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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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北の噂1

「本当に商売に行くのよね?」


「うん……」


 言えませんでした。

 ユダリカの協力も得られたので北の地に行くことになった。


 あとはみんなに説明してジケも準備を整えて出発する必要があるのだけど鬼門はエニである。

 目的は北方の蛮族との戦争を止めること。


 誰がどう見たって危ないことである。

 ジケの周りにいる人は基本的にジケを止めない。


 やってはいけないことをしようとしているならきっと止めて、いさめてくれるのだろう。

 しかしジケがやるべきことと考えていることならばみんな大体やればいいと言ってくれるのだ。


 ただエニは危ないことをダメだと言う。

 危ないことを止めてくれるのは良いことだ。


 ちゃんと理由を説明して納得して、一緒に来てほしいとか連れていくことを含めてようやく許可が出る。

 今回については説明が難しい。


 北方の蛮族が怪しい動きをしていて戦争になりそうだから止めるという大義名分は説明できるのだけど、それ以外が説明できないのだ。

 現状動きが怪しいことすらほとんどの人も知らない。


 なんで戦争が起こると分かるのかとかどうやって戦争を止めるのかとか危なくないのかとか、聞かれると答えに困ってしまう。

 過去の知識を元にして動いているのでエニを納得させられるような説明ができないのだ。


 そこで代案として商売のために北に行くことにした。

 目的はパロモリ液の販路拡大。


 北の地は寒いので断熱効果のあるパロモリ液の需要はきっとある。

 いつか売りに行こうと思ってはいた。


 魔獣契約の貧民街人集め担当になって情報をもらえるようになったのでファイヤーリザードと契約した人も見つけられた。

 無理はさせないようにしながらも人が増えたのでパロモリ液の供給量も増えていたのである。


「ふーーーーん」


 北へ向かう馬車の中でエニはジトっとした目をジケに向ける。

 理解できない話ではないのだけどなんだか怪しいなとエニは思っていた。


 寒い北に断熱材となるパロモリ液を売りに行くことは理由として理解ができる。

 確かに寒い地域ならパロモリ液の断熱加工は売れそうだ。


 だけどなんで急に北にパロモリ液を売りに行くのかが分からない。

 現段階でお金には困っていない。


 余裕があるうちに手を広げておくと言われれば分かるのだけどやっぱりタイミングが理解できないのだ。


「まあいいわ」


 微妙に視線を逸らすジケを見ながらエニはため息をついた。

 大量のパロモリ液を持ってきていることは確かなので商売をする気はあるのだろう。


 なんにしても連れてきてくれてはいるので何をするにしても許してあげることにした。


「まっ、服も買ってくれたしね」


 北は寒い。

 いつの服装じゃとても耐えられないので寒いところ用の服を用意する必要があった。


 エニの機嫌を取るためにも色々と買った。

 出費は大きかったけど効果はあったようである。


「もうすぐ町に着きます。少し早いですがそこで休みましょう」


 御者をしてくれているユディットが馬車を軽くノックして声をかける。

 遠くに町が見えている。


 まだ日は高いがさらに次の町まで行こうと思えば確実に間に合わない。

 早くとも見えている町でストップしてから出発する方がいい。


 特に北に進むに連れて気温が下がって夜に外で野宿することも楽ではない。

 町に着くと宿を探して馬車を預ける。


「部屋の中はそれなりだけど……」


「貧民街の家の方があったかいって異常だな」


 今回ついてきているメンバーにはイカサもいた。

 戦闘要員ではなく商売ということでイカサもいるのだ。


 もちろん交渉役のイスコもいたが宿の部屋の都合で別部屋にいる。

 部屋の中は外に比べれば温かくはあるけれどジケの家とは比べ物にならない。


 パロモリ液もあるしちゃんと部屋を温めるだけの燃料もあるのでジケの家は温かいのだ。

 ついでに言えば馬車もパロモリ液で外の寒さを遮断しているので寒さを気にすることもなく移動できる。


「布団はあったかそうだな」


「ペラペラじゃ寝てる間に凍っちゃいそうだもんな」


 南の方の宿の布団といえば薄い肌掛けのようなものが多い。

 しかし北の宿はしっかり保温できるような分厚いものになっている。


 このようなところも移動するに連れてだんだんと変化していって面白い。


「おーい、飯でも行こうぜ」


「リアーネさん、ノックぐらいしましょうよ」


「ふん、私とジケの仲だからな」


 リアーネがドアを開けてエニと部屋の中に入ってきた。

 ジケと同じ部屋のユディットがノックもしないことに少し呆れた顔をしたが、リアーネは悪びれる様子もない。


 今いる宿は一日泊まるだけなので荷物を広げる必要もない。

 大人しくしていても暇なので食事でも行くことにした。


 イスコと師匠であるグルゼイも一緒に外出し、道ゆく人にオススメのお店を聞いてそこに入る。


「美味しいけど味濃いね」


「うん、濃いめだな」


 適当にいくつかの料理を頼んでみんなでシェアしながら食べる。

 感想としては味が濃いであった。


 全体的に味付けがかなりしっかりしている印象がある。


「北の寒いところに行くほど味が濃い傾向にあるそうですよ」


「へぇー」


 色々と行商として旅をしていたこともあるイスコによるとこうしたものはお店の特徴ではなく地域的な特徴らしい。

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