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鉱山の中のダンジョン4

「リアーネはさらにバックアップね」


「ちぇっ」


「まだ戦う機会もあるって」


 迂回路探しでもお留守番だったのにここでもほとんど待機でリアーネはつまらなそうな顔をする。

 今回はライナスメインで攻撃なので大人しくしといてもらう。


 きっとこの先も戦うことはあるだろうからその時に暴れてもらうつもりだ。


「よし、じゃあリンデランの魔法をきっかけに攻撃だ」


「おっけー!」


「分かりました!」


 魔法を使うリンデランと一番槍のライナスが力強く頷いて答える。


「こうした場でもリーダーとしての気質があるのですね」


 少し離れて相談の様子を見ていたビリードはジケがその場を回していることに驚いてしまう。

 明らかにリアーネやニノサンの方が年上で経験がありそうなのにジケが場を仕切っている。


 別にジケが仕切ることになんの問題もないのだが、的確にしっかりに話をまとめて周りもジケのことを信頼していてスムーズに話が進んでいる。

 ビリードはざっくりとジケが大事なお客様という程度にしか話を聞いていない。


 なのでリアーネとニノサンがジケの護衛だとかそんなことは知らない。

 ともかく若いみんなの中心にいるのがジケなのだなということは分かった。


 進んで協力してくれるところや坑道での動きを見ていればリーダーシップがあることは分かっていたが、戦いを前にしても緊張したところがなく冷静に役割を割り振ることができるのはすごいとしか言いようがない。

 ジケが冷静だからだろうか、周りのみんなも自然と冷静でいられるようだとビリードは感じていた。


「それじゃ行くぞ。準備はいいな?」


「もちろん!」


「いけます!」


「頼むぞ、リンデラン!」


「はい!」


 ダンジョンの中は坑道と違って少し暑いぐらいの気温だった。

 リンデランが笑顔を消して真剣な表情を浮かべ、魔法を使おうと魔力を高める。


 すると周りの温度が少し下がってひんやりとし出す。

 なんの魔法がいいだろうかとリンデランは考える。


 凍らせてしまってもいい。

 大きな氷の塊をぶつけてダメージを与えてもいいし氷で貫いてしまってもいい。


 ただあまり大きく魔法を展開し過ぎてしまうと続くライナスが攻撃しにくくなる。


「こうしましょうか」


 リンデランの魔力が氷へと変わっていき、細く長く形を作っていく。


「氷の剣か」


 尖っただけの氷の塊や細長くしただけの氷の槍ではない。

 リンデランが作り出したのは氷の剣だった。


 剣と分かるような繊細な形をした氷が瞬く間に十本も生み出されたのである。


「綺麗……」


 氷の剣もさることながら剣の周りの空気はとても冷えてキラキラとしていてミュコは思わず魔法の美しさに身惚れてしまう。

 エニもリンデランも魔法を使うが二人には大きな違いがある。


 得意な属性が違うという大きなところもあるのだが魔法における魔力の運用も異なっていた。

 エニが魔力を勢いよく使うタイプならリンデランは魔力をかなり繊細にコントロールしていた。


 エニの使い方が雑というわけではなくリンデランが特別繊細なのだ。

 魔法を扱うのにもイメージが大事だ。


 単に見た目を剣にするだけじゃなく剣が持つ強さもイメージすることで魔法はより堅固になる。


「これってフィオスソード?」


 リンデランが作り出した氷の剣はフィオスソードの形をしていた。

 フィオスソードの形はちょっとずつ変化している。


 最初はただの剣もどきだった。

 真似するのにそこらで買ってきた安物の剣で練習してフィオスもそれを真似していた。


 そのあとはジケの持ちやすさとか色々な種類の剣を目にすることがあってフィオスも剣の形になるたびに少し違っていたりした。

 だけど最近はレーヴィンという魔法剣を手に入れてフィオスもその形に姿を寄せている。


 どことなく最初の無骨な剣の面影もありながらレーヴィンのようなスマートさを持ったフィオスソードが出来上がったのだ。

 リンデランはそのフィオスソードを真似していた。


「へへ……そうです」


 リンデランは恥ずかしそうに頬を赤らめる。

 強い剣のイメージはフィオスソードで間違いなかった。


 ジケと一緒に何度も助けてくれたフィオスはリンデランの中で弱いスライムではなくとても強い存在であった。

 いまではジケを守る盾になりがちだけどジケと共に戦う剣のイメージも強いのだ。


「お前だってよ」


 ジケは抱えているフィオスに声をかける。

 分かっているのか分かっていないのか不明だけどフィオスから嬉しいという感情が伝わってくる。


 きっと分かって嬉しがっているんだとジケは思った。


「いきますよ!」


 リンデランが杖を振ると氷のフィオスソードが一斉にミノタウロスに向かって飛んでいく。


「っしゃ! 俺もいくぜ!」


 リンデランの魔法に合わせてライナスが飛び出し、ジケたちも続く。

 魔力の接近に気がついてミノタウロスが振り返ると氷のフィオスソードがすでに目の前に迫っていた。


 ミノタウロスは顔の前で腕をクロスして氷のフィオスソードをガードする。


「思っていたよりも硬いですね!」


 体の正面にあった氷のフィオスソードはミノタウロスの腕や体にに突き刺さった。

 しかしミノタウロスが動いたことで正面から逸れた氷のフィオスソードはミノタウロスの表面を浅く切りつけただけで大きなダメージを与えることができない。


 ミノタウロスは見た目よりも筋肉質で体が硬い。

 突き刺さったものも案外浅くてリンデランは顔をしかめた。

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