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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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オズドゥードルに入り込め3

「それじゃあ奥様のお部屋をパロモリ液で加工してもよろしいですか?」


「もちろんだ。費用はいくらだ?」


「ユダリカからいただいてますので」


「私が払おう」


「いえ、これはユダリカから奥様への贈り物でもあるらしいので」


「……なるほど」


 色々してもらうことが代金代わりだとは言えない。

 ユダリカがお母さんへの贈り物としてパロモリ液での加工をするのは本当のことなので、カルヴァンからお金を受け取るのは固辞する。


「他のお部屋の加工はいかがですか? 今回必要になるかもしれないと思って多めに持ってきてるので」


「……ふふ、商売上手な友達に捕まったものだな、あいつも。時が時ならパロモリ液とやら全て買い占めていたところだ」


「時が時なら?」


「いや、なんでもない。服の加工はできないのか? このマントのように」


「服だと少し難しいんです」


 マントができたのだから加工してできないことではない。

 ただパロモリ液には致命的な弱点があるのだ。


「こちらの液体、水に弱いんです。ですので日常的に着る服を加工しても洗濯をすれば落ちてしまいます。マントや外套などの加工もできますが雪などがついて濡れてしまうと効果がだんだん弱くなってしまいます。乾燥した寒冷地ならいいのかもしれませんが雪が多い地域だと少し使えないかもしれないです」


「そうなのか……」


 パロモリ液は水によって簡単にダメになってしまう。

 裏を返せば水洗い、水拭きなどをすることで加工を無くすることもできるのが容易という利点にもなる。


 けれども水はどこにでもあるのでなかなか使えない場面というのも多い。

 ただし対策としてジケには防水加工という手段もあるので実は濡れないようにする商品も開発中だったりする。


「……ひとまず主要な部屋の分をお願いできるだろうか?」


「もちろんです。細かい話はうちのイスコが」


「それではご契約についてご説明させていただきます」


 営業スマイルを浮かべてイスコが契約書を取り出した。

 あとはプロに任せておけばいいだろう。


「あ、俺はユダリカのところに先に行って、奥様の部屋の加工始めてもいいですか?」


「構わない。いい商品を感謝する」


「いえいえ、今後もご贔屓に」


 にっこり笑ってジケは一足先に部屋を後にする。

 イカサについては勉強になるだろうからそのまま置いていく。


「廊下は寒いな……」


 仕方ないけれど廊下はひんやりとしている。

 廊下まで全て温め切るわけにはいかないので外の冷たさが廊下には満ちている。


 そのためにオズドゥードルの人は簡単に羽織れる物を一枚余分に近くに置いていて廊下に出る時には羽織り、部屋に入ると脱ぐのである。


「お試し用のマント持ってくればよかったな」


 ジケは少し足を早める。

 屋敷の中だというのにこのままでは凍えてしまいそうだ。


「えーと、どの部屋だったかな?」


 軽く部屋の場所を聞いておいたのだけどなんせ初めてのお屋敷なのでどこだったか分からなくなってしまった。


「お困りですか?」


 ジケがキョロキョロとしていると老年の執事が声をかけてきた。

 物腰が柔らかくて人当たりの良さそうな人であった。


「ユダリカのところに行きたいんです」


「ユダリカ様のご友人でしたか。でしたらこちら逆の方ですね」


「あっ、そうだったんですか」


「ご案内いたします」


「お願いします」


 どうやら来た方向は違っていたらしい。


「こちらのお部屋でございます」


「ありがとうございました」


「いえいえ、ユダリカ様とどうか仲良くしてあげてください」


 執事についていくとすぐにユダリカの部屋についた。

 優しく笑って執事は立ち去っていき、ジケはドアをノックする。


「遅かったじゃないか」


 ユダリカが嬉しそうな顔をしてドアを開けると中から暖かい空気が流れてくる。


「お前のお父さんと話してきたんだよ」


「それで?」


「うちの商品に興味ありありだった」


「流石ジケだな……父さんも落としちゃうなんて」


「そんな褒めるなよ」


 部屋の中に入ると暖かい。


「何してたんだ?」


「ジケが来るまでちょっとお茶してたんだよ」


 部屋の中にはエニとユディットもいた。

 テーブルの上にお菓子とお茶が置いてある。


 ジケが緊張の交渉をしている間にみんなでのんびりティータイムを取っていたようだ。


「お母さんの部屋の加工も許可が降りたぞ」


「本当か? それはよかった!」


「挨拶がてら加工にも取り掛かろうと思ってる」


「……ジケがやんのか?」


「おう、お前もな」


「……俺も?」


 パロモリ液での加工はなんら難しいことはない。

 ハケで丁寧にパロモリ液を塗っていくだけだ。


 普段はノーヴィス達職人がやってくれるのだけど、わざわざ北の地までやるかどうか分からない作業のために連れてくることはしていない。

 だけど作業は簡単なのでジケもやる。


 もちろんユディットにも手伝ってもらうし、なんならユダリカにもやってもらうつもりだった。


「母親のためだろ? お前も手伝えよ」


「そうだな。じゃあ母さんのところに行こうか」


 早速ジケたちはユダリカの母親の部屋に向かう。

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