ミノタウロスのダンジョンを攻略だ6
「はぁ〜こわっ!」
ジケたちがキモミノタウロス一体倒す間にたった二人でミノタウロス数体をかすり傷なく倒してしまった。
中には四本腕の個体もいてグルゼイとヘレンゼールの実力にライナスは恐怖すら感じる思いだった。
「ドロップ品回収したらひとまずダンジョンを出よう」
キモミノタウロスがボスで、ダンジョンがボスを倒したら消えるタイプのダンジョンだった場合ぼんやりとしていてはダンジョンの崩壊に巻き込まれてしまう。
消えゆくダンジョンの中にいたらどうなるのか知っている人はいない。
なぜなら崩壊するダンジョンの中にいて帰ってきた人などいないからだ。
倒されたミノタウロスたちはダンジョンに吸収されて消えていく。
後に残されたのは一部のドロップ品である。
皮やツノ、そして魔石といったものである。
「おぉ〜! 肉だ!」
「リアーネが欲しいって言ったからかな?」
なんとキモミノタウロスが消えた後に残っていたのはミノタウロスセットだった。
皮とツノと魔石とそしてなぜか抱えるほどの肉が二つ。
ここまでで一つも肉なんて出なかったのに急に現れた。
もしかしたらリアーネが食べたいと言っていたのをダンジョンが聞いていたのではないかと思うほどである。
ジケたちはドロップ品を回収すると新しい崩落に近い出入り口を目指す。
肉はリアーネとニノサンが抱えている。
「おっと、大丈夫か?」
「あ、はい。ありがとうございます……」
地面が大きくグラグラと揺れた。
ジケは少しバランスを崩したリンデランの腰に手を添えて支えてやる。
リンデランは顔を赤くしてジケにお礼を言う。
「少し急ごう。ダンジョンが崩壊する予兆かもしれない」
ここまで静かだったダンジョンが急に揺れた。
ダンジョンが崩壊するかどうかは分からないけれど何が起きている可能性は高い。
ジケたちは急ぎ足でダンジョンの出入り口に向かう。
「ああー、バランス崩しちゃったぁ〜」
「……ウソだろ?」
「バ、バレた? えへへ……」
再びダンジョンが揺れてミュコがジケの腕を掴んだ。
踊りを習っていて体幹が強いミュコがこれぐらいの揺れでふらつくはずがない。
ジケに生暖かい目で見られてミュコは耳を赤くする。
本当はもっとガバッと抱きつくつもりだったのだけど恥ずかしくて腕にだけを伸ばした。
「エニ、危ないなら俺を支えにしてもいいんだぜ」
「ありがと、大丈夫」
ジケとミュコを冷たい目で見ているエニにライナスがここはチャンスと声をかけるが玉砕する。
毎回タイミングが悪いような気がしてならない。
「ジケ、危ないならこのお姉さんが抱きかかえてあげるからな!」
「あ、うん……いざとなったら頼むよ」
リアーネはニカッと笑顔を浮かべる。
決してお淑やかなお姉さんの言葉ではないけれど頼もしさは感じる。
段々と揺れの間隔が短くなってきたなと思いながらなんとか出入り口が見えてきた。
「うわっ……!」
さらに大きな揺れが襲いかかってきてジケもバランスを崩す。
「やはり崩れるようだな」
ダンジョンが崩壊しそうだとグルゼイは感じた。
みんながふらつくような中なのにグルゼイは平然と立っている。
どうやったらそんなことになるんだとジケは思う。
「ジケ、出入り口が!」
先に見えている出入り口の階段に大きなヒビが入った。
「み、みんな走るんだ!」
もうあまり時間が残されていなさそう。
まだ揺れは続いているけれど揺れが収まるのを待っている時間もない。
フラフラとしながら出入り口に向かう。
そうしている間にもヒビは広がっていて焦りが大きくなる。
「エニ! 大丈夫か!」
「あっ、うん……」
「俺が支えるはずだったのに!」
「んなこと言ってる場合かよ!」
縦に大きく揺れてエニが膝をついて倒れた。
ジケがエニのことを抱きかかえるようにして起こす。
「あとちょっとだ、頑張れ!」
なんとか出入り口まで辿り着いた。
「ヤバっ! 早く登るんだ!」
階段のヒビが大きくなってもう限界だった。
みんなで焦って階段を登っていく。
「だっしゅーつ!」
一番最初にダンジョンを抜け出したのはライナスだった。
ダンジョンの中ではあんなに揺れていたのに坑道の中は静かなものだった。
「ダンジョンクリア……ホゲッ!」
「どけなさいよ!」
やり遂げたんだと両手を振り上げるライナスの背中にエニの蹴りが炸裂した。
さっさとどけてもらわなきゃ後ろからみんな来ているので邪魔だった。
「見てください……ダンジョンが!」
「消えていく……」
みんなどうにかしてダンジョンから脱出した。
振り返ってみるとダンジョンの出入り口が透けていた。
そしてそのまま透明になって消えてしまったのである。
「完全に何もないな」
ダンジョンの出入り口があったところにライナスが手を伸ばしてみるけれど出入り口は無くなってしまった。
残されたのは四角く綺麗に切り取られたような跡のみであった。




