広げていく。


『えっと・・・』

僕の困った表情で、クミホさんから視線を向けられる。穏やかかつ温もりある瞳で。

『ごめんね。大人の事情だから、韓国語でごまかしてたの』

『なるほど・・・』

よく掴めなかった状況も、彼女の一言ですぐ分かった。

『要は、元カノのコウとお前のことで、またいざこざが生まれたってことだよ』

あっさり情報を漏らす目の前の彼。キョトンとした表情で。それに隣に座るクミホさんに視線を移すと・・・

彼女は真っ赤に染めた顔で・・・

『なんで言うのよ!!!???もおお〜〜〜〜〜』

あまりにの張り上げた声に、また周りの注目を集める。そんな注目なんか気にもしない彼女の表情は見てもよくわからない。僕には、怒っているように見え、照れてるようにも見える。

だが、男に向けて放った中指を立てたサイン。完全な意味までは知らないものも、このサインが強烈でしてはいけない証であることは分かっていった。

『ごめん、俺性格悪いからさ』

『その性格の悪さは直せ!』

そう、男口調になりつつあるクミホさんに、少し肩をすくめてしまう。すると彼女は、また僕の姉貴に戻っていた。

『さっきみたいに中指を立てるのはダメだからね。これは大人だけの特権』

『わ、分かってるよ』

素直に返した一言で、瞳の奥に込められた怒りの感情はあっという間に優しさへと沈んでいった。


『そういえば、君の母さんは?無事だった?』

次の話題は僕の両親のこと。僕はそのことで彼らにお願いがあった。

『うん・・・母さんのことはありがとう』

僕の言葉に、クミホさんが確認するよう話を仕掛けてくる。

『母さんに話したの?父さんは偽物だって』

『その話をしたら、母にはしばらくおばあちゃん、おじいちゃんのとこにいるように』

『そっか・・・』


『そのことで話があるんだけど・・・僕の本当の父さんが、どこにいるか捜す手伝いをしてもらえませんか?』

僕の頼み事に少し困ったような表情に伝染したクミホさんは、男に目を向ける。

『俺はどっちでもいいけど。別にリーダーから任務が来てるわけでもないし』

ハンバーガーを食べ終えた後は、手元にあるポテトを2、3本手に取る仕草へ。

『じゃあ、捜しに行こうか』


*  *   *


『父さんは偽物なんだよ!!!父さんになりすました別の人なんだよ!!!』

そんな息子の言葉が私・月田つきだ 侑芽ゆめの頭の中をよぎる。息子の悲痛な声に感化されたのか、私は映像解析班のとこへと足を進めていた。そこにはテクノロジーの山といった画期的なデータ貯蔵庫に埋もれた空間だった。そこに、眼鏡をかけ、くしゃくしゃの髪で乱れた男に声をかける。

『すいません!高木さん!』

『ああ。月田さん。どうしたの?』

徹夜だったのか、眠そうな瞼を必死に開けようとする彼の姿。

『この車の行き所、監視カメラで追って欲しいんです』

『いつの?』

『昨日です』

そう、車のナンバーと共に見せつける写真。

『これって・・・』

『うちの車です』



* *   *


なんだかんだで、少年の頼み事で、俺・ミヤビとクミホは子供の実の父さんを捜すこととなった。心当たりあるものを探すべく、向かったのは少年が住んでるマンション。というより、マンションに駐車された車の場所。ほとんど、車を使うのは父である彼しかおらず、(車にある)ナビやブツで証拠を手に入れる魂胆らしい。クミホいわく。


さっそく、少年の父が愛用してる車を見に行けば、たまげたもんだ。高級車トップクラスには並ぶ車種。光沢の如く、かがやきをみせる。色合いは味気ない黒色だが、中の様子を窓から見ても多機能満載の装備が見られる。


『さすがだな、お偉いさんの車は!』


そう言葉にせざるを得ないくらい、俺の中に感動が生まれた。それにしても、少年はずっと泣き出しそうな顔ばかり。"まあ、お願いした代わりに自分から進んで動こうとするだけでいいか"とガキを見る。手がかりがあるのではと、車のキーを手に取り、中へと入っていく少年。一方、クミホはある違和感に声を上げる。


『ねぇ!トウクマくん!!』


姉的存在を見せる彼女の声に従うべく、車内から少年が外へ顔を出す。


『君の父さんって、土の跡が残るような道を走ったりするの?』


そう、彼女の指差す先には、湿気た土がタイヤにこびりついてる跡が目に見えた。それも触れた感触からすると、そんなに時間がまだ経っていないとクミホは言う。


『いや、そんな!普段はそんな場所には行かないと思いますけど!』


一つの手がかりが手に入ったとドヤ顔を見せるクミホはそのまま、前座席へと体を入れる。


『鍵、ちょうだい!』


車の外から伸びてきた手に従うように、少年は鍵を手渡す。どうやら、ナビに打ち込まれた履歴から場所を探り出すみたいだが、敵もそこまでバカじゃない。履歴は全て削除されていた。


『どうする?今考えられるのは、監視カメラを一個一個追っていくつもりだけど、それじゃさすがにコウに私たちが密かに父さん捜ししているのがバレる』


車の中から出てきたクミホは、そう二人に突きつける。その時に、俺の中で一つの案が浮かんできた。


『なあ、このドーム内は基本、土が残るような場所はないはず。実際、高層ビルばかりの都会で、森といった自然すらあまりない。となると、タイヤに土が残るぐらい広い場所なら結構絞れる』


そう一つの提案をした俺の目には、驚きの表情を見せるクミホと少年。俺の考えに、"いいね!"と称賛したようだ。さっそく、俺のアイデアに賛同したことが、手元の携帯で検索をかけていく様子で証明されていく。二人揃って、調べていくうちに少年の顔は真っ暗になった。


『いま、探したけど、この少し黒ずんだ・・・・と同じ場所はここかも』


少年は、手元を震わせながら見せる画面の先には、ゴミの焼却場がメインとなってるゴミ焼却場だった。


『なんで、こんなとこに?』


信じられないのが目に見えるが、その場所で何かを察したかのようにクミホは、唾を呑み込む音が聞こえてきた。


『だ、大丈夫!きっと、本物の父さんは、敵から身を隠してるだけで・・・そうだよね!!きっとそうだよ!!じゃあ私は可能性のあるA地点に向かうわ。あなたたちは、マップに刻まれてるB地点に向かって!』


コウにも負けない威厳と覇気ある威力で、現場をまとめた。個人的には、クミホの方がリーダー格なんじゃないかと、一瞬頭の中でよぎってしまう。とりあえず、目の前から離れていくクミホの姿で、少年と父捜しの任務に戻ることにした。



*  *  *



今は、その場所へと向かっていくであろう歩道を淡々と歩いていく。時刻も遅い時間帯へと差しかかるせいか、普通の人が歩く姿はあまり見ない。誰かと喧嘩した人間が外の空気を吸いに行ってるか、ゴロツキ共が、ヘラヘラそこら辺を歩いてるか。何度か子供がいることに気づいたゴロツキが、獲物を狙うよう近寄ってくる。だが、俺の鋭い視線で、相手は引いていった。



『それにしても暇つぶしのつもりが、なんか面倒臭くなってきたなー』


そう不満の口にする。無意識に溢れた言葉は、また少年の表情を真っ暗に染めていく。俺たちに迷惑をかけてる責任感と父がいつまで経っても見つからない状況に不安を募らせている表情が。


いつもは気にしないはずが、ガキを恐怖と不安に引きずりこんだ罪悪感が心の中をくすぐる。俺はそのガキの表情を見てられず、大きくため息をついた妥協と共に彼を安心させた。


『めんどくさいだけで、お前は悪くねぇよ!』


そう強く叩き起こすように、少年の背中に押した。思わず、"うっ!"と声を漏らす少年の姿に、改めて俺が超人だと気づかせる。やべ!


『おっと!悪い!強く叩きすぎちまったかな』

『だ、大丈夫』

『お前が一人で行動される方が、1番の迷惑だ。だから、それ以外のことは気にするな!』


また、俺は少年を元気づけるように、背中をたたく。また、喉から溢れる声にまた力の加減に警告が入る。


『お!またやってしまった・・・』

『もしかして、、、からかってる?』


少年の不安を取り除くはずが、不機嫌さを象徴する鋭い視線と尖らせた口を晒してくる。どっちみち、ネガティブなサイドからは動いてないことに変わりはない。


『からかってねぇよ!そんな過剰反応するするなって!!』


今度は、超人的な力が少年に加わらないよう、ガキの頭をカシャカシャと撫で始める。真っ直ぐに伸びる髪が一瞬で四方八方に掻き乱される一方、頭を左右に揺さぶられる彼は少し真顔で留まる。

"子供の慰め方なんて、わかんねぇわ!"そう思った。


『お前の父さんはどんな人だったんだ?』


俺は皮肉なんてない純粋な質問をぶつける。すると、誇らしげなのか少し真下に落ち続けていた視線が、上へと角度を変えていく。


『うちの父さんは、いつも人のためなら進んで助けるような人だった。だから、政治家になって、ドーム外にいる人たちも助けようとしてたみたい。』


口角の上がる横顔からは、父の姿が偽りなく語られていた。子供は純粋で素直だから、彼が嘘を言ってるとは思わない。でも、それが本当なら、"父は選別の真実に気づいて、殺されたのでは?"そんなことが脳裏によぎる。


『冬休みに連れてってもらうんだ!』


そんなことを、考えてる間に少年は父さんに対しての気持ちを言葉にしていく。よっぽど憧れでかっこいい親父さんなのだろう。その後も、父さんと子供の絆を感じさせる思い出話が溢れていった。ちょっとそれが微笑ましかった。それに共感した言葉を漏らす。


『なら!お前が今度、親父が自慢できるような息子にならねぇとな!』

『うん!!』


俺の言葉に満面の笑みで答える少年を見て思った。少年が、がっかりするような結末には、なるなよ!

そう願うと共に、俺は現場へと足を進めた。


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