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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十五章

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ミノタウロスのダンジョンを攻略だ5

「いい加減……切れろ!」


 ライナスの攻撃でざっくりと腕が切れたがまだそれでも切断に至らなかった。

 苛立ったようなリアーネがライナスのつけた傷を狙って剣を振り下ろし、ようやく一本の腕が切り下ろされたのである。


 ただ三本が二本になった。

 このことは大きい。


 一本減るだけで手数はかなり変わってくる。

 ジケとミュコに足をズタズタにされたキモミノタウロスは立つこともままならず、ひたすら残った腕を振り回す。


 反対側の腕を使って起きあがろうとした素振りも見せているけれど、体の意思疎通が取れていないのか上手くいかない。


「流石にちょっと疲れてきましたね」


「ふふん、私はまだまだ余裕だよん」


「むっ、私もエニさんのことを気遣ってあげただけですぅ!」


 起き上がることが上手くいかない要因の一つとして体の半分が魔法の攻撃を受けているというところもある。

 エニとリンデランが交互に魔法を使ってリアーネたちが攻撃しているのとは逆側を攻撃していた。


 燃やされ冷やされ、キモミノタウロスの半身はボロボロになっている。

 キモミノタウロスの動きを制限するためにそこそこ大きめな魔法を連発していて大きな魔力を持った二人もだいぶ消耗していたのだけど、対抗心からか疲れているような顔は見せない。


「もう魔力ないなら休んでても大丈夫だよ? 私がやっとくから」


「エニさんこそ休憩なされてはいかがですか?」


 仲が良いやら悪いやら。

 ヘレンゼールとしてはウルシュナ以外にこうして競い合える友達がいるのは良いことだと思っていた。


「さん、せん!」


「おっ、ようやく来たのか」


 残る二本の腕はバトルアックスを持っている腕だった。

 隙をうかがって攻撃を重ねていたところにジケがやってきた。


 足はしばらく動かないだろうから援護に来たのだ。

 ジケが来ることを予想もしていなかったキモミノタウロスは抵抗することもできずに腕を深々と切り裂かれた。


 切り落とせはしなかったが、腕を上げることすらできなくなるぐらいの深傷である。


「大人しく主人に切られていればよかったものを」


 光をまとうニノサンが素早く近づいて腕にトドメを刺す。

 ジケの傷を寸分違わず切り裂いて腕がそのまま地面に落ちる。


「あといっぽーん!」


 残る一本。

 もうこうなればあまり怖くもない。


 ミュコも加えて一斉に攻撃して最後の一本も切り落とす。


「魔法一旦ストップだ!」


 三本の腕を切り落としたので今度は逆側を狙う。

 ジケがキモミノタウロスの胸の上に乗って手を振るとエニとリンデランは魔法を使うのをやめた。


「もうボロボロだな」


 焼け爛れていたり、凍傷でダメージを受けていたりとキモミノタウロスの逆側は酷い状態になっていた。


「いっせー攻撃だ!」


 二人の魔法で散々痛めつけられた三本腕の抵抗は非常に鈍くなっていた。

 凶暴化でダメージの痛みに鈍くなっているとはいってもダメージがないわけじゃない。


 もはや抵抗することすら難しいぐらいになっていた腕三本などジケたちの敵ではない。


「なんかよぅ、こうなると可哀想だな……」


 あっという間に腕三本がなくなった。

 足はボロボロ、飛べない翼しかない可哀想なキモミノタウロスが地面に寝転がって荒く息をしている。


「可哀想なら早めにとどめ刺してやることだな」


「……そうだな」


 可哀想だからと情けをかけることはできない。

 情けをかけるのなら早めに倒してあげるのが良いのかもしれない。


「ライナス、そっちの頭頼む」


「おう」


 キモミノタウロスの頭は二つある。

 左の頭はライナスに任せることにしてジケは右の頭に向かう。


 腕を全て失う大きなダメージを受けたキモミノタウロスの凶暴化は解けかかっていて、赤くなった目は元に戻っていた。

 けれどキモミノタウロスはジケが目に入ると唾を飛ばして威嚇する声を上げる。


「その状態じゃ怖くないよ」


 近くで咆哮されても腕も足も使い物にならないのならただ大きな声をだしているだけである。


「フィオス、いくよ」


 剣は膝に突き刺したままなのでジケが手にしているのはフィオスソードだ。

 ジケは両手でフィオスソードを持つと魔力を込める。


 一撃で決める。

 そのつもりで高く上げた剣を一気に振り下ろした。


 狙い澄ましたジケの剣はキモミノタウロスの右の首を切断した。

 重たく鈍い音を立てながらキモミノタウロスの首が地面を転がっていく。


「ライナスの方は……」


「あーーーー! また折れたぁ!」


「……ったく、最後まで騒がしいな」


 ジケと同じく全力で剣を振り下ろしたライナスだったけれど剣はライナスの力に耐え切れなくて再びポッキリと折れてしまった。

 強いのはいいけれど強すぎるのもまた困るものだなとライナスを見ていてジケは苦笑いを浮かべる。


「まあ良くやったな」


「師匠……えっ?」


 珍しく褒められたと振り返ってみるといくつものミノタウロスの死体が転がっていた。

 ヘレンゼールはいつもと変わらない顔で剣の血を布で拭っている。


「邪魔しようとしていたからな。少し遊んでやった」


 キモミノタウロスが暴れる音を聞きつけてミノタウロスが集まってきていた。

 それらをグルゼイとヘレンゼールの二人で全て処理してしまっていたのである。


「お、お手数かけました……」


「ふっ、いい運動になった」


 グルゼイも手持ち無沙汰だったのでちょうどいいぐらいだったと笑う。

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