ミスリルの使い道
「んーで、修行増やされたんだ?」
「ん……」
「疲れてんなぁ……」
「癒しが欲しい……」
「フィオス抱くか?」
「フィオスでもいいや……」
ジケは死んだように倒れているライナスにフィオスを渡した。
心を無にしてムニョンムニョンとフィオスを撫で回しているだけでも少し気分は違う。
ライナスは師匠であるビクシムにしごかれていた。
ミノタウロスのダンジョンで剣を二本も折ったことがバレて厳しく修行させられているのだ。
たまたまお休みもらえたので逃げるようにジケの家にやってきたのだった。
少なくともここならビクシムの監視の目は届かない。
「俺だってミスリル頑張ったんだぜぇ? “剣を折るなんて修行不足だ。もっと魔力と剣を繊細に扱え”だってよ! 繊細さのかけらもないようないかついオッサンがよく言うぜ!」
ライナスは疲れているのか不満たらたらである。
「難しいとこだよな」
「何が?」
「実際お前もそれで強くなってんだもんな」
ジケはミノタウロスとの戦いを思い出す。
ライナスを追い越してやるぐらいに考えてジケも頑張っているけれどライナスもライナスで強くなっている。
少しぐらい立ち止まってくれたらいいのにそうもしない。
師匠にケツ叩かれてるところはあるにしてもライナスはちゃんと強くなってるのだ。
ビクシムに不満を持つ気持ちも分かるが、外から見て強くなっているのだからどう答えてやるのかも難しいところである。
「でさ、結局ミスリルは何に使うんだ?」
「それも聞いてくれよー。武器作るんじゃなかった。お前にはもらった魔剣があるだろって」
「じゃあどうするんだ?」
「防具作るんだってさ」
「防具?」
ミスリルで防具を作るなどかなり豪勢なことをするなとジケは思った。
「俺は体の色んなところから魔力出して加速すんだけどさ。……あっ、これは秘密らしいから他には言うなよ? んでさ、でもやっぱり好きなところから魔力出してるわけじゃなくて、いくつかポイントみたいなところがあんだよ」
サラッと自分の戦い方の秘訣を言っちゃうライナスだったが、ジケならいいだろうと思っている。
「そのポイントから魔力を噴出する補助としてミスリルをついって防具を作るらしいんだ」
「へぇ、なるほどな」
「師匠も本気で戦う時の鎧とかところどころにミスリルが使ってあるみたいなんだよ。知り合いの職人に頼んで作ってもらうらしい」
「よかったじゃん、防具」
「剣が良かった〜。お前から剣もまだ返してくんないし……あれなら絶対に折れないと思うんだけどさぁ」
頑丈な剣に頼って力に振り回されてはいけない。
たとえ木の棒であっても折れないようなコントロールができるまでは使わせないということらしいのだけど、やっぱりジケが使ってるのを見ると羨ましくなる。
「早く認められてくれよ? じゃないとあげた甲斐がない」
「わーてるよ」
「ふっ、まあ頑張れ。そうだな……こないだのミノタウロス肉まだあるしお前を労ってちょっといいもん作ってもらうか?」
「まじで? 感謝するぜ、親友!」
「おう! といっても作るのはタミとケリだけどな」
「あー、あの二人なら間違いないな。エニじゃなきゃ大歓迎だ」
「私が何だって?」
「あっ! いや、何でもねぇよ……」
「こいつ疲れてみたいだから治癒魔法かけてやってくんないか?」
「えー……しょうがないか」
「持つべきものは口の固い親友と体の疲れ治してくれる親友だな」
ーーー第十五章完結ーーー




