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ミノタウロスの肉を食い

「硬いな……」


「確かに」


 ミノタウロスの肉を食う。

 エニに協力してもらい、大きめの焚き火を作ってミノタウロスの肉を焼いた。


 リアーネはウキウキでそのまま焼いたミノタウロスの肉を食べたのだけど想像と違った。

 ミノタウロスの肉は結構硬かった。


 ニノサンも言っていた通りで何もしていないと乾燥肉ぐらいの硬さがある。


「ただうめえな」


「うん、なかなかいける」


 硬いのだけど味は美味い。

 噛んでいくと味が溢れ出してきて、顎の筋肉の酷使に見合うだけの旨味があった。


「私にもちょうだい」


「私もー」


「もー」


「おう、好きに食え」


 興味を持ったミュコとタミとケリも近づいてくる。

 肉はたくさんある。


 リアーネが焼いた肉をミュコたちにあげるとパクリと一口食べた。


「かたーい!」


「でも美味しい!」


 硬いけど美味い。

 そんなミノタウロスの肉に三人とも驚いたように口を動かしている。


「ダメですよ。しっかりと叩いたりして柔らかくしてからでないと」


 元々ニノサンはミノタウロスの肉をちゃんと処理して食べるといいと言っていた。

 そのまま食べたって毒があるわけじゃないから食べれないものではないが、ちゃんと美味しく食べるには多少の工夫が必要だった。


「フィオス、頼めるか?」


 フィオスもミノタウロスの肉を食べている。

 意外と気に入っているようで体の中でグルグルと回して味わっている。


 ジケが声をかけると少し慌てたように体の中のミノタウロス肉を溶かしてフィオスが形を変える。


「なんだそりゃ?」


「硬い肉ってのはこんなので叩いて柔らかくすることがあるんだよ」


 フィオスはハンマーのような形になった。

 ただし普通のハンマーではなく叩くところにトゲトゲと細かい刃のようなものがついた特殊な形のハンマーだ。


「これで肉を叩くとスジとかが上手く切れて肉が柔らかくなるんだ」


 過去でジケは肉屋で働いたこともあった。

 肉屋で働くと切れ端とか売り物にならないものをおこぼれてしてもらえることがあった。


 結局奥さんにお金を持ち逃げされて店主は追いかけていったまま帰ってこなかったので自然な解雇の形となったがなかなか美味しい仕事の記憶がある。

 ともかくその肉屋での仕事の時にこうしたハンマーを使って硬くて普通じゃ売れない肉を柔らかくして売っていた。


 帰ってこないと分かっていたらハンマーぐらい持って帰ってくれば後で肉を柔らかくする時に役に立ったかなと思ったぐらいだ。


「私に任せな」


 力仕事ならとリアーネがフィオスハンマーをジケから奪い取る。

 本来なら小型のハンマーなのだけどフィオスの体積の問題があるのでフィオスが化けたハンマーはややデカい。


 ジケよりもリアーネの方がいいだろうとそのまま肉叩き作業を任せることにした。


「ひょのままでもいけるひゃよ」


「モグモグしながらしゃべんな」


「俺もひらいじゃないひぇ」


「まあ悪くないよな」


 エニとライナスもミノタウロスの肉をモグモグと噛んでいる。

 貧民だと色々な食べ物がある。


 硬いパンなんかも日常だったりする。

 噛めば美味いのだからミノタウロスの肉は全然良いものだと二人は思った。


「ちょっと……硬いですね」


 小さめに切ったミノタウロスの肉を噛みながらリンデランはちょっとお気に召さないようである。

 流石に貴族となるとこんなに硬いものを食べることは多くない。


 あまり慣れないものでもあるので美味しくても口に合わないようだ。


「こんぐらいでどうだ?」


「とりあえず焼いてみよう」


 フィオスハンマーで叩かれて薄くなったミノタウロスの肉を焚き火で焼く。

 どうやったのかリアーネは石を薄く板状に叩き割って鉄板がわりにしていた。


「なんだかたくましいですね」


 ツケアワシは外でミノタウロス焼肉をするジケたちをみて微笑んでいた。

 許可は出したもののここまでするとは少し意外だった。


 だがミノタウロスを解体して、焚き火を起こし、石を鉄板がわりに焼肉をする姿は面白い。

 ジケの商会が色々なことをして伸びてきていると聞いているがこうした自由さが原動力なのかもしれないとツケアワシは感じた。


「あっ、美味い!」


 最初の肉はジケに。

 ということで叩いたミノタウロスの肉をジケが食べた。


 美味しかった。

 柔らかくなって、より旨味が口の中に広がる。


「本当か? んじゃ私も……おおっ! そのままとは大違いだな!」


「私も食べる!」


「ちょーだい!」


「待ってろ……これなら良さそうだ」


 始まるミノタウロス焼肉パーティー。

 ミノタウロスの肉を叩いては焼き、叩いては焼きが繰り返され、いつの間にか坑夫たちも集まってきた。


 坑夫たちが持っていた食料を使ってソースなんかを作ったりして焼肉はより盛り上がった。


「ほれ、フィオスも」


 流石にずっとハンマーじゃ可哀想。

 ある程度まとめて肉を柔らかくしたらフィオスにもミノタウロス焼肉を食べさせてあげる。


「美味い……別の意味でも侮れない魔物だな」

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