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友達にお願い2

「この機会に逃げずに立ち向かい、家中のものをまとめ上げる力と知識を培ったのだと知らしめることが大切だって」


 ユダリカの母親は決して権力に固執した人ではない。

 自分一人だけの問題ならば悔しさがあっても大人しく生きることを選んだだろう。


 しかしユダリカがいる。

 ワイバーンという魔獣を持ち、アカデミーでも優秀な成績を修めている。


 本来なら後継者として周りが支えていてもおかしくない能力があったのにそうならなかったのは自分の責任だとユダリカの母親は感じていた。

 ユダリカが得るはずだったものを奪われてはならない。


 今が取り戻すチャンスなのではないかと考えているのだ。

 ユダリカ次第なところはどうしてもあるが、少なくとも存在感を示すことはできる。


「早めに返事くれれば体調崩すからって」


 ユダリカの返事で本当に体が悪くなるわけではない。

 母親が体調を崩した。


 このことは帰るための良い口実となる。

 北の蛮族の動きが怪しくなったから帰ってきましたでは何かに関わるつもりなことはバレバレになってしまう。


 ユダリカの母親も自分の病弱さを武器としているのだ。


「そんで悩んでたんだな?」


「そうなんだ。どうしようかなと思ってさ……」


 父親は来るなと言って、母親は来いと言う。

 全く逆のことを言われてユダリカは悩んでいたのである。


「でもジケが行きたいってなら協力するよ。久々に母さんの顔も見たいしね」


「悪いな」


「いいって。どうせ迷ってたんだ。何か理由があるなら俺も決めやすいから」


 結局決めかねていたのだからジケという理由が一つ乗るだけで決心はついた。


「俺でよかったら案内するよ」


「じゃあお願いするね。それともう一つ頼みたいことがあるんだ」


「なんだ? 俺にできることならなんでも言ってくれよ!」


「北方の蛮族と接触したいんだ」


「蛮族と?」


 ちょっと予想外の言葉にユダリカは驚いた顔をする。


「うーん……」


 ジケの頼みなら聞いてあげたい。

 しかし北方の蛮族と接触することは簡単なことではない。


 ましてユダリカではその仲介も難しいだろう。


「たとえば北の蛮族に紹介できるような人でお前の味方の人はいないか?」


「紹介できる人を紹介?」


「そうなるな」


「誰かいるかな……」


 一瞬カルヴァンの顔が頭に浮かぶ。

 しかしカルヴァンがジケを北方の蛮族に紹介してしてくれることなどないだろうと思う。


「……一人いるかもしれない」


「本当か?」


「多分……だけどね」


「元々無茶なこと言ってる自覚あるんだ。多分でもいいさ」


 北方の蛮族に会わせてくれなんて結構厳しいことを言っている。

 ダメで元々なのは分かっている。


「キノレっていう執事がいるんだ。今はお父さんのお付きの執事なんだけど元々騎士で北方の蛮族の折衝役を担ってた人なんだ」


 北方の蛮族と互いに関わり合いなく過ごせればそれでよかったのだけど、そうもいかないときもある。

 作物が不作の時なんかは当然北方の蛮族も厳しい状況になる。


 食べ物を求めて戦いが起こることだってないとは言い切れない。

 そんな時には話し合いでも解決する。


 敵対していると言いながらも北方の蛮族とはある程度交流や交易を持って血を見る行いは回避してきたのである。

 以前北方の蛮族と交渉に当たっていたのが執事のキノレという人だった。


「昔から俺に優しい人だった。派閥は分かんないけどお願いしたら乱雑にする人じゃないと思う」


「北に行ったら紹介頼めるか?」


「うん。母さんに手紙書くよ。ジケも出発の準備しといて」


「了解。頼りになるな」


「ジケの助けになれたのなら嬉しいよ」


「あっと、先生来たな。授業に集中しよう」


 とりあえず北の地で右も左も分からず動くことにならずに済みそうだ。


「今日は魔物の生態について…………」


「なかなか面白そうな授業だな」

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