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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十四章

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強きスライム3

 ゴーレムはかなり不思議な魔物、魔獣である。

 ゴーレムには意思がないとされている。


 スライムには知能がないとされているけれど、そこよりもさらに根本的なものがないというのだ。

 どうやって発生するのかも謎の魔物であってクトゥワに聞いてもあまり情報は得られないぐらいである。


 それなのにゴーレムは魔獣召喚に応じて人と契約を結ぶ。

 人と契約を結んで魔獣になると人の命令を聞くようになる。


 ただし複雑な命令は無理で単純な命令のみを実行することができる。

 魔獣としての評価はそこそこ高い。


 なんといっても無尽蔵の体力と高いパワーが特徴である。

 疲れを知らず動き続けることができるので仕事をする魔獣としての評価はもっぱら好評で魔獣がゴーレムの人という条件で人を集めている商会まである。


 戦闘になるとゴーレムの評価はやや落ちる。

 体力とパワーに加えて頑丈さを持ち合わせていて厄介な相手であるけれど速度は遅め、しかも単純な動きしかできないのである。


 その他の能力の高さが故に戦闘力としても高めにはなるのだけど戦いの相性によって大きく変わってくる側面があるのだ。

 ならばスライムとの相性はどうか。


「やれ!」


 ハニャワがジケに向かって拳を振り下ろす。

 ジケがサッと飛び退いてかわすとハニャワの拳が床に叩きつけられる。


 ステージの床が砕ける様子を見れば拳の威力の高さが窺える。


「あんなスライム如きにハニャワが負けるはずがない! あいつごと潰してしまえばいいんだ!」


 どうやらムラミ本人は前に出てくるつもりがないらしくハニャワの後ろから偉そうに命令を飛ばしているだけだった。


「まあ確実な方法かもな」


 ただでさえ頑丈なゴーレムであるが、ハニャワはその中でもより硬いアイアンゴーレムである。

 アイアンゴーレムの硬さを突破するほどの攻撃力を出すのは難しい。


 まして今持っているのは木製の武器である。

 アイアンゴーレムを倒すことができる可能性はかなり低い。


 戦いをハニャワに任せて自分は安全なところから指示を出す。

 卑怯といえば卑怯だが戦いの作戦としては悪くない。


 ここまで勝ち残っているのだから勝ててきたやり方なのである。


「逃げることしかできないのか!」


 ハニャワがやたらめったらと拳を振り回す。

 意外と拳のスピードはあるなと思いながらもジケは悠々とハニャワの攻撃をかわす。


「まあたかがスライムじゃ俺のハニャワを倒せないか」


 ムラミはニヤリと笑う。

 ハニャワは疲れを知らずに戦い続けることができる。


 このままならジケを倒すのも時間の問題であるともう勝った気でいる。


「……なら試してみようか」


 少し険しい顔をしたジケがハニャワに向かってフィオスを投げつけた。


「んなもん叩き落としてしまえ!」


 人なら無理な動きでもアイアンゴーレムであるハニャワなら無理がきく。

 拳を突き出していたハニャワはムラミの命令に従って無理矢理拳の軌道を変えて飛んでくるフィオスのことを上から拳で押し潰した。


「フィオス!」


 魔獣がやられた。

 会場中に同情にも似た雰囲気をはらんだざわつきが広がる。


 サトルのそばで試合を見ていたウルシュナも身を乗り出す。


「ぷっ、はははっ! 残念だったな! お前の魔獣は死んじまった!」


 ムラミは腹を抱えて笑う。

 よそ者がスライムなんて魔獣のくせにラグカのことに首を突っ込むからこうなるのだと侮蔑の感情でジケのことを見ている。


「足掻くか? いや、もうそれもできないだろう? 魔獣が死んだんだからな! さっさと負けを認めろ!」


 ムラミは微動だにしないジケに降参を促す。

 別にアイアンゴーレムでジケも叩き潰してもいいがさっさと控え室に戻ってお菓子でも食べたいななんて考えていた。


「……フィオスは死んでいない」


「なに?」


「お前のアイアンゴーレムと俺のフィオスの相性は最悪だ。もちろんお前にとって最悪という意味だぞ」


「…………何が言いたい?」


 ジケの目は死んでいなかった。

 まだ戦いを続ける意思を持った目をしている。


「フィオスはスライムだ。スライムが殴りつけて殺せるとでも思っているのか?」


 ニュルリ。


「お前がやったことはフィオスを撫でるのと変わらないんだよ」


「はっ……!」


 フィオスを下敷きにするハニャワの手に青いものが広がっていることにムラミは気がついた。

 

「たかがスライムの力、見てみろよ」


「……そんなもの振り払ってしまえ!」


 ハニャワの拳を包み込むようにフィオスが広がって動いている。

 ハニャワは拳を振り回してフィオスを振り払おうとするけれどピタリとくっついたフィオスはそんなことで振り払えはしない。


 逆の手でフィオスを掴み取ろうとするけれどニュルニュルとするフィオスは掴めない。


「チッ……もういい! 契約者を倒してしまえば終わりだ!」


 振り払えなくともへばりついているだけならなんの問題もない。

 スライムに攻撃が通じなくともジケには通じるだろう。


 フィオスのことを無視してハニャワはジケのことを狙い始めた。

 拳を振り回すけれどジケは涼しい顔をして回避する。

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