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ミスリル鉱山、何潜む2

「お断りいただいても構いません」


 ジケがいてくれれたなら坑道内での進行は早くなるだろうというのが最終的な判断であった。

 当然のことながら無理にジケに協力してもらうことはない。


 ジケが断るというのならツケアワシも大人しく引くつもりであった。


「……やりましょう」


「本当ですか?」


「俺にできることなら手伝わせてください」


 ただジケという奴はここでリスクを嫌がって人を見捨てる性格をしていない。

 手助けできることならリスクがあっても助けるのだ。


「……ありがとうございます」


「ヘギウス……リンデランにはお世話になってますからね」


 ヘギウス商会にもお世話になってる。

 アルケインと直接関わった機会は多くないがジケが助けるだけの理由はある。


「リンデラン嬢は良いご友人を得られましたね」


「俺にとってもリンデランはいい友人ですから」


 ーーーーー


「いってらっしゃい」


「気をつけてね」


「ああ、ちゃんと帰ってくるよ」


 時間もないので次の日早速ジケは鉱山に向かった。

 追加で食料や水を送り、迂回路を進む準備をした。


「頼んだぞ、ビリード、コワクナ」


「任せてください」


「マドリアーのために頑張ります」


 ジケも一応道の説明は受けたけれど坑道内部の状況がどうなっているのか知識がないので判別できない。

 そこで坑夫の中でも腕が立って体力もある坑夫が案内役として一緒に行くことになった。


 ビリードは髭面の中年坑夫で普段から鉄鉱山で働くベテランでコワクナはまだ若い坑夫である。


「みんなも準備いいか?」


「おう!」


「いけるよ」


 今回鉱山に入るのはジケだけじゃない。

 ジケがいくならエニも行く。


 ジケがいくのはライナスのためなのだからライナスも行く。

 ということに加えてジケの護衛であるニノサン、さらにはジケと同じく魔力感知ができるグルゼイもタミとケリのお願いによりついていくことになっていた。


 リアーネは持っている武器が狭い坑道には不向きということでお留守番である。


「タミとケリのことはお任せください」


「無事に帰ってくださいね……」


「チッ……」


 坑道の中が狭いということで明かりを確保する以外の魔法も危ないので使えない。

 だから魔法がメインのリンデランも今回は一緒に行かず、タミとケリはリンデランとリンデランの護衛であるヘレンゼールに任せた。


 リンデランはかなり不満そうであるが仕方ない。

 エニが行くのにというところも不満であるようだが、リンデランがダメでエニが一緒の理由はエニは治療魔法を使えるためであった。


 グルゼイはヘレンゼールにタミとケリを任せることが不満そうだった。


「それではよろしくお願いします」


 ジケたちはアルケインの救出に向けて鉱山に入る。

 入っていくのは崩落して温泉が噴き出している入り口があるところから山の逆側にある坑道である。


「暑かないな」


 流石に逆側に伸びる坑道まで気温は上がっていない。

 むしろ日が届かないひんやりとした空気が坑道の中には流れている。


 まだミスリルがある地点からは遠いので魔道具のランプで道を明るく照らして進んでいく。

 もちろん明かりがあってもジケとグルゼイは魔力感知を広げて警戒はしている。


「なんとなく雰囲気違うね」


 エニは坑道の雰囲気が違うと感じていた。

 崩落した方も中まで入っていないので何が違うのか分からないけどなんとなくそんな感じがするのだ。


「坑道の綺麗さが違うな。こっちは坑道よりも天然の洞窟みたいだ」


「あー、確かに」


 崩落した方の坑道は崩落しないように綺麗に整備し木の支えが設置されていて松明も壁にかけられていた。

 一方でこちらの坑道はあまり綺麗に掘り進められていない。


 壁だけでなく地面も比較的でこぼことしていて崩落防止のための木の支えも崩落した方は一定間隔で並んでいるのにこちらはところどころにしかない。

 松明もなくて掘り進めた坑道というよりも洞窟っぽさがあるのだ。


 エニはそうしたところが違うなと肌感覚で感じていたのである。

 いまジケたちが進んでいるのはミスリル採掘が最盛期を迎えた時に掘られた坑道であった。

 

 安全よりも迅速に掘り進めてミスリルを探すことを目的にしていたために作業が雑なのだ。

 かつて大規模な崩落を起こした道とは違うけれどこんな状態なら崩落を起こしても仕方ない話である。


「あまり刺激を与えないように気をつけてください。そう簡単に崩落することはないと思いますが念のために」


 万全に掘り進めても事故的に崩落を起こすこともある。

 今進む旧坑道は万全に掘り進められたものではないのでどこかで崩落してもおかしくはない。


 当時の坑夫たちだって崩落させたいわけじゃないので経験を元にして崩れないようには掘っているだろうが、何がきっかけになるかは分からない。

 できる限り支えの木や壁には触れないようにして進む。


 道幅も場所により様々だったけれどやはりリアーネだと戦うのは大変そうだなとジケは思った。


「ここから少し狭い道に入ります」


 メインとなる広めの道の他に色々と細かく細い道も伸びている。

 人一人が入れるぐらいの細い道に入る。


 先頭にベテラン坑夫のビリードを置いて一列に並ぶ。

 なんだかんだと言いながらも師匠であるグルゼイはビリードの一つ後ろでリスクを負ってくれている。

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