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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十四章

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君を連れて帰る1

「ようやく島脱出か」


 数日かけて勇気の試練が終わった。

 その間ジケはゆっくりとお風呂に浸かり、ふかふかのベッドで体を休めた。


 特に大きな事件もなかったが勇気の試練では怪我人が続出していた。

 最低限死なないような殺傷能力を抑えた罠ではあったが死ななくとも怪我はしそうなものばかりだった。


 骨を折ったりして動けなくなった子もいれば暗闇に心をやられてしまった子もいた。

 二日という短い期間では洞窟を踏破できなかった子もいる。


 最終的にはかなりの数が絞られた。

 お屋敷から歩いてすぐのところに海岸があってそこから船に乗って島から帰ることになった。


 脱落した子は適時帰され、勝ち残った子は最後にまとめて戻ることとなっていたのはきっと互いに顔合わせさせるためだろう。

 残った子の中にはウラベとイカサがいたが、ダマハは脱落してしまったみたいであった。


 さらに本土に着いたら馬車に乗せられてキヨウに向かう。

 ウラベとは別で、イカサとは同じ馬車だったの助かったとジケは思った。


「次が最後の試練だ」


 キヨウに着いたジケたちは休む間もなく大きな木造の建物に案内された。

 建物の真ん中には四角いステージがあって周りをステージを見下ろすように段々になった観客席がある。


 イカサによると神前宮という建物で武術の大会なんかが開かれることがある場所らしい。

 いわゆる競技場や闘技場という会場みたいである。


 会場の観客席はすでに観客で埋め尽くされている。

 その中にはエニたちもいるのをジケは見つけていた。


「最後の試練は己の力、そして魔獣との絆を試させてもらう」


 例によって王様のサトルが試練の説明をする。


「やることは簡単だ。トーナメント方式で戦ってもらう! 最後まで勝ち残った者、それが優勝であり神女の相手となる!」


 なんとなくそんな気はしていた。

 やっぱり最後は直接対決。


 一対一で戦う勝ち残りのトーナメントで最後まで残った一人が優勝、神炎祭の頂点ということになる。

 しかもただ戦うだけでなく魔獣と一緒に戦うのだ。


 ここまでは魔獣を一切出さずに自己の能力だけで試練を乗り越えさせた。

 魔獣を出しておく習慣のあるラグカにしては魔獣を使わないのだなと意外だったけれど、最後の最後に魔獣との共闘となった。


「……やったな、フィオス」


 ジケは抱えているフィオスに視線を落とした。

 一人で戦って勝ち抜いてやるとは思っている。


 けれどもフィオスと一緒なら絶対に勝てる。

 むしろフィオスと一緒でいいのかというぐらいの感想だ。


 だが周りの子はジケを見てニヤついた。

 スライムが魔獣なら少なくとも一人は倒すことが簡単そうだ、そんなことを思っていた。


「くじ引きを始める」


 トーナメントを決めるためのくじ引きが開始された。

 一番初めにくじを引いたのは二つ前の試練で木札を一番集めたウラベであった


 次にくじを引くのは二番目に木札を集めたジケ。


「……運が良いのか悪いのか。向こうは残念そうな顔をしてるな」


 ジケのくじ引きの結果ウラベとは逆の山になった。

 つまりウラベと戦うのは決勝ということになる。


 さっさと戦いたかったのかウラベは少し悲しそうな顔をしていた。


「よっしゃ!」


 誰もがウラベとは戦いたくないと思った。

 仮に負けるとしても将来騎士になるため周りに強さをアピールするのにもウラベは相手としてふさわしくない。


 対して勝てそうな相手とは当たりたい。

 弱い魔獣を従えたジケは少なくとも勝てる相手だろうとみんなが思っていた。


 だからジケと戦うことが決まった子は思わずガッツポーズしている。


「あいつら……ジケのこと舐めて……」


 観客席に座るエニはジケが軽んじられていることに怒っていた。

 対戦相手はジケと戦うことになって明らかに嬉しそうな顔をしている。


 たとえ喜ぶにしても内心に留めておくべきで対戦相手へのリスペクトも感じられない。


「まあぱっと見強そうじゃねえもんな」


「リアーネさんは誰の味方なんですか!」


「もちろんジケの味方さ」


 同じく怒ったっていいのにリアーネは余裕な態度で様子を眺めていた。


「ジケが舐められてるんだよ?」


「ああ、そうだな」


 ふふんとリアーネは笑う。

 なぜそんな態度なのかエニにはわからない。


 リアーネの性格ならむしろエニより怒りそうなのにと思った。


「私らはジケが強いって知ってる」


 最初こそジケはリアーネに全く敵わなかったけれど今戦うとリアーネも油断できないほどにジケは強くなっていた。

 手段を問わない実戦だとかなり柔軟に戦うことができるジケとの勝敗が分からなくなると思うぐらいだ。


「だけど相手はジケが強いと知らずに勝てるだなんて思ってほくそ笑んでる。馬鹿みたいに油断してんだ」


「あっ……」


 リアーネの言葉でエニも気づいた。

 今この状況をもっとも笑っているのはジケなのだと。


 自分の実力も知らないくせにフィオスだけを見て弱いだろうと決めつけて勝手に油断してくれている。

 いざ戦いが始まれば少しでも実力は隠しながら体力は温存しておきたい。


 ジケにとっては舐められているという状況は望むところなのだ。

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