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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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秘密の関係3

 イスコとイカサには他の北方貴族に営業に回ってもらう。

 ついでに乗ってきた馬車や持っていけない荷物を任せた。


 一方でジケたちはユダリカとキノレを仲間に加えてさらに北に向けて出発したのだった。


「こんな風に歩きで遠くのもたまにゃ、悪くないな」


 これから洞窟を通って山を越えるつもりである。

 となると馬車に乗って行くことはできない。


 山の手前まで行くとしても馬車を止めておいて管理してくれる宿のようなところはない。

 ついでに北に向かっていって雪が深くなると馬車での通行も難しくなる。


 ここは最初から馬車を諦めて徒歩で移動することにした。


「足元も悪いし……大きな荷物があるから歩きにくいですね」


 ジケたちは暖かな格好をして雪を踏みしめながら歩いている。

 歩けば足跡が残るような雪の上を歩いて行くのは普通の地面と少し違っていて歩きにくさを感じる。


 その上ジケたちは今大きな荷物を持っていた。


「少しでも好意的に受け入れてもらうためには必要ですからね」


 大きな荷物を持っているのにはもちろん理由がある。

 ある程度長旅になる可能性もあるので食料類を持っていくことも当然のことなのだが、想定する以上のものをジケたちは持ってきていた。


「まっ、これで通してもらえるならな」


 たくさんのものを持ってきたのは北方の蛮族への賄賂のためであった。

 キノレがいれば秘密通路を通ることもできるだろう。


 ただ秘密通路を通って山の向こう側に行けば終わりではない。

 そこから狼王のところまで行って、狼王に会う必要がある。


 獣人の協力があればいくらか楽にことは進むだろうとキノレは考えていた。

 北方の蛮族全体として常に物資が不足している状態なことはキノレが騎士として北方の蛮族を担当していた時もその前も後も変わりがない。


 獣人たちは誇り高くてただで施しを受けるようなこともない。

 持ってきたものと引き換えに案内なんかの協力を要請するつもりなのである。


 荷物は重いがそれで平和的に交渉できるならそれに越したことはない。

 仮に交渉に応じてもらえなくても食料なんて食べてしまえばいい。


「んで、どうだ、エニ?」


「顔が寒い……」


「それは仕方ないだろ?」


 相変わらずエニは寒さに弱い。

 そこでエニには分厚めのローブを渡していた。


 内側にパロモリ液での加工を施していて着ているだけでも寒さを遮断してくれる。

 加えてエニはさらに大きめポケット付きの服を内側に着ている。


 お腹のところに袋状のポケットがあってそこに小さくしたシェルフィーナを入れていた。

 シェルフィーナから発される熱がエニを暖めて、パロモリ液で加工されたローブの中の温度は高めに保たれるのだ。


 ただどうしても顔は出さなきゃいけないので顔は冷える。


「……これでどうだ?」


 ジケは抱えていたフィオスをエニの頭に乗せた。


「どう、ってどうにもならない……」


 頭にフィオス乗っけられても顔が冷たいことに変わりはない。

 そう思っていたらフィオスが動き出した。


 プクッと膨らんだフィオスはエニの頭を包み込む。


「おおっ?」

 

 以前水の中に入った時のように中に空洞を作りつつ呼吸ができるように膨らんだのだ。

 顔に冷たい空気が当たらなくなった。


 視界がやや青くなるけれどその代わりに寒さはかなり和らぐ。


「んふっ!」


 やったのはジケだけど思わず笑ってしまった。

 防寒の大きめシルエットの格好に頭を包み込むフィオスという姿が妙に面白かったのだ。


「なに笑ってんのよ!」


「いや……悪い……」


 ちょっとこもった声もまた面白い。


「フィオス! 元の姿に戻りなさい!」


 エニがフィオスを頭から取り外す。


「うおっ!」


「顔が寒いぐらい我慢する!」


 エニはフィオスをジケの顔面に投げつけた。

 フィオスなので痛くはないがちょっとしたプヨンという衝撃はある。


「そう拗ねるなよ」


「拗ねてなーい」


「笑ったの悪かったって。意外と似合ってて可愛かったぞ」


「むっ……だまされないかんね」


 一瞬騙されかけたけれど笑ったことは間違いない。

 エニは頬を膨らませてそっぽを向く。


「にしてもやっぱこれすごいよな」


 今回は全員の外套をパロモリ液で加工してある。

 本来ならもっともこもことした格好をしなければいけないがパロモリ液のおかげで体は暖かく過ごすことができていた。


 馬車の内側を加工してあるだけだと分かりにくかったけれど、こうして寒いところで服を加工して寒さを遮断してくれるとより効果を思い知る。

 濡れるとダメなんて弱点はあるけれど雪さえ降らなきゃ今のところは問題ない。


 リアーネはむしろ暑いぐらいに感じてマントをパタパタして中の空気の温度を下げていた。

 冒険者時代にこんな物欲しかったと思うぐらいである。


「実はオズドゥードルでもそっちの方が欲しいって言われたんだよね」


 家を加工するよりも服を着る方が簡単に済む。

 パロモリ液で加工したマントのような物を大量に生産できないかとカルヴァンからはまた打診されていた。


 雪が降るといっても毎日降るわけでもない。

 濡らさないように気をつければ別に外でも使える。


 カルヴァンとしては部下の騎士や兵士にも配りたいと考えているようだった。

 現に今も使っているのだしやってできないことではない。


「売らないのか?」


「売るつもりだけどもう一工夫してからだね」


 もちろんこの商機を逃すつもりはない。

 ただ単純にマントを加工したものではなく一工夫したものを売るつもりであった。

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