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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十四章

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ラグカ2

「……あなたがあなたが神を支える炎に立候補する婚約者ですね?」


 ソーネは目を細めてジケを見る。


「婚約者……?」


 とある言葉に引っかかったようでエニが険しい顔をする。


「全てが終わるまでは……いや、全てが終わってもウルシュナはウルシュナのままだろう」


 突き刺さるようなエニの視線には気づかぬふりをしてジケはソーネと対峙しづける。


「ふふ、本当にそう思いますか?」


「思うだけじゃない。俺はやるつもりだ」


「連れた魔獣はスライム……どうやって神炎祭を勝ち上がるつもりなのでしょうか?」


「真っ直ぐに勝ち上がってみせるさ」


 フィオスのことを馬鹿にされてジケは内心カチンときていた。


「かようなもの、神女様にはふさわしくありません。我々がおもてなしいたしましょう。こちらへ」


「ヤダ」


 ウルシュナはジケの後ろに隠れる。

 ソーネの後ろにいる男たちが殺気立ったような顔でジケを見ていて一触即発の空気が漂う。


「ウルシュナのことを連れていきたいなら俺を倒してからにしろ。今はまだ彼女は神女じゃないただのウルシュナだから」


「ジケ……」


 ウルシュナは自分を庇ってくれようとするジケの背中が大きなもののように感じられていた。

 全く似ていないのにほんの一瞬ルシウスの姿がジケの背中に重なった。


 どこまでも真っ直ぐなところは少しだけ似ているのかもしれないとウルシュナは顔をほんのりと赤くした。


「それでどうするつもりですか? 力づくで連れていくつもりでしょうか?」


 そうするのならば衝突もやむを得ない。


「そのようなことも辞さないかもな……」


「おやめなさいな」


「むっ……お主はサーシャではないか」


 ジケとソーネの間にサーシャが割り込んできた。

 ソーネがサーシャの顔を見て顔にシワを寄せている。


「ヘビ……?」


「あれはお母様の魔獣のギルシアだよ」


 サーシャはまるでマフラーかのように肩に真っ白なヘビを乗せている。

 ジケは妙に似合ってるなんて思うけれど乗せているのはサーシャの魔獣だった。


「相変わらずのようだね」


「ええ、神女なんてつまらない役目から解放されたおかげで元気よ」


「こっちはお前のせい大変だったんだぞ」


「望まぬ相手に役目を押し付けようとするからよ。あなたこそいつまで神巫女なんてやってるのかしら?」


「ふん、ワシだって引退したいわ。次の神女が決まったらワシも引退だな」


 サーシャとソーネの間には一瞬ピリついた空気があったものの思っていたより敵対しているような雰囲気はない。


「いい加減神女なんてものもやめてしまえばいいのよ」


「何を言う。変えられるわけがないだろう」


「そんなんだから苦労するのよ。それよりもお父様、お母様は元気かしら?」


「そちらも相変わらずだよ。孫が神女に選ばれて怒っておったわ。お前の親らしい」


「元気そうならよかったわ」


 むしろ親しい感じまであるようだ。


「……ケルナーは?」


「病だ。……よもやこのように早く世を去るとはな」


「あの子なら神女喜んでいたでしょう?」


「お主と違ってな」


「……神女になっても神は助けてくれないものね」


 サーシャは悲しげな目をする。

 何の会話かはジケに分からないけれどサーシャにとって大事な話のようだった。


「……ここはお前に免じて引いてやろう」


「どうせ逃げも隠れもしないのだから連れていくこともないでしょう?」


「そう思わんやつもおる」


「大丈夫。だって私はこの子の信じてるもの」


 サーシャはニコリと笑うとジケの肩に手を置いた。


「……お主を連れて行った若造はいかにも強そうだった。けれどこの子は……」


「目で見えるものが全てじゃないのよ?」


 ジケが抱えるフィオスの上にサーシャのギルシアが頭を乗せる。

 見た通りならただのスライム。


 弱い魔物であり、得られる魔力も多くない。

 ジケの体つきもしっかりしてきたけれど強そうに見えるほどまではいっていない。


 ソーネの目から見てジケが神女を争う神炎祭に勝ち抜ける子には見えなかったのである。


「ふふふ……時が来れば分かるわ」


「まあ、婚約者が挑むのは自由だ。少なくとも男気はあるようだしな」


 自分が言ってやめるぐらいなら最初から神炎祭に参加しないだろうとソーネは思った。

 ウルシュナはジケの後ろに隠れていてジケはウルシュナを守ろうとしている。


 二人の間には信頼関係がある。

 ソーネはふっと笑うと踵を返し、男たちを連れて去っていった。


「知り合いなんですか?」


「ええ、遠い親戚にも当たる人よ。私が神女になる前は可愛がってくれた人でもあるの。神女に選ばれてから色々変わっちゃったけど変わらないわね」


「それよりも」


「エ、エニ?」


「婚約者ってどーいうこと?」


 ムッとした顔のエニがジケに詰め寄る。


「それは……」


「あら、うちの子とジケは結婚するのよ」


「お母様!」


 ウルシュナの顔が真っ赤になる。


「ジーケー?」


「ち、違うんだって!」


「……主も大変ですね」


「モテすぎるとこんなことにもなるんですね……」


 エニに必死に経緯を説明するジケを見てニノサンとユディットは小さくため息をついた。


「任せとけって言ってくれたじゃない」


「ちょ……サーシャさん、黙ってください!」

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